澪「・・・もうすぐ、職員室だ。ムギ、大丈夫か」

紬「ええ、勿論」

ピロピロピロ♪

律「ん?携帯が・・・。調子が戻ったのかな。あ、さわちゃん?え、なんだって?」

さわ子「ふし・・。しゃ・・・。に・・・」

律「さわちゃん?おい、さわちゃん?」

ツー、ツー、ツー

梓「何だったんですか?」

律「良く聞こえなかったけど、不審者がどうとか」

澪「えっ?」 びくっ

律「はっきりとは聞き取れなかったんだけどな。不審者、逃げてとかなんとか言ってた」

澪「それって、まずくないか?」

律「間違い無く、まずいだろうな」

梓「こんな時なのに、どうして不審者が?」

紬「逆にこんな時だから、かしら。外部の人間が入り込んでも、絶対気付かれないでしょ」

がたがた、がたがたっ

澪「わっ」

梓「ひっ」

律「なんだか、背筋が寒くなってきたぞ」

紬「唯ちゃんは大丈夫?・・・唯ちゃん?」

唯「大丈夫だよ」 にこっ

紬「唯、ちゃん?」

唯「私がギー太で、みんなを守るから」

律「おい」

唯「私が一人で犠牲になるつもりは無いよ。そんな事になっても、誰も喜ばないでしょ」

澪「当たり前だ」

唯「だから私はギー太で不審者を倒して、みんなと一緒に朝まで寝るんだよ」

紬「唯ちゃん」

唯「私はギー太がいれば。それにみんながいれば、何だって出来るんだから」


梓「そんな訳無いじゃないですか」

唯「あずにゃん?」

梓「先輩一人に任せられる訳無いじゃないですか。・・・唯先輩の背中は、私が守ります」

唯「あずにゃん♪」

梓「大体唯先輩一人では、危なっかしくて見てられません」

唯「たはは。面目ない」

梓「頑張りましょう、先輩」

唯「うん。頼むよ、あずにゃん」

梓「はいっ」



 1階廊下

唯「私達が前を歩くから、澪ちゃんはライトで照らして」

澪「ああ」

ガタガタ、ガタガタッ

唯「まだ、風が強いね」

梓「割れた窓から入り込んだんでしょうか」

唯「あずにゃん、油断しちゃ駄目だよ」

梓「はいっ」

澪「本当に不審者がいるのか?」

紬「ただこれだけ暗いと、仮にいても気付かないわね」

澪「・・・ムギ。いざって時は走ってもらうぞ」

紬「任せて♪」

律「正直済まん」

澪「馬鹿」 くすっ



ぺた、ぺた、ぺた


律「・・・変な音しないか?」

紬「確かに、何か聞こえるわね」

澪「後ろ、か。・・・ライトで届く範囲にはいないみたいだな」

紬「唯ちゃん、前に誰かいる?」

唯「ちょっと見えないね。・・・ああ、携帯を」 ぱかっ

梓「こちらも、誰もいませんね」


ぺた、ぺた、ぺた


唯「音は、するね」

梓「先輩」

唯「大丈夫だよ、あずにゃん。手、出して」

梓「は、はい」

唯「大丈夫、だからね」 きゅ

梓「はい」 きゅ


ぺた、ぺた、ぺた


紬「走る?」

澪「いや。迂闊に動く方が危ないかも知れない。一度止まって、何なのかを確かめよう」


ぺた、ぺた、ぺた、ぺた、ぺた


紬「・・・近付いて来てるわね」

澪「・・・後ろだ。ライトの範囲に入った。足が見える。・・・それと、血の付いた角材か?」

唯「任せて。あずにゃんっ」

梓「はいっ」


ぺた、ぺた、ぺた、ぺた、ぺたっ


紬「……近いわよ」

律「澪」

澪「もう少し、もう少し。もう少し」


ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた


律「澪っ」

澪「え、えいっ」 ぴかっ

?「ぎゃーっ」

唯「だーっ」 だだだっ

梓「唯先輩っ」

唯「覚悟しろっ」 ぶんっ

梓「ゆ、唯先輩っ。危ないっ」 

唯「情け無用っ」 ぶんぶんっ

?「ひゃーっ」


梓「唯先輩っ、止めて下さいっ」 はしっ

唯「あずにゃん、止めないでっ。ここで倒さないと、私達が・・・」

梓「よ、良く見て下さいっ」

唯「見てって、そんなの不審者・・・。あれ?」

梓「・・・そういう事です」



 職員室

唯「・・・つくづく、申し訳ありませんでした」

さわ子「冗談じゃないわよ。ここをかすめたわよ、ここを」 

唯「たはは。だってりっちゃんが、不審者とかいうから、つい」

さわ子「不審者?無事に校舎から出られるのなら、帰って良いわよって言っただけじゃない」

律「正直、済まん」

澪「腰が抜けたよ、今更」

紬「私も、もう限界」 くす

澪「全くだ」 くす


梓「雨、もう止んでたんですね」

さわ子「今は風だけよ。父兄が迎えに来た子から、順に帰って行ってるわ」

唯「そですか」

さわ子「全く。連絡付かないから人が迎えに行ったのに。ここをギターが、すーって。すーって」

唯「だって、ぺたぺた音がするんだもん」

さわ子「ずぶ濡れだったんだから仕方ないでしょ。大体赤い傘を、どうして角材と見間違う訳」

澪「その、あの。色々、混乱してまして」

梓「と、とにかく、無事で何よりです」

さわ子「まあ、そういう事にしておくわ。りっちゃんの傷も軽いし、縫う程でもないでしょ」

律「・・・」

さわ子「とにかくあなた達、家の人に・・・。ちょっと聞いて、無いわね全然」

唯「ういー♪」 すかー

梓「背中ですよ、お腹じゃないですよ」 すかー

澪「お化け、お化け出ないよな」 すかー

紬「りっちゃん、結構重いかも♪」 すかー

律「正直、済まん」 すかー



和「山中先生、後は唯達と連絡が取れれば・・・。これは、一体」

さわ子「私が知りたいわよ」 くすっ

和「唯達が無事なら、全員安否が確認出来ました」 ふぁー

さわ子「ご苦労様。真鍋さんも休んだら」

和「・・・では、失礼して」 もぞもぞ

唯「和ちゃーん♪」 すかー

和「全く、唯ったら♪」 すかー

さわ子「えー。毛布は、と」 ふさっ

唯「ありがとー」 すかー

さわ子「あーあ。私も疲れたわよ」 もぞもぞ

唯「キャサリーン♪」 すかー

さわ子「私だって、私なりに頑張ってるのよ-」 すかー



翌日・放課後、軽音部

律「言葉がないな」

澪「まずは、割れたガラスを片付けるか。危ないから、慎重にな」

梓「はい」

唯「りっちゃんとムギちゃんは休んでて良いよ。私達でやるからね」

紬「正直済まん」

律「あ、この野郎」

紬「一度言ってみたかったの♪」

律「全く」 くすっ

唯、澪、梓「あはは」



澪「取りあえず、ガラスは片付いたか」

梓「ドラムも、それ程濡れてませんね。風の吹く向きと逆にあったみたいです」

律「どっちにしろ怪我してるし、しばらくは乾かしておくさ」

唯「ギー太もひなたぼっこさせないとね」

梓「ムッタン、隣良いですか?」

唯「勿論、大歓迎だよ♪」 にこっ


澪「終わってみれば、大した事は起きてなかったんだよな」

紬「そうかも知れないわね」 くすくす

澪「・・・私、恥ずかしい事言ってなかったか?」

紬「全然。むしろ恰好良かったわよ」

澪「ぐっ」

律「いざって時は、人間おかしくなるものさ」

澪「反論出来ん」

律「冗談だよ、冗談。昨日はありがとう」 撫で撫で

澪「ん」 こくり

唯「楽器がこれだと演奏も出来ないし、今日はどうする?」

梓「困りましたね」

律「確かに、な」

紬「うーん」

澪「お茶にするか」

律「澪らしくない台詞だな」

澪「変か?」

唯「全然。これぞ軽音部って台詞だよ」

澪「軽音部?」

唯「そう。桜が丘高校高校軽音部は、やっぱりこうでなくちゃ」

梓「なんですか、それ」 くす

紬「うふふ♪」

律「だったら、昨日の澪発言集を再現して盛り上がろうぜー」

澪「調子に乗るな」 ぺた

律「正直済まん」  

澪「やっぱりそれか」 くすっ

唯、紬、梓「あはは」




                        終わり