つむぎレディバード




憂「ほらお姉ちゃん!起きないと遅刻だよ!」

唯「あと5分~」

憂「あと5分もしたら遅刻確定だってば!もう!」

唯「あう~」



澪「それにしても唯寝過ぎじゃないか」

律「ぷぷ…廊下にたたされる人なんて初めてみたな」

梓「それだけ先生も心配してたって事ですよ」

唯「う~腕がパンパンだよ~バケツまで持たされて」

律「ぷー!写メとっとけばよかったな」

唯「ひどいよ律っちゃん!」

澪「ははは、ん?どうしたムギ?ボーっとして」

紬「…え?あ、いやなんでもないわ?そうだ今日はシュークリームをもって来たの、みんなで食べましょう」

律唯「シュークリーム!シュークリーム!」



梓「唯先輩、ほっぺについてますよ」

唯「ほぇ?」

律「まったく、ちょっとは落ち着いて食えよな~」

梓「律先輩もついてますよ、おでこに」

律「うわ!??……なんでだ?」

澪「落ち着いて食べろよ律……あと梓も、ここ」

梓「!??」

唯「あずにゃんか~わいい~」

梓「は、離してください!自分で拭けます~」

紬「………」

澪「………そういえば唯」

唯「ほぇ?」

澪「ま、またついてる…あの時、どうやって起きたんだ」

唯「憂が起こしてくれたんだ~裏技なんだって!」

律「裏技?なんだそれ」

唯「亀さんの事も、忍野さんって人の事も全部聞いた話だけどね…ようするに篭る甲羅がなければいい、何だって!」

梓「どういうことですか?」

唯「だから、ようするに服を脱がせて裸にすれば大丈夫なんだって!」

律「ぶふぉっ!!」

澪「うわ、律…汚いなあもう」

梓「…唯先輩の裸」

紬「………」



唯「ムギちゃんさっきからどうしたの?顔も赤いし…もしかして風邪!?」

紬「え、いや…大丈夫、大丈夫」

澪「いや、大丈夫には見えないよ」

律「ムギ?調子悪いなら帰った方が」

紬「だ、ダメよみんな、私に、優しくしたら…あう」

梓「ムギ先輩!?」

紬「はあ、はあ」

澪「すごい熱だ、律!先生を呼んで」

律「わかった、唯!」

唯「うん!」

紬「ダメ…はあ、はあ…駄目よ」



律「さわちゃん!早く早く!」

唯「ムギちゃんが!ムギちゃんが!」

さわ子「ど、どうしたのよ一体…」

律「澪!連れてきたぞ!」

唯「澪ちゃん?あれ?あずにゃんもいない…」

さわ子「あの、私帰っても…」

律「駄目だって、…あれー?ムギもいないし…どうなってんだ?」

律「鞄はここにあるし…帰った筈ないしなー」

唯「り、律っちゃん!外!窓の下!」

律「外?…あ!いた!って何やってんだよあいつら!」

唯「あ、あずにゃんが脱がされそう!風邪引いちゃうよ!」

律「いや…そんな場合じゃ…まあいい!行くぞ唯!」



紬「しゃらんらしゃらんら~」

唯「ムギちゃん!」

律「ムギ!梓から離れろ!あ、白…」

唯「ムギちゃん、二人を脱がせてどうするきなの?熱は?」

紬「…はっ…私、また…ああ!?梓ちゃん澪ちゃん!」

唯「?」

律「?」

さわ子「待ってっていったのに二人とも…ぜぇぜぇ……あれ?なんで梓ちゃん制服脱いでるの?」



これは唯ちゃんが目を覚ましてすぐのお話
私は、一匹のてんとう虫を庭で見つけたの

紬「まあ…ふふ、かわいい…あ」

しゃがみ込んで私が触ろうとすると、そのてんとう虫はとんで行ってしまいました

ただ、それだけのこと

この時の私はそう思っていました



部屋で本を読んでいると執事の斎藤が訪ねてきました

斎藤「紬お嬢様、お食事をお持ちしました」

紬「…お父様は?」

斎藤「御主人様はただ今、パリへ出張なさっています」

紬「………お母様は?」

斎藤「同じく出張で、ロンドンへ…紬お嬢様?」

紬「なんでもないの…斎藤?一緒にどうかしら?」

斎藤「ありがたいお言葉ですが…」

紬「そう…いいの、ありがとう斎藤」

ただ、それだけのこと


幼い頃からそうでした
忙しい両親は私に構う時間はほとんどなく
不自由な事はなにもない、言葉はすべて使用人を通して私に伝わり、両親にだって伝わる
そんなフィルターを通していたって
そこには確かな愛を感じる事ができるし、怒りや悲しみ、そういった感情だってきちんと感じる、伝わる

紬「……美味しく、ない」


--ただ、温もりだけが感じられない


枕に顔を埋めて、なんだかやり切れない物思いにふける
ノックが聞こえる、食器を下げにきたのだろう

紬「どうぞ…」

斎藤「失礼します…お嬢様、お腹の調子が優れないのですか?」

紬「ううん、お腹いっぱいなだけ…あら?」


一匹のてんとう虫

それは使用人の胸ポケットの辺りに止まっていて

そのあとの事は全部聞いた話で



紬「斎藤は私のベッドの上で下着一枚で気を失っていたの」

律唯澪梓「…へ?」

紬「斎藤は下着一枚で気絶していたの。脱がせたのは私らしいの…」

律「…」

唯「…」

澪「…うぷ」

梓「…あ、あぶなかったです…」



メメ「なんともまあ、…聞きたくなかった話だね、今夜の夢に出てきそうだよ、半裸の初老執事」

紬「…真面目に聞いてください」

メメ「はは、ごめんごめんたくあんちゃん、で、何だっけその執事みたいな半裸、いや…もはや9割裸の怪異が」

紬「てんとう虫、です」

メメ「やだなあ冗談だよたくあんちゃん、そんな怖い顔して…まったく、何かいいことでもあったのかい?」

メメ「『日照り虫』そのまま『天道虫』呼び方は様々だけど、まあどれも同じようなものだよ」

紬「やっぱり、怪異なんですね?」

メメ「大別すればね、僕に言わせてみればたいしたことない、その辺の蜂の方がよっぽど恐ろしいよ」

紬「私は…困ってますこのままじゃ…」

メメ「まあ、まずいよね、このまま放っておけば…確実に」

紬「…ゴクリ」

メメ「強制猥褻罪で確実に御用だよ」

紬「…」

紬「忍野さん…」

メメ「いやいや誤解しないでおくれよ、だって優しくしちゃうと…さ」

紬「あ…そう、でした」

メメ「君にしかみえないそのてんとう虫は言わば的みたいなものだよ、模様は覚えてる?」

紬「確か、ハート…あれは、多分ハートです」

メメ「間違いないね『日照り虫』だよ。人を魅了する怪異さ、ま吸血鬼ほど強烈で凶悪ってわけじゃないけどね…はは、元気にしてるかな忍ちゃん」

紬「?」

メメ「いや、こっちの話さ…で、そうそう『日照り虫』はね」

メメ「ぶっきらぼうに喋るけど、誤解しないでくれよ?君も僕の勝負下着を見たくはないだろうからね」

紬「はい!」

メメ「またはっきり言いきるんだね、まあいいや…さっきも言ったけど、君に見えてる『日照り虫』は的だよ。たくあんちゃんに対して優しく、つまり好意を持って接する人間にとまるんだ」

メメ「それを目にしたたくあんちゃんは、闘牛よろしく回りが見えなくなって」

紬「ふ、服を…」

メメ「そう、酷いもんだよねまったく…あ、いやだから、そんな泣きそうな顔はやめてくれよ?仕方がないんだから」

紬「…うう」

メメ「ちなみに今日の下着は破れて大きな穴が開いててね、できれば見せたくはないんだ」

紬「…うぷ」

メメ「君は…いいとこのお嬢様みたいだね」

紬「!…そんな……」

メメ「ああ、いいって隠さなくても…お金持ちにはお金持ちにしかわからない悩みがある、そのくらいわかるよ、誰でも」

紬「…」

メメ「こないだの姉妹二人をみて君は何かを思ったんだ、怪異は理由もなく現れたりはしないからね」

紬「私は…どうしたら…」

メメ「君は知らないだけさ、僕も知らない、でも他の皆はどうかな?」

紬「?」

メメ「今日はお客さんが多くて困るね、君で5人目だ」

紬「………み、皆」



---暗闇の中で私は忘れていました
こんなにもあったかくて優しいものがすぐ近くにあった事を
てんとう虫みたいに、温もりを求めて太陽ばかりを見ていた私は気付かない
すぐ隣に、手を伸ばせば届くくらい近くに


唯「りっちゃん、もっとそっちよってよ!」

律「こら唯!おすな!」

梓「ちょ、唯先輩!どこ触ってるんですか!」

唯「わ、私じゃないよ~」

澪「くす、でもさ、泊めて貰っおいて言うのも何だけど流石に5人でベッド一つは狭かったな」

紬「そうね、でも……暖かいわ、とっても」


-手を伸ばせばほら


梓「あっまた!唯先輩!」

唯「ち、違うってばあずにゃん!」


-優しい光がすぐ隣に



メメ「もう皆にも言ったことだけど、『日照り虫』は温もりを嫌うんだ」

メメ「でも温もりを持った人間にとまる、そうまるでアレだよ…飛んで火にいる夏の虫、街灯なんかによく集まるじゃない」

メメ「だから君も思いだすんだ、簡単さ、今は忘れてても君も持っていたんだから」

メメ「ああもう泣かないでってば、ほらティッシュ……あっ」

メメ「い、嫌ちがうんだたくあんちゃん!そんなのさっき拾ったティッシュで、…そう!さっき僕それで鼻かんだんだよね!きたないよね!うわやめてくれたくあんちゃん、今日は寒いから!やめあーっ…」


紬「しゃらんらしゃらんら~♪」




つむぎレディバード おしまい




少し休憩します
ここまでお付き合いしてくれた人感謝です

次誰にしよう…


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