カラン カラ~ン♪ カランカラ~ン♪ 

「大当たり~!」

梅雨が明け、夏の模様を映し始めた商店街

その福引場で店員の声と鐘の音が鳴り響く

「わぁ・・・」

嬉しそうに少女が微笑む

店員「おめでとうお嬢さん! 特賞の超特急ヴェガの乗車券だぁ~!」

「超特急ヴェガ?」

店員「そうです! 超豪華特急列車ヴェガです!」

「・・・」

店員「?」

「私、三等が欲しいのですけれど、交換できませんか・・・?」

店員「えぇっ!? 『人生踏んだり蹴ったりゲーム』の方がいいと言うんですかっ!?」

「私、友達みんなとテレビゲームするのが夢なんです~」

とニコニコ顔の少女。その天真爛漫な笑顔に店員も一瞬だけ和んでしまう

店員「いや、いやいやいや! いいですかお嬢さん? 今や話題沸騰中のこの乗車券。
   稚内から鹿児島の最終駅まで日本を縦断する夢のような列車の乗車券なんですよ?!」

「・・・」チラッ

困り顔で三等を見つめる少女

店員「・・・分かった!じゃあこうしよう。今の今まで一枚とも出なかったこの乗車券
   五枚全部君に差し上げよう! これなら友達と行けるでしょ?」

「まぁ、よろしいんですか?」

少女に笑顔が戻る

店員「でもこれ申し込み期限が明後日までだから注意してね」

「はい!ありがとうございますっ!」ペコリ

店員「いい旅を!」

「お~い!むぎ~!」

紬「あっ、りっちゃん!」

律「な~にしてたんだ? なんか嬉しそうだけど?」

紬「みてみてこれ! 福引で当たっちゃった~♪」

律「ん~? なになに・・・超特急ヴェガ!!? マジでっ!?」

紬「うふふ」

律「おぉ~ いいなぁ~」

紬「それでね、五枚あるからみんなで行こうと思って!」

律「・・・?」

紬「放課後ティータイムのみんなでヴェガに乗ろう!」フンス!

律「・・・ッ」ダキッ

紬「り、りっちゃん!」

律「むぎ・・・愛してる」

「な、なにしてるんですか!?二人とも!?」

「あ~私も私も~」ダキッ

「ちょっ唯先輩まで! 注目集めてますから! ここ離れますよ!」グイグイ

唯「お~」ジタバタ

律「いやぁ~わりぃわりぃ・・・つい、ね?」

紬「うふふ」

唯「もぉ~、あずにゃん!」プンス

梓「なんでそこで怒るんですか、意味不明です。 それはそうとあそこで何を?」

律「聞いて驚け~! むぎの強運により、私たち放課後ティータイムがヴェガに乗車する事になった!」

唯「おぉ~!」

梓「えぇ! あの商店街の福引ですか!? あ、でも一枚のハズじゃ・・・?」

紬「あら、あずさちゃんよく知ってるのね」

梓「うっ(10回引いたけど三等以外はティッシュだったのは黙っていよう・・・)」

紬「店員さんがおまけしてくれたの~」ニコニコ

律「それは強運とよんでいいのだろうか・・・」

唯「澪ちゃんには教えてあげたの~?」

紬「明日部室でみんなに教えてあげようと思っていたの。りっちゃん、澪ちゃんに伝えておいてくれる?」

律「いやいや~、こういうのは本人から伝えるべきだと思うぜ?」

唯「うんうん!」

梓「そうですね」

紬「そうね、分かったわ!」

唯「今電話したらどうかな?」

紬「かけてみる!」ピッピッピッポ

trrrrrr

『もしもし、むぎ?』

紬「あ、澪ちゃん? あのね・・・」

律「澪は帰って勉強するって言ってたからなぁ」

唯「受験生だもんね!」

梓「唯先輩もですよ・・・」


~~

紬「・・・と、言う訳なの~。一緒に乗ろう?」

バタンバタンッ ツーツー

紬「切れちゃった・・・」ションボリ

律「ったく、な~にやってんだか」ピッピッピッポ

trrrrrrrr

澪『は、はい・・・』イテテ

律「びっくりして椅子から転げ落ちただろ~」ニヤニヤ

澪『お、落ちてない!』

唯「お~ さすがりっちゃん!」

梓「伊達に幼なじみしてませんね・・・。あ、律先輩、申し込み明後日までだと伝えてください」

律「おっけ。 でさぁ~、申し込みが明後日までなんだよ~・・・。うん・・・。
  そうだな。じゃあ明日みんなで話し合うか。うん・・・じゃあ明日な」プツッ

唯「そうだね~それじゃあ、明日部室で確認しよう!」

梓「はい、そうですね!」キラキラ

紬「みんなと旅行できるなんて夢見たい」パアア

律「よ~し、それじゃあ各自情報収集のち、スケジュール確認を怠らない事!」


紬唯梓「「「 了解! 」」」ビシッ

律「よし、解 散 ッ!」



―――琴吹低

コンコン

「お嬢様よろしいでしょうか」

紬「どうぞ」

ガチャ

斉藤「お勉強の最中に失礼します」

紬「ひと段落付いたところだから平気よ、何かしら?」

斉藤「緊急の事ですのでよくお聞きください・・・。先ほど旦那様が・・・」

律「ぎっくりごしぃ!?」

紬「・・・そうなの、だから今年のフィンランドは延期になってしまって・・・」ションボリ

澪「ぎっくり腰はかなり辛いらしい・・・お大事にな」

紬「うん。ありがとう・・・」ションボリ

バンッ

唯「さぁ、今日も一生懸命駄弁るぞー!」

梓「もっとやる気を出してください!こんにちは、先輩方・・・どうしたんですか?」

唯「おや、空気が重たいね」

紬「ううん。なんでもないのよ」ニコ

澪「まぁ、私らが心配してもどうしようもないからな」

律「そだな。よーし、これより超豪華特別急行列車ヴェガ会議を始めるっ!」

唯「まってました!」

紬「おー!」

梓「はい!」キラキラ

澪「練習にもこれぐらいの気合を」

律「それでは、まずヴェガについてだがー」

梓「はい! それについては私から説明します」ズバッ

唯「おー、いつになく熱心だねあずにゃん」

律「おし、任せたぞ!」

紬「がんばってー」

梓「コホン。 8月1日から8月15日をかけて夢の超特急ヴェガは日本を縦断していきます。
  稚内を出発後、順に札幌 青森 仙台 東京 松本 金沢 名古屋 京都 大阪 広島 博多
  と各都市を24時間停車。最終日には鹿児島の駅に到着します」

澪「ふむふむ」

梓「ヴェガの概要ですが、動力車を先頭に寝台車・シャワー室のある売店車・客車1号車・2号車・3号車・4号車・食堂車・娯楽車・
  と続き、最後尾・展望車となります。」

律(すげぇ、カンペも使わずに)

梓「観光地への足だけではなく旅の宿となる寝台車、いつでも使えるシャワー室があるのは有難いですね」

唯「はい!質問です」

梓「どうぞ」

唯「おやつは幾らまで持っていけるのですかっ」

梓「好きにしてください。あと、各都市の中間地点の駅にて30分の休憩停車駅があるそうです」

唯「」グスン

紬「紅茶をどうぞ」スッ

唯「ありがとー♪」ズズーッ

梓「以上です」

澪「すごい、よくここまで調べたな」

梓「せ、せっかくの乗車ですからね。調べすぎって事はないと思います」

律「じゃあ話進めるぞー、みんな何日目から乗るのか発表してくれー」

紬梓「「 えっ? 」」

澪「ん?」

律「いや、どの都市からヴェガに乗り込むのかをだな」

紬「稚内からじゃないの?」アセアセ

梓「はい、私もそう思ってました」

唯「私は稚内からは乗れないよ~。だって親戚との行事があるもん」

律「唯のように各自予定があるだろうから、途中から乗り込むものだと思ってたんだけど・・・」

梓「はい、私は東京で一度降りて、京都からまた乗ろうかと・・・」

紬「えっ! 降りちゃうの?」

梓「は、はい・・・。一応予定が入ってまして・・・」スイマセン

律「てか、一度降りてまた乗る事なんてできるのか?」

梓「はいっ、ちゃんと確認の問い合わせしました」キリ

律「そ、そっか」

唯「私は、青森から乗って大阪まで行きます!」フンス!

紬「唯ちゃん大阪で降りちゃうの?」

唯「うん~、憂と相談したらこの日に降りないとその次の日の予定に間に合わなくなるかもって・・・」テヘ

律「あー、むぎには悪いんだが、私は仙台から広島までなんだ」

紬「・・・」チラッ

澪「ご、ごめん、私も仙台から大阪までで降りちゃうんだ・・・」

紬「・・・」ションボリ

律「つか、毎年予定ギッシリのむぎが珍し」フガッ

澪「ば、ばかっ お父さんの事があるから追及はするなよっ」ヒソヒソ

律「あ、あぁそうだった・・・ごめんごめん」ヒソヒソ

唯「という事は、むぎちゃんは日本縦断達成できるんだね!」

梓「羨ましいですっ」キラキラ

紬「うん。私頑張ってみるっ」フンス!

律「んー。まぁ、こんなもんかなぁ」

澪「そうだな。まだあと一ヶ月くらいあるから、準備はまだ間に合う」

唯「たっのしみ~♪ たっのしみ~♪」

梓「はい!楽しみです!」ウキウキ

律「なんか、梓が一番喜んでいるように見えるんだが・・・気のせいか?」

澪「会議が終わったなら練しゅ」

唯「ちょいとむぎちゃんや、紅茶のおかわりをいただけないかね」エヘン

紬「は~い、みんなの分もいれるね~」シャランラ

澪「・・・」

梓「いつもの流れに戻っちゃいましたね」


――――・・・

               8月1日


日本最北端の駅に一つの列車が佇む

先頭車両を覆いつくす人々。関係者によるセレモニーが開催されていた


「あずさちゃ~ん」

梓「むぎ先輩!・・・よかった」ホッ

紬「ごめんね~、ちょっと遅れちゃった」

梓「いえ、まだ発車するには余裕ありますよ。大丈夫です」

紬「それにしてもすごい人ねぇ」

梓「はい。それだけ注目されていますからね」

紬「あっ、そうだ。あずさちゃん」ガサゴソ

梓「どうしたんですか?」

紬「記念撮影をしましょう」

梓「それ、澪先輩のカメラですよね」

紬「澪ちゃんがね、『せっかく日本縦断するんなら、記録にでも撮ってみたらどうだ?』だって」

梓「それはいいですね!さすが澪先輩」

紬「それじゃあどうやって撮ろうかしら」

梓「!」ピコン

梓「むぎ先輩!こっちです」テッテッテ

紬「最後尾ね、さすがに人居ないから丁度いいわね」テクテク

梓「私撮りますよ」

紬「一緒に写らないの?」

梓「もう少しで発車ですし、なによりむぎ先輩の記録ですから」

紬「そう・・・? それじゃあお願いね」

梓「はい。 それじゃあ、ヴェガの顔と一緒にして・・・」カシャ

紬「ありがとう~、あずさちゃん」

梓「いえいえ。それじゃあ乗車しましょうか」

紬「えぇ・・・そうね」ゴクリ

梓「・・・乗らないんですか?」

紬「あずさちゃんからどうぞ」

梓「いえいえ。先ずは先輩から」

「すいません。ちょっと通ります」ヒョイ

紬「あ、ごめんなさい」

梓「邪魔になるだけですから、二人同時に乗りましょうか・・・」

紬「・・・そうね」

梓「せーっの」

紬「よいしょ」

梓「・・・」ジーン

紬「・・・」

梓「ついに、超特急ヴェガに乗り込みましたね」ウルウル

紬「そうね~・・・」

梓「私、乗車手続きしてきますけど、むぎ先輩はどうしますか?」

紬「一度部屋へ行ってからにするね」

梓「分かりました。それでは後で」

紬「うん」

梓「・・・」テクテク

紬(なんだろう・・・乗った瞬間に胸がトクンって)

「お~い、お~い、ちょっと待ってー!」

紬「?」 

「お~い、そこの美少女~!」

prrrrrrrrrr

紬「あら?発車のベルだわ・・・あの人、もう間に合わないんじゃ」

「手ぇ伸ばして~」タッタッタ

紬「え? 私!? こ、こうっ!?」

「掴んだら思いっきり引っ張って!」タッタッタ

紬「う、うん分かった!」

「よしっ」

ガシッ

紬「えいっ」

「とりゃー!」

ドサドサッ 

プシュー  

ガタン ゴトン ガタンゴトン

紬「あいたた」

「ふぅ、ふぅ、危ない危ないヤバかったー!」

紬「あ、あの・・・」

「いやぁ~もう駄目かと思ったけどおかげで助かった! 凄い引きだったよ」アハハ

紬「その・・・どいてくれると助かるんですが」

「ん? あぁごめんねぇ~ いつまでも押倒してて よいしょ」

紬「いえ、大丈夫です」

「そうだ、恩人さんの名前教えてよ! 私の名前は山口星奈、よろしく!」

紬「そんな、恩人だなんて・・・ 私は琴吹紬といいます。 こちらこそよろしくお願いします、山口さん」

星奈「ストップ!」

紬「!」ビクッ

星奈「私を呼ぶときは名前で!ちゃんもさんもつけちゃダメ!」

紬「はぁ・・・」

星奈「言ってみて!」

紬「せ、せいな・・・さん・・・」

星奈「ん~、まぁいいか。それじゃあ私は部屋へ行くよ。助けてくれてありがとう。みかけたら声かけてね~」フリフリ

紬「・・・」ポカーン

紬(圧倒されてしまったわ。凄く元気な人・・・。りっちゃん三人分ね)

紬「そうだわ、私も部屋に行かなきゃ」


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