律「よーし、梓も戻ってきたし、帰るか」
唯「帰りに肉まん買って帰りたいなー」
澪「春になっても肉まんって売ってるのか?」
紬「わあ、私はピザまんっていうのを食べてみたい」
梓「あ、あの!」
律「どした?」
梓「私、さわ子先生とのお話がまだ済んでなくて、今から職員室に行かなくちゃいけないんです」
澪「お話って……もうすぐ下校時間だぞ?」
梓「先生がついてるからそれは気にしなくていいらしいです」
唯「あずにゃん、叱られてるのー?」
梓「違いますよ。その……音楽活動に関するお話みたいなものです」
澪「だったら私たちにも関係あるんじゃないのか?」
梓「い、いえ。これは私個人の話ですので」
律「ふーん、音楽活動ねえ。CDデビューでもするのか?」
唯「すごいねあずにゃん! オリコン1位狙うの?」
梓「そういうのじゃなくて、練習関係のお話です!」
紬「だったらなおさら私たちもいた方がいいんじゃない?」
梓「あう……だ、大丈夫ですから! 先輩たちは先に帰っていただいて結構です!」
ダダダダダ!
唯「ありゃ、行っちゃった」
――帰り道
律「梓の奴、なーんか変だったな」
澪「挙動不審だった」
紬「何か隠し事かしら」
唯「えー、あずにゃんが? あずにゃんはそんな悪い子じゃありません!」
律「いやいや、案外私たちと別れた後、どっかで男と待ち合わせしてたりとか」
澪「それはさすがに……」
紬「あるのかしら?」
唯「あずにゃんの浮気者ー」
律「まあ、梓って男慣れしてない感じだからな。男と待ち合わせって線は薄いな」
――学校
梓(ちょっと強引すぎたかな……もう少しうまい言い訳を考えておかないといけないなあ)
ガラ
梓「さわ子先生、来ましたよ」
さわ子「あ、ちょうど良かったわ。もうすぐ彼も到着するらしいから、梓ちゃんは校内を1度見回ってくれる?」
梓「はい、分かりました」
さわ子「終わったら部室に直接来てちょうだい」
――校舎内 廊下
梓(うぅ、やっぱり夜の学校ってちょっと怖いなあ)
梓(今はまだ太陽が沈みきってないからいいけど)
梓(あんまり帰りは1人になりたくないなあ)
タタタタ
梓(うん、校舎の中には誰もいないかな)
梓(守衛さんの見回りはもう少し後らしいし)
梓(体育館は……あ、先生と生徒かな。校門の方に向かってく)
梓(うん、多分校舎の中は大丈夫)
――部室
梓(うわ、やっぱりばれないために電気は点けないんだ。暗いよ……)
梓「こ、こんばんはー」
さわ子「あ、来たわね」
○○「こんばんは、中野さん」ペコリ
梓「○○さん、こんばんは。お久しぶりです」ペコリ
○○「と言っても、3日ぐらいしか経ってませんけどね」
梓「そうですね。あ、もうギターを出してたんですか」
梓(○○さんのギター……暗くてよく見えないけど)
梓(多分、リッケンバッカーだ。シリーズまではちょっと分からないかな)
梓(うん、ロゴもあるし、カッタウェイも大きい。間違いない)
梓(絵になってるなあ……身長高いし、黒いボディが映えてる)
○○「よし、チューニングも終わりっと」
さわ子「梓ちゃん、扉はちゃんと閉まってる?」
梓「はい、大丈夫です」
さわ子「じゃ、○○君は適当に練習しときなさい。アンプはなるべくつけないこと。私は梓ちゃんと遊んでおくから」
梓「え、ええ!?」
○○「ははは、ではお言葉に甘えて」
ジャン♪
梓「あっ……」
梓(弾き出しの音がやっぱり優しい……私とも唯先輩とも違う弾き方だなあ)
ジャン♪ ジャカ♪
梓(リッケンバッカーの音って独特……高音がよく出てて)
ジャン♪ ジャカ♪
梓「……」ジーッ
さわ子(梓ちゃん、集中してるわねえ。いじり倒せる雰囲気じゃないわね)
梓「……」ジーッ
さわ子(そんなに彼のこと凝視して……ふふふ、それでもちょっかいかけるのが私なんだけど)
プニュ
梓「うに! さ、さわ子先生?」
さわ子「梓ちゃんのほっぺたは柔らかいわねえ」プニプニ
梓「いきなり何を! わっ!」
ムニムニ
ジャン♪ ジャカ♪
○○「ふぅ……ちょっと休憩。って、何してるんですか?」
さわ子「梓ちゃんと遊んでるの」
梓「先生に遊ばれてるんです」
○○「はあ。仲が良いんですね」
梓「これはただいじめられてるだけです! ほら今もひょうやってひょっへはは」
さわ子「ふふふふ、ほっぺたが伸びるわー」うにょーん
梓「うにゃー!」
○○「先生が楽しそうで何よりです」
梓「と、ところで今○○さんが弾いてた曲って」
○○「これですか? スコア見ます?」
梓「はい、って、○○さん、前から気になってたんですが」
○○「なんでしょうか」
梓「○○さんが先輩なんですから、敬語を使わなくてもいいですよ。というより、年下に敬語って変だと思います」
○○「……そうですか?」
梓「なんだか違和感です」
○○「……そっか。分かった。これでいいかな?」
梓「はい!」
梓「んー、この曲……」
○○「ただの練習曲だよ。オリジナルの」
梓「え? ○○さんって作曲もするんですか?」
○○「いや、これは知り合いの人から貰っただけ。練習に使ってくれってね」
梓「へえ……確かに、運指の練習にはいいかも。難しいコード移行もあるし……」
○○「最初にこれを弾いて指を温めた後、普通の曲を練習するってわけ」
梓「じゃあ、次は何の曲を?」
○○「んー、適当にスコア持ってきたんだけど……」ガサゴソ
梓「色々ありますね。あ、ビートルズ」
さわ子「たまにはバラードもいいんじゃない?」
○○「エレキでバラードですか。まあ、できないこともないですけど」
梓「アコギの方が雰囲気出そうですけどね」
○○「暗い中でバラード弾いてると悲しくなりそうだ、っゴホッ! ゴホッ!」
梓「だ、大丈夫ですか?」
梓(○○さんってよく咳してるけど、風邪かな?)
梓「体調悪いんですか?」
○○「いやー、ちょっと前に風邪引いてね。風邪自体は治ったけど咳だけが止まらなくって」
梓「病院に行って診てもらった方がいいですよ」
○○「……ん、だね」
さわ子「……」
――1時間後
さわ子「そろそろ時間よ。片付けなさい」
○○「あ、はい。ゴホッ! ゴホッ!」
さわ子「ほら、お茶よ」
○○「ありがとうございます」
梓「風邪の後なら喉は乾燥させないようにしましょうね」
○○「ん、ありがと」
――後片付け後
さわ子「もう8時ね。梓ちゃん、車で送っていこうか?」
梓「いえ、大丈夫です。このぐらいの時間なら全然」
さわ子「けど、夜に1人で帰るのもねえ……○○君も車で送ってあげるから、もう1人増えても大丈夫よ?」
梓「え? ○○さんもですか?」
さわ子「ええ。大人として当然の義務ですから」
梓「……」
梓「分かりました。お願いします」
○○「準備できました」
さわ子「じゃ、いきましょう」
最終更新:2011年07月30日 16:02