唯「おかしいって、何かあったの?」ガタンッ

憂「わわっ」

憂「お姉ちゃん、お食事中に机揺らすのは『めっ』だよ?」

唯「はわわ、ごめんなさーい」

憂「おかしいって言っても、そんな大したことじゃないよ?」

憂「声がたまにぎくしゃくしてた事とか」

憂「お昼休みの時も何も食べなかったり」

憂「後はふと見たら目の焦点が合ってなかったり……かな?」

憂「それくらいだよ。他はいつもの梓ちゃんだった」

唯「うーん……そっかー……」

唯「……」

憂「だけど、何も食べなかった事は心配かな」

憂「体調悪かったのかな……顔色は良さそうだったけど」

唯「……」

憂「お姉ちゃん?」

唯「あ、な、何でもないよー」

唯「部活でもケーキ食べてなかったけど、ダイエットでもしてるのかな?」

憂「ダイエット? 梓ちゃん、充分痩せてるのに……細すぎるくらいだよ」

唯「だよね、気にし過ぎだよね。そんなんだからおっぱいも萎んじゃうんだよー」

憂「お姉ちゃんったら」クスクス

唯「あ。コレ、あずにゃんに言ったらだめだよー。すっごく怒ると思うし」

憂「ふふっ、お姉ちゃんったら」クスクス



唯「ごちそーさまー!」

憂「お粗末様でした」ニコッ

憂「さて、食器洗わなくっちゃ」

唯「それじゃあ私はゴロゴロしなくっちゃ!」スタタ…ゴロゴロ

憂「うふふ。おねーちゃんたら」

唯(やっぱり、気のせいだよね)

唯(気にし過ぎだよね)

唯(神様なんて居る筈ないし、)

唯(そもそもあずにゃんが急に死ぬわけないよ)

唯(さっきまで一緒に話してた人間が突然死ぬなんて、おかしすぎるもん)

唯(そんなの、変だよ。変過ぎる……)

唯(あずにゃんが死ぬわけない)

唯(あずにゃんが死ぬわけない)

唯(あずにゃんが死ぬわけない)

唯(死ぬわけない死ぬわけない死ぬわけないし、死んで欲しくない)

唯(死んで欲しくないし、死ぬわけないよ)

憂「お姉ちゃん? どうしたの、黙っちゃって」

唯「あははー。フローリングがちょっと冷たかっただけー」ゴロゴロ

唯(だから……我慢しなくっても良いよね?)

唯(もし本当だったら神様ごめん! でも本能にはあらがえなよーだ)

唯「うーいー あーいーすー」

憂「外、雪降ってるのにアイス? 寒くない?」

唯「お家の中はあったかいよ!」

唯「だからアイスの神様も許してくれるよ!」

唯(あれはただの悪い夢だから)

唯(アイスを食べても神様は許してくれるのです)ふんすっ!

憂「チョコと抹茶味、どっちが良い?」

唯「今日はチョコの気分だよー」

憂「分かったー。私は抹茶ね!」



唯「おーいしー」

唯「ほっぺたがポロリしちゃいそーだよー」

憂「ポ、ポロリって……お姉ちゃん、その表現はちょっと……」

唯「え? なんか、おかしかった?」

憂「私がおかしくなりそうだよ」

唯「憂と言い、あずにゃんと言い……今日はやっぱりおかしいや」ムグムグ

憂「私はいつも通りだよ?」

唯「いつも通りだからおかしいんだよ?」

憂「……」

憂「……なるほど」




……

唯「じゃあ、おやすみー」

憂「おやすみ、お姉ちゃん」パタンッ

唯「……」

唯「……」

唯「……」

唯「……あずにゃんはおかしくない」

唯「おかしいのは私なんだよ、憂……」




―つぎのひ!―

 ギュオーン ダカダカ ベンベンポロリラ~♪

 ……。

梓「ふぅ、やってヤッタデス」

澪「あ、梓……?」

梓「どうしました?」

澪「なんか、今日の梓の演奏変じゃないか……なぁ?」

紬「そうかしら? いつも通り、すごく上手いと思うけど……」

律「私もそう思うよ?」

唯「……」

梓「澪先輩どうしたんですか? 私はいつも通りですよ?」

澪「……」

澪「……気のせい、だよな?」

唯「み……」

唯「澪ちゃん、気のせいだよっ!」

唯「気のせい気のせい」

唯「あんな事ある筈ことないでしょー! あははー!」

澪「あんな事……?」

律「あの話の事じゃないの? ねぇ、澪ちゅわーん」ボソッ

澪「ひああああああっ!」



梓「唯先輩、今日も一緒に帰りましょう?」

唯「う……うん、良いよ……?」

律「お前ら仲いいよなー」

紬「仲が良いのは、良いことだわ」ムギュギュン

澪「あうあう……はわわ……」ガクガク…

律「おーい、澪ー」

澪「りつぅー!」

紬「むぎゅむぎゅ むぎゅぎゅん」キュンキュンキュイン!




―かえりみち!―

梓「……」テクテク

唯「……」テクテク

梓「……」テクテク

唯「……」

唯「あのー、あずにゃん……?」

梓「唯先輩……」

唯「ど、どうしたの?」

梓「最近、私、おかしいんです」

唯「……。……どーいう事?」

梓「先輩」

梓「今から話す事、誰にも話さないで下さいね?」

唯「うん、話さないよ」

唯「私、口堅い方だし!」フンス フンス!

梓「……そんな風には見えないですけど」

唯「失礼なー」プンプン

梓「全く……とりあえず、その言葉信じてみますね」


梓「私は、一昨日から何にも食べてません」

唯「へっ?」

梓「だけど、少しもお腹がすきません」

梓「それに、食べてないのにこんなに元気です」

唯「……うん」

梓「おかしいですよね」

唯「……。……そうかな?」

梓「そうですよ」

梓「それに……他にも……色々と」

唯「どーしたの?」

梓「眠ろうとしても眠れないし」

梓「それなのに、全然眠くなくって」

唯「うん」

梓「たまに、急に気が遠くなって」

唯「うん」

梓「後は……」

梓「……」

唯「……どーしたの?」



梓「私、内側から腐っています」



唯「どーいう事、かな……?」

梓「そのままです」

梓「自分の内臓が腐って糸を引いているのが分かるんです」

唯「でも、まだ冬だよ? 人間って、そんなに早く腐るものかなー……?」

梓「知りませんよ。私、こんな事初めてですし」

梓「そもそも、人間が腐るところなんて見た事ないし見たくもないです」

唯「私も、見た事ないや」

唯「見たくもないよ」

梓「……私も……です」

唯「うん……私も……」



唯「……」

唯「あずにゃん」

梓「……はい」

唯「あれは、やっぱり夢でもなんでも無いかも知れないね」

梓「そうかも知れませんね」

唯「だったら、嫌だね」

梓「嫌……です……」

梓「……腐ったら、私、どうなるの?」

唯「……さぁ」

梓「いや……です……」

梓「こんなの、嫌ですっ」

唯「私も、そうだよ」



唯「……ごめんね」

梓「……?」

梓「どうして唯先輩が謝るんです?」

唯(だって、私が居もしない神様にお願いしちゃったんだもん)

唯(『何があってもだいじょーぶ』、だなんて)

唯(あずにゃんは覚えてないみたいだし)

唯(私が、あずにゃんを生き返らせた事を)

唯「……」

唯「えへへ。思わず謝っちゃった」

唯「あの時、隣に居たからさー」

唯(……ごめんね。本当に、ごめんね)

梓「唯先輩の言ってた事、始めは馬鹿にしてましたけど……」

梓「やっぱり、そうなのか、な……」…ウルッ

梓「ねぇ、唯先輩。私は本当に一度死んだんですか?」グスグス…

唯「それは……ほんとう、だよ……ごめんね」

梓「信じられません。信じたくないです」ポロポロ

梓「そんな事、ありえるわけないでしょう? なのに、なのに……」

梓「ねぇ、先輩……それで私はおかしくなったんですか?」

唯「あず、にゃん……」


唯「あずにゃんはおかしくなんてないよっ」ギュギュッ!

梓「わっ!?」

唯「あずにゃーん」ギュギュー…

梓「ちょ、ちょっと、外で抱きつくのは本当に止めて下さい!」

唯(つめたい)

唯「やめないもーん」ウリウリ

唯(ぐにゃぐにゃしてる)

唯「あずにゃんはいつも通り可愛いよー?」

梓「せ、先輩……」

唯(仄かに死体くさい)

唯(死体なんて、嗅いだ事ないけど)

梓「唯先輩っ」ギュッ!

唯「……」

唯「よしよし、あずにゃん」ナデナデ

梓「ふにゃん……」

唯「何も怖がらなくったって良いよ」

唯(やっぱり、つめたい)

唯「何があっても、あずにゃんは私が守るから」

梓「唯先輩……」グス…

唯「だから、泣かないで? あずにゃんが泣くと私も悲しいよ」ナデナデ

梓「う、うわぁぁん! 唯先輩、唯先輩っ!」



唯(……生きてる人間の感触じゃ、ない)



唯(で、でも……)

唯(でも、あずにゃんは、あずにゃんだし)

唯(それに……――)


  ――唯『あずにゃんが生きててくれたら、アイスも我慢するし、なにが起こっても私、我慢できるよ!』


唯(これは私が望んだ事)

唯(あずにゃんは、私のせいで……)



唯「あずにゃん。大好きだよ」




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