・・・・・・
・・・
車掌「あら?どうなされたのですか?」
紬「車掌さん、この方間違えて乗ってしまわれたみたいです」
「・・・あの、私キップを持っていないのに乗ってしまって・・・」
車掌「列車を間違えてしまったのですね?」
「えっ、えぇ・・・本当にすみません」
車掌「・・・わかりました。とりあえず、お名前を教えてもらえますか?」
「は、はい千歳さとみといいます」
車掌「千歳さんですね。じゃあ4号車の空席でお待ち下さい。連絡を入れて次の駅の停車時間を調べてまいりますから」
さとみ「すみません、ご迷惑をおかけします」
唯「むぎちゃーん、どこ行ってたの~」
律「急に居なくなるからびっくりしたぜ~」
紬「ごめんねみんな」
澪「あ、そちらの方は・・・?」
さとみ「ち、千歳さとみといいます」
憂「東京から乗っていらしたのですか?」
紬「そうなの」
さとみ「で、でも次で降りますから」
唯「ん~?どういう事?」
紬「列車を間違えてしまったらしいの」
律「そそっかしいのぅ~」
澪「初対面の人に失礼だろっ」
紬「私たち向こうの席に座ってるわね」
律「おっけ~」
唯「え~」
憂「お、お姉ちゃん・・・」
澪「じゃあ、むぎ後でな」
紬「えぇ」
さとみ「・・・」
紬「こちらでいいかしら?」
さとみ「はい・・・。グループで旅行してるのですか?」
紬「はい、学校の部活仲間です」ニコニコ
さとみ「うらやましいな・・・そういうの」ボソッ
紬「・・・?」
さとみ「ごめんなさい、迷惑かけっぱなしで・・・えっと、むぎさん・・・でいいですか?」
紬「えぇ」ニコニコ
さとみ「ごめんなさいせっかくの旅行中なのに変なことに巻き込んでしまって・・・」
紬「いいえ、発車したばかりですから時間を持て余していました」
さとみ「むぎさんはどこまで行くんですか?」
紬「この列車が行くところまでです!」
さとみ「こ、この列車って日本縦断する列車でしょ?じゃあ・・・」
紬「そういう事です!」フンス!!
さとみ「そ、そうなんですか・・・」
紬「でも、気が向いたら途中で降りちゃってもいいかな~と・・・」
さとみ「・・・あてのない旅ね、憧れるなそういうの」
紬「やろうと思えば誰にでも出来ると思いますけど・・・」
さとみ「そうかな・・・そんなことないと思うけど」
紬「それでしたら、いっそこのまま旅に出ちゃうのはどうかしら」
さとみ「え!?」
紬「新鮮な体験ばかりで楽しいですよ」ニコニコ
律「そうそう!親の目もないし!」
紬「りっちゃん」
さとみ「ふふ、楽しそうですね」
澪「こーら、話の邪魔をしない」グイッ
律「あ~れ~」ズルズル
さとみ「ふふ、本当にいいかもしれませんね。あっ」
紬「どうしました?」
さとみ「今、私の家の周りを通ったの。電車からみたらこんな風に見えるんだ・・・」
紬「不思議な感じがしますよね」
さとみ「えぇ・・・なんか、家から離れていくとドキドキする」
紬「きっと、旅に出たいのですよ」キリ
唯「あ、むぎちゃん、今のあずにゃんみたいだったよ~」
紬「うふふ」
さとみ「あず・・・?」
澪「こーら、話の邪魔をしない」グイッ
唯「あ~れ~」ズルズル
さとみ「・・・旅に出たい・・・のかな・・・」
紬「この旅は私にたくさんの出会いをくれました」
さとみ「・・・」
紬「とても大切なものが見つかるかもしれませんよ」ニコ
憂「私もさっそく見つけましたよ!それはつむぎちゃんです!」
紬「唯ちゃん、髪を結ってもヘアピンを取らなきゃすぐ分かるわ」
唯「あ・・・」
律「しまった!」
澪「こぉらぁあ、いい加減にしろー!」ゴスッ
律「あいたぁ!」
澪「まったく・・・」グイッ
唯「あ~れ~」ズルズル
律「なんで私だけ・・・」グス
さとみ「うふふ、本当にたのしそう」
紬「楽しいのは保証しますよ」ニコニコ
さとみ「ふふ・・・ねぇ、むぎさんはどうして旅に出たの?」
紬「えっ・・・旅に出た理由・・・ですか・・・」
車掌『お客様の千歳様、準備が出来ましたので車掌室にお越し下さい』
さとみ「あっ・・・私、行かなくちゃ。ごめんなさい変な質問しちゃって
気にしないで楽しい旅を続けて下さい。それじゃ」
紬「はい、千歳さんも気をつけて・・・」
さとみ「ありがとう・・・」
紬「・・・」
唯「むぎちゃーん、こっちにきて~」
紬「な~に?」
修治「はいこれ」ペラ
紬「あら・・・?」
律「なにー?」
憂「・・・?」
紬「新聞ね」
澪「伊東さんが書いたやつ?」
唯「どうして修治くんがもってるのー?」
修治「小麦に頼まれたんだ。『コンビ二で2部コピーしたから軽音部のみんなに一枚渡して、一枚売店に貼って』って」
憂「新聞?」
唯「私たちね~演奏したんだよ!走る列車の中で!」
律「私は写真付きでも構わなかったけどな~」
澪「あの時と言ってる事が違うだろ」
紬「ふふ、小麦さんの記事面白いわよ。読んでみて憂ちゃん」
憂「あ、はい・・・」フムフム
唯「どれどれ~」
律「読み終わったら私に!」
澪「私も読みたい・・・」
憂「演奏時の内容が巧く表現されてて、記事を書いた方の印象が伝わってきます」
修治「うん、小麦の意外な才能の一つだね」
澪「へぇ~」
憂「自己紹介まで詳しく書かれてますよ」フムフム
律「! それは読んじゃダメだ!」
憂「あ・・・、律さんごめんなさい・・・読んじゃいました」
律「・・・」カァァ
澪「なかなか捨てられないみたいだな」ププ
唯「ふむふむ『部長の自己紹介が衝撃的だ“辞書の最初の頁の言葉が大好き!あこがれています!ズバリ愛!!”』」
律「音読するなぁ!」
唯「『エネルギー溢れる人物だが、意外と乙女な一面もあるようだ』」
澪「ププッ」
紬「うふふ」
修治「あは・・・は・・・」
律「あー、よかった。写真載ってなくて」フゥ
澪「さっきと言ってる事ちがうだろっ!」
「あの・・・」
修治「あ・・・」
律「?」
唯「あ!」キラキラ
「東京のイベントでお会いした方ですよね・・・」
憂「?」
修治「もしかしてアイドルのえぇと・・・」
唯「みらいちゃん!」キラキラ
憂「えっ・・・?」
澪「え・・・?」
みらい「はい。飯山みらいです」
唯「うい!私芸能人に顔を覚えてもらったよ!」
憂「あの飯山みらいさんですか?」
みらい「はい・・・そうです」
律「だ、誰だ・・・?」ヒソヒソ
澪「アイドルの飯山みらいだよ。知ってるだろ?」ヒソヒソ
律「私の知ってる飯山みらいは、もっとはっちゃけた印象なんだけど?」ヒソヒソ
澪「確かに。東京駅のイベントとは雰囲気が全然違うな」ヒソヒソ
みらい「唯さん、先ほどはすいませんでした。初めて会った方なのに失礼な口の利き方をしてしまって」
紬「・・・」
唯「いいよ~、あれはイベント中の事なんだし~」
憂「・・・」
みらい「そう言って頂けると助かります。本当にすいませんでした」ペコリ
唯「あれ?みらいちゃんは一日車掌の仕事中じゃないの?車掌の仕事はどうしたの~?」
みらい「今は休憩時間なんです」ニコ
澪(か、かわいい・・・)
律「そうだよな~、本物の車掌さんみたいにずっと働くわけ無いもんな」
修治「まぁ、そうだよね」
唯「そうなの?」
みらい「えぇ・・・本当はそんなんじゃいけないんですけど・・・仕事上どうしてもこうなってしまうんです」
紬「イベントで見かけた時と雰囲気が違いますね?」
修治「まるで、別人みたいだ・・・」
澪「・・・」ウンウン
憂「・・・」
みらい「そうですよね・・・。唯さんはどちらの私がいいと思います?」
唯「ん~・・・、私は両方のみらいちゃん好きだよ~?」
みらい「・・・!」
律「結構真面目な質問だぞ唯~」
唯「えー、みんなに元気を与えるステージ上のみらいちゃん。今の素直な感じがするみらいちゃん。どっちも好きだもん」
みらい「そんなこと初めて言われました・・・」
憂「お姉ちゃんはみらいさんのファンですから」
律「私は今のみらいがいいな!」
澪「私も・・・」
修治「・・・」ウンウン
紬「うふふ」
みらい「良かった。分かる人には分かるんだ・・・」
唯「? なんの話~?」
みらい「い、いえ。なんでもないです」
「んっふふふふふふふ・・・」
律「な、なんだ・・・」
修治「この気持ちの悪い笑い声は・・・」
「ずいぶん楽しんでいるようだね・・・みらい」
みらい「あっ・・・」
律「な、なんだおまえは・・・」
「僕は、みらいのマネージャーをしている望月将人。ファンならファンらしく節度を持って欲しいんだよ」
唯「?」
律「・・・」ムカッ
修治「・・・」ムカッ
将人「言ってる意味ぐらい分かるだろ?」
唯「ん~?」
将人「さぁ、休憩時間は終わりだ。行くぞみらい」
みらい「はい・・・私仕事がありますのでこれで失礼します」
澪「・・・」
律「なんだアイツ」
修治「・・・」
唯「ど、どうしたのみんな・・・?」オロオロ
憂「なんでもないよ、気にしないで」
紬「あ、そうだわ。松本の観光ガイド買わなきゃ」
修治「あ、俺も売店にこの新聞をもって行くんだった・・・。じゃあね」
スタスタ
律「それじゃ、私たちはどうしようか」
澪「むぎ、観光ガイドって売店でいいんだよね?」
紬「えぇ、そうよ」
澪「買いに行こうよ律」
律「そうだな」
紬「あら、いいの?」
澪「うん、むぎは座ってて」
律「行ってくる」
唯「うん・・・。そうだ!車掌さんにお礼を言わなきゃ!」
紬「そうね。今なら大丈夫だと思うわ」
唯「そんじゃ行って来ます」
憂「私も行くよ」
唯「一人でいいよ~、ういは座ってて~」
憂「・・・分かった」
唯「ではっ」
紬「うふふ、行ってらっしゃ~い」
憂「・・・」
紬「松本ね・・・」
憂「あの、紬さん」
紬「なにかしら~」
憂「お姉ちゃんは大丈夫でしょうか?」
紬「?」
憂「その・・・つばささんと別れた時のお姉ちゃんを見たら少し不安になってしまって」
紬「ふふ、憂ちゃんが思っている以上に唯ちゃんは強いわ~」
憂「そ、そうなんですか?」
紬「えぇ、私も助けられてるもの」
憂「お姉ちゃんが・・・」
紬「心配いらないわ」
憂「それを聞いて安心しました。・・・もう一ついいですか?」
紬「なぁに?」
憂「星奈さんってどういう人なんでしょうか?」
紬「気になる?」
憂「は、はい」
紬「それなら百聞は一見にしかず・・・ね」
憂「え・・・」
星奈「よっ、むぎちゃん」
憂「あ・・・」
紬「荷物の整理は終わりました?」
星奈「うん、大した量じゃないからね~。ここ座っていい?」
憂「はい、どうぞ」
星奈「しっつれい~」ドサッ
紬「・・・」
星奈「ふむふむ」ジロジロ
憂「あ、あの・・・?」
星奈「むぎちゃん」
紬「はい」
星奈「どうしてむぎちゃんの周りには可愛い子が集まるの?」
憂「そ、そんな・・・」モジモジ
紬「どうしてかしら?」クスク
律「観光ガイドねぇ・・・」
澪「あぁ、梓の勧めだから買っておいて損はないと思うぞ?」
律「そうだなぁ」
キャアア
澪「?」
律「な、なんだ?誰かこっちにくるぞ」
ダダダダダ
愛「あっ!」
澪「愛さん!なんて格好をっ!」カァァ
律「おぉ、タオル一枚とは・・・」
愛「ご、ごめんなさい!」
ダダダダダ・・・
澪「行ってしまった・・・」
律「シャワー室でなんかあったのかな」
車掌「あら秋山さんに田井中さん」
修治「・・・」
澪「しゃ、車掌さん」
律「と、え~と、鳥羽修治さんだっけ?どうしたの?」
車掌「シャワー室の設備にトラブルがありましたので修理の為に来たのですが」
修治「・・・」カァァ
澪「?」
律「?」
車掌「使用禁止の張り紙が剥がれてしまったために、松浦さんが使用してしまったみたいなのです」
澪「・・・」
車掌「蛇口が壊れて水が止まらなくなり、松浦さんの悲鳴を聞いて駆けつけた鳥羽さんが水を止めてくれたのですが・・・」
修治「いや、その・・・」カァァ
律「鳥羽さ・・・あ~もぅ、修治でいいや。修治はさっきからなんで顔が赤いんだよ?」
修治「愛ちゃんと話をしているときに・・・その・・・タオルが・・・」カァァ
澪「・・・?」
律「あ~、そういう事か」
車掌「困っている鳥羽さんが私にご相談なされたという形です」
律「なるほどねぇ」
澪「・・・」
修治「悪いことしちゃったな」
律「まぁ、不可抗力なんだろ?しょうがないって。愛ちゃんはショックだっただろうけど」
修治「だよなぁ・・・」ハァ
車掌「私はこれから料理長を呼んでシャワー室を修理しなければいけませんので、
松浦さんの件は田井中さんと秋山さんにお願いしてもよろしいでしょうか?」
澪「わ、私達がですか?」
最終更新:2011年09月13日 15:51