─25話─


律「風呂って何日に1回入る?」

澪「えっ」

梓「り、律先輩は毎日入らないんですか?」

律「あっ…………入るよ?」

紬「空気を読んだ感じがする」

唯「りっちゃん。本当は何日に一回入るの?」

律「……半年に一回くらい」

梓「ゲェーッ!?きッたねぇええええええええッ!?」ガタン

律「う、うそだ。本当は一か月に一回くらい…」

澪「オマエ、それでセーフだと思ってるのか?」

紬「半年に一回って、りっちゃんが18歳だとして

  今までの人生で36回くらいしかお風呂に入っていない計算になるわね」

律「たぶん、もうちょっと少ないと思う」

梓「う、うんちがしゃべった!!」ウギャァアアアァァ

紬「どうして お風呂に入らないの?」

律「いや、入ってるよ。半年ごとに」

澪「あまりにも長いよ!!期間が!!」

唯「でも そのわりに、りっちゃんから奇妙なニオイがするってことはないよね」

紬「そうね。むしろ上質のワインのような芳醇な香りが…」

律「なにせ18年ものだからね」

澪「ん?」

律「あっ、しまったぞ」

梓「おわ~っ!?コ、コイツ 発酵しとる!?」

 「本当は生まれてこの方、一回もお風呂に入ったことないんじゃ…!?」

律「そ、そんなワケないだろ!?合宿のときとか、一緒に入ってただろうが!!」

澪「アレはお前……残像かなんかだろ?」

紬「りっちゃんの実体は、湯船にも浸からず どこかでほくそ笑んでいたのね!!」

律「くっ」

唯「やるなぁ~、りっちゃんめ!」

澪「なんだ貴様は?お湯をかぶったら男に戻る妖怪かなんかなの?」

律「お湯をかぶったことないから分からん」

梓「すげぇ」ゴクリ

唯「お風呂が嫌いというかお湯が嫌いなの?」

律「お湯は大好きだよ。家に帰ったら お湯ばかり飲んでるよ」

澪「そんなベクトルで好きじゃなくていいんだよ」

紬「ひょっとして紅茶より 白湯の方がよかったのかしら?」

律「なんだ さゆって?」

梓「おまけにバカときたもんだ」

律「中野に抱きついてやる」ギュ~ッ

梓「やめろ!!汚い!!うんち!!アギャパァォオ!?」ジタバタ

 「あっ、気持ちいい」ァォォォォォォォン

紬「ついに目覚めたのね、彼女が」


─バナナ─

唯「ドュラぇも~ん!!」

ドラ「おや、何か発音が良いぞ」

唯「なにせ今日のお昼はおフランスパンだったからね!!」ピース!!

ドラ「そっか。発音より頭が良くなれば もっと良かったのにね」

唯「残念だなぁ~」

ドラ「それで何か用?」

唯「用が無いのにドラえもんなんかに話しかけるもんか」

ドラ「辛辣だね」

唯「しんらつってなぁに?」

ドラ「食べるラー油のことだよ」

唯「やった!!おいしい話だね!?」

ドラ「甘い話には気をつけた方がいい」

唯「じゃあ酸っぱい話には?」

ドラ「気を一気に解放するんだ!」

唯「わかったー!!」ゴゴゴ

唯「それで、何か用?」

ドラ「えーっと、たまにワケの分からない事を言う女の子が

   話しかけてくるんだけど、お腹をパンチしていいと思う?」

唯「え~っ、そりゃかわいそうだよ~」

ドラ「かわいそうかなぁ」

唯「『かわいそう』と『かわうそ』って似てるけど

  かわうそってかわいそうなの?」

ドラ「今まさに、ワケの分からない事を言う女の子が

   話しかけてきてるんだけど、背中をキックしていいと思う?」

唯「え~っ、かわうそ~だよ~」

ドラ「唯ちゃんはかわうそなの?」

唯「ワンワン!!」

ドラ「かわうそはたぶん、そんな鳴き声じゃない」

唯「でも、私 人間だからね」

ドラ「じゃあなんでワンワンって鳴いたの?」

唯「ロン」

ドラ「いったいボクは何と会話しているんだ」

ドラ「それで何か用があったんじゃないの?」

唯「りっちゃんが生まれて一回もお風呂に入ったことないらしいから

  なんらかの対策を講じたいんだよ~」

ドラ「ははぁ。ここにきて色々な事実が明らかになるね」

 「よ~し」ゴソゴソ

テケテテン

ドラ「バリアーポイント~」

ドラ「未来の世界の警官が使用する道具で、これを身に付けると

   半径2メートルの不可視のバリヤーができ

   何者もバリヤー内に入ることができなくなる」

唯「本気のヤツだね」

ドラ「これで りっちゃんがゾンビみたいに近寄ってきても

  何かに感染することは絶対にありえない」

唯「でもなんか、りっちゃんが近寄ってくるたびに

  バリアーを張ってたら私、すごく冷たい子みたいだよね」

ドラ「まぁね」

唯「だめだよ!私だけが幸せなんて、そんなの全然幸せじゃないよ!」

ドラ「よく言った!」

 「めんどくさいなぁ」


─翌日 学校 放課後 部室 大乱闘─

律「さぁたまには練習しよっぜー!!」

唯「バリアーポイント!!」カチッ シュンッ

澪「」カチッ シュン

紬「」カチッ シュン

梓「」カチッ シュン

律「なんで みんなバリアーに包まれているの?」

澪「みんなが幸せになるためだ」

唯「よかったよかった」


25話 完



─26話─



梓「さわ子先生が風邪をひいて滅亡したって本当ですか?」

律「あぁ」

澪「いや、滅亡は していないだろ」

唯「澪ちゃん澪ちゃん!!」

澪「ん?」

唯「たけき者も遂には滅びぬんだよ!!」フンス!!

梓「おわぁ、唯先輩が賢そうなことを」

紬「しっかりして唯ちゃん!」

唯「ムダだよ!私はすっごくアタマがよくなっちゃったんだから!」ハッハッハ

澪「なんかバカそうだから大丈夫だろう」

律「なぁ。たけきものもついには『滅びぬ』なら、滅びないんじゃないの?」

唯「ゅあ?」

澪「なるほど。一理あるな、ウンコマン」

律「へへ…」

梓「さぁどうします!?」ヘィヘーィ!!

唯「でも『たけき』と『あべし』って似てるよね」

梓「ん?」

紬「まぁ韻は同じかも」

唯「あべし者は遂には滅びぬってことでバランスとれないかな」

澪「コイツが何を言ってるか分かるヤツは挙手」

梓「滅びぬけど、あべしで既に死んでいるから

  滅びたのと同じ……ってことですか?」

唯「中野が何言ってるか分かんない」

梓「えっ」

澪「じゃあ、どういう意味なんだ?」

唯「なにが?」

澪「あべし者には遂には滅びぬって」

唯「あべしものってなんなの?バカじゃないの?」

澪「おまえだよ!!」

唯「そんなことより、さわちゃんのお見舞いに行こうよ」

紬「いいわね」

梓「連絡とかしないで行っても大丈夫ですかね」

律「なぁに、へっちゃらだぜ!!」ガハハ

澪「よし、じゃあ何か不都合があったら全部、律のせいということで」

律「なんだと?」

紬「じゃあ何も問題がなかったら

  澪ちゃんの中指の爪と指肉の間に1センチくらい針をブッ刺すわ」

澪「うわぁああああ?!」

 「いやだよ!!問題がないなら それでいいじゃないか!!」

律「よし、早く刺そうぜー!」ウズウズ

澪「まだだよ!!いや、どっちにしろ刺さないよ!!」

梓「じゃあ、さわ子先生の部屋に着いてから刺しましょう」

紬「そうね」

澪「絶対に刺さないからな!!」


─城下町─

唯「さわちゃんのマンションってこの辺だっけ」

律「ん、あれは…」

ドラ「」ゴソゴソ

梓「ドラえもんが自販機の下を漁っている」

ドラ「くそっ、手が届かない」

 「あそこに100円玉が見えるのに」

唯「ドラえも~ん、何やってるの~?」

ドラ「やぁ唯ちゃん」

 「ありったけの夢をかき集めて宝物を探しているのさ」

唯「かっこいいなぁ」

澪「なぁドラえもん。風邪を治す道具って持ってないかな」

律「そんなモンどうするんだ?」

梓「私達は今から 何をしに何所へ行くんでしたっけ」

律「知らん」

梓「話を聞いてなかったんですか?」

 「というか知らないのについてきたんですか?」

律「お、おまえらは誰だ」

澪「それも忘れちゃったのか」

律「忘れちゃった」

澪「ドラえもん、風邪を治す道具の前に

  律の記憶を戻す道具は出してくれないかな」

ドラ「確か前に使ったなぁ」ゴソゴソ

テケテテン

ドラ『わすれとんかち~』

ドラ「これで殴るとどうにかなる」

紬「すごく雑な説明だわ」

梓「まぁ、大体 察しはつきますよ」

 「それっ」ブンッ

ガンッ

律「んぅッ!?」グラッ

ドサッ

梓「ん?」

唯「りっちゃん?」

紬「死んだ」

澪「あ~ぁ」

梓「ド、ドラえもん!?」

 「あれ、いない!?」

唯「すごいスピードで走り去っていったよ」

 「『してやった!』って顔で」

紬「これ、よく見たら ただのカナヅチだわ」

澪「アイツは何しに未来から来たんだ」

唯「まぁいいから

  早く さわちゃん家に行こうよ」

梓「いやいやいや!!いいから、じゃ済まされませんよ!!」

 「律先輩が死んだんですよ!?」

唯「さむい」カチカチ

梓「えっ?」

紬「あぁ……お外は寒いから、早く室内に入って暖まりたいのね」

唯「うん」

澪「唯があまりしゃべろうとしない」

唯「さむいもん」カチカチ

澪「じゃあ、先生の家に行くか」

唯「うん」

紬「りっちゃんバイバイ」

梓「いいのかなぁ…」

 「まぁ私、かわいいからいいよね」


─ルイージマンション─

ピンポーン

唯「さわちゃーん」

澪「ここ、違う人の部屋だぞ」

ガチャ

住人「はーい」

  「あっ、女子高生たち」

紬「夢と現実をゴッチャにしていませんか?」

住人「してると思います」

梓「ではおやすみなさい」

住人「おやすみなさい」

パタン

紬「ふぅ」

梓「なんとかなるもんですね」

澪「そうだな」

ピンポーン

唯「さわちゃーん」

梓「何も問題がなかったら澪先輩の指に針を突き刺しますね」

澪「何か起こりますように」

唯「……先生、出てこないわ」

澪「ほら!!連絡しなかったから

  寝ているか出かけているかしてるんだよ!!」

 「問題発生だね!!」

梓「とんだムダ足でしたね」

紬「それなのに何故澪ちゃんは喜んでいるの?」

梓「これは罰が必要ですね」

唯「それよりも私はあずにゃんがちょっと

  調子に乗っているのが気になるなぁ」

紬「そうね」

梓「えっ」

唯「澪ちゃんはあずにゃんの先輩なんだよ?」

梓「そ、そうですね」

唯「それなのに、なんで上から目線で澪ちゃんを追い詰めているの?」

澪「そうだそうだ!!」

梓「くっ」

紬「だから、私は澪ちゃんを

  ライオンと戦わせてみようと思うの」

唯「おもしろそう!!」

澪「ちょっと待ってよ」

梓「ヒヒッww」

澪「クソッ!!なんなんだよ!!なんなんだよ!!」

 「大体ムギは卑怯なんだよ!!いつも黒幕という感じでいいポジションにいて!!」

梓「言われてみれば、私、前世でムギ先輩に拷問された記憶が」

澪「私も」

唯「私は拷問されなかったけど、精神的にひどい目にあわされたような気がするよ!」

紬「くっ」

澪「わかるまい、戦争を遊びにしているシロッコには!!この俺の身体を通して出る力が!!」

紬「うるさいうるさい!!それじゃあどうしていつも私ばかりがお茶汲み係なの!?」

 「悔しい!!くやしい悔しい悔しい!!」ドガシャーン!!

唯「ざまぁみろ!!」ブゥッ

澪「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃwww」ダダダダッシュ

バッ ドシャッ

梓「澪先輩がなぜかマンションの塀を乗り越えて落下していった」

ゴトリ

梓「あれっ、さわ子先生の部屋から何か物音が聞こえたような」

唯「さわちゃん、いるのかな?」

カチャ…

虎「ハッ、ハッ、ハッ」カクカクカク

さわ子「あっ、あっ、あっ、あっ」ビクンビクン

狼「ヘッ、ヘッ、ヘッ」カクカクカク


唯「さわちゃん、何してるの?」

紬「あれが前門の虎、肛門の狼よ」

梓「さすが先生だ。勉強になるなぁ~」

唯「これで全部 解決だね!」

26話 完




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