――寝室

梓「と、閉じ込められてしまった……」

○○「どうしたものか……ベッドは1つか。ダブルベッドだから広いっちゃ広いけど」

梓(これぐらいなら2人でも余裕の広さかな)

○○「んー……俺はソファで寝ようか」

梓「だ、駄目です! そんな所で寝ても疲れは取れませんし、悪くすれば身体のどこかを痛めるかもです!」

○○「いやいや、一晩ぐらいなら大丈夫だって。えーと、薄い掛け布団の1つでもあれば……どこかにないかな」

梓「先輩!」ぎゅっ

○○「っと、どうかした?」

梓「あ……えと」

梓(勢いで先輩の服の裾を掴んでしまった)

梓(どうしよう)


○○「梓ちゃん?」

梓「……」

梓「2人共ベッドの両端で寝れば、十分距離が開きます」

梓「私は寝相も悪くない方なので、寝てる間に近づくこともありません」

梓「だから……その、先輩もベッドに……どうぞ」

○○「あー……」

梓(わ、私何言ってるんだろ。男の人と一緒のベッドなんて)

梓(けど、こうするしか……)

○○「分かった。だけど梓ちゃんが嫌になったら、すぐに言ってね」

梓「はい」

梓(そんなこと、ありえませんよ、先輩)

梓(恥ずかしくはあっても、嫌になることなんてないですから)


○○「じゃあ電気消すね」カチ

梓「わ、私は右端で……」ガサゴソ

○○「俺は左端で」ガサゴソ

梓「……」

○○「……おやすみー」

梓「おやすみなさい」

○○「……」

梓「……」

梓(眠れない。眠れるはずがない)



――隣の寝室

唯「りっちゃん、何か聞こえるー?」

律「いや、何も聞こえん。本当に寝ちまったか?」

紬「何かときめきなお話すると思ってたのに……」

澪(壁にコップって……どこの時代のデバガメだ、こいつらは)



――○○達の寝室

○○「……」

梓「……」

○○「……」

梓「先輩、起きてますか?」

○○「……どうかした? やっぱり嫌になった?」

梓「違います。先輩こそ……嫌じゃないんですか?」

○○「俺?」

梓「はい。ムギ先輩たちにはめられて、無理やり私と2人きりにされて」

梓「きっと、あの先輩たちは隣の部屋で聞き耳でも立ててます」

梓「こんな、いじられるような扱い、嫌ですよね……」

○○「……嫌じゃないよ」

○○「むしろ嬉しいかな」

○○「こんな風に友達と遊びに出たことなかったし、お泊りなんてありえなかった」

○○「今日1日全部が新しい経験で、楽しかったんだ」

○○「それに……」

○○「梓ちゃんと一緒に寝るのなら、悪くいはずないよ」

梓「っ!」カァ

梓「そ、そういうことをさらりと女の子に言っちゃ駄目です」

梓「普通は警戒しちゃいますよっ」アセアセ

○○「んー……不安ならロープで縛る?」

梓「それは忘れてくださいと言ったはずです」ギロ

○○「ご、ごめん」



――隣の寝室

律「ちょっと聞こえてきた!」

唯「おー、何話してる?」

紬「きっと甘酸っぱいお話ね」

澪(……ちょっと興味あるなあ)

律「静かに! 聞こえないからな……えーと」

『ロープで縛る?』

律「『ロープで縛る』って、ええっ!?」

澪「ぶほっ」

唯「ロープ?」

紬「あらあらまあまあ」


律「あーうー……よし、寝るか!」

澪「そうだな!」

律「きっと疲れてたんだ。だからあんな変な言葉が聞こえてきたんだ!」

唯「ねえねえ、ロープを使って何か遊ぶの?」

紬「唯ちゃん、遊ぶっていうのは間違ってないけどね、」

律「だーっ! ムギは何教えるつもりんだよ! さっさと寝るぞ! 布団に入れ!」

紬「ここからが面白いのよー?」

澪「電気消すから!」カチ



――○○たちの寝室

梓「……すー」

梓「はっ!」

梓(私寝てた? 嘘、ドキドキして絶対に寝られないって思ってたのに)

梓(えっと今は……午前2時? 真夜中だ……)

梓(先輩は……)

梓(あれ?)キョロキョロ

梓「いない」

梓(ど、どうして? トイレかな、それとも別の所で寝てるとか……)

梓(……)

梓(ちょっと待ってみよう)



――10分後

梓(戻ってこない……)

梓(先輩、大丈夫かな)

梓(まさかどこかで倒れたりなんか……)

梓(……)

梓(探しに行こう)ムクッ

ガチャ タタタタ

梓(廊下は暗いなあ)

梓(あれ? あっちの扉が開いてる……あれは外に出る裏口……)

梓(確か、最後の戸締りで閉めておいたはず)

梓(先輩、まさか外に出た?)



――海辺の砂浜

梓(足跡がある……海に向かってるよね、これ)

梓(どうしてこんな夜遅くに外を……)

梓(プライベートビーチだから人はいない)

梓(潮風が穏やか……クーラーの効いた部屋ばかりにいたから、ちょっと気持ちいいかも)

梓(暗いけど、星明りのおかけで下が見えないわけじゃないし)

梓(波の音……風は強くないのに、波の音は大きく聞こえる)

梓(先輩はどこ……?)

梓(足跡はまだ続いてる……あっ! あれだ!)

梓「先輩!」

サクサクサク



○○「あれ? 梓ちゃん、起きちゃったんだ」

梓「こんなところで何をしてるんですか?」

○○「んー、考え事かな。ちょっと眠れなくって」

梓「考え事ですか……」

○○「波打ち際に立ってると、風が気持ちいいよ」

梓「ほんとだ……」

○○「……海って、広いね」

梓「暗いですね」

○○「ちょっと怖いね」

梓「けど、静かですね」

梓「隣、失礼します」

○○「ん」

ひゅうう

梓「先輩、眠れないってことは、あれからずっと起きてたんですか?」

○○「まあね」

梓(寝顔見られたかな……)

梓(わ、私変な顔して寝てたかも)

梓(うわー、どうしよう。先輩、幻滅したりしてないかな……)



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