・・・

ガチャリという音を立ててドアを開けて出てきたのは。

唯「和ちゃん!」

和「唯、どうしたの?そんなに慌てて」


よかった・・・和ちゃんは無事だった・・・
でもさっき浮かんだ子は・・・
本当にごめんなさい。でも私にはどうしようもないし・・・

・・・って、和ちゃんはもしかして標的から外された!?

唯「和ちゃん、ちょっときて!」

私は和ちゃんを強引にトミお婆ちゃんの家まで引っ張って行く



トミ「あら、唯ちゃんどうしたんだい?」

そしてこれまでの事を話した。

トミお婆ちゃんは和ちゃんにはもう死神が付いてないと言うことを教えてくれた。
私は嬉しくて和ちゃんに抱きついた。
和ちゃんは「離れなさい」と言いながらも少し嬉しそうに照れている。

死の運命にあった人を一人救えたんだ!




だけどその夜からは地獄だった。

一日に4~5人が私の頭に浮かぶ。
連絡が取れる人には伝えたけれど、結局その後一人も救えなかった。

毎日毎日誰かが死ぬのを救えずにただ黙って待ってるだけ。
もうどうにかなりそうだった。

そしてあの時が訪れる。

その日もいつものように頭の中に何人もの人が浮かんでくる。

そして、私の頭に浮かんだのは、ムギちゃんだった。


ムギちゃんに電話をした。
ここ最近頭に浮かんでから死までの感覚が急激に短くなってきている。
急がないと手遅れになり兼ねない。

唯「もしもし、ムギちゃん!」

紬『どうしたの唯ちゃん・・・もしかして・・・』

唯「ムギちゃん、言いにくいけど・・・次、ムギちゃんなんだ」

「そう・・・」ととても残念そうな声でムギちゃんは呟く。
その声を聞くだけでもう心臓が張り裂けそうだった。

でもまだムギちゃんは助かるかも知れない、和ちゃんの時みたいに・・・

でも和ちゃんはどうして助かったの?
特に危機を回避するような事をした訳でもないし・・・
あーもう考えても仕方ないや。

唯「ムギちゃん・・・できるだけ安全な場所で、生き延びてね?」

紬『・・・』

ムギちゃんは少し黙っていたが「ええ」と言ってくれた。
後はムギちゃんの家の執事さんに任せたほうがいいよね。

私にできる精一杯の事。

それはただ祈ることだった。




次の日私が朝一に受けた知らせは残酷なものだった。

新聞の大見出しを見て、私は一瞬目を疑った。

『琴吹財閥の社長令嬢、自殺か!?』

記事を読んでいくと、どうやら睡眠薬の大量摂取による自殺。
どうしてムギちゃんが自殺なんか・・・
ムギちゃんの気持ちは分からない事もない、でもこんな事って・・・

その日から私は頭に誰かを浮かべる事がなくなった。

これは惨劇の終了を意味するのだろうか。

次の日、私と憂と和ちゃんで久しぶりに出かける事にした。




憂「お姉ちゃん起きてー、今日は和ちゃんとおでかけするんでしょ?」

唯「そうでした!」

ベッドから飛び起き、階段を降りる。
憂の用意してくれたご飯を食べて。仕度をする。

丁度仕度を済ませたところでインターホンのチャイムがなる。

私が玄関に行った時には憂が和ちゃんを出迎えてくれていた。

和「おはよう唯、憂。」

唯「おはよう和ちゃ~ん」

憂「和ちゃんおはよう」

今日は天気のいい絶好の出かけ日和だ。
これまでの出来事なんか全て忘れさせてくれるぐらいに・・・

和「じゃあ、行きましょうか」




久々に町に出て買い物を楽しんだ。
かわいい人形を見つけて喜ぶ私。
気に入った服を試着して顔を赤らめる和ちゃん。
ストラップをじーっと見つめて買うか買わないか迷ってる憂。

ああ、今私は本当に幸せだ。
平凡な日々がどれだけ幸せだったかを私は改めて痛感した。

昼ご飯は近くのファミレスで済ませた。

そして・・・



唯「はぁ~久しぶりにたくさん遊んだね、和ちゃん、ういー」

和「そうね、私も久しぶりだわ」

憂「うん、とってもたのしかったね!」

本当に楽し時間は短く感じるものだ。

そんなことを思っていた時だった。



またあの感覚が私を襲う。

あずにゃんを、りっちゃんを、澪ちゃんを、ムギちゃんの、みんなの死を予知したあの感覚。

今回浮かんだのは。

唯「そんな・・・なんで・・・」

私の妹、憂だった。

そんな、憂はあの時学校にはいなかったはず、なのにどうして!?


唯「ねえ憂」

憂「なあに?お姉ちゃん」

唯「憂さ。あの地震の時、何かなかった?」

和「ちょっと唯、それってまさか・・・」

唯「うん、まさかだよ」

憂「・・・そんな」


憂「今まで黙っててごめん、本当は・・・」

憂の話によると、あの日の下校中憂は純ちゃんに呼び止められて振り返ったらしい。
そしてその瞬間地震がきて、憂のがさっきのまま歩き続けてたら通っていたであろう所にあった電柱が倒れた。
つまり純ちゃんに呼び止められなかったらそのまま電柱の下敷きになる所だったらしい。

なるほど、私が甘かった。
普通に考えたら分かる事だった、あれだけの地震で学校しか被害を受けないはずがないではないか。
つまり、私の放送で助かった純ちゃんは憂を助けた。
憂が間接的な関係者になってしまっていたのだ。

ふと気が付くと。落ち込んでいる憂の後ろから、大型のトラックが走ってきている。
それに速度も普通じゃない。なんであんな速度で一般道を!?

唯「憂あぶない!!」

叫ぶと同時に飛び込んだ私は、憂を道路脇に突き飛ばしていた。

直後、私は宙に浮いていた。
たぶんほんの一瞬の出来事だったんだと思う。

だけど私はその一瞬の間に、精一杯の笑顔を作った。

私はブロック塀に叩きつけられた。

叩きつけられた私にトドメを刺すように、さっきのトラックがそのまま直進してくる。

うい。これまでありがとね。







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唯「っていう感じで新歓ビテオを作ろうと思うんだけど皆どう思う?」

律「なんでそんなに内容がエグいんだよ!」

梓「全くです、先輩は純をなんだと思ってるんですか。」

唯「いやぁーごめんごめん」

紬「でも先輩を庇う後輩、妹を庇う姉。素敵だわ~♪」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ」ガクガク

梓「はぁ、こんなんで大丈夫なんでしょうか。これからの軽音部・・・」

おしまい!







最後かなり駆け足になっちゃってごめんなさい。

地震の後の死亡ラッシュは『本来死ぬ定めだった人を予定通り死なせるため』です。