『しんぶ~ん』
唯「はっ……き、きたっ! 恐怖新聞!」
カサッ。
唯「……」
『恐怖新聞』
『けいおん部の部室で怪奇現象』
本日放課後、けいおん部の部室から奇妙な物音が聞こえ始めた。
音の正体は不明だが、
数日は鳴りやむ事もなく部員も迷惑している様子だ。
解決のため部員は様々な方法を試みるが、
結局その音が止む事はなかった。
唯「今度は……部室!」
放課後
紬「はい、今日はクッキーを持ってきたの~」
律「うは~、いただき!」
梓「律先輩! ズルいですよ!」
律「早い者勝ちだよ~だ」
唯「ん……」
紬「唯ちゃんは手を伸ばさないの?
おかわりもあるから遠慮しないでね?」
澪「……なんだ最近元気無いよな」
律「唯、珍しく悩み事か~?」モグモグ
梓「律先輩、お行儀悪いですよ」
唯「だ、大丈夫。ちょっと寝不足な……」
ピシッ
律「ん?」
律「いま、何か聞こえたか?」
紬「え~? 何が?」
律「いや、なんだかこう……」
ピシッバチッ
澪「!」
梓「な、なんですかこれ。一体どこから……」
唯「天井……」
バチンバチッ!
律「ひいいいい!」
紬「な、なにかしら……本当に」
和「……これはラップ音ね」
唯「あ、和ちゃん……」
和「ごめんなさいね。扉が開いてたから、つい入っちゃった」
ピキッパチッ。
澪「ね、ねえラップ音って?」
和「簡単に言うと、霊がいるときに出る音の事。
ほら、この何かを弾くような……」
梓「れ、れ、霊が!」
澪「……」ガタガタ
パチッパチッ
唯「和ちゃん、もしかして霊感とかあるの?」
和「ううん、知識でしっているだけだよ。
霊が見えた事なんて一度も無いの」
唯「……ね、一個聞いてもいいかな?」
和「?」
唯「あのね、もしいきなりカッターが独りでにさ……」
和「……それは、ポルターガイスト現象かしら。
幽霊が勝手に物体を動かしたりするの」
パチッパチッ
唯「動かすだけ?」
和「他にも、何かを叩いたり火を燃やしたり……
自然に起こり得ない事を指す場合が多いかしら」
律「このパチパチ言ってるのもか~?」
和「さあ……そういう話もあるみたいだけど、そこまで詳しくは……」
バチッパキッ
澪「な、なんとかならないのか?」
和「ん~、塩でもまいてみたら?」
紬「一応塩はあるけれど……」スッ
パキッパチッ
律「だめかぁ~」
和「天然塩でダメなら、本当にお清め用の塩を使うしかないでしょうね。
食卓塩なんてもっての他みたいだし……」
唯(うう、知識が無いからさっぱりだよぉ……)
梓「あ、あれ? トンちゃんの動きが」
澪「ん? 震えて……いるのか?」
梓「普段はこんな動き、絶対しませんよ……」
律「なんだか、私たちに何か言いたげだな」
トンちゃん「……」スッ
唯(向こう? あっ……)
『ふ、ふふ……見つかったなぁ』
律「ん、どうした唯?」
澪「そんな怖い顔して……こっちまで不気味になるだろ」
紬「?」
梓「唯先輩?」
和「唯?」
唯「みんな……(見えてないんだ?)」
『ああ、お前にしか俺は見えていないぞ……』
唯(この音は、やっぱり霊さんの仕業なの?)
『ふふ……せっかく名前を教えてもらったんだから、
そっちで呼んでもらいたいな』
唯(ポルターガイスト……)
ポルターガイスト『……その女のいう通りさ。これは俺が出した音でもある、が……』
バシャバシャ
梓「ト、トンちゃん!」
和「暴れてる……いきなりどうしたのかしら?」
『せいぜい、悩めばいいさ、ふははっ』スッ
……。
律「どうだ、梓」
梓「もう大丈夫みたいです。病気ってわけでもないみたいで……」
和「ラップ音……動物が暴れる。幽霊でもいたのかしらね」
澪「ま、また幽霊っ!」
和「だって、亀には霊的な力があるって言うじゃない。万年も生きるんだから、って」
澪「な、なんでもいい! わ、私……こんな部室じゃあ絶対練習しない!」
律「おいおい、冗談だろ澪」
澪「い、や、だ! こんなパチパチ言ってる部室なんて嫌いだ!」
和「……」
和「一つだけ、この音を消す心当たりがあるけど」
午前0時
『しんぶん~』
唯「き……きたっ!」
『恐怖新聞』深夜刊
『けいおん部の部室を除霊!』
桜ヶ丘高校けいおん部の部室が明日除霊される事がわかった。
本校生徒会長の真鍋和さんによって提案されたこの方法は、
霊の怒りを大きく買ってしまう事となる。
なぜなら除霊をされる事を一番嫌っているからだ。
わかったなら さっさと除霊をやめろ さもなくば殺す
唯「……!」
殺すの文字だけが赤く染まっている。
何かの塗料だろうか、不気味に光っている。
……。
最終更新:2011年08月20日 16:27