ブォォォオオオオオ

紬「うふふ」

斉藤「・・・走って行かれるおつもりだったんですか?」

紬「もちろんです!」

斉藤「・・・」

紬「まっててくださいね・・・ルンルン

斉藤「・・・」



ピンポーン

『はい、どちら様でしょうか?」

斉藤「斉藤と申します。ご息女の静花様にお会いしたいのですが」

紬「・・・」ワクワク

『どちらの斉藤様でしょうか・・・?』

斉藤「・・・」

紬「琴吹紬です!」

『・・・!』

斉藤「お嬢様・・・」

紬「静姉さまはいらっしゃいますかっ!?」

『申し訳ありません。お嬢様は今誰ともお会いにならないそうです』

斉藤「・・・っ!」

紬「え・・・」

『お引き取りください』

プツッ

斉藤「・・・」

紬「どうして・・・」

斉藤「少し車でお待ちくださいお嬢様・・・」

紬「・・・どう・・・して・・・」グスッ

斉藤「・・・お嬢様」

紬「やく・・・そく・・・したのに・・・」グスッ

斉藤「・・・」

紬「どうしてぇ・・・っ・・・ひっく・・・」ボロボロ



別れの言葉すら無い大好きな人との別れ

会いたい人にもう二度と会えない哀しさ

それを知ってしまった



静花「誰からでしたの?」

「いえ、お嬢様には関係ない人です」

静花「・・・嘘ついてませんか?」

「はい」

静花「嘘おっしゃい!『静姉さま』と聞こえましたわ!」

「いいえ、そのようには聞こえませんでした」

静花「・・・っ」

「・・・」

静花「こんな人ばっかり・・・!」

タッタッタ

「・・・」

静花「斉藤っ!」

斉藤「静花様・・・」

静花「つむぎちゃんは!?」

斉藤「車です」

静花「会わせて!」

斉藤「・・・会ってどうなさるおつもりですか?」

静花「っ!」

斉藤「本当は来ないはずでした」

静花「・・・」

斉藤「ですが、紬お嬢様がどうしてもとおっしゃって」

静花「それだったら!」

斉藤「会って、これから先どうなさるおつもりですか?」

静花「家の事は関係ありません!」

斉藤「これから先、事実を知ったとき紬お嬢様が受ける傷は今の倍以上かと・・・」

静花「っ!」

斉藤「もし、紬お嬢様を想うのであればこのまま帰らせてください」

静花「・・・どう・・・っ・・・してっ・・・こんな・・・」

斉藤「・・・」

静花「・・・っ」グスッ

斉藤「申し訳ありません」

静花「いえ・・・、あなたはここまで連れてきてくれました・・・から」グスッ

斉藤「・・・こちらを受け取りください」

静花「え・・・?」

斉藤「紬お嬢様からのプレゼントです」

静花「・・・っ!」

斉藤「それでは、ごきげんよう」

スタスタ

静花「・・・っ・・・ぅ・・・」グスッ

バタン

静花「つむぎちゃん・・・」グスッ

ブォォオオオオオオ

静花「つ・・・むぎ・・・ちゃ・・・ん」ボロボロ


当時、カーシグループと琴吹グループは対立し

両家の一人娘同士が会うことは許されず

次第に拮抗していた情勢も崩れ始め

私の周りでは恨み辛みを吐く者も出始めた

今まで自分たちがしてきた事をされただけの事




菜々子「どうして紬ちゃんに伝えないんだよ」

静花「・・・あなたには説明できますの!?」

菜々子「・・・」

静花「琴吹グループが我がカーシグループを事実上潰したと!」

菜々子「・・・」

静花「・・・」

菜々子「・・・」

静花「あの子にだけは・・・、あの子にだけは他の人のように上辺だけで接して欲しくないん

です・・・」

菜々子「・・・」

静花「・・・つむぎちゃんと・・・あなただけでしたから・・・私に本気で接してくれるの・・・」

菜々子「・・・」

静花「会社が順調なときは私の目をみないでちやほやして、不振になったらそここぞとばか

りにそ知らぬ顔で離れていって・・・」

菜々子「・・・」

静花「まるで道化師ですわね・・・」

菜々子「・・・」

静花「滑稽ですわ・・・。そんな状況なのに私はいつまでもお嬢様ぶって、・・・あの子の姉面ま

でして」

菜々子「・・・」

静花「・・・・・・その上あなたに八つ当たりまで・・・」

菜々子「どうして、あんな勝負なんて始めたんだよ」

静花「・・・」

菜々子「・・・」

静花「・・・それは」

菜々子「あの子の近くにいたかったんだろ」

静花「・・・!」

菜々子「なにが家柄だよ、一番気にしてるのはあんただろ」

静花「当然・・・じゃないですか・・・切っても切り離せませんもの・・・」

菜々子「静花・・・あんた・・・」

静花「・・・」

菜々子「・・・」

静花「今までさんざんケンカしてきましたけど・・・あなたと再会できて・・・」

菜々子「はぁ!?こんな終わり方で『良かった』なんていうつもりなのかよ!」

静花「・・・」

菜々子「今のあんたがいっちばんムカつくよ!」

静花「・・・」

菜々子「あーぁ、こんな馬鹿な結末になるんならあんたと出会わなければよかった」

静花「・・・」

菜々子「・・・『運命』なんて言葉で片付けて、あの子から立ち去ってさ・・・」

静花「・・・」

菜々子「・・・見込み違いだったね。あんたはもっとマシな人間だと思ってたよ」

静花「・・・」

菜々子「・・・なんで」

静花「・・・」

菜々子「なんで言い返さないんだよ・・・!」

静花「・・・」

菜々子「・・・っ」ブチッ

パァーン

静花「っ!」

菜々子「私は律にも梓にも頼まれてんだよ!」

静花「・・・っ」

菜々子「あんただって澪に頼まれただろ!」

静花「・・・!」

菜々子「こんな別れ方したら、あの子たちも傷つくだろ!」

静花「私が乗り続けていたら事実が知られてしまうではないですか!」

菜々子「なにを怖がってんだよ!」

静花「!」

菜々子「安心しなよ・・・。あんたが一人になったら笑ってやるから」

静花「・・・とんでもない悪人ですわね」

菜々子「ありがとよ」

静花「今のビンタ、一生忘れませんから」

菜々子「はぁ?」

静花「暴力女の称号を取り返したいのですのよね」

菜々子「うるさいよ!あんたの目が曇っていたから覚まさせてやったんじゃないか!」

静花「なんて物の言い草・・・。これだから野蛮人は」

菜々子「・・・へっ、やっと調子が戻ってきたか」

静花「・・・ふんっ」

菜々子「・・・で、どうするんだよ」

静花「・・・」

菜々子「あんたが身を引くってなら、この勝負私の勝ちでいいよな」

静花「・・・」

菜々子「とりあえず、下車することは認めないからな」

静花「でも・・・」

菜々子「それが罰だ」


修治「・・・」

秋子「菜々子さん・・・静花さんの後を追っていきましたけど・・・大丈夫でしょうか」

修治「あぁ・・・、二人はああ見えて結構信頼関係深いんだ」

秋子「そうなんですか?」

修治「うん・・・。昨日酔っ払って帰ってきたときそう感じた」

緑「・・・はぁ」

修治「秋子ちゃん・・・今の流れで溜息ってどういう事?」

秋子「私じゃないですよ?」

修治「え・・・うわっ」

緑「どうして私が行く先々に・・・」

秋子「北上さん・・・」

修治「びっくりした・・・」

緑「・・・なにしてるの?」

秋子「紬さんの後を追って・・・」

修治「・・・」

緑「・・・」



紬(忘れていた・・・なんて・・・)

トボトボ

紬(あんなに大好きな人を・・・忘れてしまっていた・・・)

トボトボ

紬(私を見守ってくれていたのに・・・)

トボトボ

紬(・・・あの頃と変わらず見守ってくれていたのに・・・・・・)

「あんた暗い顔してどうしたの~?」

「俺らと楽しいとこ行こうぜ~」

トボトボ

紬(・・・・・・・・また出会えたのに・・・・・・・・・また別れて・・・)



修治「・・・こんな時にっ!」

ガシッ

緑「まって」

修治「なんだよ!」

緑「今助けたら、あの子・・・あなたに寄りかかるわよ」

修治「!」

緑「あなたはそれじゃいけないでしょ」

秋子「で、でも・・・」

緑「私が行くから、危なくなったら」

タッタッタ

修治「分かった」

秋子「もうそろそろ発車の時間ですよ・・・」

修治「俺が行ったら、秋子ちゃんも北上さんの後を追っていってね」

「なんだ、無視されてんぞ」

「へへ、この子の髪きれいだな・・・触っていいかな」

紬(・・・また・・・別れ・・・た・・・)

トボトボ

「ふへへへ」

バシッ

「いって」

「なんだてめえ」

緑「触らないで」

「お、この子も可愛いじゃねえか」

「ちょうど二人だ・・・」

紬(・・・わたし・・・は・・・)

ガシッ

緑「しっかりしなさ・・・!」

紬「え・・・」

緑「なんて顔してるのよ・・・」

紬「み・・・どり・・・さん・・・」

「よし、4人でどっか行こうぜ」

「キミ達どこへ行きたい?」

「あぶなーい!」

ドンッ

「うわっ」

ゴロゴロゴロゴロ

ドンガラガッシャーン

紬「・・・」

緑「こっち」

グイッ

紬「あっ・・・」

タッタッタ

「てめえ!」

修治「つまづいてしまったよ~」アハハ

「いてて」

「大丈夫か?」

「てめえ・・・覚悟はできてるんだろうな・・・」

タッタッタ

修治(よし・・・)

「おい、今走って行ったのも可愛くねえか?」

「こんなヤツほっといて、行くぞ」

修治「待ってくれ」

グイッ

「げほっ」

「なにすんだコラァ!」

修治「えぇと・・・、最近越して来たばかりで道に迷っててさ」

「てめえ・・・」

「おい、あの子たち行ってしまうぞ!」

「電話しろ・・・」

「あぁ、そうだな・・・」

修治「警察呼ぶのか?」

「馬鹿か・・・、仲間にかけるんだよ」

「あんな上玉もったいねえ」

ピッピッピ

バシッ

「てめえ」

修治「ふざけるな」

「どこまでもおちょくりやがって・・・おらぁ!」

ブンッ

修治「・・・っ」サッ

「あ・・・?」

修治(やべえ・・・もっと集中しないと・・・)

「コイツ・・・、拓の・・・避けやがった・・・」

ポイッ

修治「返すからさ、放っておいてくれ」

拓「・・・」

「へへっ、今更・・・って、バッテリーが無いじゃねえか!」

修治「仲間呼ばれると困る」


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