――――

つばさ「・・・」

梓「つばさ、隣いい?」

つばさ「あ、梓さん。どうぞ~」

梓「今日のお昼には東京に着くから、あと1時間半で水戸だね・・・」

つばさ「うん・・・。札幌からあっという間だったよ~」

梓「つばさ、今の気持ちのまま結婚式に参加して勝さんを祝福できる?」

つばさ「ど、どうしたの急に? もちろんだよ!私のお兄ちゃんだもん!」

梓「じゃあ、どうしてそんな顔してるの?」

つばさ「そ、それは・・・」

梓「・・・寂しいんじゃないの?」

つばさ「な、なによっ!知った風な口聞かないでよ!」

梓「ごめん。でもね、鳥羽さんやむぎ先輩を兄代わりにしているつばさは二人に対して失礼だと思うよ?」

つばさ「っ!」

梓「昨日、私もむぎ先輩に甘えてみてなんとなく分かっちゃった。私に姉がいたらこんな感じなのかなぁって」

つばさ「・・・」

梓「甘えられる人が居るって幸せなことなんだなぁって」

つばさ「だ・・・だって、・・・だって、勝お兄ちゃんが・・・」

梓「うん・・・」

つばさ「いつも・・・私を見ていてくれた勝お兄ちゃんが・・・居なくなっちゃうと思ったら、悲しくなってきて」

梓「うん」

つばさ「嫌なんだもん・・・いなくなっちゃうの嫌なんだもん」グスッ 

梓「いなくならないよ。いつまでも勝さんはつばさのお兄ちゃんだよ」ナデナデ

つばさ「・・・ほんと?」グスッ

梓「うん。保証するよ。こんな可愛い妹をほったらかしにして、自分だけ幸せになろうなんて人はいないよ」

つばさ「・・・」グスッ

梓「だから、つばさも大好きなお兄ちゃんを祝福してあげようね」ナデナデ

つばさ「・・・うん」

梓「それじゃあ、30分後に展望車に来て」

つばさ「唯さんが言っていたライブ・・・?」

梓「うん、つばさにも聞いてほしいからさ」

つばさ「うん」

梓「色々キツイ言い方してごめんね」

つばさ「ううん。私の気持ちを掬い上げてくれたんだよね」

梓「そう言ってくれると私も嬉しいかな」

つばさ「今は気持ちの整理をしなくちゃね・・・」

梓「あ、顔洗って来なよ?涙で可愛い顔が台無しだよ」

つばさ「梓さん、そんな事いう人でした?」

梓「つばさの前だけだよ、それじゃ後でね」

つばさ「うん!」

・・・

つばさ「勝お兄ちゃんのためにも・・・」


――――

ダン ダンッ スタダンダダンッ

澪「おい、律!」

律「いやぁ~悪い悪い、つい叩いてしまった」

コック「まだ時間じゃねぇから抑えておけデコちゃん」

律「へい! ってデコちゃんて・・・」

澪「ス、スイマセン!」ガクガク

唯「澪ちゃん、コックさんは悪い人じゃないから大丈夫だよ~」

コック「ガッハッハ」

唯「ガッハッハ~」

律「唯は誰にでも馴染むの早いよな~」

コック「嬢ちゃん達良い楽器使ってるじゃないか」

澪「ア、アリガトウゴザイマス」

唯「ギー太はみんなで買ったようなもんだからね~、私の大切な人なんだ~」ムフフ

律「人じゃないけどな」

唯「でも澪ちゃんがエリザベスを連れてきたのは驚いた~」ビックリ

律「ギー太連れてきたお前がいうな」

澪「だって、律が持っていくのかって聞くから・・・」

律「聞いただけだも~ん」

澪「なっ!?」

唯「まぁまぁ」

コック「よし、ロングの君、ちょっと鳴らしてくれ」

澪「ろ、ロング・・・は、はい」

デーン

律澪「「 おぉー 」」


車掌「準備のほうはできましたか?」

澪「あ、車掌さん」

唯「車掌さん!ありがとうございます!」オジギッ

律「ドラムまで用意してくれて、ありがとうございます!」

車掌「いえいえ。しかし、ギターの方がアコースティックギターになってしまいました。申し訳ありません」

唯「いえいえいえいえ、ここまでしてくれたのに悪いことなんて一つもありません!」

澪「そうです。ありがとうございます」

車掌「みなさんにいい旅を提供するのが私どもの務めですので」

律「おぉ」

コック「そういうこった。唯、鳴らしてみてくれ」

唯「あいよ~」

ギュィイィン

コック「次はマイクだ」

唯『コホン。マイクテス、マイクテス。え~本日は晴天ですか?』

律「見りゃ分かるだろ?」

唯『晴天でした~』エヘヘ

コック「こんなもんだな」

唯「音は抑えてあるんだね~」

澪「場所せまいし、防音設備がないからな」

車掌「えぇ、早朝ですので今回は控えめに調整させてもらいます。それと要望なんですが」

律「なんでしょう?」

車掌「前回好評でしたのでクラシックの演奏を必須で一曲お願します」

澪「前回?」

唯「おっけ~、むぎちゃんのオンステージだね」

車掌「展望車の貸切状態となりますので使用時間は15分程度となります」

律「はーい!」

車掌「提案なのですが、クラシックの演奏だけでも車内放送で流してもよろしいでしょうか?」

律「ほぉ」

澪「それならむぎに確認とらないとな」

車掌「かしこまりました。後ほど琴吹さんご本人に確認させていただきます。それでは開始時間は9時でよろしいですか?」

律「オッケーだぜっ!」

車掌「それでは私はこれで失礼します。みなさん頑張ってくださいね」グッ

唯「はい!」グッ

梓「はい!」グッ

律「最後のグッってやつ可愛かったな」

澪「あぁ・・・。って梓いつの間に!?」

律「コックさん、一つ聞きたいんだけどさぁ」

コック「あぁ、なんだ?」

律「このドラムも含めてなんだけど、車掌さんが上司・・・でいいのかな?その人に承諾を取って準備してくれたって事だよね?」

コック「あぁ、さすがにこのイベントを車掌の独断だけでは実行できないからな。上に許可をとったんだ」

澪「よ、よく許可が下りましたね」ビクビク

コック「そうだな、だが列車を日本縦断させようって連中なんだ。試しの企画でもやってみる価値はあると判断したんだろうよ」

梓「そうだったのですか」

コック「もちろん他の客のリアクションが不評ならこれで終わりだがな」

澪「うぅ・・・」ガチガチ

唯「澪ちゃん、大丈夫だよ~むぎちゃんの演奏すごかったんだから!」

梓「車掌さんとコックさんに感謝しないといけませんね」

コック「感謝なんぞいらん。乗客が旅を楽しんでくれればそれでいい」

唯「おぉ」ビリビリ

律「しびれるぜ」ビリビリ

コック「梓、最後にアコギの調整だ」

梓「はい!」

律「てか、今までどこへ行ってたんだよ~」

梓「野暮用ですよ」

律「ふ~ん」

澪「むぎは・・・?」

唯「ん~? むぎちゃんならみんなを呼びに行ってるんじゃないかな~」

コック「鳴らしてくれ」

梓「はい」

デン デ デン

コック「どうだ?」

梓「いい感じです」

律「みんな?」

唯「友達みんなだよ~」

澪「あぁ、あのメンバーか」

律「前回の演奏会ってなんだ?」

梓「私とむぎ先輩でドビュッシーのアラベスクを演奏したんです。その後にむぎ先輩のソロでキラキラ星を」

コック「わしも聴きたかったぞ」

唯「うむ。素晴らしかったぞ」

澪「真似するなっ」ビクビク

律「へぇ~、色々なことしてたんだな~」

梓「・・・そう、ですね」

澪「私もむぎのアラベスク聴きたかったなぁ・・・」

律「アスパラ・・・?」

澪「どんな聴覚してんだよ」

梓「・・・」

唯「・・・あずにゃん?」

梓「えっ・・・なんですか?」

澪「急に静かになったから・・・どうした?」

律「怖気付いたかぁ」

梓「そんなんじゃないですよ!ただ・・・、始発から今までたくさんの事があったんだなぁって思って」

コック「・・・」

唯「あずにゃんはずっとむぎちゃんと一緒だったもんね~」

梓「えへへ、私も東京で降りるから少し感傷的になったみたいです」

コック「旅は人生の縮図って言ってな。目的地に着いたらそこが人生の終着地点みたいなもんになったりするんだ。
    旅の途中で出会った景色、人達をみんな大切に胸にしまってけ」

梓「はい!」

唯「うん!」

澪「・・・」

律「・・・」

コック「ガッハッハ、説教染みていかんな。演奏聴けないのは残念だが、頑張ってくれよ」

唯「任せて!」フンス!

梓「張り切って行きます!」

律「んー・・・前半がイマイチ理解できなかったんだが・・・。唯と梓は分かってるみたいなんだよなぁ」

澪「私達はこれから分かるんじゃないか?」

律「そうなんかねぇ。あの二人、特に梓を見てると自信ないなぁ」

澪「あぁ、確かに。一回り大きくなったような気がする・・・」

梓「どうしたんですか?」

律「べーつに」

澪「なんでもないよ」

唯「あずにゃんは可愛いなってさ」

律「言ってねえよ!」

唯「ふぃ~、やはりむぎちゃんのお茶はおちつくのぅ~」ノンビリ

律「あぁ、まったくだ~」マッタリ

紬「5人でお茶なんて久しぶりね~」

澪「そうだな~・・・って!」

梓「あと五分で開始時間ですよ!」

澪「曲目決めてないんだぞっ!?」

梓「みなさん!打ち合わせしましょう!」

紬「澪ちゃん一曲目私だから大丈夫よ~」

唯「むぎちゃんのピアノソロの後はどうしようか~」ノンビリ

律「そうだな~、わたしの恋はホッチキスはどうだ~?」マッタリ

紬「いいわね~」

澪「す、すこしは慌てろよ!」アワワ

梓「はい!二曲目は翼をくださいでどうでしょう!?」

唯「そだね~」

律「よーし、曲順を確認するぞ!一曲目むぎのピアノソロ。二曲目は翼をください。三曲目はわたしの恋はホッチキスでいいな!」

澪「お、おう」

唯「おっけ~」

梓「はい!」

紬「よぉ~し!」フンス!

唯「むぎちゃん曲名は?」

紬「車掌さんのリクエストでピアノソナタ第15番k.545よ」

唯「おぉ~」キラキラ

梓「車掌さんらしいリクエストですね」

澪「朝に相応しいかもな」

律「あー、あの曲な!」

澪「ヴォルフガングを知ってるのか?意外だなぁ」ニヤニヤ

律「も、もちろん。ヴォルブガンクだろ?ちょいマイナーだけどな~」

唯「ヴォルフガングだよりっちゃん。それにモーツァルトはメジャー級のメジャーだよ~」

律「え・・・」

澪「えっ?」

唯「私モーツァルト大好きだよ!」フンス!

梓「意外です・・・」

律「あ、いつの間にかむぎスタンバってる」

テッテッテ

つばさ「やっほー、みなさーん!」

真美「お、おはようございます」

愛「わ、わたしもよろしいんでしょうか・・・」

星奈「まだ始まってないよね!?」

修治「間に合ったみたいだな」

星奈「修治が差し入れにあれこれ迷うからだよ」

修治「人のせいにするのかよ?」

梓(なんとかうまくいったみたい・・・)

つばさ「えへへ」

梓(・・・良かった)


ポン  ポン ポン ポン ポロロポロン

――♪

ジャン ジャッ ジャン――・・・

紬「・・・」フゥ

つばさ「素敵ー!」パチパチパチ

星奈「・・・」パチパチパチ

愛「すごいです・・・」パチパチパチ

澪「これがむぎのクラシック・・・」パチパチパチ

修治「・・・」パチパチパチ

紬「うふふ、みんなありがとう~」

律「おーし、それじゃ放課後ティータイム、スタンバーイ!」

唯「よぉーし」

澪「うん」

梓「はい!」

律「唯、サクッと行こうぜ!」

唯「うん、分かった」

澪「・・・よし」

梓「okです」

紬「おっけ~」

唯『それでは二曲目です。翼をください!』

律「ワンツースリーフォー!」


紬『いま私の願いごとが
   かなうならば翼がほしい』

唯『この背中に鳥のように
   白い翼つけてください』

紬唯『この大空に翼をひろげ
    飛んで行きたいよ

   悲しみのない自由な空へ
    翼はためかせ 行きたい』

律『いま富とか名誉ならば
   いらないけど翼がほしい』

澪『子どものとき夢みたこと
   今も同じ夢に見ている』

律澪『この大空に翼をひろげ
    飛んで行きたいよ

   悲しみのない自由な空へ
    翼はためかせ 行きたい』

梓『この大空に翼をひろげ
   飛んで行きたいよ
  悲しみのない自由な空へ
   翼はためかせ』  

唯梓『この大空に翼をひろげ
    飛んで行きたいよ』

   悲しみのない自由な空へ
    翼はためかせ 行きたい』


ギュィィイィン・・・

律「うっしゃー!」

星奈「」ポカーン

つばさ「すごいすごーい!」

修治「すげぇ・・・」

澪「・・・なかなかだ」

愛「・・・」パチパチパチ

律「唯、時間あるからメンバー紹介しとこうぜ!」

唯『みなさんこんにちは!私たち桜が丘高校けいおん部です!』

星奈「えっ、バンド部じゃなかったの!?」

唯『軽い音楽と書いてけいおんだよ~。私ギターとボーカルの平沢唯です!よろしく!』

真美「素敵な声でしたよ」

星奈「ゆいー!」

唯『でっへっへ。次は部長の、りっちゃん!』

律『どうも!ドラムの田井中律です。辞書の最初の頁の言葉が大好き!』

唯「その心は!」

律『あこがれています!ズバリ愛!!』ビシッ

唯「うぉー、りっちゃん!」

つばさ「おぉ~」

修治「これは・・・」

愛「まぁ・・・」

澪「おい・・・」

律「次は澪だぞ。むぎの演奏で車内放送終わってるんだから大丈夫だって。それに旅の恥は掻き捨てってな」ウシシ


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