―――――松島


唯「うぅ・・・気持ち悪い・・・」

真美「大丈夫ですか?はい、お水です」

唯「あ、ありがとう・・・真美ちゃん・・・」ゴクゴク

つばさ「もー、試食コーナーの刺身たくさん食べるからだよー」

唯「だってぇ、おいしかったんだもん」

真美「昨日の夜は1時まで遊んでいましたから、寝不足もあると思いますよ」

つばさ「私も少し寝不足かもー」

唯「・・・うぅ~ん」

真美「このままでは乗船出来ないですね」

つばさ「キレイな景色が広がってるねー! 早く船にのりたいな~」ウズウズ

唯「先に乗ってきてもいいんだよ~」

つばさ「ううん。唯さんと乗るよ!だから今はゆっくり休んで!」

真美「そうですね。ちょうどお昼で日差しも厳しいですから、少しこの木陰で休んでいきましょう」

唯「ありがと~」

つばさ「夏の日差しが厳しいけど、ここは風があって涼しいね~」

真美「はい、そうですね・・・」

唯「愛ちゃんも一緒に来ればよかったのにね~」

つばさ「お兄ちゃんも一人でどっか行っちゃうし!」

真美「・・・。一人で観光したい時もありますよ」

唯「私はみんなと一緒の方が楽しいけどな~」

つばさ「わたしもー!」

真美「そうですね」ウフフ

唯「おかげで大分回復してきたよ!よーし松島旋廻するぞー!」

つばさ「するぞーっ!」


―――――定禅寺通り

星奈「おまたせ~」

紬「私たちも今来たところですよ」

梓「はい」

星奈「そっか、ならよかった。喫茶店にでも入ろうよ」

紬「えぇ」

梓「・・・」

カランカラン

「いらっしゃいませ。三名様ですね。こちらのお席へどうぞ」

星奈「人が多いね~」

梓「七夕祭りが行われていますから、その影響だと思います」

紬「あら、そうなの~」

星奈「そっか」

「ご注文は何になさいますか?」

星奈「私はアイスティー。二人は?」

紬「私もアイスティーで」

梓「私はオレンジで」

「かしこまりました少々おまちください」

紬「・・・」

梓「・・・」

星奈「・・・改めて言うけどさ、私の問題なんて忘れて旅を楽しもうよ。その方が楽だよ?」

紬「私も改めて申し上げます。もっと旅を楽しむ為にも話を聞かせてくださいませんか?」

梓「・・・」

星奈「むぎちゃんは意外と頑固だね~」

梓「そうですね・・・」

紬「そうかしら?」

星奈「他人の揉め事に首を突っ込んで、その話を聞かせろなんて中々できないよ。あ、嫌味じゃないからね?」

梓「はい」

紬「えぇ、分かってます」

「おまたせしました、オレンジジュースにアイスティーになります。ごゆっくりどうぞ」

星奈「ふぅ・・・。私んちさ母子家庭なんだ。母、私、弟、妹で暮らしてんの」

梓「・・・」

星奈「父さんは6年前、私たちを捨てて家を出て行った・・・」

紬「・・・」

星奈「酷いよね~、妹も弟もまだ小さかったのに
   母さん一人で私達を育ててくれて、妹弟もいい子でそれなりに楽しく暮らしていたんだよ」

紬「・・・」

星奈「それなのに最近母さん宛に一通の手紙が来たんだ。『私たちに会いたい』って」

梓「!」

星奈「名前を見たら案の定父さんだった・・・。好き勝手に生きてたくせに急に父親顔で『会いたい』だもん。
   母さんの苦労を知らずによくそんな事が言えるなと腹が立ったよ」

紬「・・・」

星奈「もう何がなんだか分からなくてさ、父さんに文句の一つや二つ言わないと気がすまなくなって、
   私達を捨てた理由を知りたくて、手紙の住所を頼りにヴェガに乗りこんだって訳」

梓「・・・」

星奈「それで、盛岡駅に到着した時に母さんから電話が掛かってきてさ『親の問題だから子供は気にしなくていい。帰って来い』って、
   母さんと口論してるところをアイツ、修治に聞かれてさ、電話切った後に修治が『なにかあった?』って聞いてきて、
   この話、人に話したことないから私も混乱しちゃってさ、放っておいてと突き放しちゃったの」

紬「そんな事が・・・」

星奈「うん・・・」

梓「・・・今の口調だと、鳥羽さんを突き放したことに後悔とか」

星奈「してます・・・」コポコポ

紬「・・・」

星奈「修治には謝りたいんだけど、中々素直になれなくてね・・・」

紬「私たちに話してくれたように鳥羽さんにも話してみては・・・?」

星奈「うーん・・・、一度タイミングを外しちゃって、それ以来気まずくてさ・・・」

梓「・・・」

星奈「聞いてくれてありがとう。家庭の話を友達にも話した事ないからさ~おかげでスッキリしたし、気持ちの整理もできたよ」

梓「星奈さんのお友達も話してくれるの待ってると思いますよ」

星奈「梓ちゃんなまいき~」ニヤニヤ

梓「す、すいません・・・」

星奈「ううん。私梓ちゃんのそういう所好きだよ~」

梓「うぅ」モジモジ

紬「あらあら」ウフフ

星奈「・・・そうだね~、色々と心配かけさせてるかも・・・」

梓「松本で降りるってそういう事だったんですね」

星奈「そう、父さん松本にいるらしい。飛行機じゃなくて列車を選んだあたり私らしいかな」

紬「そんなことないです。気持ちの整理は必要だと思いますよ」

星奈「ん。さんきゅっ。それじゃ、私はこれで。よかったら七夕祭り一緒に行こうよ」

梓「はい!」

紬「そうですね」

星奈「ここは私が払っていくね。話聞いてくれてありがとう。それじゃ夜に定禅寺通りね」

梓「はい、ごちそうさまでした」

紬「えぇ、分かりました」

星奈「じゃあね~」

スタスタ

梓「いつもの星奈さんに戻りましたね」

紬「ずっとつっかえていたみたいね~」

梓「星奈さんは星奈さんですよね」

紬「星奈さんと鳥羽さんの件どうにかできないかしら?」

梓「唯先輩の提案が功を奏しそうですね」

紬「そうね、さすが唯ちゃんね~」

梓「ただ自分が弾きたいだけかもしれませんけど」ボソッ

紬「あずさちゃん、私って頑固かしら?」

梓「気にしていたんですね。去年の学園祭の時、律先輩の代わりは居ないって譲らなかったじゃないですか」

紬「そ、そんな事もあったわね~」

梓「私これからも一生忘れないと思いますよ。あの学園祭の事」キリ

紬「もぅ~恥ずかしいわ~」テレッ

「松島湾には大小260の島々が点在しその美しい景観は松尾芭蕉をはじめとする多くの文人に称賛されてきました」

唯「あー!あの岩の形DEATH DEVILのさわちゃんみたい~」

真美「?」

つばさ「あー!あそこは担任の怒った顔にそっくりー!」

唯「色んな形があっておもしろーい!景色もいいし!!」

真美「松島や あぁ松島や 松島やで有名になるだけありますよね」

つばさ「あれ?でもその俳句は芭蕉さんじゃないよねー?」

真美「えぇ、違うそうですね。松尾芭蕉は一句もできなかったと記されています」

唯「こんなにキレイな景色なのに、芭蕉さんは勉強不足ですなぁ」イッヒッヒ

つばさ「ほんとですなぁ」イッヒッヒ

真美「まぁ」クスクス

唯「あー、ウミネコ可愛い~」

つばさ「にゃーにゃー猫みたい」

真美「人懐っこいですね」

唯「SEAあずにゃんだね!」

つばさ「?」

真美「?」

唯「SEAあずにゃーん、たい焼きあるよ~」ホレホレ

つばさ「梓さんにお土産だったんじゃ・・・?」

真美「いいのですか?」

唯「また買えばいいよ~」

つばさ「それじゃ私も。たい焼きだよ~ウミネコちゃーん、キャーかわいいー」

真美「そろそろ港に着きますね」


――――

梓「ちっぽけな私です。寺は高いです」

紬「あら、どうしたの?」

梓「いえ、階段があまりにも多くて・・・」

紬「そうね~約1000段あるそうよ~」

梓「努力と根性が信条!やってやるです!行きましょうむぎ先輩!」フンシュ!

紬「えぇ、今日は暑いから水分補給忘れずにね」


―――――山寺


梓「ふぅ・・・ふぅ・・・」

紬「お疲れ様~お水どうぞ」

梓「あ、ありがとうございます。息も切らさずに昇りきるなんてすごいです」フゥ

紬「頑張った甲斐があったわ、はら見て~景色がきれい」

梓「わぁ・・・ほんとだきれい・・・」

紬「名前の通りね山寺なんて」

梓「そうですね、昔の人はよくこんな高いところに建てたものです。凄いです」

紬「せっかくだからお参りしていきましょうか」

梓「そうですね。それじゃお賽銭を・・・」

チャリンチャリーン

カランカラン

パンパンッ

紬「・・・」

梓「・・・」

紬「・・・」チラッ

梓「・・・」

紬「・・・」

梓「よし」

紬「・・・行きましょうか」

梓「はい」

紬「あずさちゃん真剣だったけど、なにをお願いしたのかしら」

梓「む、むぎ先輩の旅の無事を・・・」

紬「まぁ、ありがとう~」

梓「い、いえ。むぎ先輩は?」

紬「みんなで楽しく旅ができますように」

梓「むぎ先輩らしいです」

紬「そうかしら?」

梓「はい!」

紬「陽も傾いてきたわね、そろそろ定禅寺通りへ行きましょうか」

梓「そうですね。それなら唯先輩にも連絡してみます」



―――――青葉城址


唯「青葉城はどこですかっ!」キョロキョロ

つばさ「唯さん、それだよ!」

唯「・・・」

真美「石垣が残ってるだけですね」

唯「見えます・・・。私には見えます・・・立派な青葉城が・・・」

つばさ「唯さんスゴーイ!」

真美「想像力が豊かなんですね」クスクス

唯「つばさちゃんが今立っている所に伊達政宗がいます」

つばさ「ヒヤッ」

真美「まぁ、本当ですか?」

唯「いたような気がします」

つばさ「もぅー、唯さーん」プー

唯「えへへ、ごめんごめん~」エヘヘ

真美「立派なお城を見るのもいいですけど、こうやって想像して楽しむのもいいですね」

つばさ「うん、そうだね!」

唯「真美ちゃん、つばさちゃん!仙台が一望できるよ!」

つばさ「うっわー!いい眺め~」

真美「緑に囲まれていい所ですね」

唯「セミの声も『夏!』って感じでいいね~」

つばさ「わー、唯さんって詩人みたい~」

唯「一句できました。正宗や ああ正宗や 正宗や」エヘン

つばさ「アハハ!それパクリだよ唯さん~!」

真美「クスクス」

唯「えへへ~」

pipipipipi

唯「あ、あずにゃんからだ・・・」

――――

澪「二年の時のクラス替えを思い出すな・・・。寂しい・・・」テクテク

「きゃっ」

スッテーン

澪(大丈夫かなあの子、派手に転んだけど・・・)

「あいたたた」

澪「だ、大丈夫ですか?怪我はありませんか?」

「は、はい。大丈夫です」

澪(どうしてこんな所にバナナの皮が・・・)

「ありがとうございます・・・あ」

澪「?」

「ヴェガに乗ってらっしゃるんですか?」

澪「そうですけど・・・?」

「ヴェガの乗車証が見えたので」

澪「あ、なるほど。あなたも着けてますね」

「は、はい。私、松浦愛と申します」

澪「わ、私の名前は」

「澪ちゃーん!」タッタッタ

澪「え?あ、唯・・・」ホッ

唯「わー、澪ちゃんも来たんだぁー!」ワーイ

愛「唯さん・・・」

唯「愛ちゃんここに居たんだね!」

愛「はい・・・」

つばさ「唯さーん!」

真美「急に走り出すからびっくりしました」フゥ

唯「えっへへー、ごめ~ん。みんな紹介するね、私たちと同じ学校に通う秋山澪ちゃんです!」

澪「よ、よろしく・・・」

つばさ「七尾つばさでーす!わぁーキレイな人!」

澪「・・・」カァ

真美「桜井真美と言います。こちらこそよろしくお願します」ペコリ

澪「・・・」ペコリ

唯「澪ちゃんも一緒に観光したかったなぁ~」

澪「一度松島へ行ったんだけど見当たらなかったんだぞ」

つばさ「その後私たち青葉城址に行ったからすれ違ったのかも」

澪「な、なるほど・・・」

「みおせんぱーい」タッタッタ

澪「あ、梓・・・」

梓「仙台に到着してたんですね!」

澪「あぁ、昼前にな」

唯「あっずにゃ~ん」ダキッ

梓「ちょっ、唯先輩!人が多いんですから控えてください!」

唯「今日のあずにゃん成分を補給させて~」スリスリ

澪「ふふっ、相変わらずだな」

愛「あ、星奈さん・・・」

星奈「よっ、愛ちゃん。みんな揃ってるね~。あ、新メンバー?」

澪「あ、秋山澪です・・・」

星奈「山口星奈だよ~ん、よっろしく~」

紬「澪ちゃんも定禅寺通りに来てたのね」

澪「むぎ・・・。みんなを探して観光名所歩いていたんだけど、諦めてヴェガに戻ったら
  車掌さんがここへ行ってはどうかって言われてさ」

つばさ「さすが車掌さん~憧れる~!」

梓「将来は車掌さんになるのもいいかもね、つばさ」

つばさ「もぅ~梓さん、照れるじゃないですか~」テヘヘ

星奈「今の褒め言葉なの?」

紬「車掌さん綺麗な方ですから」

真美「なるほど」

唯「連絡してくれればいいのに~」

澪「みんなを・・・驚かせようと思って・・・」

星奈「・・・ほぅ」

唯「みんなで観て回ろ~」

つばさ「はーい!お姉ちゃん一緒に行こうよ!」ギュッ

紬「いいわよ~」

梓「つばさ、右腕にしがみ付いてたらむぎ先輩が歩きにくいよ」

つばさ「えー、そうなのお姉ちゃん?」

紬「大丈夫よ~」ニコニコ

つばさ「わーい!それならこのままでいいよねー!」

梓「む・・・。それなら・・・」ギュッ

紬「あら、あずさちゃん・・・?」

梓「むぎ先輩、わたしも・・・いいですか・・・?」

唯「きゅるるるりん!」

星奈「ほうほう」キラリン



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