――夏休みが始まり
――月日はどんどん過ぎていく
――7月23日
――梓の携帯
to ○○先輩
件名 夏休み
夏休みが始まりましたが、先輩はどうお過ごしですか?
私は家でトンちゃんのお世話をして過ごしています。水の中にいるトンちゃんが涼しそうで羨ましいです。
けいおん部の練習は週2、3回の予定になっています。最近は皆さん、真面目に練習に打ち込むようになってくれたので嬉しいです。
連日暑い日が続いていますが、体調に気をつけてください。
――7月24日
from ○○先輩
件名 虹
こんにちは。こっちではさっきまで夕立だったんだけど、そっちも雨は降ったかな。
雨上がりに見えた虹が綺麗だったので写真を送ってみたけど、届いた?
今日はギターを弾けなかったけれど、良い1日になったと思う。
――7月25日
to ○○先輩
件名 今日は練習!
今日はけいおん部の部室で練習でした!
ですけど、文化祭ライブはまだ先なので皆のやる気がなかなか上がらず、ティータイムで時間を潰してしまいました。
たまには1日中練習漬けになってみたいものです。以前先輩と私の家で練習した時みたいに。
8月の合同フェスで演奏する曲はまだ決まりません。
1度○○先輩と相談しよう、ということになりました。
――7月26日
to ○○先輩
件名 7拍子
今日、自宅での練習で7拍子が入った曲を弾いてみたのですが、どうにも上手くいきませんでした。
先輩は曲の途中で拍子が変化したり、特殊なリズムを取る曲でもなんなく弾けてますが、何かコツのようなものはあるんですか?
良ければ教えていただけるとありがたいです。
――7月27日 金曜日 合同練習日
――貸しスタジオ
律「おーす、○○」
澪「久しぶりです」
○○「ども。皆さん、お元気そうで」
唯「暑いよー。暑いよー」バタン
○○「ないのが約1名、いらっしゃるようで」
紬「唯ちゃん、はい、冷たいお茶よ。ペットボトルだけど」
唯「わー、ありがとー」ごくごく
律「今日も個別の後セッションってことで」
唯「○○君! 何か面白い曲ない!?」
○○「おお、唯さんがやる気だ」
梓「最近色々な曲を弾くようになって、もっと弾いてみたいと思うようになったらしいです」
澪「唯も熱心になったなあ」
○○「じゃあ、この楽譜を見せてあげよう」ペラ
唯「おー、さんくーす」
○○「そうだ、梓ちゃん」
梓「はい、なんでしょうか」
○○「昨日、変拍子のコツが聞きたいって言ってたけど……」
梓「そうですね。変な拍子だと混乱してしまって」
○○「ちょっと練習してみよっか」
梓「はい!」
○○「4拍子と3拍子を頭の中で組み合わせる感じで……」
梓「1、2、3、4……」
律「おーおー、さっそく2人の世界を作りやがって」
澪「私も教えてもらいたいな……」
唯「あははは!」
紬「唯ちゃん、何見てるの?」
唯「さっき○○君に貰った楽譜だよー。数字が一杯で面白いよー」
澪「楽譜が読めないのに面白いって……ドリーム・シアターの『Dance of Eternity』?」
律「……この曲はドラムに死ねとおっしゃってるようだ」
○○「アロエリーナの曲って知ってる? 昔、テレビでやってたCMなんだけど」
梓「聞いてアロエリーナ、という歌ですか?」
○○「そうそう。あれも短い曲だけど拍子が途中で変わっててね」
律「……ほんと、梓は告白したらいいのに」
澪「良い雰囲気作ってるな……」
唯「ぎゅいーん、ぎゅいーん。あはは」
澪「唯はさっきの楽譜を見てまだ笑ってるし」
紬「この曲、すごい独創的だわ。次の新曲の参考にしようかしら」
律「や、やめてねー、ムギさーん」
――1時間後
ジャジャンジャン!
○○「おー、見事な演奏でした」パチパチ
澪「ふわふわ時間はもう大丈夫だな」
紬「あとは新曲だけど……ごめんなさい、まだ完成していないの」
律「大丈夫だって。文化祭ライブまでまだ先だしさ」
梓「けれど、その前の音楽フェスが……そろそろ弾く曲を決めておかないと」
澪「ムギに新曲を2つ作れっていうのは酷だと思う」
律「だなー」
梓「では、やっぱり既存の曲を弾くか、少しアレンジするかですね」
唯「これにしようよー」ペラ
律「やめてくれ唯。私が死んでしまう」
澪「私もその曲はやだ……なんだか怖いし」
唯「えー、カッコいいのにー」
○○「その曲はネタとして持ってきたんだけど……歌がないからけいおん部向きじゃないんじゃないかな」
唯「むー」
梓「……あ! ○○先輩! あの曲にしましょう!」
○○「あの曲?」
梓「ほら、思い出の曲です!」
○○「……『Johnny B.Goode』?」
梓「はい!」
唯「何それー」
律「お、私は知ってるぞ。映画に使われた奴じゃね?」
澪「チャック・ベリーか……」
梓「先輩、楽譜持ってきてますよね?」
○○「あ、ああ、うん」ペラ
梓「どうですか?」
律「私はいいと思うぜ。かっこいいじゃん」
澪「私も、たまにはこういうロックを弾いてみてもいいかな」
紬「楽しそうな曲だわ~」
唯「私は楽譜が読めませんっ!」
梓「では、これで決定ということで」
○○「え……」
○○「ほ、本当に?」
梓「○○先輩は嫌ですか?」
○○「すごく嬉しいけど……」
梓「だったらいいじゃないですか。決定です!」
唯「あずにゃんが私の意見を聞いてくれないよー」メソメソ
梓「もう、唯先輩。これが弾けて歌えたらすごくかっこいいですよ」
唯「おお! だったらやるよ!」
澪「現金な奴……」
律「んじゃま、ムギにはこの曲をけいおん部用に編曲してもらうってことで」
紬「うん、私がんばる!」
○○「……」
梓「○○先輩? どうかしました?」
○○「いや……感無量というか、感動しているというか……はは、なんだか胸がいっぱいで言葉が出ないや」
梓「感動している暇はありませんよ? 先輩にはこの曲をステージで弾けるようになってもらわないと!」
○○「ああ、もちろん。頑張るよ」
梓(先輩……いい笑顔だなあ)
梓(うっ、なんだか胸がドキドキしてきた)
梓(駄目駄目! 見とれてる暇なんてない。今は練習に集中!)
唯「ああー!!」
澪「な、なんだ唯。びっくりさせるなよ」
唯「こ、この曲、歌詞が英語だよ!」
○○「そりゃあ、外国の曲だからね」
唯「私、英語の歌なんて無理だよー! 予備校の英語の小テストで0点取っちゃったのに!」
梓「唯先輩、受験生なのに……」
澪「けど、英語0点の奴に英語の歌詞は無理があるんじゃ」
律「おいおい、唯が歌えないとなると、他に歌えるのは……」
澪「わ、私は無理だからな! 他の学校の人の前で歌うなんて絶対無理!」
○○「いやー、さすがに弾きながら歌はちょっと」
紬「私は作曲と編曲で手一杯で……」
梓「先輩たちを差し置いて私がボーカルなんて、できません」
律「で、私はドラムやりながら歌うなんて器用な真似はできない、っと」
澪「じゃあ残るはやっぱり唯だけか」
唯「ええー? あずにゃんだけ理由になってないような……」
紬「あのー」
律「どしたムギ」
紬「この曲ね、どう編曲してもギター3本の曲にするのは難しいの」
紬「私自身、そんな経験はないし、新曲で手一杯だし……」
紬「ギター2本の楽譜にするのが精一杯で」
律「ふむ、だとしたら2人ギターで1人はボーカルに専念することになるな」
澪「つまり唯がボーカルか」
唯「ええー! 私もギター弾きたいよー!」ジタバタ
梓「唯先輩……」
梓(せっかくのステージなのに、ギターを弾けないのは確かにちょっとかわいそう……)
梓(私は来年も出るチャンスがあるんだし)
梓(ここはやっぱり私がボーカルになるべきなのかな……自信ないなあ)
梓「あのお、やっぱり私が」
律「まあ待て、唯。ちょっと耳貸せ」
唯「へ?」
律「あのな、あの2人を同じギターパートにしておけば、関係が進展するきっかけにもなるだろ」ヒソヒソ
唯「……ふむふむ」
律「それにさ、梓に好きな人と同じ舞台でギターを弾かせてやれよ」ヒソヒソ
唯「けど、私もギターを……」
律「文化祭ライブで弾けるだろ? 先輩なんだから、後輩に思い出を作らせてやろうぜ」ヒソヒソ
唯「うーんうーん」
紬「今ボーカルを引き受けたら、ケーキバイキングにご招待~」ヒソヒソ
律「ムギ!?」
唯「ほんとに!」
紬「ほんとよ~」
唯「私、ボーカル頑張るよ!」
梓「あ、あれー? せっかく決意したのに」
律「あ、あれー? せっかく説得してたのに」
澪「唯は英語の歌詞を歌えるように特訓だぞ」
唯「分かっております、澪隊員! ケーキのためならば!」
紬「私も編曲、がんばる!」
律「っしゃー! 気合入れるぞー! 再来週は合宿だー!」
唯「おー!」
梓「お、おー!」
○○「おー」
最終更新:2011年07月30日 16:25