唯「おじさんだれ?」

小父「私は旅行中の者だよ」

小父「それより君はこんな所でどうしたんだい?」

唯「え……えっと……どうしたんでしょう」

小父「服が破れているね。その格好で街中は歩きたくないだろう」

小父「とりあえず私のジャケットを貸そう」

唯「あ、ありがとうございます……」

小父「すぐ戻るからここで待っていなさい」



10分後

小父「間に合わせの服だけど我慢してちょうだい」

唯「えっと、わざわざありがとうございます」

小父「私は向こうのベンチにいるから着替え終わったら呼びなさい」

唯「はい」



――――――――――――――――

唯「お待たせしました」

小父「……やっぱりサイズ大きかったみたいだねえ」

唯「裾折れば平気ですよ」

小父「そうかい。ところで君はここから一人で帰れる? それとも親御さん呼んだほうがいいか」

唯「うーん……あれ?」

小父「うん?」

唯「ここって……どこですか?」

小父「日峰大神子公園だけど」

唯「え、知らない場所だ」

小父「知らない、か。君の家はどの辺なんだい?」

唯「私の家は神奈川区の……」

小父「神奈川? ここは徳島だけど」

唯「…………ええっ!?」

小父「君はどうして四国にいるんだい?」

唯「ええっと、あ、そうだった! 私旅をしてるんです!」

小父「一人で?」

唯「そう、一人で!」

小父「その割には荷物が何もないけど、この辺のホテルに泊まってるの?」

唯「いやーホテルに泊まるだけのお金がなくって。荷物は……あれ、私のバッグがない」

小父「……」

唯「あはは……」

小父「……親御さんに迎えに来てもらいなさい」

唯「あう……沖縄までもう少しだったのに……」

小父「沖縄?」

唯「そう沖縄! 行きは太平洋側から沖縄まで行って帰りは日本海側を旅する予定だったの!」

小父「その割には随分と行き当たりばったりな感じがするね」

唯「えへへ、そうかな」


唯「おじさんは?」

小父「私?」

唯「うん、おじさんも旅してるんでしょ?」

小父「私は関東から車で出発して、最初は君みたいに日本をぐるっと一周しようかと考えてたね」

小父「君と同じで沖縄を目指してたんだよ」

唯「今は違うの?」

小父「行きたいところを優先してたらいつの間にかここに着ていたね」

唯「あはは、おじさんも行き当たりばったりじゃーん」

小父「言われてみればそうだねえ」

唯「おじさん面白いね」

小父「君に言われたくないね」

唯「車は便利だな~。寝るところも困らないしね」

小父「そうね、一応テントと持ってきてるし旅館に泊まる事もあるけど。君はどうしてたの?」

唯「最初は自転車にテント積んでたテントとかマンガ喫茶とかで寝泊りしてたんだけど……」

小父「……野宿?」

唯「……はい」

小父「それはまずいでしょー」

唯「まずかったみたいですね……」

小父「よし、近くのホテルを手配するから君はそこで親御さんに連絡して迎えを待ちなさい」

唯「えっでも……」

小父「心配はいらない、こう見えても老後の貯蓄が……」

唯「お父さんもお母さんも今海外……」

小父「貯蓄が……」


唯「ねえおじさん」

小父「ん?」

唯「おじさんはこれから沖縄に行くの?」

小父「そのうち行くかもねえ」

唯「……」

小父「それがどうかしたの?」

唯「あの……私も連れて行ってくださいっ!」

小父「……」

小父「いやー……」

唯「お金は後で払いますから!」

小父「君ってほんと行き当たりばったりなのね」

唯「自転車もなくなっちゃったし、迎えも……妹が来てくれるかもしれないけど」

唯「そうしちゃったらもう一人旅させてもらえなさそうだし……」

唯「せめて沖縄まででもいいんです!」

小父「沖縄から一文無しがどうやって帰るのよ」

唯「それは……気合でっ!」

小父「君面白いねー」

唯「だめですか?」

小父「おじさん的には駄目じゃないけどいろいろまずいでしょ」

唯「私なんでもしますから!」

小父「まずいでしょ」

小父「そんなに沖縄行きたいの?」

唯「行きたいです!」

小父「何しに行くの?」

唯「ちんすこうとサータアンダギーを食べに! あっそれから紅いもタルトとブルーシールアイスと……」

小父「分かりやすいねー。でもお金ないんでしょ?」

唯「その場その場で働きます!」

小父「面白いねー」

唯「お願いしますっ!」

小父「……んー」

小父「まあいいでしょう」

唯「本当っ? やったあー」

唯「ありがとうおじさん!」

小父「このご時勢にお互いチャレンジャーだよねえ」

唯「そうですね!」

小父「返事いいねー」

唯「はい!」

ギュルルルー

唯「あっ……お腹鳴っちゃった」

小父「とりあえずなんか食べるか」

唯「わーい」



唯「ラーメンおいしかった~」

小父「さて、もう夜遅いし今日の宿を探さないと」

唯「車で寝泊りじゃないの?」

小父「まあねえ、君もさっきまであんなだったし今日はちゃんとしたとこに泊まりたいでしょ」

唯「そうかも」



――――――――――――――――

唯「空いてる部屋があってよかったねお父さん!」

小父「その小芝居やめてちょうだい」


小父「それじゃあこれからの事なんだけど」

唯「はい」

小父「とりあえず西に行ってフェリーに乗って九州入りだな」

唯「おおー」

小父「後は南に行ってまたフェリーに乗って沖縄かね」

唯「やっぱりおじさんって適当だよね」

小父「旅はこのくらアバウトでいいのよ」

唯「そうかなあ?」

小父「君だってそうでしょ」

小父「――とまあそんな感じで」

唯「了解です!」

小父「そうゆうことでおやすみなさい」

唯「あれ、どこ行くの?」

小父「部屋2つとったから」

唯「あー……えっと、ごめんなさい」

小父「そういうことでおやすみなさい」

唯「おやすみなさい」



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