ゆいタートル



梓「唯先輩が学校に来なくなってもう一周間です…」

紬「そうね…寂しいわ」

律「なあ皆、もう一回様子を見にいかないか?」

澪「うんそうだな、行こう。」



澪「ごめんくださーい」

憂「あ…皆さん、どうぞ」

律「憂ちゃん、まだ唯は…」

憂「はい、まだ寝ています」

梓「唯先輩…まだ」

紬「一週間も眠り続けるなんて…」

憂「じ、実は…」

律「実は?」

憂「この前皆さんに来て頂いた時は私も気が動転していて…気付かなかったんですけど」

澪「しかたないよそれは。」

憂「4日ぐらいたった時、おかしいなって思ったんです…普通、四日も何も食べないと…」

紬「それは、そうよね…何も飲まず食わずで、普通でいられるわけないわ」

憂「でも、眠っているお姉ちゃんは痩せてもいないし…寝顔だけはいつも通りだし…私どうしたら、いいか…ぐす」

梓「…憂」


梓「お医者さんは、何て?」

憂「わからないって…何もかもが正常で、本当にずっと眠っているんですか?って、あまり相手にもされなくて…」

律「くそ医者、ひどいな…けど、ただの病気ってわけでもないのか…」

澪「私も調べてみたけど一週間以上眠り続ける、そんな事例、でて来なかった」

梓「唯先輩…こうしてみてると、いつも通りなのに…穏やかな寝顔…」

澪「眠り姫だな、まるで」

紬「それよ!」

紬「眠り続けてる唯ちゃん、たぶん………キスを…すれば」

澪「おいおい、そんな」

憂「それは……もう」

澪「ばかな、すでに一度試しているだと…」

憂「何度も……」

律「一回で充分なんじゃ」

澪「頬を赤らめてる場合じゃないだろ」

紬「あらあら、まあ…憂ちゃん」

梓「ムギ先輩もですよ!」


澪「まあ、それはさておいて…医者も駄目、となると」

律「お手上げだよな、どうしたらいいんだよ」

紬「唯ちゃん起きて、クッキーもマドレーヌもあるのよ?」

梓「ムギ先輩…うっ…ぐす」

澪「泣くな、泣いても唯は…」


ピンポーン

憂「……誰だろう?ちょっといってきますね」


憂「はい今開けます……先生?」

さわ子「様子を見に来たわ、どう?平沢さん」

憂「それは…」

さわ子「その様子じゃ…相も変わらず、みたいね」

憂「どうぞ、あがって下さい…軽音部の皆さんも来てますので」

さわ子「そうさせて貰うわ、憂ちゃんに少しいい報せをもって来たから」

憂「え?」


律「さわちゃん!」

澪「先生も唯を?」

さわ子「当たり前よ、担任なんですもの」

梓「先生…」

さわ子「唯ちゃんの症状の事、片っ端から調べあげたけど何もわからなかったわ」

澪「…私も、調べました」

さわ子「何も出なかった事で確信しました、これは病気なんかじゃないわ」

律「?…病気じゃなくて何だっていうんだよさわちゃん」

梓「勿体振らないでください…」

さわ子「怪異…そう、これは怪異の仕業なの」

律「かいい?」

さわ子「怪異…わかりやすく言えば、呪いや亡霊、祟り…そういった類のモノ」

澪「ひっ」

梓「…じゃあ唯先輩は」

憂「な、何かに呪われたり取り付かれて…」

さわ子「そうかもしれないし、そうじゃない、かもしれないわ」

紬「え?」


澪「霊、呪い…ううう」

律「澪…さわちゃん、マジ、なのか?」

さわ子「マジ、よ…残念だけど」

憂「お姉ちゃん…」

さわ子「そしてこれは医者なんかじゃ手に負えません、ましてや私じゃ…だから蛇の道には蛇」

紬「悪魔払いとか祈祷士…ですか?」

さわ子「近いけど違うかもね、私の大学時代の友人、ていうか先輩なんだけど…もう、話は通しておいてあるからここへ行ってみなさい」

憂「地図…」



憂「地図だと、この辺りですね」

律「近いじゃん、もっと早くこれた筈なのにな」

梓「地図通りに歩きなさいって言われたじゃないですか…結界がどうの、とか」

澪「なあ、本当にここ入るのか?なんていうか、完全に廃墟…だぞ?」

紬「唯ちゃんの為よ!」

澪「…そう、だよな。」

律「入口がまずわからないけど…何だ?学校みたいだな」

紬「ちょっと違うわ、塾…みたいね、ほら」

梓「本当にここに人がいるんでしょうか、忍野さん…でしたっけ」

律「とりあえず入ってみねーとな…ああもう、窓から入ろうぜ」

憂「あ、危ないですよ律さん!」


?「お嬢ちゃんの言うとおりだよ、おでこちゃん」


律「……おでこちゃん………?」

澪「いつのまに後ろに…あ、あなたが忍野さんですか?」

メメ「ん?ああいかにもそうだけど?…ふんふん、なるほどねぇ」

梓「あの、私たち…」

メメ「ああ言わないでいいよ、わかってるから。君達がデスメタちゃんの教え子さんたちだね?聞いてるよ」

紬「デスメタちゃん…ぷ」

メメ「まあ、ほら、立ち話もなんだしあがってよ。汚いところだけど」



メメ「『贈亀』…うん、今だと『送り亀』って呼ぶのが正しかったかな」

澪「亀?…唯を眠らせてるのは亀のお化けなんですか?」

メメ「うーん僕ってなにかと前髪パッツンの女子高生と縁があるなあ…いやいやこっちの話…うんお化けってのは少し違うね」

憂「お化けじゃないんですか?」

メメ「…君が憂ちゃんかい?」

憂「?…はい、そうですけど、それよりも亀って」

メメ「まあまあ、あせらないあせらない。時間ならたっぷりあるんだから…なんせ亀だしね」

メメ「『送り亀』は呪いや、祟り、ましてや悪霊なんかじゃないよ…まったくヘビメタちゃんも適当こくんだから困るよ」

憂「でもお姉ちゃんは実際に」

メメ「苦しんでる?本当に?」

憂「…」

メメ「多分、すごく穏やかな、幸せそうな顔をしてるんじゃないかな?」

澪「そういえば…確かに」

紬「でも起きないのはどうしてなんですか?」

メメ「今彼女は、唯ちゃんていったっけ?夢をみている筈だよ」

憂「夢?」

メメ「…そうだなあ、浦島太郎って知ってるかい?」

紬「知ってます、亀を助けたらおじいさんにされる話ですよね」

梓「…ちがいます」

律「それじゃただの悲惨な話だろ」

メメ「いやいやおでこちゃん、あながち間違いでもないんだよこれが」

律「……おでこちゃん………?」

澪「え?だって竜宮城とか乙姫さまとかは…?」

メメ「浦島太郎という童話の起源、原本じゃそんな物は出てこないんだよ…えっと」

澪「秋山です」

メメ「出てこないんだよ…ビビリちゃん」

澪「…」




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