「あ、そうだ、りっちゃん。よかったらうちに来ない?憂ったら、お夕飯の材料買いすぎちゃったみたいで……」

って言われてさ、私はその誘いに乗っちゃったんだ

今思うと、怖いもの見たさとかそういうのもあったかもしれない、でも、その時は唯を助けてやりたかったんだ

諦めかけてたけど、助けることができるなら……自分に出来る事はなんでもやろう、そう思ったんだ

そのあと、わたし達は唯の家、平沢家までほとんど無言で……

いや、正確に言うと唯だけがしゃべってた

あたかも誰かとしゃべってるみたいに楽しそうに、さ……

まあ、そんな感じで平沢家についたんだけど、正直こっから先はよく覚えてないんだ

だから、かなり曖昧になるけど許してくれ



……家についた時、唯は両手に荷物提げてて、わたしが扉を開けようと思ったんだ

そしたら唯が

「憂-、ドア開けてよー」

って言うんだよ

わたしは、自分で荷物持ってるのに、入れ替わっても一緒だろって思ったんだけど……

……………開いたんだよ、ドアが

ギイーって音たてて、開いたんだよ……

意味がわからないだろ?わたしもわからなかった

で、唖然としてたらさ、電気がパチッてついたんだよ

唯の家には唯一人しかいないはずなんだ

でも、唯はわたしの隣にいるんだ、なのに、自動化されたみたいに……ドアが開いて、電気がついて……

……固まってるわたしを見て唯は言ったんだ




「ほら、憂いるでしょ?りっちゃん」




……憂ちゃんは死んだはずなんだ、じゃあ、唯は何と住んでるんだよ……

……わたしは、怖かった

親友を見捨てて逃げたかった

……いや、逃げるべきだったんだ

わたしは結局、唯につれられて平沢家に足を踏み入れた

唯は荷物をさげて台所に向って行って、私もそのあとをついていったんだ

それで、キッチンに着いたんだけど、その時唯が言ったんだ

「憂-、ここに荷物置いとくよー」

……答えは当然、返ってこなかった

そしたら唯が

「うん、わかった、お姉ちゃん」

って自分で答えてさ

ああ、やっぱりさっきのは何かの間違いか、自動化されてただけで、この家には唯一人しかいないんだって思った

それと同時に、唯が壊れてしまったって事の証明にも思えて、悲しい反面……正直ほっとした

でも、唯……いや、憂ちゃんが

「お姉ちゃん、すぐ料理できるから、部屋で律さんと一緒に待ってて?」

そう言った時に…………確かに聞こえたんだ


……タタタタタタタって階段を上がる音が…………


おかしいんだ……

死んだのは憂ちゃんで、生きてるのは唯のはずだ

いや、唯が憂ちゃんに言った時も”何か”は反応したんだ

わたしは、目の前にいるのが唯なのか、憂ちゃんなのか、わからなかった



その後も、憂ちゃんは唯と一緒に待っててくださいって言ってきたんだけど、わたしは嫌だった

わけのわからないものといるくらいなら、目に見える、唯といた方がましだった

悪いし、手伝うよ。そういって無理やり料理を手伝ってたんだけど……

おかしいんだよ

唯って、かなり不器用なやつで、料理なんてできないし、包丁持たせたら危なくて目が離せない、そんな奴だったのに……

何年もずっと家事やってきたみたいな感じで、手際もいいし、包丁の扱いもめちゃくちゃ上手いんだよ

それを見てわたしは、以前感じた些細な違和感を思い出したんだ

でも、その時はその違和感が何なのかわからなかった……いや、今でもはっきりとはわからない

そんなモヤモヤした気持ちで料理を手伝ってたんだ、そしたら

「あ、すいません、お醤油買い忘れてたみたいで……ちょっと買ってくるので、お留守番しててもらえませんか?」



最悪だよ、ほんとに

わたしが行くよ、そう言ったんだけど、それは悪いからお姉ちゃんとお留守番しててくださいって……

結局わたしが折れて、ビクビクしながらテレビを見てた

何事もなく時間は過ぎて行って、足音も何もかもわたしの思い込みで、この家にはわたしと唯しかいなかったんだ、そういう結論が出そうな時だった

プルルルルルルって、突然電話が鳴ったんだよ

心臓が止まるかと思ったけど、よく考えたら、唯……いや憂ちゃんからだろって思ってさ

唯の家の電話は、かかってきた電話番号を表示する機能があるんだけど、それを見たらやっぱり憂ちゃんからだったんだ

(これは、スーパーはもう閉まってたのかな?)

とか思って電話に出ようとしたんだけど……


…………聞こえたんだよ、トンッ、トンッ、トンッて……


電話の呼び出しブザーの合間に、ゆっくり階段を降りてくる足音が……

寝起きか何かだったのか、ゆっくりゆっくり近づいてくるんだよ

わたしは、電話をとりに来たんだろう、直観的にそう思った

だから、急いでテレビの方に戻って、気付いてないふりをしたんだ

足音はどんどん近付いてきて、電話の辺で足音がしなくなったって思ったら、呼び出しの音がピタッと止まったんだ

……”何か”が電話に出たのか、それとも、憂ちゃんが誰も出ないから切ったのか……

今考えると、馬鹿だと思うよ

わたしは、何だか無性に気になってさ、確かめてやろう、そう思ったんだ

……やけになってたんだと思う。”何か”がいないって事を何とか証明したかったんだと思う



わたしは、おっかなびっくり見に行ったんだ……

それで、恐る恐るモニターを見たんだけど……

そこにさ……出てたんだ……

…………通話中って文字が……

わたしは驚いてさ

やばいと思って逃げようとした拍子に、電話に腕が当たって受話機が外れたんだ

……聞こえたんだ、受話機の向こうから「今、~のコンビニだけど、アイス食べる?」

って憂ちゃんの声が……

楽しそうに”何か”と話す憂ちゃんの声だけが部屋に響いててさ…………

……それから先は悪いけどよく覚えてない。ただ、必死に走ってたって事と誰にも会わなかった事は覚えてる。

気付いたら私は、自分の部屋で布団にくるまって朝を迎えてたんだ



それで、その日は学校に行く気にもなれなくて休むって連絡しようと携帯を開いたんだけど……

……かかってきてたんだよ、唯の家の電話から……

普通なら、いなくなったわたしに、どうかしたのっていう連絡が来た、そう思うんだけど

……時間がおかしいんだよ

モニターを見た時さ、時間は19時40分だったんだ

……19時41分にかかってきてたんだ

唯の家から、近くのコンビニまで、どんなに急いでも5分はかかるはずなんだよ

なのに…………



わたしは、その日学校には行かなかった

唯に会いたくなかったし、話を一旦自分の中で整理したかったんだ

わたしは何回か違和感を感じたって言ってただろ?

それについては、多分これだっていう答えが出たんだけど……

ま、それは話しの続きでわかるよ


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