真美「一応、下書きは終えたのでお礼をと思いまして」

紬「まぁ!」

唯「出来たのっ?見せて見せて!」

澪「おい、唯・・・」

律「本当は自分も見たいくせに~」

澪「そうだけど・・・」

真美「これから仕上げてくるので少し待っててもらえますか?」

梓「はい!」

紬「えぇ」

真美「みなさん、協力してくれてありがとうございました」ペコリ

律「いえいえ~」

唯「なんのこれしき~」

澪「なにもしてませんけど」

真美「それでは・・・」

スタスタ

梓「・・・」

紬「・・・」

梓「もうそろそろ東京ですね・・・」

紬「・・・そうね」

唯「あっずにゃん!」ダキッ

梓「な、なんですかっ」

唯「東京でどこ観光するか決めた~?」

梓「ま、まだですが・・・」

唯「それなら決めようよ~」

梓「ふふ、そうですね・・・」

紬「私も混ぜて~」

律「おぉ、梓いいモン持ってるじゃん!」

梓「観光ガイドです。売店で購入できますよ。観光地へのアクセス方法もあって便利です」

澪「へぇ~」

律「いいのがあるぜ!その名も後楽園遊園地!」

唯「みんなで行こうよ!」

紬「いいわね~」

澪「やれやれ・・・」

エレナ「ハァ~イ、みなさん。ごきげん麗シュウ~」

唯「ハロー」キリ

律「おいーっす」

澪「あ、エレナさん。伊東さんは一緒じゃないんですか?」

エレナ「小麦は今部屋にこもって新聞を制作していますネ」

紬「新聞ですか?」

エレナ「エェ、そうですワ。先ほどの演奏を記事にすると張り切っていましたカラ」

梓「わ、私たちの演奏を記事にするんですか?」

エレナ「ハイ、小麦は学校で新聞部に所属していますカラ心配ないですヨ~」

律「いやいや、そうじゃなくてだな。私たちの事を勝手に記事にされると困るんだけど」

澪「・・・」

エレナ「オー!ごめんなさいネ。ショウニンを取るのが遅れてしまいました」

唯「いえいえ、お気になさらず」キリ

澪「しゃ、写真とか載せますか?」

エレナ「今回は私のビデオカメラから抽出できませんから、載せることは出来ないですネ」

澪「そうですか、それなら問題ないと思います」

律「澪!?」

澪「車内放送で流れたんだから、今更記事にした所で気にする事ないだろ?」

唯「そうですね、澪さん」キリ

律「そ、そりゃそうだけど」

エレナ「よろしいのですカ?」

梓「私も問題ありません」

紬「そうね~」

律「・・・」

澪「律・・・?」

律「あー、もう分かったよ!煮るなり焼くなり好きにしろぃ!」

澪「部長の許可が下りたので大丈夫です」

エレナ「本当に申し訳ないネ」

澪「気にしないでください」

紬「どんな記事になるのか楽しみね~」

唯「ふっふっふ。ついに私達が新聞の一面に躍り出る日が来たんだよ、みんな!」

エレナ「発行部数一部ですけどネ」

唯「えぇー」ガーン

律「わ、私の心配を返せー!」

梓「そうじゃないかと思ってました」

澪「エ、エレナさん、さっきから気になってたんですけど。そのカメラ録画してないですよね」

エレナ「ハイ、構えているだけで回してないネ」

唯「な~んだ、私意識してたのにぃ~」ガッカリ

律「変な口調とやたらすました顔をしてたのはそういう理由か」

唯「みんな録画されてない事に気付いてたの!?」

梓「カメラの赤いランプ点いてないですから、気付いてました」

澪「あぁ、不安はあったけど」

紬「えぇ」

律「うん」

唯「私そんな事知らなかったよ・・・」

澪「いつも持ってるんですか?」

エレナ「エェ、このカメラで世界中を撮る事が私の夢ネ!」

律「おぉ」

梓「すごいです・・・」

エレナ「ユイさん、撮りましょうカ~?」

唯「・・・ちょ、ちょっと待ってて。あずにゃん私の髪型おかしくない?」

梓「はい、鏡をどうぞ」

唯「よしよし。お、オッケーだよ」キリ

紬「うふふ」

エレナ「カメラまわしますヨ~。3,2,1,スタート!」

唯「・・・ほ、ほったいもいじるなー?」キリ

梓「カメラに時間聞いてどうするんですか!」

律「グフッ」

澪「ププッ」

エレナ「只今の時刻は11時55分ですヨ」

梓「答えるんですかっ!?」

紬「あらあら」

エレナ「オー!間も無く東京ですネ。ワタクシ小麦の所へ行きますワ。・・・それと部長サン」

律「なに?」

エレナ「許可してくれてアリガトネ。それではグッバーイ!」

唯「グッバーイ!」

梓「感化されないでください」

律「・・・」

紬「私達も降りる仕度しましょうか」

唯「イエース」

梓「そうですね」

唯「アズニャン、ヒアウィーゴー」

律「みお~」

澪「なんだ?」

律「新聞の件だけどさ。写真使ってたとしても記事にする事賛成にまわってたんじゃないのか?」

澪「そ、それは・・・。た、多分」

律「ふ~ん」

澪「なに?」

律「いや・・・べつに~」

澪「先に行くぞ?」

律「人見知りのおまえが珍しいなと思ってさ」ボソッ

紬「うふふ」

律「あ、聞こえた?」

紬「えぇ。私も澪ちゃんが記事をすんなり受け入れたからびっくりしてたの」

律「出会ったばかりで気を許せるなんて、仙台でなにがあったんだ~?」

紬「気になる?」

律「へへ、ちょっとだけな。私らも観光の準備しとこうぜ」

紬「そうね~」

ガタンゴトン ガタン ゴトン  

プシュー

「よっ」ピョン

シュタッ

「ビバ!東京!!」

梓「それはイタリア語です。それにちょっと意味が分かりませんよ唯先輩」

唯「え~、そんな気分なんだよ!」

律「辿り着いて『万歳!東京!!』って、いつから憧れていたんだよ。ほら、唯がどいてくれないと私達が降りられないだろ?」

唯「すいやせんね~、えへへ」

澪「凍狂・・・」ビクビク

紬「大丈夫よ澪ちゃん」

澪「そ、そうだよな・・・」ビクビク

律「しゃーない。私たちから離れるなよ澪?」

澪「う、うん」

梓「あ・・・」

紬「・・・」

唯「どうしたの、あずにゃん?」

律「・・・あそこにいるのは車掌さんと・・・真美ちゃんだな」

梓「・・・」タッタッタ

紬「まって、あずさちゃん」タッタッタ

唯「あ、そっか。まって~」

律「どうしたんだ?」

澪「桜井さんヴェガを降りるんだよ」

律「だから荷物も持ってるのか」

澪「私達も行くぞ」

律「おぅ!」


車掌「忘れ物はございませんか?」

真美「は、はい。・・・これ、乗車証です」

車掌「はい。確かに」

紬「桜井さーん」

梓「桜井さん!」

唯「真美ちゃーん!」

真美「あ、みなさん・・・まだ観光に出ていなくて良かったです」

紬「まだ、挨拶していませんもの」

梓「そうです」

唯「お別れの挨拶してないよ~」

真美「そうでしたね。私も渡さなきゃいけないものがありました」

車掌「・・・」

澪「・・・」

律「・・・ふぅ」

唯「りっちゃん運動不足ですなぁ」

律「息切れしたんじゃないぞ。一息だ一息入れただけだ」

真美「こ、これが課題に協力してくれた絵です」

紬「まぁ~」

律「どれどれ~、おぉ!」

澪「こんな風なのか私たち・・・」

梓「わぁ・・・」キラキラ

唯「私、絵の事なんて全然分からないけど、凄く好きだよこの絵!」

紬「私も・・・」

車掌「みなさんの雰囲気がよく描かれていると思います」

真美「あ、ありがとうございます。これで自信をもって学校へ通えると思います」

紬「力になれたようでよかったです」

律「この絵いいなぁ、部室に飾りたい・・・」

澪「提出するものだぞ」

真美「す、すいません・・・」

唯「真美ちゃん・・・例のブツを・・・」イッヒッヒ

梓「?」

真美「は、はい。琴吹さん、どうぞ」

紬「まぁ」パァァ

梓「あ、あれ・・・、これって」アワワ

唯「おぉ~」

車掌「妹のうたた寝を見守る姉、その二人を優しく包むオレンジの光・・・。文字通り絵になりますね」

真美「・・・」テレテレ

律「これは・・・展望車・・・だよな」

澪「これが札幌と函館の間に描いた絵なんだな」

紬「そうなの。あずさちゃんごめんね。黙ってて」

梓「む、むぎ先輩・・・」

律「へぇ~」

唯「あずにゃんの寝顔可愛い~」

梓「寝ていた所を写真で撮られるよりはいいですけど、ちょっと恥ずかしいですね」テレッ

真美「す、すいません」

梓「い、いえ。この絵好き・・・です」

律「いいなこの絵も。なんか暖かい感じだ」

澪「写真より伝わってくるものがあるな」

真美「そう言ってくださると嬉しいです」

唯「額縁に入れて部室に飾って置くよ~」

梓「だ、ダメですよ!」アセアセ

紬「ありがとう、桜井さん。いい旅の思い出が出来ました」

真美「い、いえ。お礼を言うのはこっちです。・・・わ、私。東京へ引越しが決まってから不安でいっぱいでした」

車掌「・・・」

真美「稚内からヴェガに乗車して、どんどん地元から離れる度に不安で押しつぶされそうだったんです」

梓「・・・」

真美「羊が丘展望台でスケッチしても思うように描けなくて、東京へ行く意味を失いかけていたんです」

唯「真美ちゃん・・・」

真美「展望車で二人を見かけた時、この瞬間を絵にしたいって思えたんです」

澪「・・・」

真美「もっと巧く表現したい、もっともっと絵の事を知りたいって・・・思えたんです・・・」

律「・・・」

真美「この絵に出会えなかったら今の私はいません。だからお礼を言うのは私なんです」

紬「・・・」

真美「琴吹さんに出会えてよかったです。ありがとうございました」

紬「・・・はい」

唯「うぅ・・・」ボロボロ

梓「なんで唯先輩が泣いてるんですか。ハンカチ使って下さい・・・」

唯「ありがと、あずにゃん・・・」ビィィイイ

梓「鼻かんだ・・・、お約束ですよね」

律「なにやってんだよ、いい話なのに・・・」

澪「ふふっ・・・」グスッ

真美「クスクス」

車掌「・・・」

梓「桜井さんとたくさん話が出来てよかったです」

真美「わ、私もです。ありがとう中野さん」

唯「真美ちゃんと・・・観光回れて・・・楽しかったよ」グスッ

真美「唯さんとの観光巡りはとても楽しかったです。ありがとうございました」

紬「桜井さん」

真美「はい」

紬「私、忘れません。桜井さんと出会えたこの旅を」

真美「はい!」

車掌「・・・」

真美「お世話になりました」

車掌「当特急ヴェガへのご乗車誠にありがとうございました」

真美「それでは、私はこれで・・・。みなさんこれから先も気をつけてくださいね」

紬「えぇ・・・」

梓「桜井さんお元気で」

澪「元気でね」

律「頑張ってな!」

唯「真美ちゃん元気でね」

真美「はい、みなさんもお元気で。・・・さようなら」

紬「さようなら・・・」

律「むぎと真美ちゃんが笑顔で別れたんだからさ、唯も笑顔出そうぜ」

唯「ぅっ・・・うぅ・・・」ボロボロ

紬「唯ちゃん、元気だして」

唯「だって・・・『さようなら』って言葉が・・・こんな・・・に重いなん・・・って思わなかったん・・・だもん」グスッ

梓「唯先輩・・・」

澪「うっ・・・」グスッ

律「澪まで~、真美ちゃんの門出でもあったんだぜ?悲しんでいたらダメだっ!遊園地行ってパァーッと遊ぶぞー」

紬「そうね、りっちゃん!」

梓「そうですね」

律「ほら~、あと二人の声が聞こえないぞ~」

澪「うん、もう大丈夫」

唯「うん・・・」

律「あー、唯はこのままでは外あるけないな。梓、悪いけど唯と一緒に洗面所行って来てくれないか?」

梓「はい、唯先輩行きましょう」

唯「うん」

トボトボ

律「・・・ふぅ」

澪「なんだ、律もか」

律「へへっ、唯の言葉でちょっと危なかった」

紬「りっちゃん・・・」

澪「はい、ハンカチ。二人が戻ってくる前に拭いとけ」

律「イラねーやい!」

紬「ふふ」

澪「・・・むぎは強いな。桜井さんとは一番仲がよかったのに・・・」

紬「みんなが居てくれるからよ・・・。支えてもらってるもの」

律「へへっ、よーし!一番最初はジェットコースターだな!」

澪「嫌だっ!」

律「ちっ、勢いでオー!と言わせることができると思ったのに」

紬「それならスカイフラワーはどうかしら」

澪「安心できる名前だな。怖くない?」

紬「えぇ、高さ60mくらい上がるけど大丈夫よね?」

澪「だ、大丈夫」グッ

律「じゃあさ、ヴィーナスラグーンはどうだ?」

澪「うん、それも平気そうだ」

紬「いいの?メリーゴーランドよ?」

澪「律っ!」

律「じゃ何がいいんだよ~」

澪「か、観覧車とか」

律「へぃへぃ」

澪「聞いといてその反応はないだろっ」

紬「まぁまぁまぁ」

梓「おまたせしました」

律「おぅ、唯は・・・」

唯「おまたせ!」

律「うん、大分スッキリしたみたいだな」

梓「顔を洗ったら気持ちを切り替えられたみたいです」

紬「よかったわ」

澪「うん・・・」


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