んで、次の日の部活で、

「いやーまじびびったぜ。昨日むちゃくちゃ憂ちゃんに似た人見つけたんだ。まじで」

みたいな話を唯がいない時にしてたんだけど、結構しんみりした雰囲気になってさ

後輩の梓が

「憂に会いたいですね……」

って、泣き出しちゃったんだ……

憂ちゃんが事故にあってから、梓も立ち直ってなかったんだなって事に気付けなかったわたしは本当に軽率で部長失格だったよ……

そこに唯が遅れて部活に来てさ、泣いてる梓を見つけて言ったんだ

「あずにゃん?どうしたの?何かあったの?」

梓は、何でもないです。ゴミが目に入ってしまって……とか、誤魔化してたんだけど

唯はそういうのに鋭いやつでさ

「あずにゃん、我慢しないで、大丈夫だから」

って言ったかと思うと梓をギュッて抱き締めたんだ

梓もそれでこらえきれなくなったのか、憂に会いたいとか寂しいとかひとしきり泣いて、唯はずっと頭を撫でてて……
私達も我慢できなくて、ひとしきり唯以外の皆が泣いてさ……
それでその日の部活は終わったんだ

私は、これで梓や他の皆も、もちろん私も気持ちの整理がついて、明日から憂ちゃんはいないけど本当の意味で新しい学校生活が始まるんだ

……そう思ってた

……そう思ってたんだよ……



次の日、唯は学校に来なかった。

HRの時間になっても来なくてさ、私は、唯は遅刻したのか、そう思ってた

他の皆も多分そう思ってたと思う

そしたらさ、下の階から、きゃー、だとか、いやーだとか、叫び声が聞こえて来てさ

私はなんだなんだと思って、野次馬根性丸出しで見に行ってみたんだ

……いたんだよ、憂ちゃんが。ニコニコ笑いながら

「あ、律さん。おはようございますー」

何て言って。

信じられなかった。信じたくなかった。

でも、確かに憂ちゃんがそこにいたんだよ。

そしたら梓が来てさ、震えながら憂ちゃんに質問したんだ

「本当に憂……なの?」

って

そしたら憂ちゃんは

「そうだよ?皆変だけど、何かあったの?」

って感じで……

そのあと梓や、後輩で憂ちゃんと仲の良かった純ちゃん達が色々質問してるんだけど、全部答えれてるんだよ

私達が修学旅行に行ってる間に食べたドーナツの事とか、何をしたかとか全部……

梓達もそれが全部あってるらしくて、段々質問の数も減っていったんだ

それで、私はふと気になった事を聞いたんだ

「憂ちゃん……唯はどこにいるんだ?」

って。そしたら憂ちゃんは

「お姉ちゃんですか?お姉ちゃんは今は家にいますよ?風邪をひいてるから休んでるんです」

私が感じていた違和感は、この言葉で確信に変わった。

結局その場は先生が来て話はまた後日って事で憂ちゃんが帰らされて、とりあえずその場は治まったんだ

それで、その日の放課後、私は軽音部のメンバーを集めて、話をしたんだ



「ムギ、澪、梓、今日憂ちゃんが学校に来ただろ?」

「あ、ああ。らしいな。で、でも憂ちゃんは……」

怖がりの澪はビクビクしている。いつもならからかう所だけど、その時はそんな雰囲気じゃなかった

「……実は、憂は生きてた、とかでしょうか?死んだのは別人だった……とか」

「唯ちゃんの想いが憂ちゃんを蘇えらせたとか……」

梓とムギがそれぞれ思った事を口にする。

「……たぶん、両方とも無い、と私は思う。」

私は、自分の意見を部員に告げた

「じゃ!じゃあ!あれは憂ちゃんの幽霊なのか……?」

「澪、落ち着け。これは、私の意見だけど……」

わたしは深呼吸をして、ゆっくりと口を開いた。

「多分、あの憂ちゃんは、幽霊でもなければ、ましてや憂ちゃんでも無い」

「……まさか、りっちゃん……」

鋭いムギの事だ、何かに勘付いたんだろう

「ああ、多分な。これから先は辛い話になるだろうけど、話してもいいか?聞きたくないなら帰った方がいいぞ?」

私はそう言って3人の顔を順番に見た
ムギも梓も怖がってた澪も、誰も帰ろうとはしなかった

「……そか。じゃあ、話すぞ?」

3人は同時にこくりと頷いた

いつもはティータイムや演奏で賑やかな部室はシーンと静まり返っていて、4人の呼吸の音だけが響いてた

私はそんな、いつもと違う雰囲気の中、自分の意見をポツリポツリと語り出したんだ

「なぁ、あの憂ちゃんを見た時、皆は何か違和感を感じなかったか?……私は、何とも言えない違和感を感じたんだ。

でも、その時はその違和感の正体が何なのか、混乱していたし私自身よくわからなかったんだ。その違和感の正体が解けたのは、私の質問に対して憂ちゃんが答えた時だった。

唯はどこにいるんだ?私の問いに対して、憂ちゃんは、お姉ちゃんは家にいる、そう答えたんだ。

おかしいんだよ。憂ちゃんは確かに事故で死んだ。それで火葬も見て、遺骨も特別に納めさせてもらったんだ。なのに、なんで今この地球に憂ちゃんと唯が存在してるんだよ。

おかしいんだ何もかもが。」


そこまで言って、私は少し間をとるように呼吸をした。

自分の気持ちを整理したいという思いもあった

この先を言ってしまうと、もう戻れなくなりそうだとも思った。

でも、皆には友達として知っておいて欲しかった、何より、私ひとりで抱えるには大きすぎる事だったんだ

そして、私は胸の内に溜まっていたものを皆に吐き出していった

「……友達に向かって、こう言う事は言いたくないけど、多分、唯は……唯の心は……もう、壊れてしまったんだ」

その先を私が語ろうとした時、急に胸倉を掴まれた

「律……!言っていい事と、悪いことがあるだろ……!」

澪だった。澪のやつが、今にもわたしをぶん殴りそうな勢いで掴みかかってきてるんだ

澪の気持は痛いほどわかった。友達を、急に廃人扱いされたら誰でも怒るだろう

でも、他の2人が

「澪先輩、落ち着いてください。律先輩だってこの話をするのは辛いはずです」

「澪ちゃん、手を離してあげて。りっちゃん、泣いてるわよ……」

言われて気付いたんだ。わたしはいつの間にか泣いてたって

……辛かったんだと思う。唯の事は親友だと思ってた。親友に対して、そんな事を考えてしまっていたのが辛かったんだ

そんなわたしを見て、澪は

「……ごめん、律。」

って言って手を離して、ハンカチを渡してくれてさ

それで、わたしは涙を拭って、また話を始めたんだ

「……澪の気持ちはわかるよ。わたしだって唯を急に廃人扱いされたらそいつを殴るかもしれない。

で、本題に戻すけど、今日来た憂ちゃん、多分あれは……唯、だと私は思う。」


流石にこの時ばかりは、3人共顔がひきつってた

「で、でも、唯先輩は修学旅行に行ってて私と純と憂で過ごした時の事は……」

梓が純粋な疑問を投げかけてきた

「あの姉妹はすごい仲が良かったし、そう言う事を話しててもおかしくないだろ?」

その時点で、私は何か違和感をまた感じてた。でもそれは皆には言わずに黙ってたんだ

それが何なのかわからなかったし、知りたいとも思わなかった。

わたしは、その違和感……というかしこりのようなものを残して、皆に話をしていった

「今日、憂ちゃんとして来たのが唯なら、説明がつくんだ。それで、わたしは今日唯と話してみたい、そう思ってる」

3人の顔が驚きに変わったんだけど、わたしはそれを無視して話を進めていった

「唯とは私一人で話したい、そう思ってるし、それが一番だと思う。澪、もしあの憂ちゃんが幽霊だった時お前は怖がらずにいられるか?

ムギ、梓、あの優しくて暖かかった唯が壊れてたらお前らは耐えられるか?

……それにわたしはこの部の部長だ。結果は勿論皆に伝えるし、隠し事はしない、約束するよ」



その後、3人もそれを了承してくれて、その日は少し話して解散になったんだ

それで、家に帰ろうとしてる時に不意にわたしの携帯が鳴ったんだ

何だろ、って思って着信見るとさ………………

お母さんからで、帰りにスーパーで大根買って帰って来てっていうメールだったんだ

で、ちょうど小腹もすいてたし、ちょうどいいやって思って私はスーパーに寄って帰る事にしたんだ

スーパーは夕飯の支度何かをしてる主婦で混み合ってて、わたしは大根とあんぱんを持ってレジの最後尾に並んでた

そしたら、後ろから声をかけられたんだ

「あれ?律さんじゃないですか?」

って……

その声には聞き覚えがあって、でも誰の声なのか思い出せなくてさ

ただ、振りむいちゃいけない、思い出しちゃいけないって、脳が、体が、細胞レベルで警告してた気がする

でも、私は振り向いちゃったんだ

……背筋が凍るってのは、ああいう事を言うんだろうな

憂ちゃんだ……憂ちゃんが私に声をかけてきてたんだよ



わたしは何が何だかよくわからなかったのと、びっくりしてしまったので

「お、おお。久しぶり」

とか、よくわかんない事言っちゃってさ
そしたら憂ちゃんに

「あはは。久し振りって、今日学校で会ったじゃないですか」

何て言われて、余計しどろもどろになっちゃってさ

でも、頭の中はかなり落ち着いてて、逆にこれはチャンスだと思ってた

もし、唯の家に行って唯に直接聞いても、知らない。私は風邪でずっと寝てたって言われたら、こっちにはそれ以上追及する事はできないだろ?

でも、目の前には憂ちゃんの恰好をした唯がいる。これなら、問いただせば逃げる事はできないって思ったんだ

それから何とか、憂ちゃんと話をしながら帰ろうって事になって、先に会計を済ませたわたしは憂ちゃんが会計を済ませるのを待ってたんだ



3