唯「やった……! やったよ!!」

律「ああ! ついにムギの上に100人乗ることができたなっ!」

澪「この日をどんなに待ちわびたことか……」

梓「皆さんもご協力ありがとうございます!」

その他96人「いやいや」「なんのなんの」「歴史的な瞬間に立ち会えて嬉しいですよ」

唯「ほら、ムギちゃんも何か言って……」

澪「……ムギ?」

梓「もう、ムギ先輩ったらこんなときに寝ちゃって」

律「おい、ムギ。主役が寝てるなんてありえな……」





紬「……」グッタリ





律「し、死んでる……」





唯「……え?」

澪「おいおい、律。冗談はよせよ……」

96人「ざわ…ざわ…」

律「だ、だってさ……息……してない……」

梓「きっと皆を驚かせようと自分で息止めてるんですよ」

梓「ほら、きっと脈は……」






紬「……」






梓「あ、ありません……」

唯澪律「!?」

96人「!?」



唯「嘘だ……そんなの嘘だよ……」

律「な、なぁ澪。ムギは生きてるよな……?」

澪「……」

梓「あ、当たり前です!」

唯「やっと……やっと、ムギちゃんの上に百人乗ることが出来たのに……」

96人「ど、どうなってんだ?」「さっぱりだ……」

梓「そうですよ……ムギ先輩のことだから、きっと次の瞬間には
 『死んだふりしてどっきりするのが夢だったの~』って起き上がってくるに違いありません」 

梓「ねぇ? そうでしょ? ムギ先輩!!」ユサユサ

紬「……」

澪「もうやめろ、梓」

梓「!?」

澪「もう、ゆっくりさせてやろう……」

唯「う、うわ~~ん!! ムギちゃん!!」

律「おいおい……なんでだよ……」

律「なんでムギが死ななきゃいけないんだよっ!!」

梓「記念すべき日に……いったい誰がこんな酷いことを……」

唯「とりあえず私、誰か先生呼んでくるよ……」

澪「ちょっと待て、唯」

唯「な、なに?」

澪「この状況、なんか違和感ないか?」

梓「違和感、ですか?」

澪「ああ」

律「どういうことなんだよ……」

澪「ムギはいったいいつ、誰に殺されたかってことだ」

96人「おどおど……」

律「確かに……、そんな隙はなかったような気がする……」

澪「ああ、この部室には全員で101人いる」

澪「いや……正確には101人いた、だ」

梓「……ムギ先輩が減って、ちょうど100人になったってことですね」

唯「嫌だよ……あんまりそんなこと聞きたくない……」

律「それのなにが違和感なんだ?」

澪「だって考えてもみろ。ムギに100人乗ってるときこの部室は完全に密室だった」

梓「そう言われれば……窓も閉めきってましたし
  ドアだって邪魔が入るといけないから内側から鍵をかけてました」 

澪「ああ、さすがのムギもうっかり誰かが部室に入ってきて
  101人になんてなったら耐えられないだろうしな」 

律「つまり、ムギを殺した犯人は外から入ってこれなかった。こういうことか?」

澪「今、与えられている条件で考える限りそういうことになると思う」

唯「と、いうことは……」

梓「つまり……」

澪「つまり、犯人は……」






     「犯人はこの中にいる……!!」 







唯律梓「!?」

96人「!?」



律「じ、冗談じゃない! こんな殺人鬼がいる部屋で優雅にティータイム出来るわけない!」

律「悪いが私は違う部屋にいくぜ!」

澪「待て律」

律「な、なんだよ……」

澪「私はこの中に犯人がいるって言ったんだ……」

律「だ、だからここにいたら危ないだろ!」

澪「その犯人の中には……律、お前も含まれているってことも忘れちゃいけない」

律「!?」

唯「りっちゃん!?」

梓「まさか……律先輩が!?」

律「お、おい! まさか親友を疑ってるってわけか……?」

澪「あくまで、可能性だ」

律「だ、だとしたら澪だって唯だって梓だって!」

澪「……そういう事になる」

澪「そして、その他96人も……」

96人「ざわ…ざわ…」

梓「なるほど、だとするとこの部室から出ようとした人が怪しい」

梓「そう澪先輩は仰りたいんですね?」

澪「普通に考えると、自分が犯した殺人現場にはいたくないだろうからな」

梓「と、すると一番最初この部室から出ようとしたのは……」

唯「……」

律「唯、まさかお前が……!!」

唯「ち、違うよ!!」

唯「こんなことがあったんだもん、普通は先生を呼びにいくでしょ!」

律「た、たしかに……」

唯「それに、私はどちらかと言えば澪ちゃんやあずにゃんが怪しいと思ってるよ」

梓「なっ!?」

澪「詳しく聞こうじゃないか」

唯「そういう探偵役ってさ、基本自分が犯人じゃないって前提で進めたりするでしょ」

唯「なんていうかさ、そうやって誰かに罪を着せることだって頭のいい澪ちゃんや
  あずにゃんだったら出来るんじゃないかなって」 

律「そっか……よくよく考えてみたらこの2人の共犯だなんてことも可能性としてはあるんじゃないか?」

澪「推論の域を出ないな。証拠がなければそんなものは絵空事だ」

唯「それは澪ちゃんの推理にも言えるんじゃないの?」

澪「……」

梓「やめて下さい! 仲間内で争ってたって何にも解決しません! 何よりムギ先輩がこんなの望んでないと思います!」

律「梓、あまり綺麗事言ってると、なんだか嘘に聞こえてくるぜ」

梓「……くっ!」

唯「ううん、あずにゃんの言うとおりだよ……」

唯「何よりこの軽音部の誰かがムギちゃんを殺しただなんて信じられない」

律「そうだよな……。動機がないよな……」

澪「うん。みんな悪かった……。私が変なことを言わなかったら……」

梓「澪先輩の無念さは、私たちもわかってるつもりです」



73人目の人「あの~……」

唯「はい?」

73人目の人「ここは警察に連絡した方がいいのでは……」

律「そういえば、そのことをすっかり忘れていたな」

澪「あまりの出来事で基本的なことが飛んじゃっていたよ」

梓「あ、警察ですか? 大変です密室殺人事件です!」

唯「あずにゃん手際が良いねぇ」

澪「あとは、警察が来るまでこの現場を出来るだけ保存することだな」

梓「ミステリー小説なんかでもよく出てきますよね」

唯「動かすんじゃない! って怒られるんだよね」

律「だとすると、ムギもあのままか……」

澪「冷たい床の上で可哀相だけど……」

梓「ムギ先輩、もう少しの辛抱です」

唯「必ず犯人を捕まえるからね!」



38人目の人「う、うぅ……」

律「ど、どうした……?」

38人目の人「も、もう駄目だー!!」

その他95人「!?」

梓「だ、誰か一人が部室から飛び出していきました!!」

唯「もしかして、犯人!?」

澪「その可能性は大いにある!」

律「追いかけるぞ!」



律「捕まえた!!」

澪「でかした! 律!」

律「お前がムギを殺した犯人かっ!!」

38人目の人「ち、違う! 違うんだ!! 離してくれっ!!」

梓「じゃあなんで部室から逃げようとしたんですか!」

38人目の人「駄目だ……もう間に合わない……」ジョワ~

唯「うわっ!? この人オシッコ漏らしちゃった!?」

澪「間違いない、こいつが犯人だ!」

唯「え?」

澪「捕まれば間違いなく有罪だ、しかも女子高生をあんなに残虐に殺したことも
  社会に大きな影響を与える。裁判では厳しい判決になるに違いない」 

律「そっか、捕まればこいつは死刑ってことだな!」

澪「死刑は難しいかもしれないけど……、少なくとも無期懲役には」

唯「それが怖くなって失禁しちゃったんだね」

梓「あなたが……、お前がムギ先輩をっ!!」

唯「あ、あずにゃん!?」

澪「やめろ梓!」

梓「!?」

澪「その手をこんな下衆のために汚すことはない」

澪「それにこいつはちゃんと司法が裁いてくれる」

澪「気持ちはわかるが、ムギだってそう望んでるはずだ……」

梓「……はい」

律「ムギ……喜んでくれ。犯人は……私たちが……ううっ……」

唯「りっちゃん……ぐすん……」

律「ちくしょう……まだ沢山やりたいこともあったろうに……」

澪「最後に100人乗ってやれたのがせめてもの手向けだな……」





 ・ ・ ・ ・ ・ 

律「これでよし、と」

梓「逃げませんかね?」

律「ギターの弦でぐるぐる巻きにしたんだ、ちょっとやそっとじゃ切れないだろ」

唯「換えの弦いっぱいあってよかったね」

澪「それにそろそろ警察が来る頃……」



  ガチャ 

和「ちょっと、刑事さんが軽音部で殺人事件があったって言って来たんだけど……」

梓「あ、ちょうどいいタイミングで」

95人「やれやれ」「やっと帰れますな」

警部「どうも……」

律「ご、ご苦労様です!」

唯「うわ~! なんか本物だね~!」

警部「で、いったいどういう状況で……」

梓「は、はい! ちなみにもう犯人は捕まえてあります!」

警部「ほう……。詳しく聴かせてもらえるかね?」

澪「ええ。実は……」




 ・ ・ ・ ・ ・ 

澪「……という訳でして」

警部「なるほど……よくわかりました」

唯「りっちゃん、あの刑事さんなんだか難しい顔してるね」

律「そりゃ、迷宮入りになりそうな事件を私たちが解決しちゃったからな」

梓「仕事取られちゃって悔しいんですよ、きっと」

警部「おい」

巡査「はい?」

警部「こいつら全員逮捕しろ」

唯澪律梓「えっ?」

95人「えっ?」

和「当然でしょ……」


 おしまい 








紬(私、サスペンスで初っ端から死んでみるのが夢だったの~♪)