澪「これも生きるためだ。許せ小鳥さん」

鳥「   」

澪「……さて、日も暮れてきたしそろそろ帰るか」

澪「といいたいところだけど、血抜きだけでもここでやっとくか」

クルクル シャキン!

澪「まずは心臓から伸びる動脈を切ってと……」

ザクザク

澪「小鳥さん……」

澪「澪ちゃん痛いよー(裏声)」

澪「うわあああごめんねえええ」ブンブン

澪「ギャアアア振り回さないでええ! 血ガアアアア(裏声)」ブシュウウウウー

澪「……よし終わったぞ」



澪「さて帰り支度を」

唯「……」じぃー

澪「……ん? 血の匂いにひきよせられてきたのかな」

唯「わんわん!」

澪「お前の肉じゃないぞ!」

唯「えー。くださいわん! お腹すいたわん!」

澪「しっしっ」

唯「ケチ!」

澪「うるさい犬だ。あっちへ行け!」ズドン

唯「ちくしょう! ……ちくしょう! 人間め!!!」




澪「去ったか。ハイエナめ。次きたら射殺してやるからな」

梓「……」じぃー

澪「お前にもあげないからな!」ズドン!

梓「ギャア」

澪「貴重な肉をどこの誰ともしらない動物にくれてやるほど私は甘くない」

梓「……」じぃー

澪「……撃ち殺すぞ本気だぞ。言葉はわかるだろ?」

梓「……ちっ」スタスタ

澪「ドブ猫め。私はなんとしてもこの肉をもって帰らないとだめなんだ」

澪「あいつのためにもな……」



澪「やぁ待ったか。ごめんなこんなに遅くなって」

狐「……」

澪「そうむくれるな。ちゃんと食料は確保してきたぞ」

澪「これも私の射撃の腕のおかげだな」

澪「ほら、お前の好きな小鳥さんだ」

狐「……」

澪「律……? 律? おーい律……おいどうした!」

狐「……」

澪「え……死んでる……」

狐「……」

澪「臓物を食い散らかされてる……一体誰が……」

澪「と、とりあえず鮮度が落ちる前に解体しなくては……」



澪「うぅ律……どうしてこんな姿に……」

ザクザク

澪「しくしく。血抜き終了。皮をはごう……」

澪「律ぅ……」メソメソ

澪「野生は厳しいなぁ……弱肉強食だよなぁ……」

澪「びええぇええええん律ううううう!!」

澪「あぁ。こんなおいしそうな姿になって……」

澪「律。忘れないからなお前のこと……」



澪「森と大地に感謝して。いただきます」

澪「もぐもぐ。律のレバーおいしい」

澪「こりこりしてる……ビタミンたっぷりだな……」

澪「あとで肉は燻製にしておこう」

澪「律……こんなにおいしいなんて、ちょっとずるいじゃないか」

澪「でももうお前……いないんだよな」

澪「これから私は一人だ……一人でこの残酷な自然と向き合っていかないといけないんだ」

澪「律はきっと、お星様になってこの薄暗い寝床を照らしてくれるよな」

澪「ごちそうさまでした」ナムナム

律「よぉ、お前なに一人でうまそうなもんくってんだ」ヒョコッ

澪「うわぁ出た!」ズドン

律「   」

澪「えっ……あ、律だ」

澪「律……? ……律ぅ!! お前化けて出たのか!!」




澪「そうか、この狐、律じゃなかったんだな」

律「ヘアバンドしてないだろ?」

澪「そういえばそうだな……って!!!」

澪「びっくりしたじゃないか!」ゴチン

律「ッでぇ!! なんであたしがぶたれなきゃならねー!!」

澪「ほんとうにかなしかったんだぞ!」

律「もりもり食ってたじゃねーか!!!」

澪「それは……」

律「いやぁほんと非情なやつだ人間ってのは」

澪「ごめん……」

律「しまいにゃ私にむかって発砲するし」

澪「反省してる」

律「ま、あたんなかったからいいけどさ」

澪「ほら、お腹空いてるだろ。お前の大好きな小鳥さんだぞ」

律「悪いないつもいつも」

澪「右足の怪我はなおったか?」

律「まぁな。明日からまた狩りに同行できるぜ」

澪「それは嬉しい限りだ」

律「へへ、旦那ぁ……」スリスリ

澪「ふふっ」ナデナデ

律「あたしら二人のコンビならこの森で怖いもんなしだぜ」

澪「そうだな。銃も火もナイフもあるしな」



唯「……」じぃー

梓「……」じぃー



澪「ちっ、またあいつらか。肉を狙ってるんだな」

律「リハビリかねて追い払ってきてやるぜ旦那」



律「おらぁ!! あっちいけぇ三下ども!!」

唯「ひぃ」

梓「にゃああ!」

律「おいおいどうしたー! この森最強のあたしらに楯突くってのか!!」

唯「わんわん……そうじゃなくてですね」

律「あ?」

梓「にゃあ……にゃーにゃんにゃぁにゃあー」

律「なるほどな……」

澪「おいどうした律。さっさと噛み殺せ。お前得意だろ」

律「まってくれよ旦那。こいつら子分にしてほしいみたいだ」

澪「子分……?」

唯「わんわん!!」

澪「なるほど子分か……」

梓「にゃあにゃあん……」スリスリ

唯「わぅーん……」スリスリ

澪「あいにくだが間に合ってる」ズドン

唯「ギャアアア」

梓「ニャアアアア」

律「へへ、帰んな。旦那に付き従おうだなんて10年はやいぜチビども」

律「こちとらよくあるお仲間ごっこじゃないんでね」

澪「そういうわけだ。次は当てる」



唯「……くぅーん」

梓「しくしく」



澪「泣き落としもきかないけどな」カチャリ

梓「びぇええええ!!」スタコラ

唯「まってよおおー!!」スタコラ




翌朝


澪「よし、絶好のハンティング日和だな」

律「今日は4匹はしとめようぜ」

澪「そうだな。頼んだぞ律」

律「へへ、まかせろよ」


……


ガサガサ

澪「お、さっそく発見」

律「食事中みたいだな。今がチャンスだ」



紬「むぎゅむぎむぎゅ」モグモグ



澪「ふふ、いい子だ。そのまま動くなよ……」カチャリ

律「もし逃げられてもあたしが追いかけて首元噛み切ってやるぜ」

澪「カモン……カモン……いい子だ、おねんねの時間だぞ」ジリジリ

律「ひひっ、この瞬間だけはたまんねぇな。ぐっと時間が凝縮されたような感覚だぜ」

澪「狐にもわかるんだな」

律「外すなよ。この距離とはいえあんだけ図体でかいんだからよぉ」

澪「私の照準(エイム)は完璧さ」


ズドン!


鳥「バサバサバサ」



紬「    」

澪「!!」



律「お、おい旦那、急に獲物が」

澪「律……私まだトリガーしぼってないぞ……」

律「で、でもよ確かに銃声が」

澪「あ、しっ、隠れろ!!」



紬「    」

和「……ふぅ、なかなかの大物ね。あの子たちの分くらいなら余裕で賄えそう」



律「おい人間だぞ! それもへんなのを目のところにつけてる!」

澪「眼鏡っていうんだ。にしてもなぜこんな深い森に私以外の人間が……」

律「よこどりされたぞ……あいつあたしらの獲物を持ってく気だ!!」

澪「むっ……」

律「いいのかよ旦那!」

澪「……待て、様子を伺うんだ。焦って出て行ってもろくなことはない」



和「……」ザクザク

紬「   」

和「……」ザクザク



律「血抜きをはじめやがった……やっぱり横取りする気なんだ!」

澪「……落ち着け」

律「落ち着いていられるか! やいやい! 泥棒!!」ダダダ



和「……?」

律「てめぇあたしらの獲物を」

和「……」ズドン

律「ガッ……あ……???」

バタリ



澪「律!!!」



律「やべぇ……撃たれた……撃たれたんだよなコレ……寒い……寒いよ澪」

澪「律!! 大丈夫か!!」

和「……? 人間じゃない。どうしたのこんな森で」

澪「お前! なんてことするんだ!!!」

和「あら、ソレあなたの下っ端?」

澪「ソレって言うな!! 律! しっかりしろ! いま止血するからな」

和「……小汚い狐」

澪「お前ええええ! 許さないからな!」

和「悪かったわ。はいこれお詫び。5000円くらいでいい?」

澪「お前ええええ!!」


梓「……」ニヤニヤ

唯「……」ニヤニヤ


和「あなたたち。この餌を運びなさい」

唯「了解です旦那!」

梓「にゃん!」



澪「くそぅ、くそおおお!!」

和「……もう助からないわ。胴体を撃ちぬいたもの」

澪「なんてことするんだ……」

和「それは仕方ないわ。こっちだって野生に生きる者なんだから」

律「ガァ……み……お……」

澪「律ぅ……」

律「スマン――――――死

澪「ああああああああああ!!! 死んだああああああああ!!!」

澪「うわあああああ律が死んだああああああ!!」

澪「私が初めてこの森に迷い込んだときいろいろ森での生き方を教えてくれた律が死んだあああ!!」

澪「飢える日も寒い日も寂しい日もずっとそばにいてくれた律が死んだあああああああああああ!!」

澪「狐にしては妙に人懐っこくて従順だった律が死んだああああああああああああああああ!!!」

澪「私の唯一のパートナーにして長年の家族の律が死んだあああああああああああああ!!!」



澪「まじで死んだ……」



和「泣いてる暇があったら血抜きでもしてなさい」

澪「それもそうだな……」ザクザク

律「   」

和「手伝ってあげるわ。私足もっとくね」

澪「うん、ありがとう捗るよ」

和「ふふ、あなたうまいわね。森に暮らして何年?」

澪「7、8年位たつかな」

和「そう、森って厳しいわよね」

澪「うん、残酷だよ。でも他に行くところもないんだ」

和「そっか……あなた、私と一緒にこない? 近くの村にいい猟友会があるの」

澪「何! ほんとか!? いくいく! そろそろ一人で狩るのも限界だったんだ」

和「ふふ、今後共よろしくね、名前は?」

澪「澪! 澪・秋山!!」



  • 終わり-