8月2日


梓「行ってらっしゃいです」

紬「行ってきま~す」フリフリ



紬「え~と、小樽方面は・・・」

ドンッ

「きゃっ」

紬「あらあら」

「あいたたた・・・」

紬「ごめんなさいね、大丈夫?」

「だ、だいじょうぶです・・・。お、お姉さん、東京行きの列車はどれですかっ」オロオロ

紬「私観光客だから、よく知らないの。ごめんなさい」

「い、いえ・・・ど、どうしよう乗り遅れちゃう・・・」オロオロ

紬「落ち着いて。駅員さんに聞きにいきましょう?」

「は、はい・・・」

紬「すいませ~ん」

駅員「はい、なんでしょう」

紬「東京行きの列車は何番ホームでしょうか」

駅員「東京行きですね。6番ホームになります」

紬「ありがとうございました」

「ありがとうございます」

紬「もう大丈夫?」

「は、はい!お姉さんもありがとうございました!」

紬「いえいえ。それより急いだほうがいいんじゃない?」

「そ、そうですね!それではっ」タッタッタ

紬「元気な子だったわね」

紬「・・・。すいませ~ん」

駅員「はい、まだ何か?」

紬「小樽行きは何番でしょうか?」ニコニコ


――――小樽

紬(用事は一通り済んだわね。急いで札幌に戻りましょう)


――――札幌

紬「えぇと、ヴェガは・・・」

「あれぇ! お姉さんだー!」

紬「?」

「お姉さーん!」タッタッタ

紬「あれ?東京へ向かったはずじゃ・・・?」

「えへへ、勘違いしてたみたいで私が乗る列車じゃなかったの」

紬「あらあら、そうなの」

「改めて御礼を言わせてくださいっ。助けてくれてありがとうございました!」ペコリ

紬「いえいえ。私はなんにもしてないわ」

「焦っていた私に優しくしてくれたのがとっても嬉しかったの!」

紬「あれくらいお安い御用よ」ニコニコ

「わぁ・・・優しいですね・・・。お兄ちゃんもこれくらい優しさがあればいいのになぁ」

紬「お兄さんと一緒なの?」

「うん!朝に久しぶりに再会して、おしゃべりしてたから遅れちゃったの!」

紬「?」

「あ、お兄ちゃんと言っても、幼なじみで本当のお兄ちゃんじゃないんだけどね!」

紬「あぁ、そういうことね」

「もっとレディに優しくするべきだと思うな~。昔はあんなに優しかったのに」プンスカ

紬「あらあら」

「あっ、いっけな~い!今度こそ発車しちゃう~!」

紬「うふふ。急いだ方がいいみたいね」

「はい!バイバーイお姉さーん」

紬「ごきげんよう~」フリフリ

タッタッタ

紬「嵐が過ぎ去ったかのようね~。・・・私も急がなくちゃ」


「むぎせんぱ~い」

紬「あら、あずさちゃん」

梓「急いでくださ~い。もう間も無く出発ですよ~」

紬「は~い」パタパタ

梓「なかなか来ないから心配しました」

紬「ふぅ・・・。ごめんなさいね、なんとか間に合ったわね」

prrrrrrrrrrrrrr

梓「・・・札幌とはこれでお別れですね」

紬「そうね。観光は楽しかった?」

梓「はい!後で話聞いてください!」

紬「えぇ、もちろん」ニコニコ

梓「それでは出発です!」

プシュー 

ガタン ゴトンガタンゴトン

「あれぇ?お姉さん!?」

紬「あら・・・?」

梓「?」

「お姉さんもこの列車に乗ってたんだー!」ワーイ

紬「あらあら、この列車だったのね」

「うん、お姉さんに会わなかったら勢いであの列車に乗っちゃってたかもしれないよ!」

紬「あわてんぼうさんなのね」

「えへへっ、お兄ちゃんと同じ事言われちゃった」

梓「むぎ先輩、この子は・・・」

紬「えーと・・・」

「あ、自己紹介まだだったね! 私の名前は七尾つばさっていいます。お姉さん、よろしく!」

紬「つばさちゃんね。私の名前は琴吹紬っていいます」

梓「中野梓です」

つばさ「よろしくお願します!えへへー。お姉さんと一緒に旅ができるなんて嬉しーなー!」

紬「うふふ、私もつばさちゃんと一緒に旅が出来るなんて嬉しいわ」

つばさ「ホント!? わーい!お兄ちゃんと一緒でお姉さんとも一緒だなんて!」

梓「・・・」

紬「駅で話していたお兄さんもこの列車に乗ってるの?」

つばさ「そうなの! 札幌で別れてしばらく会えないと思ってたのに、すぐ再会できるなんておもってなかったよ」

紬「そうなの。よかったわね~」

つばさ「うん!」

梓「・・・」

修治「つばさ、あんまり騒ぐな」

つばさ「あ、お兄ちゃん」

紬「・・・?」

梓「・・・?」

修治「すいません、お騒がせしたみたいで・・・」

つばさ「ふーんだ、子供扱いしないでよね」

梓「鳥羽さんの妹さんですか?」

修治「うーん、兄代わりというか、兄のようなもの?です」

つばさ「本当のお兄ちゃんは東京にいるの!今度結婚するからお祝いしに行くんだ!」

紬「まぁ、それはおめでたいわね~」

つばさ「でもね。まだお兄ちゃんと同じ18だよ?18!まだ早すぎると思うんだけどねぇ・・・」

梓「自分達が責任を持てるなら早すぎることはないと思います」

つばさ「うーん、そうなのかなー」

修治「中学生にはまだ難しいかもな」ニヤニヤ

つばさ「なによっ!お兄ちゃんだってまだ彼女いないじゃない!」

修治「」グサッ

つばさ「ふーんだ」テクテク

紬「あらあら」

梓「隣の車両に行ってしまいましたね」

修治「ハァ・・・小さい頃はもっと素直だったのにな・・・」

紬「幼なじみだそうですね」

修治「え、えぇ。つばさが引越して以来会ってなかったんですが、偶然札幌駅で再会したんです」

梓「へぇ・・・」

修治「8年ぶりに会って大人しくなってるかと思いきや、ますますおてんばになってしまって」

紬「本当の兄妹みたいですよ」クスクス

梓「大変ですね」

修治「まぁ、幼なじみに会えたのは嬉しかったですから。面倒くらいみてやろうかと」

「わぁーすっごく絵が上手なんですね!」

修治「・・・。それでは、これで」

スタスタ

紬「えぇ、それでは」

梓「兄妹かぁ・・・」

紬「あずさちゃんもお兄さんが欲しかった?」

梓「うーん、よく分からないです。自分に兄がいたら、なんてちょっと想像つかないです」

紬「そうねぇ、私もお兄さんがいたら、なんて想像つかないわ」

梓「兄がいれば楽しかったかもしれないと思うときもあります」

紬「・・・」

梓「でも私には4人姉のような存在がいますから」

紬「まぁ」キラキラ

梓「あ・・・」カァ

紬「うふふ。ありがとうあずさちゃん」

梓「い、いえ・・・。む、むぎ先輩、食堂車へ行きませんか?少し喉が渇いちゃいました」

紬「そうね、そうしましょうか」ニコニコ


――――食堂車

紬「はい、あずさちゃんにプレゼント。五つの中から一つ選んでね」

梓「キレイなガラス細工ですね。にわとり、うま、いぬ、ねこ、ぶた・・・」

紬「小樽で見つけたの。好きなものどうぞ~」ニコニコ

梓「・・・これは心理テストかなにかですか?」

紬「そ、そんなことないわよ?」

梓(めずらしく目が泳いでるな・・・。これってきぐるみのヤツだよね・・・)

紬「さ、遠慮しないで~」ワクワク

梓(う~ん、担当した動物を選べばいいのかな・・・それとも・・・)

紬「・・・」ウキウキ

梓「それじゃ、ねこを頂きます」

紬「まぁ」ポッ

梓「・・・えーと?」

紬「あのね、購入したお店の情報なんだけど、特定の人を動物の種類に当てはめて、
  用意したたくさんの動物の中から選んでもらうの」

梓「するとどうなるのですか?」

紬「その当てはめた動物が異性なら意中の人、同性なら敬愛する人になるらしいわ」

梓「そうなんですか・・・促進販売でよくありそうな手ですね」

紬「・・・しょぼん」

梓「あ、あぁ、でもよく当たってますよ!私むぎ先輩尊敬していますから」

紬「ありがとう~」

梓「これって部員募集した時のきぐるみを当てはめたんですよね?自分のヤツを選んだらどうなるんですか?」

紬「・・・盲点だったわ」

梓(自分が一番!って事になるのかな・・・。よかった、ねこを選んで)

紬「それで、札幌観光の話を聞かせてくれるかしら?」ニコニコ

梓「はい。むぎ先輩と別れた後、羊が丘展望台へ行ってみたんです」

紬「あら、そうなの」

梓「桜井さんが居て、スケッチしていました」

紬「昨日そう言ってたわね」

梓「はい、知らない仲ではないので思い切って声を掛けてみたんですが・・・」

・・・・・・

・・・

「こんにちは、桜井さん」

真美「・・・」カリカリ

「・・・桜井さん?」

真美「・・・」シャッシャ

「・・・」

真美「・・・」カリカリ

「わぁ~、羊が可愛いです」

真美「・・・」シャッシャ

「桜井さん、絵が上手なんですね」

真美「・・・」シャッシャ

「・・・」ションボリ

真美「・・・ふぅ。あ、中野さん・・・。こ、こんにちは」ペコリ

「・・・ひょっとして、私に気付いていませんでした?」

真美「えっ、・・・いつからいらしていたんですか?」アセアセ

・・・

・・・・・・

紬「うふふ、絵の事になると周りが見えなくなるのね」

梓「はい、そう言ってました。なんだか可愛い人だなと思いました」

紬「それだけ熱心になれるものがあるっていいわね~」

梓「私たちにもあるじゃないですか」キリ

紬「そうね」ニコニコ

梓「桜井さんと別れた後、時計台へ行きました」

紬「あら、そういえば私時計台へ行ったことなかったわね」

梓「そうなんですか、一緒に行けたらよかったです」

紬「そうね~」ザンネン

梓「むぎ先輩は時計台が日本三大がっかり名所の一つ、という事をご存知ですか?」

紬「あら、知らなかったわ。あずさちゃんもがっかりしちゃったの?」

梓「最初はそうだったのですが・・・」

・・・・・・

・・・

「・・・」ガッカリ

星奈「お~お~、ガッカリした顔してますな~」

「!」ビクッ

星奈「あっはっは、最初はみんなそうなるよね~」

「・・・中から出てきたって事は資料見学してたのですか?」

星奈「そうだよ~ん」

「そうですか・・・」

星奈「・・・確かにこじんまりしてるけどさ、良く見てよ。時計を」

「・・・?」ジー

星奈「この建物が出来てから一度も変えてないんだってさ」

「はい・・・」

星奈「約130年間時を刻んでいるってこと」

「・・・!」

星奈「落ちた?」

「? 何を言ってるんですか」

星奈「梓ちゃんが私に心を奪われたかな、と」

「もぅ、せっかく感動してたのに!」プクー

星奈「あっはっは、ごめんごめん」

「・・・でも、周りはどれだけ変わっても、ここだけは変わらない。それって凄い事ですね」

星奈「そうだね・・・。これからも変わらないでいて欲しいな~。なんてね」

・・・

・・・・・・

紬「ロマンティックね~」

梓「資料見学してもう一度時計台を見渡したら、違って見えました」

紬「貴重な体験ね」

梓「はい、とても楽しい観光地めぐりでした」キラキラ

紬「よかったわね」ニコニコ

梓「星奈さんの余計な一言が無ければ更に良かったんですけどね」フッ

星奈「私がなんだって?」

梓「!」ビクッ

星奈「私の悪口が聞こえた気がするんだけど?」ピョンピョン

梓「気のせいですっ、私の髪で遊ばないでください!」

紬「あらあら」ウフフ

つばさ「あーっ、お姉ちゃん!」

紬「あら、つばさちゃんも一緒?」

つばさ「うん、星奈さん達と食事をとりに。 お姉ちゃんの隣に座っていいかな!?」

梓「お姉ちゃんって・・・」ムッ

修治「こらこら、4人のテーブルに5人座れる訳ないだろ」

つばさ「えー、だってー」

修治「だってじゃない」

星奈「そうだよ、つばさちゃん。スポンサーの機嫌を損ねたらいけないよ」

修治「えっ!?」

紬「あらあら、急に賑やかになったわね」ニコニコ

梓「・・・」

修治「ほら、別の席にいくぞ」

つばさ「うー、じゃあねお姉ちゃん」

紬「えぇ、また後でね」

星奈「やっきにく~♪やっきにく~♪」

修治「少しは遠慮してくれよ・・・」スタスタ

梓「・・・ゴクゴク」プハ-

紬「オレンジジュースのおかわりでいいかしら?」

梓「い、いえ。それより展望車へ移動しませんか?」

紬「そうね。すこし混んできたものね」

梓「は、はい」

紬「それではみなさんごゆっくり~」

星奈「はいよ~」

修治「じゃあね」

つばさ「ばいば~い」

紬「この列車の食堂車はすごいわね」

梓「私もびっくりしました」

紬「テーブルに鉄板を備え付けられるなんてね」

梓「豪華と云われるだけありますよね」

紬「この展望車ものんびりできていいわね~」

梓「はい、景色を眺めながらのんびりできるなんて贅沢ですよね」

紬「あら・・・?」

梓「? どうしたんですか、むぎ先輩」

紬「デジャヴかしら・・・」

梓「・・・たしか、一度も体験したことがないはずなのに、実際に体験したかのような感覚ですよね」

紬「えぇ・・・」

梓「それとも予知夢ですかね?」

紬「そうなのかしら、なんだか懐かしい気分になったの」

梓「夕日が差し込んでいますからね。オレンジの雰囲気がそうさせるのかもしれません」

紬「うふふ、きっとそうね」

梓「あっ、むぎ先輩!見て下さい羊蹄山ですよ!」

紬「まぁ、素敵ね」

梓「なんだか幻想的です」

紬「夕方の色合いがなんだか切ない気分になるね~」

梓「いい時間帯に展望車に来れてよかったです」

紬「そうね~」ニコニコ


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