金田一「さて、皆これで集まったな…」

金田一「皆に集まってもらったのは他でもない…秋山澪の死の真相を聞いてもらいたいからだ」

唯「澪ちゃんの死の…真相?」

金田一「単なる自殺に見えたこの事件には、実はもう一つの裏があったんだ!」

金田一「俺がオッサンに頼んで
    澪ちゃんの鞄に入ってたものを見せてもらった時、ちょっと不思議な事に気づいたんだ…」

金田一「疑問に思った俺が調べていくと…辿り着いたんだ、この事件の真相にね」


金田一「まず、紅茶に毒を入れたのは秋山澪本人じゃない…」

律「な、何だって!?」

金田一「そう、誰かがカップに毒を入れたんだよ…」

金田一「それが可能だったのはティータイムの時、
    音楽室に居た軽音楽部のメンバー…つまり君達三人の中の誰かって事だ!」



!?



律「わ、私達の中に…」

唯「毒を入れた人が…?」

紬「だ、誰なの!?…」



金田一「それは、あんただよ!」


金田一「平沢唯!」



律「ゆ、唯が…毒を?」


唯「あ、あはは!金田一君、何言ってるの?…」

唯「澪ちゃんは自殺したんでしょ?しかも澪ちゃんが書いた遺書だって見つかったんじゃ…」

金田一「あぁ、あれは間違いなく…正真正銘、彼女が書いたものだ」

金田一「ただし、あの遺書は今日自殺するために書かれたものじゃなく…
    あんたに殺されると分かった彼女が、今日あの場で書いたものだとしたら?」



!?



金田一「彼女の鞄から遺書を書くのに使ったノートが見つかった時、そう思ったんだ…」

美雪「み、澪ちゃんが自分から遺書を!?……」

唯「………」


金田一「実は、さっき…佐木と一緒に俺はあるモノを探してたんだ」

律「な、何だよ…それって…」

金田一「もう一枚の遺書さ」

紬「もう一枚の遺書?」

唯「っ!!……」

金田一「あんたに梓って子の話を聞きに行った時の事覚えてるか?」

金田一「あの時…あんたは澪ちゃんが自殺した事よりも、遺書の事で驚いてた様子だったからさ」

金田一「あの時からだよ、あんたが怪しいと感じたのは…」

金田一「そりゃ驚きもするさ…
    あんたがは作ったのはワープロで書かれ、しかも内容も全く違う遺書だったんだからね!」

ガサッ


律「い、遺書がもう一枚…」


紬「本当だわ…文章は全てワープロで打たれてるし……
  自殺の動機も音楽への疲れからっていう内容になってるわ…」


金田一「最初、あんたはこれをこっそりと彼女の鞄にでも入れておいたんだろ…
    遺書は発見されなきゃ意味がないからね」

剣持「だ、だが…我々が秋山澪の鞄を調べた時はそんなものなかったぞ!」


金田一「あるはずないさ…何故ならその偽の遺書は死亡する直前に、
    他ならぬ秋山澪自身の手によって隠されたんだからな」


剣持「!?…ま、待て待て!何が何だかさっぱりだぞ金田一!?」


金田一「この事件はある意味で自殺と言っていいかもしれない…
    紅茶に毒を入れたのは平沢唯であっても、
    それを自分の意志で飲んだのは被害者である秋山澪なんだからな」


美雪「まさか……澪ちゃんは……」


金田一「あぁ、彼女は…平沢唯が用意した偽の遺書を隠して自分の書き上げた遺書とすり替え、
    鍵をかけて密室を作り自分から自殺のような状況を作り上げたんだよ!」


剣持「な、何故そんな事を?」

金田一「カップに毒を入れた彼女を庇うためさ…」

金田一「自分が遺書を書いて自殺をした…
    その状況をより強く印象付けるためにわざわざページを破いたノートを鞄に入れておいたんだ」

金田一「彼女はそこまでして…仲間が警察に疑われないようにと考えたんだよ」


唯「ちょ、ちょっと待って金田一君!仮に私が毒を入れるとして、いつ入れたの?」

金田一「皆でお茶をしてた時さ、それ以外に毒を入れるタイミングは無いからな」

唯「そうなるよね…でも考えてみて、あの時はドラムをイジってたりっちゃん以外は皆近くに居たよね?」

唯「音楽室にはあれだけ大勢の人が居たんだもん!毒なんて入れようとしたらたらすぐに皆気付く筈だよ?」

金田一「それが可能なんだよ…」


金田一「まず、あんたは下準備としてあらかじめドラムに不調が出るように細工をしておいたんだ」


律「わ、私のドラムに?」

金田一「あぁ、そして次に皆で和気あいあいと話している最中にわざとある話題を振った」

金田一「今年の夏に死んだ、中野梓という後輩の話題をね…」

金田一「この話題を出した瞬間に他の部員達はかなり焦った様子を見せた…
    場の奇妙な空気に俺達も当然気付く…」


金田一「そして、重苦しい沈黙が流れる音楽室で…あんたは皆の注意を一瞬だけ逸らす事に成功したんだ!」


美雪「あっ!まさかあの時の!…」


金田一「そう!あのイタズラ電話さ!」

金田一「おそらくあれは、あんたが共犯者に頼んで掛けてもらったものだ」


金田一「共犯者はティータイムの最中にずっと、音楽室の前に居たんだろう…
    室内の会話を盗み聞きしながらね」

金田一「そしてあんたが中野梓の話題を口にしたのを確認すると、非通知で律ちゃんへと電話を掛けた…」


金田一「この瞬間、椅子に座っていた紬ちゃんと澪ちゃん、ソファーに座っていた俺達…
    あんたを除くその場の全員が慌てて律ちゃんの方へ振り返った」


金田一「その隙にまんまと隣に座る彼女のカップに毒を入れる事に成功したんだ」

金田一「ドラムの小細工も、皆の視線を律ちゃんに向けさせるための
    巧妙に仕組まれたトリックの一つってわけさ…」


金田一「多分、澪ちゃんはこの時に…
    自分のカップに毒を入れる瞬間を横目で見てしまったんじゃないかな…」


唯「違う…違うよ!それなら私と同じで澪ちゃんの隣に座ってたムギちゃんにだって――」

剣持「もう観念しろ、さっき金田一に言われて調べたが…
   君の妹が音楽室の前で電話を掛ける瞬間を目撃した者がいる!」


唯「ぐ、偶然だよ!そんなの!私じゃな――」


金田一「じゃあ一つ聞くぜ!!」

唯「っ………」

金田一「俺達が遺体を発見した時…何で倒れてるのが澪ちゃんだって気付いたんだ?」

唯「そ、それは…扉のガラスから覗いて――」

金田一「見える訳無いさ…あの角度からは倒れた彼女の腕しか見えないんだよ…」

唯「っ……」


唯「わ、私じゃないよ…」


金田一「じゃあ何で澪ちゃんはあんたのギターケースに偽の遺書を隠したりしたんだろうな…」


唯「っ……わ、私のケースに……」


金田一「もう…言い訳はよすんだ、唯ちゃん…」


唯「……」


律「ゆ、唯?…」



唯「……はぁ……もう、認めるしかないよね……」


唯「そうだよ……形はどうあれ、澪ちゃんを殺したのは私……」



金田一「…やっぱり、中野梓の死が関係してるのか?」

唯「金田一君、私ね…」

唯「神様からあずにゃんの復讐をしてって頼まれたの…」

金田一「神様…?」

唯「全部話す前に一つだけ質問…りっちゃん、ムギちゃん…」

律「………」

紬「………」


唯「二人は…私に嘘…ついてないよね?」

唯「嘘ついたのって…澪ちゃん一人だけだよね?」

唯「私は二人のこと…信じていいんだよね?」


笑っていた。

少しでも仲間を信じたくて、彼女は笑っていた…。

笑いながら泣いていた。


――――



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