私は数日後、律が今住んでるアパートへ向かっている。
律の様子を見に行くためだ。律の態度もそうだが、梓が言っていた虐待の話も気になったからだ。
アパートに着き、チャイムを押す…中から明るい律の声が聞こえる。
律の部屋のドアが開く。

律「はーい!あっ、澪か」

澪「今、大丈夫か?」

律「ああ、入って、入って!」

部屋の中に入ると小さな祭壇がある。

律「こうやって、骨になっちゃうとあれだな」

澪「なんだよ?」

律「なんとも思わないというか何と言うか…」

怒りが込み上げてくる。込上がってくる怒りを抑えて私は律に話しかける。

澪「そういえば、旦那さんは?」

律「葬儀が終わったら、どっか行っちまったよ…ハハハッ…薄情な奴…」

薄情なのはお前もそうだろう…

律「さっぱりしたよ、死んでくれて…」

もうダメだ…

澪「はあ!?律、お前何言ってるんだよ!さっぱりしたって!人が死んでさっぱりしたって?お前の子供なんだぞ!」

律「何、ムキになってるんだよ?正直な、上手く行ってなかったんだよ!私達夫婦!
あいつは最初は優しかったけど、段々と家に帰ってこなくなりるし、生活費もまともに入れてくれないし、
それに、子供は昼も夜もないんだ!わかるか?澪!私の気持ちが!」

澪「だからってな!律、さっぱりしたって言うお前は私は許せない!お前あの子に虐待とかしてたんじゃないか?」

律「ああ、そんな事まで知ってるんだ…親戚のババア達か…チッ…あれだけ変な事は言うなって言って置いたのに…」

澪「なんだよ…否定しろよ…」

律「否定?事実だよ!子供ほっておいてパチンコしてたのも事実だし、虐待も事実だ!これが現実なんだよ!!」

澪「もういい…帰るわ…私…」


玄関へ向かうと、扉が開いた。そこにいたのは律の旦那だった。
子供が生まれた以来か…あの時とは違い今はチャラチャラした格好をしている。
私の後ろから律の怒った声が聞こえてくる。

律「お前!今までどこ言ってたんだよ!!」

旦那「ああ?どこでもいいだろ!お前に関係ねーっ!」

律「子供がこんな事になったのに!!私は親戚中の笑いものになってるんだぞ!お前のせいだ!」

旦那「うるせいよ!殺したのはお前だろうが!」

律「な、お前にも責任あるだろう!!」

旦那「ガキも死んだことだし、離婚しようぜ、俺たち。もうお前と一緒にいたくないからよ」

律「それはこっちのセリフだよ!ろくに働きもしねーし、帰ってきたと思えば子供に虐待するし!
それに、離婚するなら慰謝料タンマリ貰うからな!」

旦那「はぁ?お前何言ってるだ?」

律「慰謝料だよ!慰謝料!」

いつもこんななんだろうか?私は律の旦那の横を通り、律に声もかけずにアパートを後にした…
こんな姿は正直見たくなかった…



それから数日後、家で大学のレポートしていると母親が慌てて部屋に入ってきた。
母を落ち着かせ話を聞くと警察の人が訪ねてきてるらしい。
私は、母に大丈夫と告げ階段を降りて玄関へと向かう。

警官「秋山 澪さんですね?」

澪「はい…なんの御用でしょうか?」

警官「あなたの友人の〇〇律さん、ご存知ですよね?」

澪「はい、それで?」

警官「お子さんが亡くなった件でお話を伺いたいのですが…」

澪「律から話し聞いてないんですか?」

警官「あなたも病院にいたようなのでわかると思いますが司法解剖でですね…虐待の疑いと死因に関して不可解な点がありまして…」

澪「あの…具体的に言ってもらえませんか?」

警官「あのですね、虐待の件は知ってましたか?」

澪「知る訳ないじゃないですか!何言ってるんですか!」

警官「すいません。後は死因なんですが、おかしな点がありまして、10分ほどであの様な事にはならないんですよ、
長時間車の中に放置しないとね。彼女からも話を聞いたんですが、あなたに聞いてくれの一点張りで…それで、今回お話を聞きに来たんですよ」

澪「律はなんて言ってたんですか?」

警官「買い物してて、暑いから子供の様子見に行ったら息していなかったと…それであなたに電話したと…」

澪「事実です。律の言っているとおりです…」

警官「はぁ…そうですか…もしかしたら、またお話を伺う事があると思いますが協力お願いします」

澪「はい…」

そう言うと警官は帰っていった…家のドアが閉まると足がガクガクと震えだした…
嘘を付いてしまった…こう言うのは罪になるのだろうか…?偽証罪とか…
振り返ると母が心配そうな顔で私を見ている、私は母に大丈夫と告げ急いで部屋に戻った。



その夜、律に電話をした。あまり話したくないが一応、警察が来たことを話しておきたかったからだ。

澪「律か?」

律「ああ、そう言えば警察行かなかったか?」

澪「来たよ!その事で電話したんだ」

律「澪、お前余計なこと言ってないよな?」

澪「なんだよ?余計なことって!」

律「私がパチンコしてた事とか、虐待の事とか…」

澪「話してないよ…というか、もう、私を巻き込まないでくれ…」

律「チッ…分かったよ!悪かったな、迷惑かけて!じゃあ、切るから!」

そうして、律は怒り気味に言うと電話を切ってしまった。
私ももうこの事は忘れよう…
正直、もう関わりたくない…あんな律を見たくない…


週末、私は母に頼まれて買い物に出かけた、あの事件の事もありモヤモヤしていたから
気分転換になると思い、外に出ようと思っていたからだ。
駅前の方にい向かうと、あの事件の事を思い出すが、これからも通るだろうこの道を避けるわけには行かない。
パチンコ屋の前に差し掛かった時だった。
見覚えのある姿が出てきた、律だ…
律は携帯の画面を見ながら周りを気にしている。
そうしてると、向かいにいる男の人に手を上げている。
その男の人を見ると私も知らない人だった。
私は律の後をつけてしまった…
気がつかれないように後をつけると二人は路地に入った…
この路地って…確かラブホテルがあったような…
路地から覗き込むと二人はラブホテルに入っていった…
何やってるんだよ…律…子どもが死んだばっかりなのに…
それも旦那以外の男の人と…
訳がわからない…私は混乱して…走りだした…
母から頼まれた買い物も忘れ家へと急ぐ…


その夜のことだった、12時を過ぎたぐらいだった携帯がなった。
律からだった…出たくはなかったが嫌な予感もしたから仕方なく出ると
掠れ声で律が助けを求めてくる…

律「あ…やっぱり、出てくれた…すまん…助けてくれ…澪…」

澪「どうしたんだよ…助けてって…」

律「旦那と喧嘩してな…そしたらさ、あいつ殴りかかってきて…今私、動けなくて…」

澪「はぁ?大丈夫なのかよ…」

律「大丈夫じゃないかも…」

澪「分かった、今行くから待ってろ!」

そうして私は家を飛び出した…
もう律には関わらないと決めていたのに…でも、やっぱり…あいつは私の親友だ…



アパートに着くと、チャイムを鳴らさずドアを開けた。
ドアを開けて私はゾッとした…そこには血塗れの律が横たわっていた。
私は靴を脱ぐのを忘れて、律に駆け寄る。

澪「大丈夫か?律!しっかりしろ!」

律「へへっ…どうにか生きてるよ…」

澪「って!血塗れじゃないか!」

律「あいつ久しぶりに帰ってきたと思ったら、怒鳴り散らしてさ…離婚話したら殴りかかってきたんだよ…
抵抗する暇もなくてさ…この様だよ…」


澪「と、取り敢えず、病院いこうな!立てるか?」

律「駄目かも…」

澪「仕方ないな…ほら掴まれ!」

律「うん…ありがとう…澪…」

澪「何言ってるんだよ…私達、親友だろ…」

律「親友か…こんな私でも親友だって思ってくれるんだ…」

澪「そんな事より、行くぞ!」

律「うん…」


そうして、律を車に載せて病院へと急いだ…
幸い、出血はしてるものの怪我はたいした事なくてすんだ。
一応、今日は病院に泊まることになった。
病室に入ると律は寝ていた。
律を起こさないように、ベット横の丸椅子に静かに座った。
すると律が話しかけてきた。

律「澪?」

澪「ごめん…起こしたか?」

律「ううん」

澪「そうか…」

律「ごめんな…いろいろと…」

澪「イイって…でも…律変わったな…」

律「夢だけじゃ…現実は乗り越えていけないんだよ…世間は厳しすぎる…」

澪「でも…そうなら…もっと速くに相談して欲しかった…」

律「そうだな…ごめんな…こんな親友になっちゃって…」

澪「律はどこまでも私の親友だよ…」

律「うん…」

澪「旦那に殴られたって…離婚話だけでこんな事になるか?他に何かあるんじゃないのか?
私、昼間、お前を見たんだよ…パチンコ屋から出てきて男の人とラブホテルに入るところを…」

律「そうか…見られちゃったか…最低だろ?私…パチンコ代稼ぐのに援助交際してたんだよ…笑ってくれてもいいぞ…」

澪「馬鹿…もっと自分を大事にしろよ…」

律「旦那はさ、全然家に生活費入れてくれないし…育児は大変だし…気分転換と生活費をどうにかするためにパチンコに走ったんだけど…
世の中、楽して儲かるわけなくてな…それで、援助交際で生活費とパチンコ代稼ぐようになったんだ…」

澪「律…」

律「最初は抵抗あったんだけどな…2時間我慢するだけで2万とか貰えるんだ…
だんだん、感覚が麻痺していってな…やめよう、やめようと思ったんだけどな無理だった…
そしたらさ、バチが当たったんだよ…あいつに見られててさ…
その事もあったんだろな…この様だよ…」

澪「律…ごめんな…早く気がついてあげれなくて…」

律「なんで澪が謝るんだよ…悪いのは全部私だ…」

澪「着替必要だろ…取りに行ってくるよ…」

律「ごめん…何から何まで…」

澪「いいって…じゃあ、行ってくる…」

律「うん…」

そうして私は病室を後にした。



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