――事情説明後
友「なるほど。お前、どこで練習してるかと思ったら、こんなかわいい子たちの中で……」ぷるぷる
○○「ん?」
友「うらやましい! うらやましい!」ドン!
○○「……はぁ」
友「ねえ! 俺もキーボードやってるんだけど、良かったら一緒に」
梓(キーボード?)
○○「さーて、そろそろ移動しよう。友はここでお別れだな」
友「ひでえ! 俺の恋活を邪魔しないでくれよう!」
唯「れんかつ?」
梓「恋愛活動の略じゃないでしょうか……初めて聞きましたけど」
梓(それにしても、キーボードやってる友達って、どこかで聞いたような)
律「ごめんな。今日は○○1人に用があるんだ。一緒に練習とかはまたの機会に」
澪「た、助けてもらってありがとうございました……」
紬「またお会いしましょう~」
唯「じゃーねー、変態さーん」
友「それは仕方ないですな。デートはまたの機会ということで」
○○「じゃあな、変態」
友「お前に言われたくねえ! ったく、○○、あとでメールしろよ」
○○「なんで?」
友「それ。なんだそのうらやましい状況は」ビシッ
○○「それ? あっ」
梓「あっ」さっ
梓(ず、ずっとシャツの裾、掴んじゃってた……)
友「まったく、根掘り葉掘り聞かせもらうからな! それでは皆さん、さようならー」
○○「すみません、なんだかうるさい奴で」
紬「いえいえ、楽しい方でした。助けてもらいましたし」
唯「だねー。私、本物の変態さんって初めて見たよー」
律「唯、あまり言ってやるな」
澪「金髪だけど良い人だったんだな……」
梓「また改めてお礼を言いたいです」
○○「じゃあ、また今度紹介するよ。それより何か話をするために来たんだよね、行こっか」
唯「ポテトだポテトー」
――道路
テクテク
「お、○○じゃん。じゃあなー」
「また明日なー」
○○「ん。またなー」
梓(○○先輩、学校にもお友達たくさんいるんだなあ。さっきから結構声かけられてる)
梓(さっきの友さんもそうだったけど、先輩ってお友達の前だと雰囲気が全然違う……)
梓(新たな一面、って奴かな。ちょっと男っぽくて)
梓(ああいう先輩もいいかも……)
テクテク
梓「先輩、ギターは学校に持っていってないんですね」
○○「学校で弾いてるのが先生に見られると、すぐ親に連絡がいくようになってるからね」
○○「ギターは近くの楽器店に置かしてもらってるんだ」
○○「時々さっきの友の家にも置いてる」
律「○○って今年からこっちに来たんだよな? あれはこっちでできた友達か?」
紬「それにしてはすごく仲がよさそうだったけれど」
○○「あー、あいつは前の学校にいた時からの友達で」
澪「え? じゃあどうして同じ学校に? 一緒に転校してきたとか?」
○○「俺が転校してきたのは4月、あいつは6月なんだ」
紬「じゃあ、あの方が後でやってこられたわけね」
○○「うん。本人曰く『大学はこっちの街のを受けるから、先に1人暮らしに慣れたい』から来たらしい」
梓「……それって手間がかかるだけのような」
律「普通は合格してから引っ越すもんだよな」
○○「だから変人なんだ」
唯「変態変態~」
梓「あの、もしかして先ほどのお友達って、前に話してくれた人では?」
○○「よく覚えてるね。その通り。俺が音楽をやるきっかけを作ってくれた奴だよ」
○○「あいつはあいつでバンドを組んでて、今日も練習に行ってるはずだ」
○○「最近は、他に練習場所がない時、やむを得ずあいつの部屋を貸してもらってる」
○○「お金取られるんだけどね。スタジオよりは安いけど」
梓「そうだったんですか……」
唯「良いお友達なんだねー」
○○「まあ、悪い奴じゃないかな。変人だけど」
――ファーストフード店
律「では! 合宿の日程を決めたいと思います!」
澪「えーと、各自、夏休みの間で空いてる日を言っていこう」
唯「私はこの辺り全部空いてるよー」
紬「私はこの付近しか……夏は忙しくて、ごめんなさい」
梓「私は大抵暇ですし、予定も変更できるのでいつでも構いません」
○○「えーと……合宿って、ほんとにやるんだ」
律「何を今更」
唯「海だよ海ー」
○○「だけど、一応俺も男で、君たちは女の子なわけで……問題あったりしない?」
律「問題起こすつもりなのか?」
○○「そんなことはないけど……」
澪「へ、部屋は別々だから」
紬「セキュリティは万全ですので」
唯「問題ってどういう問題?」
○○「そりゃ、色々と……本当に大丈夫なのかな」
梓「大丈夫です。○○先輩を信じてるんですよ」
梓「あとはさわ子先生にさえばれなければ、全然大丈夫です!」
律「おーおー、梓が『ばれなければ』なんて言葉使うとはなあ」
唯「あずにゃん……汚れちゃったんだね、およよ」
澪「主に律と唯のせいだろうけどな」
○○「……そっか。ありがとう」
○○「じゃあ、俺はこの辺りなら空いてるよ」
――話し合いの後
澪「8月の10日あたりがちょうどいいかな」
梓「フェスは下旬だから、まだ余裕はありますね……この合宿でレベルアップです!」
律「フェスで何の曲を弾くかも決めなきゃなー」
唯「かっこいい曲がいいね!」
澪「ギターが3人になったから、曲作りが難しそうだ」
○○「ギター3人は結構変則的だね。ないわけじゃないけど」
紬「私、作曲頑張る!」
律「曲はおいおい決めてこうぜー」
――帰り道
テクテク
梓「○○先輩は、夏休みに入った後は忙しいですか?」
○○「まあ、一応受験はするつもりだから、夏期講習とかあるよ」
律「お、○○も進学組か」
唯「どういう所に行くつもりなのー?」
○○「まだそこまで詳しくは決めてないかな」
唯「私と一緒だね!」
澪「唯も最近になってようやく進学って決めたからな」
紬「早めに決めておいた方が、勉強もはかどるわよ~」
梓(そっか。先輩たちはみんな来年にはいなくなっちゃうんだ)
梓(○○先輩も大学に行っちゃう……)
梓(永遠の別れってわけじゃないだろうけど)
梓(別の場所に行っちゃうって、なんだか寂しい)
梓(……私、耐えられるのかな)
梓(先輩たちがいなくなった日常……全てが色あせてしまいそうで)
唯「○○君はここで電車に乗るんだよね。じゃあねー」ぶんぶん
○○「はい、皆さん、また練習で」ふりふり
律「金曜にまたスタジオでなー」
澪「夏休み中も、部室使える時があったら、つ、使おうね」
紬「さよーならー」
梓「先輩……さようなら」ふりふり
梓(……はぁ)
梓(まずは8月のフェスに集中しよう)
梓(色々と考えるのはその後! うん、そうだよね)
――道路
○○「……」
○○「合宿か……」
○○「楽しくなれたらいいな」
prrrrr prrrr
○○「電話? 母さん?」
ピッ
○○「はい、もしもし」
○○「うん……今帰るところ」
○○「え?」
○○「いや、その話は……ちょっと待ってって。落ち着いて」
○○「もう無理だってことになったんだろ?」
○○「見つかった? けどそんな急に……」
○○「うん、そりゃあ、分かってるけど」
○○「また家に帰ったら詳しく話そう、うん」
○○「切るよ、じゃ」
ピッ
○○「……」
○○「はぁ……そっか」
○○「……梓ちゃん」ボソッ
5章 おわり
最終更新:2011年07月30日 16:22