ここはとある避暑地の別荘
軽音部恒例の夏合宿のために今年も紬にお願いして、空いている別荘を使わせてもらえることになった

律「さぁ~着いた着いた」
唯「うわぁ~ 夏なのに涼しいねあずにゃん」ガバッ

梓「唯先輩に抱きつかれると暑いですけどね」

澪「ムギ、毎年すまないな。ていうか今回の別荘もまた凄いな…」

紬「いいのよ澪ちゃん。高校最後の夏休みなんだからたくさん思い出つくりましょう」

唯「さわちゃんもくればよかったのにねー」

澪「職員の当番登校だってあるし、みんなの進路の事もあるし今年は仕方ないな」

律「さ~て遊ぶぞーい」

唯「りっちゃん!川だよ!川があるよ!」

律・唯「突撃ー!!」

梓「唯先輩、律先輩 自分たちの荷物くらい片付けてからにしてください!」

澪「結局3年間こんな調子だな…」

紬「とつげき~」

澪「…ですよねー」

澪「わ、私も、とつげき~」

こうして唯たち3年生にとっては最後の合宿が始まった

本来は秋の文化祭に向けての特訓のための合宿だったが、今年も軽音部らしく川で遊んだりバーベキューをしたり皆それぞれに夏を満喫していた

唯「ごっつぁんでした!」
紬「バーベキューっていいわね~」

律「よーし!腹ごしらえも済んだことだし、みんなでクワガタとりにいこうぜ~」

唯「くわがた!」

紬「私一度でいいからクワガタを自分の手で捕まえてみたかったの~♪」

澪「わ、私は行かないからな!…虫…こわいし…」

梓「私も食べてすぐにそんなに動けないですしパスします」

結局3人で近くを探索する事になった

しかし辺りの木を探してみたがクワガタは見つからなかった
唯達が諦めて別荘に帰ろうとした所で、先頭を行っていた律が唯と紬を呼んでいる

律「おーい、こっちきてみー! すごいぞー!!」

唯「どうしましたか!?隊長!!」

紬「事件の気配がするわ~♪」


その正体は、紬の別荘の倍はあろうかという 洋館といわれる雰囲気の建物だった

唯「うわぁ~ すごい家だね!これも誰かの別荘なのかな?」

律「まぁそーだろな こんな別荘持ってるなんてどっかの国の王様かwww?」
紬「でもここって今は使われていないんじゃないかしら?ほら、庭も手入れされてないようだし…」

そう言われるとそんな気もするな、と2人は思う
確かに庭は草が生い茂り、入口の門には幾重にも鎖が巻かれ錠がしてあった
よく見るとブロックを積み上げた塀も所々崩れてるようだった

律「確かに誰かが管理してる感じじゃないな」

唯「もったいないね こんな立派なようかんなのに…水ようかん食べたい…」

紬「じゃあ帰ってお茶にしましょう♪」

律「結局クワガタいなかったなー」


その夜 楽器の練習も一段落ついた所で律がお約束の提案をする

律「諸君!私はこれから肝試しをしたいと思います!!どうですか!!」

案の定乗り気なのは唯と紬、梓はやれやれといった顔で澪は部屋のすみで震えていた

澪「私は絶対にイヤだからな!!だいたいこんな流れ去年もあっただろう!あの時だってむちゃくちゃ怖かったんだから…」

梓「そうです!私達は練習するために来たんですよ…まぁ今年もはしゃいじゃいましたが…」

律「え~ いいじゃん澪、やろうよ~」

唯・紬「やろーやろー!」

澪「イ・ヤ・ダ!!」

梓「澪先輩もあんなにいやがってるじゃないですか。それにやるにしても場所はどうするんです?私達この辺りの道なんて全然知りませんよ」

律「フッフッフ 場所は既に決めてあるのだよ!いくぞーみんなー!!」

結局律たち3人がノリノリで行ってしまい仕方なく梓も着いて行き、澪も1人になるのが怖かったので全員で律の案内の元、決まっているという場所へ向かった
律が肝試し場所として選んだのはそう、あの洋館だった
昼間はそうでも無かったが闇の中、懐中電灯に照らされるとなんだか不気味だ

澪「ひぃぃぃ」gkbr

梓「律先輩 これって人の家なんじゃないですか?まさかここに不法侵入するんじゃないでしょうね」

律「大丈夫だ、もんだ(ry ここは私の調べによると今は誰も使っていない空き家だ。なのでちょーっとだけ使わせてもらうんだ」

唯と紬は恐らくここの事だと分かっていたのか、なにやらキャーキャー言いながらも楽しそうだ
澪「無理!!絶対無理」

梓「使ってないとは言ってもさすがにこれはまずいんじゃないですか?そもそもどうやってはいるんですかこれ。入口はすごい鍵かかってますよ」

律「ん?そこの塀見てみ 崩れちゃってるだろ そこから入る」

梓「律先輩が崩したんじないでしょうね」

律「ばかちん!さすがの私もそこまではせんわい!!」
澪「なぁ律 もう帰ろう…勝手によその土地に入っちゃダメだよやっぱり」

澪はうっすらと涙をうかべている

結局嫌がる澪を律が手を引き、塀の残骸を越え庭に入る。そして梓、唯、紬と続く。

庭は一面草で覆われていて足元を照らしても草しか見えない状態だったが、律を先頭に昔のRPGのように縦1列になり、建物の方に向かい歩いていく

唯「なんだか冒険みたいだね ドキドキです!」フンス

紬「私一度でいいから洋館に迷い込んでゾンビを退治してみたかったの~」

澪「ゾッ…ゾンビ?!」

梓「ムギ先輩…ホントですかそれ…」

律「なんだかんだ言ってみんな楽しんで・・あイダッ!!」

律が何かにつまづいた
そしてガラガラと何かが崩れる音
草に紛れて粗大ゴミでも捨ててあったのかと思ったが、懐中電灯で照らしてよく見てみると粗大ゴミではなかった

律「なんだこれ?石か?」
梓「みたいですね。石を積み上げてたんですかね?」

唯「りっちゃんダメだよ~ よそのおうちの物壊しちゃ。めっ!」

律「この草の中、先頭を行く私の身にもなってくれよ。それにただの石じゃんか」

紬「そう言えば死んだ子供が河原で石を積み上げる話があったわね~♪」

澪「コワイコワイコワイコワイ…」

律「ムギ…この状況じゃ私も怖いわそれは」

そしてようやく館の玄関へと辿り着いた

律「さーてと どうやって中に入ったもんかな~」

梓「やっぱり入るんですか…でも当然鍵がかかってるでしょうしどうやって入るんです?」

律「わからん!とにかく窓とか空いてたり壊れてる所がないか探してみるか」

紬「犯行は密室で行われた…」ブツブツ

澪「もう十分楽しんだよな!さぁ帰ろう!…」顔面蒼白

律「ここまで来て帰っては武士の名が廃るわい!しっかしどーしたもんか…」

唯「あ…開いた」

律澪梓紬「はい?」

当然鍵がかかっているであろうと思っていた玄関の扉はあっさりと開いた

律「あら…開いてたのね…」

梓「唯先輩の固定概念にとらわれない自由な行動が羨ましいです」

唯「ほぇ?」

律「なんにせよ玄関は開いたんだ。とにかく入ってみようぜぇ」

恐る恐る中に入って行く5人。澪はぎゅっと目をつむり律の腕を掴んでいる

律「おじゃましまーす…」

誰も居ないと分かっていながらつい口にしてしまう

懐中電灯で辺りを照らすとエントランスの壁や机の上にいかにも高級そうな調度品が飾られている

しかし外観同様、館を使わなくなって長い時間が過ぎているであろう事は床や机などに積もったホコリからみてとれる

律「しっかし凄い屋敷だな。ここ日本だぞ。ムギの言う様にホントにゾンビやハンターがいたりしてな」

意地悪そうな顔で澪の方を見る
澪はさらに目をつむろうとして、目を→←こんな感じにした

唯「うーん 真っ暗でよく見えないや。電気のスイッチどこかな~?」

梓「電気は…こんな長く使ってないっぽい屋敷なんですからさすがに止まってるんじゃないですか」

広いエントランスを探検する5人 澪は律にくっついているだけだが

律「おーい唯、なんか面白そうな物見つかったか?」

唯「ゆい は どうのよろい と てつのやり を みつけた」

どうやら鉄製の甲冑の置物らしい…

紬「あら、これは電気のスイッチかしら?えいっ」カチッ

梓「ムギ先輩まで…点くわけな…」

…明かりは…ついた!

律「えっ!?」
澪「…ヒッ」ビクッ
梓「なんで…?」
唯「おお~」
紬「まぁ♪」

壁に付けられた電灯にもホコリが積もっているので光は強くはないが確かに明かりは灯っている

律「ちょ、ちょっと待てよ!なんで電気が!?」

梓「うそ…え?えっ?」

唯「さすがムギちゃん」

紬「えっへん!」

澪は周りの声の様子から異常であることを感じ震えていた

律「なんかこの屋敷おかしくないか?さっきの玄関にしてもそうだ。入口の門にはあんな厳重に鍵がかけてあったのに玄関は開けっぱなしなんておかしいだろ!?それになんで電気が来てるんだよ!?この感じじゃ使わなくなって1年や2年じゃないぞ!!」

律の顔色が変わったのを見て唯と紬も異常であることを感じていた

律「よ…よし!肝試しはこれにて終了 帰って風呂入って練習すっか」

梓「そ…そうですよ 練習です練習…はやく帰ってやりましょう」

澪はもちろん唯と紬も同感のようで皆玄関の扉の方に向かっていた

律「さあ帰ろう帰ろう!いやー怖かったなー あ、ムギ電気消してお…」

扉のノブに手をかけた律が言葉を詰まらせる

ガチャ…ガチャガチャ!ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ…

律「嘘だろ!?なんでッ!?」

扉が開かない。ノブを回してみても押しても引いても開かない。

まだ消されていなかった電灯が一瞬点滅したような気がした

律はまだドアノブを必死に回している。澪はとうとう泣き出してしまったがそれでも律にしがみついている。
梓も顔から血の気が引いているようで言葉もなく律を見つめていた。
唯と紬は顔色こそ平常だが呆然と律の行動を見つめていた。

律「なんなんだよコレ!?どうなってんだッ! 唯!さっきどうやって開けたんだ!?」

唯「え?どうやってって…普通に開いたよ」

律「普通に開かないから聞いてんだよッ!!唯!やってみろ!!」

律の悲鳴にも似た叫び。唯は一瞬戸惑うが扉の前に行きドアノブを回す

が…駄目っ!
扉は開く気配も見せない

唯のチャレンジ後、数分間誰も動かなかった。動けなかったというべきか。皆頭の中で必死に考えを整理していたのだろう。
沈黙を破ったのは紬

紬「私たちって、閉じ込められたの?」

澪の泣き声が半音ほど高くなる

律「そうなるのかな…どういう仕組みか知らないけど扉がびくともしない、あんなに簡単に開いた扉がだ」

梓「どうしたらいいんですか?私たちどうなっちゃうんですか?」

唯「あずにゃん…」

律「とにかく外へ出る事だけを考えよう」

みんながコクリと頷いた

律「唯…さっきは怒鳴っちゃってごめん」

唯「うん」


一旦はパニックに陥ったが時間と共に皆の頭も少しずつ機能しはじめた

律「…そうだよ!扉が開かないなら窓から出ればいいじゃんか!しっかりしろよな~ホント」

梓「そうでした!なんですぐ気付かなかったんだろう」

唯「じゃあ出られそうな窓を探しにレッツゴー」

紬「レッツゴー♪レッツゴーゴー♪」

澪「早くお風呂入りたいな…エヘッ」

澪もようやく落ち着いたらしく少し微笑んだ

律「じゃああの部屋を見てみるか」

玄関から一番近い扉を指差し、また律が先頭になって部屋へと向かう。

ゆっくりと扉を開け部屋へと入る。照明のスイッチを探し明かりをつけようとするが球切れなのか明かりはつかない。
しかし幸いにも月明かりが差していたのでなんとか窓際には辿り着けそうだった

律「みんな、足元には注意しろよ。足ぶつけたら痛いんだぞー」

皆クスクスと笑う
闇に目が慣れ始めていた

唯「ここ…子供部屋だったのかな?」

梓「そう言われれば…そうですかね」

部屋にはベビーベッドや赤ちゃん用の吊るすメリーゴーランドの様なものがある

紬「じゃあここは別荘じゃなくて誰かが住んでいたお家なのかしら」

そんな会話をしていると、先頭の律が窓際に到達する

律「さぁ!帰ろうぜ やっぱり人の家に勝手に上がり込んじゃ駄目だよな~」

梓「どの口が言うんですか全く…」

あまり見たことのないタイプの窓だったので律は懐中電灯を窓に向けて、開ける方法を探していた

律「んー?どうなってるんだこの窓?取っ手らしいものがないぞ~? おっ!これかな?」

律が懐中電灯をさらに窓際に近づけた時、ジュッ という何かが焼けるような音がしたと同時に、辺りがまた真っ暗になった

律「!!!?」
澪梓唯紬「?」

律の持っていた懐中電灯の先の部分、ちょうど電球のあるあたりが切り落とされたように消えていた。律は一瞬何が起こったか理解出来なかったがすぐにある匂いを嗅いで理解した。

律「うあああぁあぁぁぁぁあぁ」

そしてエントランスの方に向かい闇の中を全力疾走した。
懐中電灯は先がドロドロに溶けていたのだ

律にしがみついていた澪も律に引きずられるようにして付いていく。付いていかざるを得ないのか
残った3人は何が起こったのか分からず立ちすくんでいる

何かが、また何かが起こってしまった事に気付いた3人は律の後を追った

3人はエントランスに戻ったが、いると思っていた律と澪の姿はなかった

唯「あれ?りっちゃん?澪ちゃん?」

梓「いませんね…」

紬「もしかして玄関の扉が開けられて外に出たのかしら?」

扉を開けようとする紬。しかし扉はびくともしない。

紬「やっぱり無理ね。となると他の部屋かしら?」

見渡すと1階には他に部屋がもう3つ、2階にもいくつか部屋があるようだ
ふと見ると、床に律の持っていた懐中電灯の持ち手の部分が落ちていた

梓「あ、これは懐中電灯…!?」

それは熱で溶断されたように先の部分が無くなっていた。

梓「え…なに…コレ?」

紬「これは…溶けた…のかしら?」

唯「なんで!?普通に使っててこんな風にならないよね?」

梓「もうなにがなんだかわかりません…グスッ なんで!?どうしてこんなことになっちゃったの!?ワァァァァン」

梓が泣き崩れる

紬「梓ちゃん…ヒック…あずさちゃぁぁん!!」

紬もつられるように号泣した

唯の目にも涙が溜まっている。普段どんなに振る舞っていても彼女たちは高校生の女の子だ。こんな状況になれば耐えられないだろう

唯「あずにゃん、ムギちゃん、しっかりして。まずりっちゃんと澪ちゃんを探そう」

唯は強かった。普段は妹に世話を焼かれたり後輩から叱られたりしている子だったが、その心は強かった。心の力が強かった。

唯「とにかく他の部屋を探そう。そしてみんなで帰ろう。文化祭ライブ頑張ろう!!」

梓「グスン…ゆいせんぱい…」

紬「ゆいちゃん…」

唯の心の力が伝わったのか、2人は冷静さを取り戻していた
そして1階の部屋から順に見て回った

紬「いないわね…」

梓「…という事は」

唯「2階だよね…」

3人は疲労とショックで重くなった足をひいて2階へと向かう


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