ガララッ。

澪「あ、唯。おかえり」

唯「う、うん……」

紬「本当に具合悪そうね。大丈夫だった?」

唯「わ、私は平気だよ!」

唯(授業が始まる前でよかった……早くみんなから話を……)

律「ふふ~、唯。なんと一時間目は自習になったんだぜ?」

唯「え……自習?」

律「なんか、さわちゃんが急用で職員室に呼ばれてさ。結局自習だって」

唯「よかった……ね、ねえみんな」

「?」

唯「恐怖新聞について……聞きたいんだけどさ」

澪「と、とうとう唯までっ!」

律「なんだぁ~いきなりだな~。どういう気持ちの変化だよ?」

唯「えへへっ、何となく……
  (新聞が来たなんてまだ言えないよね)……」

紬「それで、何が聞きたいの~?」

唯「えっと、寿命が縮まる事は知ってるんたけど……
  新聞には何が書かれてるんだっけ?」

律「ん~、噂によると、
  配達された次の日の出来事が書いてあるらしいな」

唯「次の日……予知能力みたいな?」

澪「……」ガタガタ

紬「ええ、ずいぶん正確に物事が書いてあるみたいよ」

唯「そ、そうなんだ……」

律「一回見てみたい気もするけどな~」

唯「……あ、あのさりっちゃん。これなんだけど」

カサッ

律「ん……んおっ! 恐怖新聞が!」

澪「きゃうっ!」

紬「ええ~本物?」

律「……って、んなわけあるかい。これ、ただの新聞だよ」

唯「え、そ、そんな!」

『読京新聞』

唯「お、おかしいよこんなの……」


律「いやあ、小道具を仕込むなんて唯もなかなかやるじゃないか~」

唯「ち、違うよ! 私は本当に……」

澪「や、やめろよなゆい……」ガタガタ

紬「一瞬本物かと思ってビックリしちゃったわよ~」

唯「っ……!」

タタタタッ。


律「ゆ、唯!?」

紬「またカバン持ったまま……おトイレかしら?」

律「なんなんだよ、まったく」



再びトイレ。

唯「し、新聞……」カサリ

『恐怖新聞』

唯「やっぱり、私にしか見えないんだ……」

『……交通事故』

唯「ん? まだ記事がこっちに続いて……」

『隣のお婆ちゃんが、交通事故』

唯「! お、お婆ちゃんが!」

本日午後10時30分頃、平沢家の隣に住む、
一文字とみさんが交通事故で亡くなった。

とみさんは買い物に出掛ける途中だったが、
歩行者信号を無視した乗用車とぶつかり即死した。

唯「う、嘘……」

現場には目撃者がおらず、車はそのまま逃走したという。
とみさんの葬儀は来週の日曜日に実家の方で……。

バサッ!

唯「こ、こんなの……嫌だよ! 嘘だよ!」

紬『かなり正確に物事が書いてあるみたいよ』

唯「……確かに、私の事は書いてあったけど……
  お婆ちゃんが死んじゃうなんて……」

唯「……」


『ふふふっ、俺の新聞はおもしろいだろう?』


唯「!」

『それで寿命が縮まるなら、安いものだよなあ』

唯「だ、誰!」

『その新聞をお前に届けた……悪霊だよ』

唯「……!」

唯「……」

『どうした、せっかく出てきたんだ。少し話をしようじゃないか』

唯「お、お願いします。
  お婆ちゃんの事故だけは起こさないで下さい。お願いします……」

『はっはっはぁっ! それは俺の仕業じゃないから無理だぁ~。
 俺は今日の記事を書いて届けるだけだからなぁ……
 間違いなく、そいつは死ぬぞ』

唯「そ、そんな……」ガクッ

『まあ、お前はせいぜい新聞でも眺めているんだな……
 まだ俺の記事は残っているんだ、フフッ……フハハハハッ!』

唯「……」

唯「しんぶん……」

ペラッ。

彼女と最後に話をした、近所の平沢唯さんは
『ケーキを買ってきてくれるはずだった』と語る。

唯「私……?」

近所では、夜中にお年寄りを一人で出歩かせないように声を掛け合い
今後の地域の発展を目指すようである。

唯「……」

唯「お婆ちゃん、私がケーキ食べたいって言ったから死んじゃうんだ……」

唯「うっ、うっ……私、ケーキなんていらない……いらないのに」

唯「……いらない? もしかして……」




……。

唯「え、これをお婆ちゃんの家に?」

憂「うん、私夕飯のお片付けしないと……だから、お姉ちゃんが届けてくれない?」

唯「う、うん! いってくる!」ダダダッ。

憂「あ、寝る前なんだから
  お菓子はご馳走になっちゃ……もう、お姉ちゃんてば」




唯「はあっ……はあっ……」

ピンポーン。

……。


『はい、どなたですか?』

唯「お、お婆ちゃん! 私! 私だよ!」

『おや、唯ちゃんかい。待っててね、今ドア開けるから』

おばあちゃん「はい、お茶。ありがとうね、わざわざお使いに来てくれて」

唯「……」

おばあちゃん「今、何かお茶請けにお菓子を……あれ? 何もないみたいだねぇ」

唯「!」

おばあちゃん「よいしょっ、唯ちゃん何か食べたい物あるかい?
        おばあちゃんがちょっとそこまで……」

唯「……おばあちゃん!!」

ギュッ。

おばあちゃん「ん……どうしたんだい?」

唯「いらない……私、ケーキなんていらないから……」

おばあちゃん「おや、ケーキかい? それなら駅前のお店がまだやっていてね」

唯「いらない! おばあちゃんがいればいいの!」ギューッ

おばあちゃん「唯ちゃん……?」

唯「……」

おばあちゃん「わかったよ、そんなに唯ちゃんが言うならお家にいようかね」

唯「本当に? 今日はもう外に行かない?」

おばあちゃん「うん。ケーキはまた今後買ってきてあげる」

唯「……よかった、よかったよぉ……ぐすっ」

おばあちゃん「唯ちゃん、はいティッシュ。泣く事なんてないんだよ?」

唯「よかった、おばあちゃんがいる……おばあちゃんが……」

おばあちゃん「おやおや、ふふっ」




午前0時。唯の部屋

唯(恐怖新聞に書いてあった時間を過ぎても、
  おばあちゃんは家にいたから……大丈夫)

唯(うん、大丈夫なはず……)

タッタッタッ。

唯(ん……)

『しんぶ~ん』

唯(き、きたっ!)

ガサッ。

『恐怖新聞』深夜刊
『交通事故、起こらず』

本日午後10時30分に起こるはずだった交通事故は、
一文字とみさんが時間になっても外出をしていなかったので、起こる事はなかった。
平沢唯が彼女と話し、予定が狂ったためにこうなったと言える。

唯「よ、よかった。生きてるんだ……」


『ぁあ……よかったなぁ……』


唯「!」


唯「……助けてくれたの?」

『俺は記事を書くだけだ……』

唯「……ねえ、もしかしてさ、本当はいい霊なの?」

『いい霊だと? ふふっ、俺はお前を殺したくて仕方ないのさ』

唯「っ……」

『机にあるカッターナイフをな……こう……』スッ

唯「ひっ!(う、浮いてる……)」

『このまま、お前の喉にグサリ、とだって出来るんだ……フフッ』

唯「……」

『まあ、それは後のお楽しみだ』カシャーン

『そして、これは土産だ。これを読んで、
 また明日の新聞を楽しみにしてるんだな……ふふっ……ぁははぁあ……』



唯「また新聞……内容は……」ペラッ

『恐怖新聞』特別刊
『平沢唯、行方不明』

桜ヶ丘高校に通っていた平沢唯さんが失踪し、
捜索願いが出ている事がわかった。

彼女は、一文字とみさんが亡くなった後
すっかり意気消沈してしまい周囲も心配した様子だったという。

学校にも行かず、食事も満足に摂っていなかった様子を、
妹の平沢憂さんが語ってくれた。


唯「……まだある」


『乗用車から惨殺死体!』
本日午後10時30分ごろ、
一台の車から若い男女の死体が発見された。

顔面や身体全体を刃物のような物で
切り刻まれた後があり、身元の確認を急いでいる。

また、車のボディーにはへこみなどの傷がある事から
事故車両の見方も強めている。

何らかのトラブルに巻き込まれた疑いもあり、
警察は慎重に捜査を進めている。


唯「……」

『ふふふふふ……ぁはははぁあはは……』


唯の頁


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