憂「おはよう。梓ちゃん。」

いつも通り、朗らかに挨拶をする憂。憂って唯先輩そっくりだな。
ふと、そんな事を思ってしまった。唯先輩はずぼらでどこか抜けてて、
だけど一生懸命で前向きで暖かい。いい先輩だった。でも、それは過去形だ。
だって今は___  気が付いたら私の体は小刻みに震えていた。

憂「どうしたの?梓ちゃん」

心配そうに憂が私を覗き込む。駄目だ。憂が唯先輩に見える。あの悪魔に。
あの悪魔に見える。震えそうな体を抑えようと腕をぎゅっと
握る。



梓「だ・・・大丈夫。具合が悪いだけだよ。」

憂「・・・嘘、つかないでよ。梓ちゃん。」

憂の声色が急に冷たくなった。

梓「?!・・・」

憂「部活のことでしょ。ちゃんと話してよ、梓ちゃん。」

梓「・・・・憂。」

憂「何でって顔してるね。」

憂が私を蔑む様な目で見る。もう、私には憂があの悪魔にしか見えなかった。

憂「私、知ってるんだよ?梓ちゃん、お姉ちゃんのこといじめてるんでしょ?」

梓「!・・・ち・・・違・・・」

憂「違わないよ。」

静かな声で言い放つ。憂の一言に教室中がしんと水を打ったように静まり返り、クラスにいる全員が私達二人に注目した。

憂「お姉ちゃん、昨日の夜泣いていたんだよ。梓ちゃんにいじめられたって。ギターがお姉ちゃんよりできるからって。下手糞とかゴキブリ以下とか言って何度もお姉ちゃんの顔を平手でぶって、軽音部から追い出そうとしたんでしょ?ひどいよ・・・・。梓ちゃん。お姉ちゃん、梓ちゃんのこと、大好きだったんだよ?軽音部が生きがいだったんだよ?それなのに・・・・」

憂が嗚咽を漏らし、顔を手にうずめる。憂も唯先輩に騙されてるんだ。
きっと、昨日の夜に嘘泣きをして。部活のときの澪先輩みたいに。
私も律先輩みたいに。嫌な予感が頭をよぎる。

梓「違うんだよ・・・。憂、お願い聞いて・・・!」

憂「嫌!聞きたくない!!」

金切り声が耳を劈く。教室を包む空気がさらに重くなったように感じた。

梓「・・・っ」

憂「言いわけなんて聞きたくないよ!!正直に話してくれたら許そうと思ったのに・・・最低だよ・・・。梓ちゃん。もう顔も見たくない・・・。」

梓「憂・・・」



「うわぁ・・・ひっど~」

どこからともなく非難の声が聞こえる。集団心理というやつなのだろうか、私に
向けての非難の声は次々と挙がる。

「憂ちゃん、可哀想。ってかひどすぎるよね。中野さん。」

「ね~、人としておかしいよね。ギターが下手だからって普通そこまで追い詰めないよね。お姉さん、可哀想。前の新入生歓迎会のときとか、凄く良い人っぽかったのに」

「私さ、前から中野さんって怖いな、って思ってたんだ。だって目つきとか怖いじゃん。実力なければ切り捨てます、みたいな。きっと人を物としてしか捉えてないんだよ。」

クラスメイト達は口々に勝手なことをいって、私を貶める。もはや、この教室に誰も私の味方はいない。掛け替えのない友人、退屈だけど居心地の良かった日常、全部を私は今日一日で失ってしまったのだ。___



気がついたら私は鞄を掴み、教室から全速力で走って出て行っていた。



梓「はぁ・・・。はぁ・・・。」

乱れた呼吸を整える。制服も、髪も、顔も、グチャグチャだ。どうやら、ここは屋上の様だ。
夢中で走っていた私は、周りを見回してようやく、ここが屋上だということを認識した。
今日ほど太陽を憎んだことは無い。射し込む朝の日差しが目障りだ。

梓「・・・。」

手すり越しに下を覗く。頭からいけば首が折れて死ねるかな?ふと、そんなことを考える。
生きていたっていい事なんて無い。教室じゃ独りだし、部活の雰囲気も険悪だし。もうこの
世界に私の居場所なんて無い。私はもう生きていけないんだ。自殺を肯定する理由は次々と挙がる。
      • もう、いいよね?

梓「やってやるです・・・。」

手すりを飛び越え、私の体は宙を舞った。_____





唯「スカート3mm~、詰めた~ら飛ぶよぉ~♪昨日より遠くぅ~、一昨日よりオクターブ高くぅ~♪」

上機嫌な歌声と共に歩みよる先輩が見える。最期に見えるのがこの人か。自分の不運さに嫌気がさす。神様は私が嫌いなのだろうか。
薄れゆく意識の中、私は神様を恨んだ。

唯「あははぁ~♪あずにゃんが死んでるぅ~」

何か面白いものを見つけた子供のような笑顔で唯先輩は私の頭を足でつつく。

梓「・・・。」

唯「早まっちゃったんだねぇ~。可哀想~。自殺したら地獄にいっちゃうのにねぇ~。」

梓「・・・。」

唯「あはははははは!あずにゃん、地獄行きぃ~!地獄行きぃ~!きゃはははははははははははははははははははははははは」

先輩は狂ったように笑い、スキップで私のもとを去って行った。最期の最期に
私を絶望の淵に落として。

唯「死んでもこれから地獄の責苦が待ってるね♪ご愁傷さま、あずにゃん♪w」



~fin~



これで終わります。最後まで見てくれた方、ありがとうございました。








唯「ってなお話を書いてみたんだぁ~♪どうかなぁ?」

律「なんだよ。これ。ひっでぇ~・・・」

澪「ちょっと、これは流石にな。」

紬「流石にですね・・・。」

梓「何なんですかこれ?!私、先輩に暴言吐かれたり、殴られたり、蹴れられたりで散々じゃないですか!!しかも、自殺・・・先輩、私に恨みでもあるんですか?!」

唯「痛っ・・・痛ててて、痛い!梓にゃん、アームロックかけないでぇ・・・!」



   ~ ホントにfin ~



ごめんなさい。あまりにも後味が悪すぎるので書いてしまいました。失礼します。