――30分後
唯「ぎゅいぎゅいーん!」
○○「おー」
梓「う、ウインドミル奏法」
唯「どうどう? すごい?」
○○「すごいね。これはできないや」
唯「やった! じゃあ私の勝ちだね!」
○○「うん、そうだね」
梓「いったいどういう勝負だったんですか……」
唯「じゃあ次にこれ! ぎゅういーん!」
○○「逆ウインドミル奏法!?」
梓(○○先輩、楽しそう……)
梓(そりゃそうだよね。みんなで練習できるのは楽しいから)
梓(私が手助けしなくても、先輩はやっていける。距離は縮まった)
梓(敬語で話すことも少なくなってきたのが、その証拠)
梓(もう私は必要ないかも)
梓(……って何考えてるんだろ、私。バカだなあ)
梓(今は練習練習!)
――2時間後
ジャジャン ジャン!
律「うーし、終わりー」
唯「○○君、今のどうだった!?」
○○「良かったよ。みんな、かなり息が合った演奏だったと思う」
律「みんなレベル上がったからなー。なんかやりやすくなったよ」
澪「だな」
梓「はい! 私も弾いてて気持ちよかったです!」
紬「これなら文化祭ライブもばっちりね」
唯「後は○○君だねー」
○○「あー、はい」
律「どんな曲も最後まで弾けるようになる、ってのが当面の目標だな」
澪「やっぱり、難しい?」
○○「んー、ゆったりした曲なら大丈夫だけどね。激しい曲はどうも……」
梓「それに、舞台に立つと体力の消耗度合いが違うと思います」
○○「だね。その辺りは1度経験してみないことにはなんとも」
唯「じゃー、○○君もライブに出て経験してみたらいいんだよー。私たちと一緒に!」
○○「それは……」
律「いやー、無理だろ。学園祭ライブに他校の生徒が出演できるわけがない」
紬「じゃあ、一般のライブはどうかしら?」
澪「夏のこの時期になると、この近辺のライブハウスってどこも一杯になるしなあ」
唯「ええー、じゃあ他の街に行くとか?」
律「んー、難しいような」
○○「そこまで無理してもらわなくてもいいですよ」
梓(ライブ……)
梓「あ!」
梓「そうだ! 合同音楽フェスティバルですよ!」
梓「あれなら、他校の生徒でも出れます!」
律「あー、そういやそんなのあったなー」
○○「なんですか、それ」
紬「付近の高校の生徒が、一緒になってコンサートを開くのよ」
律「夏フェスの地元版みたいなもんだ」
澪「○○さんは××高校だったっけ? そこも参加校の1つだったはず」
律「んー、申込書には確か……『他校の生徒と合同で出演してもOK』って書いてたな」
唯「おおー。だったら大丈夫だー」
梓「応募の締め切りはいつでしたか? 律先輩!」
律「あー、覚えてねーなー。なにせ2ヶ月以上前に聞いた話だし……」ぽりぽり
澪「和からチラシもらったろ? どこにやったんだよ」
律「んー、私の記憶が確かなら、部室の机の引き出しに入れたはず……」
梓「相変わらず律先輩は整理整頓ができてないですね……」
澪「また学校に行った時に見てみよう」
律「間に合うようだったら、和に応募頼んでみるか」
唯「やったね、○○君! 舞台だよ! 本番だよ!」
○○「あ、ああ……」
律「なんだよー、あんまり嬉しくなさそうだな」
○○「いや……本当にいいの? 俺、すごく迷惑かけると思うんだけど」
○○「そんな、無理して一緒に出てくれなくても……」
澪「○○さんは出たくない?」
○○「……」
梓「先輩……」
○○「本音を言えば、出たい。けど」
律「『けど』はなしだ!」
紬「私たちも一緒に出てみたいんだし」
澪「○○さんはきっと良い演奏してくれると思ってる」
唯「大丈夫! 私たちは無敵だよ!」
梓「そういうわけで、先輩が出たいならお手伝いします」
○○「……あー、また泣きそうだ」
梓「ふふ、泣いてもいいですよ?」
○○「そうそうカッコワルイところは見せられないよ……ありがとう、みんな」
唯「よーし、私も頑張るよー。ぎゅわああんって!」
紬「私もー。たらたらたらーん、って」
律「じゃあ私はドカドカバキンだ!」
澪「その効果音だと何か割ってるぞ」
梓「……ぎゅいーん」ボソッ
○○「そういうのは大声で言った方が、いっそすがすがしいよ?」
梓(はぅ! 聞かれた!)カァ
――スタジオ練習後 外
律「あー、疲れた」
唯「ねえねえ、私の家でご飯食べていかない?」
梓「え? 今からですか? すごく急な話ですね」
唯「私の家、今日は親がいなくってさ。なんだか寂しいんだよね」
律「お、おー、そうかー。だったら私たちが行ってやるかー」
紬「そ、そうねー。私も行こうかなー」
澪(なんて棒読み)
澪「うん、私も行っていいぞ」
唯「○○君とあずにゃんはどうするー?」
梓「私は……えーと」
○○「男は俺1人だけど……いいのかな?」
唯「そんなの今更気にしないって」
○○「んー、分かった。家に晩御飯用意されてるかもだから、ちょっと電話して聞いてみる」
タタタ
ピポパ
○○「母さん? 俺。今日の晩御飯なんだけど……うん」
唯「あずにゃーん、来ようよー」
梓「ど、どうしようかな……」チラチラ
律(めっさ○○のこと見てるよ。分っかりやすい奴)
○○「ん、分かった。気をつけて帰るよ。それじゃ」
パタン
○○「お待たせ。大丈夫。俺も行くよ」
梓「では、私も行きます!」
律(即答かよ)
澪(これだけやっておいて自分の気持ちに気付かないって……)
紬(梓ちゃん、かわいいわ~)
唯「よーし、私の家まで出発しんこー!」
全員「おー」
最終更新:2011年07月30日 16:19