金田一「って、どこなんだよそりゃ?」

美雪「えっとね、その学校に私の親戚がいるんだけど」

美雪「その高校の学園祭が明日あるのよ」

金田一「へぇ~、それで?」

美雪「その子が軽音学部に入ってて、学園祭の時にライブをするらしいの」

美雪「そ、それではじめちゃんもよかったらどうかな~なんて思って…」

金田一「あ~、悪いけどパス」

美雪「な、何でよ!」

金田一「最近新しいゲーム買ったばっかでさ、休みの日は忙しいんだよ!」

美雪「………」

金田一(やべ…また怒らせちまったかな)


美雪「ふぅ~ん…忙しいなら別にいいわよ」

金田一「え、えっ?」

美雪「じゃあ桜が丘高校までは私一人で行くから、はじめちゃんは来なくてもいいわよ!」

スタッスタッ


金田一「お、おーい!待ってくれよ美雪ー!」


美雪「まぁ、はじめちゃんを女子校なんかに連れてったらどうせ鼻の下伸ばすのは分かりきってるし…」

美雪(それに…)


美雪「澪ちゃんとも久々にゆっくり話したいしね…」


金田一「澪ちゃんって誰なんだよ美雪ぃ~?」

美雪「っ!!…い、いつの間に…」

金田一「にしし、それにさっき女子校って言ったよな?…」


金田一「俺も一緒に行かせてもらうぜ美雪?」キリッ



美雪「へぇ~、大事な予定があるんじゃなかったの?」ギュウウウ

金田一「あだだっ!!み、耳引っ張んなよ!!」

美雪「ふんっ!」



こうして、俺と美雪は桜ヶ丘高校へと向かう事になった。


この時には気付きもしなかった。


まさか、あんな惨劇が待ち構えている事など。


 ̄ ̄ ̄


カーテンを締めきった薄暗い部屋の中で、私はケースに入ったソレを眺める。


これで。


これで全てが終わる。


震える手でソレを握りしめると、自分を落ち着けるように深呼吸をした。


私はようやく今日、解放される。


あの胸の奥に居座り続ける痛みから。


制服のポケットにソレを入れると、私は部屋は飛び出した。



 ̄ ̄ ̄



桜が丘高校


金田一「………」ボヘーッ

美雪「ちょっと!はじめちゃん!」

金田一「な、何だよ美雪?」

美雪「さっきから妙に視線が落ち着かないわね…?」

金田一「そ、そうか~?気のせいなんじゃないの?」ボヘーッ

金田一(しっかし、ここは天国だな~)

金田一(ぬふふ…女子校なだけあって可愛い子がいっぱい!)


ゲシッ!!

金田一「いででっ!!な、何すんだよ!!」

美雪「顔がさっきからニヤけっぱなしよ?…そんなに嬉しい事でもあったの?」ズゴゴゴ

金田一「な、何でもありましぇん…」


佐木「いや~、やっぱお二人は見てて飽きませんね~」ジーッ

金田一「そ、そういやお前も居たんだっけな…佐木二号」

佐木「もちろんッスよセンパイ!金田一センパイの行く場所には必ず事件が起きますからね~♪」ジーッ


美雪「あっ!澪ちゃーん!」


金田一「!?」

佐木「!?」ジーッ


澪「ひ、久しぶり…七瀬さん」

美雪「直接会うのは小学校の時以来だね!すっごく美人になったね~!」


ジーッ


佐木(いや~、さすが七瀬センパイの親戚なだけはありますね~?)ヒソヒソ

金田一(そうだな…黒髪の美人、そのうえナイスバディ…佐木、しっかりカメラ回しとけよ)ヒソヒソ

佐木(言われなくともしっかり回してるっスよ~)ジーッ♪


美雪「」


澪「………////」

美雪「二人とも、ちょっと話があるんだけどいいかしら?」ドゴゴゴ


 ̄ ̄ ̄


私の心臓は張り裂けそうなほど、高鳴っている。

まるで周りの視線の全てが私に注がれているような、そんな錯覚さえする。


誰とも視線を合わせないように、極力目立たないように…。

自然と足を進める度に顔は下を向いていた。


とても…とても簡単な作業なんだと何度も自分に言い聞かせる。


紅茶の入ったカップに、人間一人の命を奪う毒を入れる。


今日、私がやるべき事。

私はポケットに入ったソレを静かに握り締めた。



 ̄ ̄ ̄



澪「せっかくだから先に私達のバンドのメンバーを紹介しとくよ」

澪「多分、皆音楽室に居るはずだからさ」

美雪「で、でも…今は忙しいんじゃないの?」

澪「構わないよ、今頃お茶してるんじゃないかな」

金田一「お、お茶?」

澪「うちの部活ちょっと変わってて…よく部活の最中にティータイムを挟むんだ」

佐木「そりゃまたお洒落ですね~」ジーッ

澪「あ、あの…ところであなた達は…?」

金田一「あっ!俺は金田一一!一応、コイツの幼馴染みでして!」デレーッ

佐木「僕は佐木竜二です、金田一センパイの頼れる助手ってやつですよ」ジーッ

美雪「ま、まぁ…こんな人達だけど仲良くしてあげて…」

金田一「いやぁ~、しっかし美雪と違っておしとやかでお美しい!
    是非とも爪の垢でも煎じて――って、あだだだっ!!」

美雪「はいはい、余計な事は言わなくていいから…」ギリッギリッ

佐木「~♪」ジーッ


澪「ぷっ…ふふっ……」

澪「仲がいいんだな、二人とも…」

美雪「そ、そうかな…あはは」


美雪(澪ちゃん、やっぱり変わったな~)

美雪(外見もそうだけど、私が知ってる時より表情も豊かになったし口調も変わってる)

美雪(ひょっとして彼氏とかできたのかな…)

澪「どうかしたの?七瀬さん?…」

美雪「な、何でもない!」



 ̄ ̄ ̄



音楽室

唯「あっ!お帰り~、澪ちゃん!」

澪「あぁ、ただいま」

紬「お知り合いの方は探せたの?」

澪「うん、せっかくだからここに来てもらったよ」

律「おっ!あの三人か?」


美雪「お、お邪魔しまーす…」

澪「こっちの方が七瀬美雪さん、私の親戚だ」

美雪「よ、よろしくお願いします!」

澪「それから、七瀬さんの知り合いの金田一一さんと佐木竜二さんだ」

金田一「どもー」

佐木「よろしくお願いしまーす」ジーッ


唯「えへへ~、私は平沢唯でーす!よろしくね!」アクシュ

美雪「う、うん!こちらこそ…」

唯「えっと、美雪ちゃんだからあだ名はみぃちゃんで決定!」

美雪(い、いきなりあだ名付けられちゃった!)


紬「私は琴吹紬といいます…よろしくお願いします」ペコリ

美雪「こ、こちらこそよろしくお願いします!」ペコリ

美雪(うわ~、すごく綺麗で礼儀正しい子だな~…)


律「私は田井中律っていうんだ!一応、この軽音部の部長やってるんだ!」

美雪「うん、よろしくね!」

美雪(さすが部長だけあって元気ハツラツって感じの人だな~)


美雪(この人達がライブやるんだ~、すっごく楽しみ!)

美雪「どんな演奏なのか楽しみね、はじめちゃん?」



金田一「にひひ…やっぱ来て良かったよな佐木…」デレーッ

佐木「そうッスね、センパイ…紬さん、何て素敵な人だ…」ドキドキ


美雪「」


紬「せっかく来ていらっしゃったんですから、お茶でもどう?…」ニコッ

佐木「は、はいっ!是非とも!」

唯「私澪ちゃんの隣に座る~!」

紬「じゃあ私も…皆さんもソファーにどうぞ?」


澪「律、皆でお茶飲むぞー?」

律「あいよー」

澪「って、お茶くらい座って飲め!」

律「別にいいじゃんよー!ドラムの音が何か変なんだよなー」


澪「まったく…」

美雪「ふふっ」

澪「ど、どうかした?」

美雪「やっぱり変わったね、澪ちゃん」

澪「そうかな…」

美雪「初めて会った時なんて、顔真っ赤にしちゃって何も言えなかったのにね!」

澪「や、やめて!それは言わないで!…」

唯「澪ちゃんの知られざる過去が今ここに!」

紬「わ、私も聞きたいです!その話!」

律「おかしいなー…昨日までは何ともなかったのに…」イジリイジリ


――――


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