――5分後
律「制服に着替えた所で、さっそく練習開始だ!」
唯「おーっ!」
紬「おー」
澪「おー」
○○「危なかった……階段下に生徒らしき人がちょくちょく通ってたよ。見られてなきゃいいけど」
梓「ま、まあ、ここまで昇ってくる人は少ないですし、大丈夫ですよ。ここにいる限り、他の生徒にはばれません」
ガチャ
和「みんないるわね? 今日来てくれて助かったわ。次の合同フェスのバックステージパスが届いたのだけど、なんだか1枚多くて……って」
唯「の、和ちゃん?」
律「やばっ!」
和「……」じーっ
○○「!」びくっ
和「ねえ、その人、誰?」
律「け、見学者だ! けいおん部の活動を見たいって!」
和「……だけど、その人明らかに男なんじゃ」
澪「や、やだなあ、和。ちょっと男の子っぽいけど、この人はちゃんとした女性だぞ?」
律「そうだぞー。ほら、色白でかわいいじゃないかー」
梓(それは無理があるんじゃ……)
和「……」じーっ
○○「え、えーと」
律「こら! 喋るな!」ヒソヒソ
梓「声でばれますよ!」ヒソヒソ
和「胸もないし、やっぱり男なんじゃ……」
澪「む、胸なら律だって似たようなものだし!」
律「ひでえ!」ペターン
梓(……)ぺターン
紬「あらあら」ぷにゅん
唯「○○君もちょっとはあるよ! 胸!」
○○(さすがにそれはない)
和「……」じーっ
○○「う……」びくびく
梓「せ、先輩、私の後ろに隠れて!」ヒソヒソ
○○「そんなことすると逆に怪しまれるような」ヒソヒソ
和「……」じーっ
和「……ああ、なるほど。だいたいの検討はついたわ」
和「つまり、あなたが噂の彼氏さんね」
梓「噂?」
○○「噂?」
律(やばい)
和「今、生徒たちの間で広まってる中野さんの噂。結局本当だったわけね」
梓「あの、それはいったい……」
律「……」そーっ
澪「律、逃げるな。もう観念した方がいい」
律「やだー! 梓に怒られるじゃないかー!」
――事情説明後
梓「わ、私が秘密で禁断な恋をしてるなんて……どうしてそんな噂が!?」
澪「主にこいつが広めたんだ」
律「広めました」
和「思いっきりクラスメイトのみんなにも話してたものね」
梓「そ、それじゃあ、1学期の終わり頃に感じてた周りの視線は、そのせい……?」わなわな
○○「幽霊話がなくなったのは、その噂が広まったからなのか……」
梓「……」わなわな
律「あ、あのー、梓さん? 怒ってらっしゃる?」
梓「……」
梓「……」
梓「いえいえ」
梓「怒ってません」
梓「今となっては全部が全部嘘というわけでもありませんし」
梓「その噂のおかげで、幽霊話がなくなって、○○先輩がここに来やすくなったのも確かです」
律「だ、だよなあ!」
梓「ただし!」
律「ひぐっ!」びくり
梓「これから私が被るであろう好奇の視線を、律先輩は止める義務があります」
律「は、はあ」
梓「そのために代わりの噂を流さなくてはいけません。なので」
梓「2学期からは、『田井中律に30歳年上の、奥さん持ちの彼氏ができた』という噂話を『自分で』流してくださいね」ニコッ
澪(怒ってる)
紬(怒ってるのね)
唯(あずにゃん怖い)
○○(……怒らせないように気をつけよう)
和「話を聞く限り、そこの彼氏さんはたびたびこの部室に来ていたみたいね」
律「あ」
梓「しまった、和さんがいるのを忘れてた……!」
和「中野さんの彼氏さんだとしても、部外者が校舎に入るのはちょっと……」
紬「厳密に言えば部外者でもないのよ?」
和「どういうこと?」
唯「○○さんは、次の合同フェスで一緒に演奏するんだよ! だからここで練習しようって!」
和「……ああ、だからこのパスが6枚あって、バンド名もあんな風に改名されていたのね」
澪「改名?」
律「むっ!」キラーン
律「ぱんぱかぱーん!」
澪「わ、びっくりした」
律「ここで私たちの新しいバンド名を発表しまーす!」
梓「え、変えるんですか?」
律「今回だけだよ。○○がいるのに今までのままだと変わり映えしないからな」
澪「いつの間に」
律「ライブの参加用紙を出す時に思いついてなー」
唯「すごーい。どんな名前なの!?」
律「聞いて驚くな! その名も!」
和「『放課後ティータイム+1』よ」
律「え?」
和「え?」
律「どうして先に言っちゃうかなあ……」ずーん
和「だって唯が『どういう名前なの』って聞いてきたから」
律「はぁ……」
梓「+1(ぷらすわん)って」
澪「なんて安直な」
唯「なんだかかっこいいね!」
律「だろ? この『1』の部分に○○らしさを出したんだ」
○○「どういうところが1なんだろ」
梓「体格とかですかね。プラスはギターを表しているとか」
和「うーん、ライブに一緒に出るにしろ、ここの生徒でない人間が校舎に入るわけには」
唯「和ちゃーん、なんとか見逃してけろー」
和「生徒会長として無理よ……先生の許可があるならともかく」
律「おー、それなら」
がちゃ
さわ子「今日は練習日だったかしら、みんな、いるの?」
律「あ」
梓「あ」
さわ子「え?」
――事情説明という名のさわちゃん言い訳タイム
和「では、山中先生が許可を取っている、ということでいいんですね」
さわ子「えーと、そうねえ、そういう感じで……」
和「他校の生徒との合同練習……まあ、それなら納得ができますが」
和「ただ、学年主任の先生への許可は取っていますか? それと××高校の軽音部顧問にも話を通していますか?」
さわ子「そ、それはまあ、おいおい……」
和「おいおい?」
さわ子「あ、あはは、大丈夫よー。全部やってるからー」
さわ子「……」ギロ
○○「あ」びくっ
梓「どうしました?」
○○「辞世の句を用意した方がいいのかもしれない」
梓「はい?」
○○「さわ子先生怖い。超怖い」びくびく
梓「……何か怖いなら、手でも握りましょうか?」
○○「へ?」
梓「いえ、そうですね、みんなに見られないよう……指1本ぐらいなら貸せます。どうですか?」
○○「……お願い」
梓「どうぞ」スッ
キュ
梓「……」カァ
○○「て、照れるね」
最終更新:2011年07月30日 16:45