―――――展望車
ポンポロポロポロ♪
紬(あら、だれかピアノを弾いているのね)
真美「・・・」ウットリ
紬「いい曲ですね」
真美「あ、琴吹さん・・・」
紬「隣よろしいですか?」
真美「は、はいどうぞ・・・」
紬「ピアノを弾いている方はお知り合い?」
真美「い、いいえ、違います。 けど、なんだか素敵な音を奏でるので、聞き入っていました」
紬「えぇ、本当に素敵な空間を演出していますね」
真美「私、クラシックが大好きなんです。自然の音と近いような気がして」
紬「そうですね、私もそう思います」
真美「ドビュッシーは私のお気に入りでもあるんです」
紬「この曲は亜麻色の髪の乙女ですね・・・」
真美「はい・・・」ウットリ
紬「桜井さんもピアノをお弾きになるの?」
真美「いえ、私は絵を描く事だけで精一杯ですので。琴吹さんはピアノなされるんですか?」
紬「4歳の頃から弾いています。最初に習った曲がアラベスクで、私もドビュッシーは大好きです」ニコニコ
真美「そうなんですか・・・。いつ聞いても素敵な旋律で、聞いていると時が経つのを忘れてしまいます」
紬「弾き手としてはこれ以上無いほめ言葉ですね、今度私も弾かせてもらおうかしら」
真美「そ、その時は私もご一緒させていただけますか?」
紬「えぇ、もちろん」ニコニコ
ガタンゴトン ガタン
真美「あ、札幌に到着するみたいですね。わ、私降りる仕度がありますので」
紬「それではまた」
真美「し、失礼します」テクテク
梓「むぎ先輩! 札幌に到着しますよ!」
紬「はいは~い」
梓「すぐに降りられるんですか?」ウズウズ
紬「一度部屋に寄ってもいいかしら」
梓「は、はい。どうぞ」
紬「うふふ。すぐ済むからちょっとだけ待っててね」
梓「それじゃ、お先に駅のホームへ降りてますね」
紬「は~い」テクテク
ガタンゴトン ガタンゴトン
プシュー
梓「よっ」ピョン
スタッ
梓「着いた、札幌!」
車掌「行かれる場所はお決まりですか?」
梓「あ、車掌さん。はい、今日はラーメン横丁と大通り公園にあるTV塔へ行ってきます」
車掌「そうですか、それでは気をつけて行ってらっしゃいませ」ペコリ
梓「は、はい。行ってきます」ペコリ
スタスタ
梓「乗客のお見送りまでしてくれるのかぁ」
紬「あずさちゃん、お待たせ」
梓「それじゃ、出発するです!」
紬「あずさちゃん、もしかすると行きたいお店を決めている?」
梓「観光ガイドにも紹介されているお店が何件かありましたけど・・・決めてないです」
紬「あら、そうなの?」
梓「その場で惹かれたお店に入ってみようと」
紬「通なのね」
梓「むぎ先輩、そんな決め方でいいですか?」
紬「いいわね、私そういうお店探し憧れてたの~」
梓「むっ」ピキーン
紬「あのお店ね?」
梓「はい、おいしそうな雰囲気が漂っています」キリ
紬「それじゃあ入りましょうか」
―――
梓「むぎ先輩・・・、すいませんでした」
紬「麺は伸びてて、スープは油でギトギトだったわね・・・」
梓「うぅ・・・がっかりです・・・」ションボリ
紬「・・・。あずさちゃん、散歩がてら違うお店探してみましょうか」
梓「・・・いいんですか?」
紬「えぇ、あずさちゃんこそ大丈夫?」
梓「お昼は軽く食べただけなので、正直食べ足りないぐらいです」
紬「それなら行きましょう」
梓「はい! 今度はむぎ先輩が決めてくれますか?」
紬「あら、いいの?」
梓「もちろんです!」
紬「それじゃ・・・。あら」
真美「こ、こんばんは・・・」
梓「こんばんは」
紬「桜井さん、お1人ですか?」
真美「い、いえ・・・それが・・・」
星奈「わっ!」
梓「にゃっ」ビクッ
紬「きゃっ」
星奈「へっへっへ~大成功~♪やったね真美ちゃん!」
真美「せ、星奈さん・・・」
梓「ひどいです!」
紬「びっくりしたわ~」
星奈「ちょうど二人が見えたからさ、驚かしてやろうとおもって」ニンマリ
梓「もうっ!」プンスカ
真美「星奈さん、用事があったんじゃないですか?」
星奈「あ、そうそう。カメラのシャッターをお願いしようと思ってたんだ」ウッカリ
紬「いいですよ」
梓「むぎ先輩はお人よしすぎます」プンス
星奈「梓ちゃんも、こっちへおいでよ~」
梓「いいです」ムス
真美「無理強いは・・・」
星奈「ほいほ~い、それじゃむぎちゃんお願いね」
紬「は~い、行きますよ~」
真美「せ、星奈さん、くっつきすぎじゃないですか?」
星奈「おなじ列車にのったよしみだからいいの~」
紬「」パシャパシャパシャパシャ
星奈「む、むぎちゃん・・・そんなに撮らなくてもいいよ・・・」
真美「あ、ありがとうございました」
梓「・・・」
星奈「梓ちゃんも機嫌直してよ~」
梓「知らないです」
紬「そうだ。あずさちゃん、私たちのカメラでも一枚撮りましょう」
真美「そ、それじゃ私がシャッター押しますね」
梓「いえ、私が押します」
星奈「おっ、ちょうどいい所に・・・まって、アイツに頼もう。お~い!」
「・・・ん?なんだ、星奈か」
星奈「カメラのシャッターを押してくれない?」
「あぁ、いいよ」
梓「むぎ先輩、この人は?」ヒソヒソ
紬「私もしらないわ」ヒソヒソ
星奈「くっくっく、修治ぃ~、アンタ二人に顔覚えてもらってないよ~」
修治「べつにいいんだよ!はい、並んで並んで~」
真美「よろしくお願いします」
紬「お願いしますね」
梓「・・・」
星奈「はい、ち~ず!」
修治「お前が合図取るなよ、やりにくい!」
星奈「それは失礼しました」
梓「ブフッ」
星奈「修治早く撮って!」
修治「? ・・・はい、チーズ!」カシャ
紬「ありがとうございました」
修治「いえいえ、お安い御用ですよ。あ、俺の名前は鳥羽修治、よろしく」
紬「琴吹紬と申します」
梓「中野梓です」
修治「はい、カメラ。それじゃあまた、列車で」
星奈「ありがとね~。 それじゃあ私たちも行こっか? 真美ちゃん」
真美「そうですね。そ、それではお二人とも・・・」
紬「えぇ、また後で」
梓「陽が落ちてきましたので、気をつけてくださいね」
星奈「あいよ、まったね~」フリフリ
紬「・・・あずさちゃん、リベンジと行きましょう!」
梓「はい!」
―――
「へい、らっしゃい。ご注文をどうぞ!」
紬「みそラーメンを一つお願いします~」
梓「あ、私もみそで。トッピングにコーンとバターを」
「はいよっ」
紬「あら、そんなこともできるの?」
梓「はい、お品書きに表示されていますよ」
紬「本当だわ~、こんなことも出来たのね」
梓「むぎ先輩もトッピングしますか?今なら間に合いますよ」
紬「そうね~、うん!してみたい!」キラキラ
梓「それじゃ、店員さん呼びますね。 すいませーん!」
店員「はいよっ」
紬「単品みそのトッピングの追加お願いします」
店員「はいよっ、なにを追加しましょうか」
紬「メンマとホタテの貝柱を!」
梓「また渋いところを攻めてきましたね」
店員「はいよっ、お待ちっ!」ドン
紬「それではいただきます」
梓「いただきます」
紬「・・・うーん、これは・・・」
梓「腰のある麺、そしてコクがあるのに後味がすっきりとして少しもしつこくない・・・」
紬「おいしい~!」
梓「はい!こんなに美味しいラーメン生まれて初めてです!」
紬「ホント、来てよかったわ~」
梓「~♪」ズズズ
紬「うふふ」
梓「・・・?」
紬「おいしそうに食べるなぁと思って」ニコニコ
梓「あまりにおいしいので夢中になってしまいました」エヘヘ
紬「よかったわ」
―――
紬「ここが大通り公園なのね」
梓「そうです。雑誌で見るよりずいぶん広く感じます」
紬「冬はここで雪祭りが開催されるのよね」
梓「そうです。TVでよく見かけますよね、寒そうだけどみんな楽しそうなのが印象的です」
紬「次は雪祭りに合わせてきましょうか。あっ、あずさちゃん見て、焼きとうもろこしの屋台があるわ」
梓「本当ですね。いい匂いがします」
紬「あずさちゃん、TV塔の展望台に昇ってみない?」
梓「私も昇ってみたいと思ってました!」
紬「それじゃ行きましょ~!」
紬「いい眺めねぇ~」
梓「はい、360度見渡せるなんて凄いです」
紬「街の灯りがとってもキレイ・・・」ウットリ
梓「これだけの灯りの下に人がいるんだと思うと、なんだか不思議な感じがしますね」
「おっ、詩人だね~」
梓「!」ビクッ
真美「またお会いしましたね」
紬「あら、桜井さんに星奈さん」
星奈「梓ちゃんが男だったらむぎちゃんを落とせたかもねぇ~」ニヤニヤ
梓「うぅ、雰囲気に流されてつい言葉に出ちゃいました・・・」
紬「うふふ」
真美「本当にキレイですね・・・」
星奈「確かに、こりゃいい眺めだわ」
・・・・・・
・・・
星奈「そんじゃ、列車に戻りますか」
真美「そうですね、いい時間ですし」
梓「はい。それでいいですよね、むぎ先輩」
紬「・・・」
梓「むぎ先輩?」
紬「え?なぁに?」
星奈「夜景に見惚れていたな~」
真美「列車に戻りませんか?」
紬「そうね、戻りましょうか」
梓「あんまり遅くなるといけませんからね」
星奈「変なヤツが近寄ってきたら、星奈ちゃんの鉄拳をお見舞いしてやるのだー!」
真美「心強いです」
梓「頼もしいですね」
紬「うふふ」
梓「あっ、車掌さん」
車掌「みなさんお戻りになられたんですね。札幌の観光はどうでしたか?」
星奈「私と真美ちゃんは先ず、羊が丘展望台へ行ってきました~」
真美「羊がたくさんいてとても可愛かったです。
景色がよかったので、明日もう一度行ってみたいと思います」
車掌「ふふ、スケッチするにはいい場所ですよね。琴吹さんはどちらへ?」
紬「あずさちゃんと一緒にラーメン横丁へ行ってきました」
梓「とてもおいしかったです!」
車掌「いいお店に巡り会えたようでなによりです」ニコニコ
星奈「明日はゆっくり周ってみようかな~」
梓「夕方から3ヶ所も移動したんですよね、すごいです」
星奈「おだててもなにもでないよ~ん」
梓「そんなんじゃありません!」
車掌「みなさん、明日の札幌発車時刻は16:00となっておりますので、ご注意してくださいね」
真美「は、はい、大丈夫です」
梓「むぎ先輩、間に合いますよね?」
紬「えぇ、3時には札幌に戻れると思うわ」
星奈「おっ、遠出するの?」
紬「えぇ、小樽へ行ってきます」
真美「お忙しいんですね」
星奈「梓ちゃん、1人で寂しいなら星奈さんと一緒に周るかい?」
梓「1人で平気です!」
星奈「あらら、振られちゃったか。それじゃ、私は部屋へ戻ろうかな。またね~」
真美「わ、私もこれで・・・」
車掌「おやすみなさいませ」
紬「おやすみ~」
梓「おやすみなさいです」
車掌「それでは、私も仕事に戻りますのでこれで失礼します」ペコリ
紬「はい、お疲れさまです」ペコリ
梓「それでは、また明日」ペコリ
紬「あずさちゃん、今日はとっても楽しかったわ。ありがとう」
梓「私も楽しかったです!一日がすごく充実していました。むぎ先輩のおかげです」
紬「そう言って貰えると嬉しいわ~」
梓「まだまだ旅は始まったばかりです、がんばっていきましょうむぎ先輩!」
紬「おーっ!」
1日目終了--------
最終更新:2011年09月13日 14:54