――そして卒業式が終わった
梓 「みなさん、卒業おめでとうございます!」
唯 「びええーん!!」
律 「こらこら唯、泣きすぎだって」
澪 「そういう律だって……ひっく、泣い、でるじゃ、ないか」
紬 「み、みおぢゃんも……うわああーん!」
さわ子 「もう、軽音部は最後まで手をかけるんだから……」 ウルウル
生徒会役員A 「和先輩、卒業おめでとうございます!」
生徒会役員B 「私、先輩みたいな立派な人になります!」
和 「みんなありがとう、私もあなたたちとやってこれて本当に良かったわ」
和 「……それじゃあ、そろそろ行くから」
和 「……ふぅ」
憂 「和ちゃん!卒業おめでとうございます!」
和 「あら、憂。ありがとう」
憂 「そういえばさっき、曽我部さんという方が……」
和 「あら、会長が……。なにかしら」
憂 「私が和ちゃんと仲が良いってことを言ったら、これを渡してほしいって」
和 「手紙……?」
『生徒会室で待ってます』
憂 「それじゃあ私、行くね! あ、それと……」
憂 「和ちゃんが卒業しちゃうのは寂しいけど、私最後に和ちゃんの為になにかできて嬉しかった」
和 「憂ったら……手紙ぐらいで大袈裟ね。でも、ありがとう」
憂 「それじゃあ私はこのあと用事があるから」
和 「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」
憂 「じゃあね!」 タッタッタ
和 (それにしても会長が……なにかしら)
和 (なにかサプライズでもやってくれるのかしらね)
和 (それとも澪のFCの会合とか……ふふっ)
和 (澪……。軽音部のみんなと、結局仲直りできなかったな)
和 「……」
和 (もうこの学び舎ともお別れか)
和 (この階段をのぼったら生徒会室……か)
和 (この階段をのぼったら――)
唯 「……和ちゃん」
和 「!!」
唯 「和ちゃん、卒業おめでとう」
和 「……」
唯 「私たち幼稚園から一緒だったけど、大学は別々だね」
和 「……」
唯 「私、ずっと和ちゃんに迷惑ばっかかけてきたけど……」
唯 「本当に最後の最後まで、迷惑かけちゃったね」
唯 「……ご、ごめんなさい」 ヒックヒック
和 「……」
唯 「私が悪いのはわかってるんだけど」
唯 「ずっと一緒だったのに、このまま別れるのなんて嫌だから……」
唯 「和ちゃんのこと、大好きだから……」
和 (……唯)
和 (唯がこうやって、あの日から何度も何度も謝ってくれてるのに)
和 (どうして私は素直になれないのかしら)
和 (どうして私の口は……)
和 「そ、そうなんだ、じゃ、じゃあ私生徒会行くね」ウルウル
和 (……こんな言葉を言うのかしら)
唯 「……和ちゃん、あの日からそれしか言ってくれなくなっちゃったね」
唯 「いつも、本当は生徒会なんてないのに……」
和 「……」
和 (いつもごめんなさいね。でも今日は、本当に呼び出されてるのよ)
唯 「今日だって、生徒会いっても曽我部先輩はいないよ」
和 (……どういうこと?)
唯 「ごめんね、曽我部先輩の名前まで出して、こんなことして……」
唯 「生徒会室で待ってるのは、むぎちゃん、りっちゃん、澪ちゃん、あずにゃん」
唯 「私たち軽音部だよ」
唯 「憂が……私たちと和ちゃんが仲直りできるように、って考えてくれたんだ」
唯 「正直、曽我部先輩の名前まで出して嘘ついちゃって……」
唯 「また和ちゃんを嫌な気持ちにさせちゃったかもしれないけど」
唯 「みんな、やっぱり和ちゃんに心から謝って、仲直りしたいんだ」
和 「……」
和 (軽音部のみんな……。それに憂ったら……)
和 (あの子本当に……)
※ ※ ※ ※
和 「こんなこと、相談できるの憂ぐらいしかいなくて……」
憂 「ううん! 全然構わないよ! むしろ本当に真っ先に相談してくれて嬉しいの」
和 「本当は軽音部のみんなと仲直りしたいんだけど、何故か素直になれないの」
和 「何故か軽音部のメンバーと話すと」
和 「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」
和 「しか言えなくなっちゃうの……」
憂 「……和ちゃんも、仲直りしたいんだよね?」
和 「もちろんよ! 私からも唯たちに謝りたいわ。みんな謝ってくれてるのに、ずっと、こんな態度とったままで……」
憂 「それなら大丈夫だよ!」
和 「……どうして?」
憂 「だって、軽音部のみなさんも、お姉ちゃんも和ちゃんと仲直りしたがってるから」
憂 「そうしたら、仲直りできないはずがないよね?」 ニコッ
和 「……そうね。でも、また唯たちが話しかけてきても、きっと……」
憂 「例の特異体質で、きっかけを逃しちゃうかもって?」
和 「(特異体質!?) ……それなのよ」
憂 「……うーん」
憂 「……うん! 大丈夫、私に任せて!」
和 「大丈夫なの?」
憂 「私がなんとか、軽音部のみなさんと和ちゃんを仲直りに導いてみせるよ」
和 「……そこまで気負わなくていいのよ」
憂 「ううん! だって……」
憂 「私の大好きなお姉ちゃんたちと」
憂 「同じくらい大好きな和ちゃんが、このまま離れちゃうなんて嫌だから……」 ポロッ
和 「憂……。ありがとう」
※ ※ ※ ※
和 (まさかこんな計画を立てていたとはね)
和 (憂も、唯も、律も、澪も、むぎも、中野さんも……)
和 (みんなこんなに私のことを思ってくれてる)
和 (あの日のことは本当に辛かったけれど)
和 (それでも、ここまで私のことを思ってくれてる人たちはいるだろうか)
和 (唯……)
唯 「和ちゃん」
和 「……」
和 (……やっぱり他の言葉が出ないわ)
唯 「和ちゃん、あのね」
唯 「もし私たちと仲直りしてもらえるなら」
唯 「私たち生徒会室で待ってるから」
唯 「そしたらそこで和ちゃんに心から謝るからぁ……」 ヒックヒック
唯 「いっぱい、いっぱい謝るからぁ……」 ヒックヒック
唯 「で、でも、私たちのこともし許せないなら」 グスッ
唯 「このまま帰っても構わないから……」
唯 「でも、私和ちゃんのこと大好きだから……」
唯 「うええーーーーん!」
和 (……唯)
和 (こんなにも、唯は私のことを好きでいてくれている)
和 (軽音部のみんなもそう)
和 (彼女らはこんなに素直な気持ちを出してくれているのに)
和 (私だけ意地を張ってばっかし……)
和 (……格好悪い女ね)
和 (――でも)
唯 「和ちゃん……。本当に和ちゃんの、好きにしていいから」
唯 「もし私たちとまた仲良くしてもらえるなら、生徒会に……」
和 (あの日以来、そう、今ですら)
和 (どうしても、あれ以外の言葉は出てこないけど)
和 (でも、やっと心から言える)
和 (最後に私が選ぶのは――)
和 「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」ニコッ
いちご<……おわり
最終更新:2011年07月20日 19:16