――セッション中

ジャンジャカジャンジャ♪

梓(あ、すごい。今、ぴったりと音が合った)

梓(教えた歪みが全部修正されてる)

梓(……こんなに気持ちよくセッションできてるの初めてだ)

ジャンジャk♪

梓(! しまった! 音が走っちゃった!)

梓(しゅ、修正しないと……! 駄目だ! 1度崩れるとそのまま……!)

ジャンカジャカ♪

梓(あ)

梓(先輩、リズム変えた……いや、私に合わせたんだ)

○○「……」ニコッ

梓(引っ張られる……先輩に引っ張られて、自然と音が直ってく)

梓(……すごいなあ)

梓(このままずっと弾けたら、いいな)



――1時間後

ジャンジャカジャン♪

さわ子「はーい、そろそろ帰るわよー」

梓「え? もうそんな時間?」

○○「はぁはぁ……集中してたから、早いねえ。ゴホッゴホッ!」

さわ子「はい、お茶」

○○「ど、どうも」

梓「先輩、まだ風邪治りきってないんじゃないですか?」

○○「ごくごく……ふぅ、そ、そうかもね」

梓(同じくらいの時間演奏してたのに、先輩だけ息切れしてる)

梓(そんなに激しい曲じゃなかったんだけど……)

梓(先輩、風邪なのに無理してここにきたのかな)



――さわ子の車の中

さわ子「シートベルト締めたわね。じゃ、行くわよー」

ブロロロー


梓「先輩、風邪が長引いてるならちゃんと病院に行きましょうね」

○○「うん、分かってるよ。心配してくれてありがとう」

梓「し、心配じゃなくて、その……」

さわ子「ふふふ、梓ちゃんも彼と一緒に練習したいのよね」

梓「そんな感じです! 無理して倒れられたら、あんな良い練習できなくなります! それはヤです!」

○○「分かった。中野さんのためにも体調には気をつけるよ」

梓「約束ですよ!」



――梓の家

梓「では、また練習しましょうね」

○○「うん、楽しみにしてる。今日言われたところは全部直してくれるから」

梓「私ももっと精進します!」

さわ子「じゃ、出すわねー」

○○「ばいばい」フリフリ

梓「あ、はい、さようなら!」フリフリ

ブロロロロー



梓「……」

梓(すっごく楽しかったなあ)

梓(けいおん部の先輩たちと演奏してるみたいだった)

梓(……)

梓(今度はいつ練習できるのかな)



――さわ子の車の中

さわ子「……」

○○「……」

さわ子「無理しちゃ駄目よ」

○○「……はい」

さわ子「そりゃあ、梓ちゃんがいたから張り切るのは分かるけど」

○○「すみません」

さわ子「……面倒なことになるのは嫌だからね」

○○「……はい」

さわ子(ふぅ……大丈夫かしら)




――木曜日 放課後 部室

梓「……」ソワソワ

律「梓ー? 何そわそわしてるんだ?」

梓「え、え? そうですか?」

澪「うん、さっきから扉の方をチラチラ見てるし」

紬「お茶とケーキにも手をつけてないわ」

唯「誰か待ってるのー?」

梓「そんなことは……」


ガチャ

梓「っ!」くるり

和「部活中にごめんなさい、ちょっといいかしら」

梓「……」ずーん

律「ありゃま」

和「な、何。私、何かした?」


唯「和ちゃんはどうしたのー?」

和「他校からこんなチラシが送られたのだけど、けいおん部は興味があるかなと思って」

ペラ

律「合同音楽フェスティバル?」

和「ええ。この付近の高校の音楽部が一緒になってコンサートを開く催し物よ」

澪「こんなのやってたんだ」

和「今年から始まったらしいわ。生徒会や地元商店街も参加する、かなり大きなイベントよ」

唯「おー、なんか色んな高校が参加してるんだねー」

紬「全部この辺りの高校ね。△△学園、□□高校、××高校……」

梓(××高校? どこかで聞いたような……)

和「桜高からもジャズ研が出る予定なんだけど、けいおん部はどうする?」

梓(うーんうーん)

律「んー8月下旬開催かー」

澪「まだ4ヶ月以上あるな」

紬「けど、2学期は文化祭もあるし、日程的に辛いかも」

和「応募の締め切りはまだ先だから、ゆっくり考えてもらっていいわよ」

梓(うーん……あっ!)

梓「××高校!」

律「うお!」

澪「ひゃあ!」

紬「わっ」

唯「あ、あずにゃん、びっくりしたよ!」

梓「あ……すみません」カァ!

律「どうしたんだ? ××高校が何かあるのか?」

梓「い、いえ。なんでもないです、はい、なんでも」

澪「知り合いがそこにいるとか?」

梓「そうです! 中学の時の友達がそこに行ってて、それを思い出したんです!」

澪「そ、そうか。まあ、もう少し小さな声で思い出してくれ」

梓「すみません……」

梓(××高校……○○先輩が行ってる学校だ)

梓(こんな所でこの名前を聞くなんて)


和「じゃあ、参加するかは保留ってことでいいのね」

律「だな。余裕があったら参加することにするよ」

澪「受験勉強もあるし、あんまり余裕ないかもな」

紬「私は出てみたいわあ」

唯「私も私も! おっきい舞台でギターをぎゅわああん! って弾いてみたい!」

澪「大きい舞台だったらやだな……」

梓「……」

唯「あずにゃんはー?」

梓「え?」

唯「これ、出たい?」ペラ

梓「あ……そうですね。ちょっと興味あります」

唯「だよねだよね」

律「ま、夏休みが始まる前に決めたらいいらしいし、もう少し考えてみるか」




――帰り道

梓(結局今日はさわ子先生、部室まで来なかったな……)

梓(今日は練習なし、か)

律「おっ! メロンパン売ってるぞ!」

唯「ほんとだー! 私買ってくるー! あずにゃんも行こう!」

梓「わわっ!」

紬「あれって車よね? 車でメロンパン売ってるの?」

澪「ああ。あの中でメロンパン焼いてるらしい」

アリガトゴザマシター

唯「もふもふだねー。もふもふー」

紬「すごいわすごいわ! メロンパンよ! 熱々よ!」

律「ムギの奴、えらく興奮してるなー」モキュモキュ

澪「初めて見たらしいからな」

唯「あずにゃんおいしいねー」

梓「は、はい!」




――梓の自室

梓「ふぅ、今日の宿題は終わり、っと」

梓「……ちょっとギター弾こうかな」

梓「ヘッドフォンつけて、と」

ジャンジャカ♪

梓「ふんふーん……うん、いい感じ」

梓(けど、指がちょっと動きづらいかな)

梓(前に○○先輩に見せてもらった練習曲、どんなだっけ。あれ、いい指の運動になるんだけど)

梓(……はぁ)

梓(やっぱり気になるなあ)

梓(次はいつ一緒に練習できるんだろ)




――金曜 昼休み 廊下

梓(ちょっと飲み物買ってこようかな)

トテトテ

さわ子「中野さーん」

梓「あ、さわ子先生」

さわ子「ちょっといいかしら。こっちに」

梓「は、はあ。なんでしょうか」

さわ子「実はね……今日なんだけど」

梓(!)

梓(まさか)

梓(今日は○○先輩が……!)

さわ子「あのね」

梓「ごくり」

さわ子「……無性にケーキが食べたいから、けいおん部で用意しておいてほしいのよー」

梓「あう」がくり


梓「そういうことはムギ先輩に言ってください!」ぷんすか

さわ子「それもそうね。あ、それともう1つあったわ」

梓「なんですか!」

さわ子「今日の夜も、やるから」

梓「……え?」キョトン

さわ子「会議は昨日で終わったから、今日は、ね?」

さわ子「もうメールはしておいたわ」

梓「あ……」

梓「は、はい!」ぱあああ




――放課後 部室

梓「ふんふふーん」

唯「あずにゃん、ご機嫌だねー」

梓「そうですか? ふふふ、そうかもしれません」

律「なんかいいことあったのかー?」

澪「テストの点数が良かったとか?」

紬「欲しい服が買えたとか」

唯「ケーキがおいしかったとか!」

梓「違いまーす。ふふーん」

律「練習しろって言わない梓も珍しいよなあ」

澪「だな」




――校門

梓「あ、今日もまたさわ子先生に呼ばれてるので、先に帰っててください! では!」

ダダダダダ!



律「行っちゃった」

澪「なんなんだろな」

唯「も、もしや、あずにゃんはさわちゃんに……!」

律「それはもういいから」ペシ

唯「あうち」


紬「けど、今の梓ちゃんってなんだか恋する女の子みたいねー」

律「ははは、まさか。そもそもここは女子高で、梓もさわちゃんに会いに行ってるだけだぞ?」

澪「……」

紬「……」

唯「おー」

律「あれ?」

澪「ま、まさか」

律「梓はさわちゃんを……?」

唯「えー! あずにゃんがさわちゃんに恋してるの!?」

紬「あらあらまあまあ」



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