その2
平沢唯、17歳。高校二年生。
勉強ダメ、運動ダメ、特技は昼寝とおやつを食べること。
おいしいお菓子につられて軽音部に入ったけれど、ガキ大将のりっちゃんにイジメられるわ、
澪ちゃんに嫌味を言われるわ、お金持ちのムギちゃんに自慢されるわで散々な毎日。
だけど最近、一年生のあずにゃんが入部してきて、ちょっぴり気になる……?
さてさて、そんな将来はニート街道まっしぐらな唯ちゃんの元に現れたひとりの少女。
それは未来からやってきた唯ちゃんのひ孫、憂だった――
憂「というわけなの」
唯「へぇ~憂って未来から来たんだね」
憂「そう! お姉ちゃんを立派な大人にするためにねっ!」
唯「あはは、心配しなくても大丈夫だよぉ。私だって大人になればちゃんとするんだから~」
憂「 あ ま い っ ! 」
憂「いい? お姉ちゃん。私は未来から来たんだよ? お姉ちゃん……このままじゃ将来ダメダメになっちゃうよ?」
唯「そ、そんな…脅かさないでよ憂ぃ~」
憂「脅しじゃないの。これを見てお姉ちゃん」パラッ…
『大学入試落第で落ち込む唯』
『唯、三浪記念パーティーにて』
『四浪目で大学を諦め派遣社員となった唯』
『派遣切り』
『なんとか結婚して専業主婦となるも家事が一切出来ない唯』
『闇金に手を出して借金取りに追われる唯』
『過労で倒れた旦那さん』
『再就職記念・風俗にて』
憂「これが将来のお姉ちゃんなんだよ……」
唯「あわわわ……」
唯「あ、でもでもっ! この人、私の旦那さんになる人? ちょっとカッコイイね!」
憂「ああ、聡おじいちゃんね。その人、律さんの弟さんだよ」
唯「ええっ!? りっちゃんの!?」
憂「そう……。そして田井中家に嫁いだお姉ちゃんは毎日毎日律さんにいびられ……」
唯「(ガーン)そ、そんなぁ~~! 大人になってまでりっちゃんにイジメられるなんて耐えられないよぉ~」
憂「ね、わかったでしょ? こうならないために私が未来からやってきたの」
唯「そ、そうか! 未来のことがわかったんだから、今から変えていけばいいんだよね!」
唯「ようし…そうと決まればまずはりっちゃんの弟からだ!」
憂「えっ、えっ?」
唯「今すぐりっちゃんの弟に嫌われて結婚しないようにするよ!!」ドタドタドタ
憂「あっ、ちょっとお姉ちゃん――」
憂「いっちゃった……」
【田井中家】
唯「たのもぉ~~!」
律「なんだ唯じゃねーか。何の用だよ」
唯「りっちゃん、弟さんいる?」
律「ああん? なんで俺に弟がいるって知ってんだ?」
唯「いいから弟出してよ!!」
律「てめえっ! この野郎!!」
聡「姉ちゃーん、なに騒いでんだよ~」
律「あ、聡」
唯「むっ……! キミが聡くんだね」
聡「え、そうだけど……誰?」
唯「――ごめんっ!」バシーン
聡「いたっ!?」
律「て、てめえ! 人の弟に何しやがる!!」
唯「ごめんね聡くん! 私、キミとは結婚できないの!」
聡「へ???」
唯「じゃあね、バイバイ! 私のことは忘れてね!」
律「な、なんだあいつ……」
聡「さ、さあ……?」
聡(変な人だけど…ちょっと可愛かったな……)ドキドキ
憂「ハァハァ……お姉ちゃーん!」
唯「あっ、憂! やったよ! 私、聡くんに嫌われてきた!」
唯「これで未来、変わったかなぁ?」
憂「変わってないよ! いい? お姉ちゃんと聡おじいちゃんの出会いはね――」
憂「カクカクシカジカ」
唯「そ、そんなぁ~。それじゃあ、私のやったことは無駄――ううん、それどころかこれが原因で……」
憂「あのね、お姉ちゃんは聡おじいちゃんと結婚するのを嫌がってるけど……聡おじいちゃんはお姉ちゃんのこと愛してたんだよ?」
唯「そ、そんなこと言われても……聡くんと結婚したらりっちゃんにイジメられるよぉ」
憂「それはお姉ちゃんがしっかりしてないから! 律さんだって二人が結婚したときはお祝いしてくれたんだよ!」
憂「それなのにお姉ちゃんったら家事はしない、子育てはしない、あげく闇金にまで手を出して……」
憂「そんなのが家にいたら誰だって疎ましく思うのは当然でしょ!」
唯「ふひぃ…じゃあどうすれば……」
憂「いい? 変わらなきゃダメなのはお姉ちゃん自身なの」
憂「お姉ちゃんが立派な大人になれば律さんだってきっと認めてくれる」
憂「私はそのために未来からやってきたの」
唯「そっか……そうだよね憂! 私、頑張るよっ!」
憂「わかってくれたんだ、お姉ちゃん!」
唯「ういぃ~ごめんよ~~」
憂「よしよし…これからは立派な大人になるために一緒に頑張ろうね、お姉ちゃん」
唯「ういぃ~~~~~~~!!」
憂(ふぅ…なんとか私の存在消滅は免れたみたい……)
ちゃんちゃん♪
最終更新:2011年07月18日 12:20