―――

紬「・・・」

緑「・・・もっと悪くなったのね」

紬「もう・・・」

緑「もう降りる?」

紬「・・・っ」

緑「降りる理由が出来たなら誰も止めないわ」

紬「・・・っ!」

緑「・・・」

紬「・・・」

緑「そのブレスレットはどうして託されたの?」

紬「!」

ギュッ

緑「なにか意味があるんじゃないの?」

紬「・・・そうです」

緑「・・・」

紬「旅の終わりまで預けてくれたんです」

緑「・・・あなたの目的地はどこなの?」

紬「それは・・・」

緑「・・・」

紬「・・・」

緑「明日、私は目的地に着く・・・・・・」

紬「それは・・・どこですか・・・?」

緑「親友の居場所が分かったの・・・」

紬「そこが・・・目的地・・・」

緑「そう・・・。会えば私は『本当の笑顔』を取り戻せると思う」

紬「『本当の笑顔』・・・」

緑「私が笑える場所はその子の前だけだったの・・・」

紬「・・・」

緑「転校ばっかりで、気の許せる人がいなくて・・・その子も同じ境遇だったから。すぐに仲

良くなった」

紬「その人があの・・・写真の・・・」

緑「・・・・・・あの子に会えば・・・あの写真に映った自分のように笑えるような気がする」

紬「・・・」

緑「あなたの目的地は・・・?」

紬「・・・」

緑「いえ・・・この質問に答えなくていいわ・・・」

紬「・・・」

緑「・・・ただ、なんとなく気になっただけ・・・だから」

紬「どうして・・・」

緑「・・・なに?」

紬「どうして話をしてくれたんですか?」

緑「・・・・・・あなた・・・たちと」

紬「私たち・・・・・・?」

緑「・・・別に・・・・・・じゃあね」

紬「・・・・・・はい、また・・・あした」

緑「・・・」

スタスタ


『はい・・・。だけど、これしか・・・方法がないんです』

別れを目的とした乗車

『大切な人ほど離れて行っちゃうんですよね~』

近づいていく人ほど遠くへ行くと言った・・・

『そのブレスレットはどうして託されたの?』

ギュッ

支えになるから

『琴吹さんに出会えてよかったです。ありがとうございました』

私たちを描いた絵も

『・・・ありがとう紬さん・・・優しくしてくれて・・・。とても嬉しかった』

結ったリボンも

『ありがとうございました、お元気で!』

『あ・・・ありが・・・と・・・むぎ』

お守りも

『紅茶とってもおいしかったです。・・・とっても』

『あり・・・がと・・・う、むぎ・・・ちゃん』

キーホルダーも

『ツムギさんの紅茶・・・温かかったですワ』

『えっへっへ~、ネタに困らなかったよ~。放課後ティータイムは』

『みんなと一緒に歩けないと・・・怯えていたわたしを・・・気にしてくれてた・・・』

ブレスレットも

『私は梓ちゃんも含めてみんなと出会えて、本当によかった』

『・・・むぎ先輩と・・・出会えて・・・よかった・・・です・・・っ』

コインも

『むぎさんと出会って、そんな私と出会う事が・・・私の旅の意味』

人形も

あの言葉も・・・

みんなと出会えた証

別れた人とはもう会えないけど、それでも進みたい

もう一度出会いたい

それがわたしの―――――




―――――旅の意味



13日目終了--------




8月14日


ジャー

紬「・・・っ」

ジャブジャブ

紬「・・・」フキフキ

紬(・・・よし)

ガチャ

バタン

緑「・・・あ」

紬「・・・あ」

緑「・・・」

紬「おはようございます」

緑「・・・なにがあったの?」

紬「どうしてですか?」

緑「顔つきが変わってるから・・・」

紬「進むって決めましたから」

緑「・・・そう」

紬「はい」

緑「・・・じゃ」

スタスタ

紬「どちらへ行かれるんですか?」

緑「あっち」

紬「一緒ですね」

緑「・・・」

紬「行きましょう」

スタスタ

緑「・・・」


風音「あ、紬さん」

紬「おはよう~」

風音「おはようございます」

ピノ「ピピッ」

緑「・・・」

紬「ゴロウちゃんは?」

風音「リュックの中ですよ」

ゴロウ「・・・」

風音「どこへ行きましょうか」

紬「あっちですよ」

緑「海の中道・・・」

紬「そう。海の中道へ」

風音「良さそうですね」

ピノ「ピッ」

緑「・・・」

紬「さぁ、行きましょう~」

スタスタ

風音「どうしたんですか?」ヒソヒソ

緑「・・・・・・さぁ・・・」

紬「行きますよ~」



コンコン

修治「すぴー・・・」

コンコン

修治「・・・・・・・・・ん?」

ドンドン

修治「こぇえ・・・」

「バカッ!隣の部屋の事も考えろ!」

「うるさいですわ!」

修治「この部屋の主の事は考えないのね」

ガチャ

修治「新聞は間に合って」

静花「紬さんはどこですの!?」

菜々子「うるさいヤツだな」

修治「え・・・、こんな朝早くにいないの?」

静花「知らないのですね、用済みですわ」

タッタッタ

菜々子「ったく!」

タッタッタ

修治「最低の目覚めですよ」

バタン

修治「ふぁ~・・・・・・あと五分」

ゴロン

修治「」ウトウト

コンコン

修治「もういいや。起きよう」

コンコン

修治「誰だっ」

ドンドン

修治「すいませんでした」

ガチャ

静花「心当たりは!?」

修治「ありません!」

静花「ほんっとに・・・」

タッタッタ

修治「・・・意地でも寝てやる」

バタン

修治「ぶつぶつ」

ゴロン

修治「」ウトウト

コンコン

修治「・・・いませーん」

「私です~!」

修治「あれ・・・?」



―――――海の中道

緑「人増えるんじゃないの?」

紬「そうですね、お昼までなら大丈夫だと思いますけど」

風音「・・・もうちょっと人気の無い所がいいですね」

紬「そうね、地図の端っこへ行って見ましょう」

風音「はい!」

ピノ「ピピッ」

緑「・・・」

紬「ここはどうかしら?」

風音「そうですね。さ、ゴロウ出ておいで」

ゴロウ「・・・」モゾモゾ

ピノ「ピピッ」

緑「・・・」

紬「のびのび遊んでいるわね~」

緑「・・・そうね」

風音「ピノも遊んできていいのよ?」

ピノ「ピッ」

ピョンピョン

紬「野生の情熱ね」

緑「・・・そうね」

紬「ゴロウちゃん楽しそう~」

緑「・・・そうね」

紬「寄り添って眠ることね~」

緑「・・・そい・・・・・・・・・」

紬「・・・・・・おしい」

緑「遊ばないでほしいわね」

紬「どうしたんですか?」

緑「・・・別に」

紬「・・・」

緑「・・・」

紬「緑さんにお礼を言わないといけないです」

緑「・・・?」

紬「おかげで・・・前を向く事ができました」

緑「・・・別に、私はただ・・・聞きたかったから聞いただけ」

紬「そのおかげで気付く事ができたんです。ありがとう」

緑「・・・」

紬「今まで出会った人たちを想えば・・・別れは・・・嫌な事ではないんです・・・」

緑「・・・そう」

紬「はい」

緑「・・・」

紬「緑さんがいてくれてよかったです」

緑「・・・・・・その為の・・・バトンなのかしらね」

紬「・・・バトン?」

緑「・・・なんでもないわ」

紬「・・・」

緑「・・・そろそろ行くわ」

紬「はい」

緑「・・・じゃ」

紬「行ってらっしゃい」

緑「・・・」

スタスタ

紬(緑さんは・・・もう・・・)

風音「北上さんはどちらへ・・・?」

紬「大切な場所・・・、旅の目的地へ」

風音「そう・・・ですか・・・」

紬「・・・もう・・・戻ってこないかもしれないわ・・・・・・」

風音「・・・旅の終わりですね」

紬「・・・うん」

風音「・・・」

紬「・・・」

風音「私も目的地・・・見つかりました・・・」

紬「ゴロウちゃんを帰す場所ですか?」

風音「・・・はい。次の停車駅、阿蘇駅で降ります」

紬「そうですか・・・」

ピノ「ピピッ」

風音「・・・もういいの?」

ピノ「ピッ」

風音「・・・」

紬「・・・ゴロウちゃん楽しそう」

風音「はい・・・。やっぱり人間の住むところでは窮屈みたいです」

紬「きっと強く生きていけるわ」

風音「・・・そうだと・・・いいです」

紬「・・・」

風音「まだ・・・してあげられる事が・・・あったはず・・・です・・・・・・」

紬「たくさんもらったんじゃないかしら」

風音「・・・よく分からないんです」

紬「風音さん・・・」

風音「人間の手で親を失って、人間に拾われ、人間に育てられ、人間に捨てられるんです」

紬「そんな・・・」

風音「事実・・・です・・・」

紬「・・・」

風音「そして人間に近づかないように恐怖を与えられるんです・・・与えないといけないんで

す・・・っ」

紬「・・・」

風音「それが・・・私の・・・最後の・・・役目・・・」

紬「・・・っ」

風音「叩いてでも・・・っ・・・蹴ってでも・・・」

ギュウ

紬「うん・・・」

風音「それでもっ・・・ゴロウには・・・生きていて・・・欲しい・・・からっ」グスッ

紬「風音さんの想いはきっと届いているわ」

風音「ごめっ・・・なさい・・・こんな事・・・言うつもりじゃ・・・」ボロボロ

ギュウ

紬「いいの・・・、今は・・・時間の許す限り見守りましょう」

風音「はい・・・っ・・・」グスッ

紬「風音さんはゴロウちゃんと一緒に強くなったんじゃないかしら」

風音「強くなれたでしょうか・・・」

紬「えぇ・・・、じゃなかったらここに私たちはいないわ」

風音「え・・・?」

紬「私も風音さんたちから教わったものがあるから」

風音「なにも・・・していませんよ・・・」

紬「辛い別れが待っている旅路で強く前をみていたわ」

風音「・・・っ」

紬「だから励まされたの」

風音「・・・ぅ・・・っ・・・」ボロボロ

紬「きっと、風音さんとの出会いを糧に強く生きていける。そう信じるわ」

風音「・・・ありがとうございます・・・っ・・・ヴェガで紬さんに・・・」グスッ

ピノ「ピピッ」

風音「ふふっ、名古屋城であの曲と出会えて・・・本当に良かった」グスッ

紬「うん・・・」

風音「・・・気持ちが前を向けました・・・・・・。今は一緒にいたいと思います」

紬「そうね」

風音「時間の許す限り・・・」

ピノ「ピピッ」

風音「紬さんは私たちを見守ってくれているんですね」

紬「え・・・?」

風音「なんだか・・・」

紬「・・・?」

風音「いえ、なんでもないです。ゴロウと遊んできますねっ!」

タッタッタ

紬「・・・私は・・・してもらった事をしている・・・だけ・・・だと思う・・・」


14