律「遅い・・・」

唯「・・・」

律「まさか、約束を破るつもりかっ!?」

唯「落ち着きましょうや」

紬「そうね、5分過ぎただけよ」

律「我らの世界で時間を守れないヤツがどんな目にあうか、知らないわけではないだろう!?」

唯「ブツが手に入らなければあっしらも後がないんでやんす」

紬「えぇと・・・そうよ。後がないのよ」

律「・・・焦れってえ!」

唯「焦りは禁物ッス」

紬「・・・唯ちゃん語尾は統一した方がいいと思うの」

唯「どっちがいいかな」

律「ッスがいいな」

唯「分かった。次むぎちゃんッス」

紬「えぇと・・・焦ってボロが出たら水の泡よ」

律「・・・そうだな、頭を冷やすか」

唯「・・・来たッス」

紬「取引開始ね」

澪「こんな所にいたのか」

律「まぁ、座りな」

澪「あ、あぁ」

唯「さぁ、例のブツを出すッス」

澪「兼六園の土産屋で買ったいちご大福だけど・・・今食べる?」

唯「う、うまそうッス」キラキラ

澪「なんだよその語尾」

紬「・・・時間に遅れてきたのはなぜ?」

澪「? 兼六園でのんびりしすぎたから・・・だよ」

律「こっちのブツの確認はしないのか?」

澪「なにか買ってきたのか?」

律「ふふ、見せられねぇなぁ」

唯「そうッスね」ヒッヒッヒ

澪「? どうしてだよ」

律「お前がここで亡き者になるからだー!」

紬「やめて!」

唯「ま、まさか裏切るつもりッスか!?」

澪「え・・・?」

紬「この人は・・・この人は」

律「・・・ふんっ、親子の絆ってやつか」

澪「は?」

唯「・・・二人で仲良くやるッスよ」シクシク

律「・・・じゃあな」

唯「いちご大福はもらっていくッス」

紬「娘よっ」ダキッ

澪「む、むぎ!?」

パチパチパチ

「いいもん見せてもろおたわい」パチパチ

「よかったですねぇおじいさん」

「面白かったわよ~」パチパチ

唯「えへへへ」

律「ありがとー」

紬「うふふ」

澪「説 明 し ろ」ゴゴゴ

律「ただのヒマつぶしだ」

唯「さわちゃん来ないんだもん」

紬「面白かったわ~」

律「むぎが澪を庇ったりするからびっくりしたぜー」

唯「あはは、ほんとほんと~」

紬「りっちゃんだって親子設定にしたじゃない~」

律「親子しか思いつかなかったんだよ~」

唯「難しかったけどなんとかなるもんッスね」

澪「」シュー

唯「あぁ!澪ちゃんが石化したッス!」

紬「あらあら、ふざけすぎたかしら」

律「いや、気が抜けただけだろ」

唯「いちご大福開けていいかな?」

紬「ディナーの後がいいんじゃない?」

唯「そうだね!」

さわ子「あ、いたいた」

律「やっときたか」

唯「おっそ~い!」

さわ子「ごめんね~、秋子ちゃんに捕まってて」

紬「さっき会った・・・?」

律「なんか大変そうだな」

さわ子「ちょっとね・・・」ハハ

唯「疲れてるね~」

さわ子「澪ちゃんはどうしたのよ」

律「そろそろ起きろ」ムニー

澪「・・・は」

律「ったく、世話のかかる」

澪「誰のせいだよ!」

唯「私たちです!」

澪「・・・はぁ」

紬「ごめんね~」

澪「謝らなくていいけどさ・・・」ハハ

律「つかれてるな」

パンパン

さわ子「はい、お遊びはおしまいよ」

唯「おぉ、顧問のようだよ」

さわ子「ちょっとひっかかるけど、まぁいいわ。どこまで話したかしら?」

紬「えーと、みらいちゃんが書いた歌詞をホッチキスのアレンジにのせてライブで演奏する」

唯「・・・あれ、これくらいだね」

澪「ホッチキスをバラードにアレンジするんだよな」

律「あれ?ライブする事しか知らないんだな私ら」

さわ子「よしよし」

律「よくないだろ、練習はどうするんだよ」

さわ子「待って、順番に話すわ」

紬「・・・」

さわ子「ライブ会場は名古屋城」

唯「名古屋だね!」

澪「あ、明日!?」

さわ子「ステージ完備だからキーボード、ドラムの心配無用」

唯「むぎちゃんとりっちゃんは大丈夫なんだね!」

律「ステージで演奏するのかよ!?」

さわ子「アマ中心のバンドが多数参加するゲリラライブだから、飛び入り参加オッケー!」

唯「観客の前で演奏するんだね!」

紬「ゲリラライブですか!?」

さわ子「明日の午前に演奏よ♪」

唯「よぉーし!」グッ

さわ子「曲目は三曲よ。以上」

澪「よし、みんな落ち着こうか・・・」

紬「そうね・・・月でも眺めて落ち着きましょう」

ザーーーーーーー

律「雨降ってるぞ」

紬「あら、りっちゃんには見えないの?」

律「え?」

紬「ほら・・・」

律「あれはガラスに反射した照明だ!むぎがおかしくなった!」

紬「うふふ、キレイね~」

澪「あはは、本当だ~」

ザーーーーーー

律「澪まで現実逃避したぞ」

唯「・・・」グッ

律「一人だけ闘志を燃やしてるし」


さわ子「・・・」ペラッ

律「混乱を招いた張本人が新聞なんか読んでるんじゃねえ!」バシッ

さわ子「あぁ、他地方の新聞は貴重なのよ!?」

律「今はどうでもいい!」

紬「みてみて~、お月様が追いかけてくるわ~」ウフフ

澪「ホントだ~、寂しがり屋なんだな~」アハハ

律「みらいはどうしたんだよ?」

さわ子「練習したいとうるさいからシャワー室に閉じ込めてきた」ペラッ

律「読むなっ!」バシッ

さわ子「あぁ、ひどい!」

唯「みんな・・・お願いがあるんだ・・・」

紬「・・・?」

律「?」

唯「私・・・みらいちゃんに元気をあげたいんだ」

紬「・・・」

唯「みらいちゃんと一緒にいたけど・・・ずっと不安そうで・・・」

澪「・・・」

唯「でも・・・アイドルだから泣き顔は見せられなくて」

律「・・・」

唯「今までずっと、ずっと一人で頑張って来たんだと思う」

さわ子「・・・」

唯「だから・・・ライブでこれからも頑張れるだけの元気・・・ううん、勇気をあげたい」


・・・

コック「なんだ?そこで何を」

車掌「お静かに」

コック「?」

・・・


唯「だから・・・みんなの力を」

律「あー、貸してなんていうなよ?」

澪「わ、私だってみんなと演奏したい」

紬「うん!」

さわ子「・・・」

唯「あ、ありがと・・・」グスッ

律「まだ始めてもいないのに泣くなよ~」

唯「う、うんそうだね!」


・・・

コック「10分後に食堂車に来るように伝えてくれ」

車掌「・・・分かりました」

・・・


律「・・・それで、だ。圧倒的に練習量が少ないんだがどうカバーするんだよ」

唯「そうだよさわちゃん」

さわ子「絆よ!」キラキラ

律「」ポンポン

さわ子「その丸めた新聞紙でどうするつもりよ」

律「叩く」

さわ子「最後まで聞きなさいな。当然技術で競う事なんてできないわ」

澪「・・・はい」

さわ子「一つ聞くけど、あなたたち仙台出発後の演奏では練習をしてたのかしら?」

紬「あずさちゃんと私で一度演奏したくらいですけど」

律「梓はアコギだったよな」

紬「うん」

さわ子「それだけでこの記事に書かれているような内容の演奏が出来れば問題ないわ・・・多分」

律「言い切れよ」

澪「小麦が書いた・・・」

さわ子「この記事がウソや大げさに書かれているなら・・・」

澪「それはありません」

律「・・・」

さわ子「でしょうね」

紬「でもホッチキスのバラードなんてやったこと無いから・・・」

さわ子「そこは唯ちゃんに頑張ってもらうわ」

唯「私?」

さわ子「みらいちゃんのオリジナル曲を何度も聴いているのよね?」

唯「うん!」

さわ子「その一曲だけは唯ちゃんが澪ちゃんを引っ張ってあげて」

律「なるほど」

澪「・・・」

さわ子「澪ちゃんがついていければ全体は纏まるわ」

唯「分かった!」

さわ子「あら」

紬「唯ちゃんやる気ね!」

唯「やーるぞー!」

律「まぁ待て。いくつか教えてよさわちゃん」

さわ子「なにかしら」

律「そのゲリラライブって?」

さわ子「2年間隔で突発的に行われるライブよ」

澪「私たちアマというより素人の部類なんじゃ・・・」

さわ子「そのレベルで素人と言ったら嫌味になるわよ」

唯「おぉ!」

紬「お墨付きね!」

さわ子「プロは出来るだけ参加させないようにしてるらしいわ」

律「どして?」

さわ子「人が集まってくるからよ」

律「人が集まらないとライブにならないじゃん」

さわ子「人が集まるようになったらゲリラライブの開催なんて難しくなるじゃない」

澪「・・・確かに」

さわ子「そのかわり・・・演奏に不備があれば・・・」

紬「・・・」ゴクリ

さわ子「閑古鳥が鳴くわよー!」ギャアアア

澪「」ガクガク

律「こ、怖ぇ・・・」

唯「私たちだって負けないよ、オーラがあるもん!」

律「それ夏フェスでも言ってたな」

さわ子「夏フェスといえば、前回はKAMA☆KIRIも参加したライブなのよね~」

澪「おぉ!」

律「左のギターがいるバンドかぁ」

さわ子「中規模とまではいかないけど、小規模でもないわ」

紬「私たちの他にどれだけのバンドが集まるんですか?」

さわ子「そうねぇ、午前で3、午後で5ね」

律「それは多いのか少ないのかどっち?」

さわ子「多いわよ、突発でこれだけ集めるんだもの」

澪「午後は少ないですよね?」

さわ子「3時で終わりだからよ」

唯「どうしてこのライブを知ってるの?」

さわ子「ふふふ、私の情報網を甘く見ないことね」

澪「さすがさわ子先生」

さわ子「なんちゃってね。会場は今朝、車掌さんに教えてもらったのよ。私は名古屋としか知らなかったわ」

律「さすが車掌さん」

さわ子「飛び入りも受け入れてくれるから今回は空いててよかったわね」

紬「そうですね~」

律「いや、いいのかどうか判断しづらいぞ」

さわ子「まだ3回の開催だけど、プロを目指す人たちには登竜門になってるみたいよ」

律「マスコミなんかも来るのかよ?」

澪「」ボンッ

さわ子「その手の関係者は来るかもしれないけど、商業的な理由の撮影は厳禁なのよ」

紬「どうしてですか?」

さわ子「ルックスだけで拾われたら先行き未確定じゃない」

律「さわちゃん結構ドライだな」

さわ子「でも、一般人の撮影ならオッケーなのよ」フフ

澪「ど、どうしてですか」

さわ子「口コミで広げるためよ」

唯「おぉ」

さわ子「本物の音楽を売り込むには絶大よ」

唯「だからさわちゃんはこのライブイベントを選んだんだね!」

紬「なるほどぉ!」

さわ子「そのとおりよ唯ちゃん!」キラン

律「どういう事?」

唯「だって、みらいちゃんをプロリュースして私たちが演奏できる場所はそこだけだもん」

澪(噛んだな)

律「デュースな、プロデュース」

さわ子「流してあげなさいよ」

律「あ、ごめん。なるほどなぁ、さわちゃん考えてるんだな」

さわ子「運がいいわよあなたたち。今回の会場が松本とか仙台だったらこの企画終わりよ」

唯「それは・・・」チラッ

澪「あぁ・・・」チラッ

律「うん・・・」チラッ

紬「・・・?」

さわ子「そうだったわね」

澪「開催場所は毎回違うって事ですか・・・」

さわ子「そういう事。私は観客として参加する予定だったけどね」

律「しっかし、このヴェガといいゲリラライブといい、面白い企画するヤツって結構いるんだなぁ」

紬「それは神のみぞ知る、ね!」

さわ子「あなたたちの演奏は技術より上まってるものがあるでしょ」

澪「・・・梓も入部した時言ってたっけ」

さわ子「・・・という事だから技術より仲間の信頼関係の方が優先って事。分かった?みらいちゃん」

唯「え?」

みらい「は、はい・・・」

さわ子「ごめんね長々と待たせちゃって」

みらい「いえ・・・」

律「あれ、シャワー室でボイトレしてたんじゃ?」

みらい「シャワー浴びながら練習してたんで・・・のぼせちゃって」

さわ子「いい判断よ」キラン

紬「いつからそこに・・・?」

みらい「えぇと・・・10分前から・・・」

さわ子「私が気付いたの5分くらい前ね」

律「・・・でもさすがに私らも練習しなくちゃまずくないか?」

さわ子「それもそうね」

みらい「あの・・・よろしくお願します!」ペコリ

澪「私たち自身のためでもあるんだ」

紬「そうよ~、私たちがやりたいからやるの」

律「そだぜ~、気楽に行こう気楽にさ~」

さわ子「それはちょっとお気楽すぎるわね~」

唯「よぉーし、みんなやるぞぉー!」

紬澪律「「「 おぉー!! 」」」

唯「ほら、みらいちゃんも~」

みらい「お、おー!」

さわ子「どうして隠れてたのよ」

みらい「大事な話をしてましたので・・・」

唯「よぉーし、さっそくギー太を」

みらい「あ、コックさんからの伝言で食堂車に来てくれとのことです」

唯「待っててね、ギー太」

律「うわー、切り替え早いなー」

澪「朝市の魚かぁ」

さわ子「楽しみね~」ルンルン

紬「そうですね~」ランラン


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