─第39話─


唯「今年の夏も暑くなってきたので

  太陽が許せないよ~」

澪「唯はクーラーが苦手だから、その憎しみは常人よりもはるかに強いんだ」

紬「だけど復讐心は唯ちゃんの心まで蝕んでしまうわ」

律「だからアイスでも食べて幸せになろうぜ?」

唯「あいす!あいす!」ニコニコ

紬「あっ、バニラアイスだと思ったら豆腐しか冷凍庫に入ってなかった」

唯「ぐぁああああああ!!」ペロペロ

澪「ぐあああとかいいながら豆腐をペロペロ舐める人間を初めてみた」

紬「どういう心理状態なのかしら」

律「なぜ豆腐を舐めたんだ」

唯「心頭滅却したら、何も分からなくなったんだよ~」

澪「よいことだ」

紬「それで涼しくなった?」

唯「……あれ?」

澪「どうした?」

唯「本当に あつくなくなった!」

律「なにっ」

澪「おぉ」

紬「すごいわ、唯ちゃん!心頭の滅却に成功したのね!」

唯「ふんふ~ん♪」

澪「でも今、室温30℃以上あるのに本当に全然暑くないのか?」

唯「うん!!」

 「私はもう痛みも悲しみも

  暑さも喜びも何も感じなくなっちゃったんだよ~」

律「それ、心が壊れてるんじゃないの?」

唯「ど、どうしよう!?憂に怒られちゃう!!」

澪「心が滅びたのに心配事は妹に怒られるかどうかだけなのか?」

律「そもそも痛みも悲しみも感じないなら、憂ちゃんに怒られたってヘッチャラだろ」

唯「あっ、そうだね」

 「よーし、反対にブン殴ってやる」

澪「やめてあげろ!!」

律「なんだよ、反対にって」

唯「ん~、わかんない!!」フーンスッ!

紬「唯ちゃんは憂ちゃんに不満でもあるの?」

唯「えっ、でも兄よりすぐれた弟などいねぇって昔の偉い人が言ってて……」

澪「その偉い人とやらはなんだか あまり出世しないような気がするよ」

律「騒いでたら暑くなってきたぞ」

澪「何も感じないってことは、クーラーをつけても唯は平気なのかな」ピッ

ゴォオオ

律「ぉお、すずしい……」

紬「どう?唯ちゃん 大丈夫?」

唯「う~ん」




唯「なんかウンコしたい気がするけどトイレに行かなくていいかなぁ」ゴロゴロ

律「あたりまえさ」

澪「いや、行けよ!!」

紬「心は何も感じないけど お腹が冷えてきちゃったのね」

ゴジャー

唯「私の全てを出しきってきたよ」

澪「よくやった」ナデナデ

紬「今日は暑いし、みんなでプールに行くか、

  もしくは唯ちゃんを部屋から追い出してクーラーをつけない?」

律「プールに行くったって、今は水着もってないからなぁ」

澪「じゃあ残念だけど唯……」

唯「ま、待ってよぉ!!水着なんかなくたって大丈夫だよぉ!!」

澪「そりゃお前は心が壊れて

  羞恥心も屋根まで飛んで弾けて消えたのかも知れないけどさ」

唯「違うよ。水着の代わりに貝殻を水着にするんだよ!」

 「ミロのビーナスみたいに!」

紬「ミロのヴィーナスって両腕が無いアレじゃなかったかしら」

澪「しかも唯が言いたいヴィーナスの誕生にしても

  彼女は貝殻に乗ってるだけで基本、全裸だぞ」

唯「なんで、ヴィーナスは誕生日にそんなことしようと思ったの?」

律「変態だったんだろ」

唯「ところで ここに朝のお味噌汁に入っていた

  しじみの貝殻があるんだけど……」

律「ちっちぇ」

澪「それで一体どうする気だ」

唯「りっちゃんの胸も ちっちゃいから水着に丁度いいと思うんだ」

紬「変態!!変態!!」♪

律「しじみの貝殻で包み込めるほど小さくねぇよ!?」

唯「ちなみに澪ちゃんには、昨日の夜のお味噌汁に入っていた

  アワビの貝殻があるんだけど……」

澪「ちょっとイメージがいやらしい貝殻だよね。高級感あるけど」

紬「唯ちゃん唯ちゃん、私には無いの!?貝!!」ワクワク

唯「あっ、えーと」

 「あぶない水着があるよ」ペリッ

律「ただのセロハンテープじゃねーか」

紬「唯ちゃんは本当に私がこのセロテープだけを

  身につけてプールに行っても平気なの?」

唯「言っておくけど私は今、勢いだけで喋っているだけだから

  何を選択するかは、みんなの意思で決めてほしいんだ」

律「出てってくれ」

紬「すぐに」

澪「あわびありがとう」

バタン

唯「本当に部屋から追い出されちゃった!!」クソ~-3

唯「みんなにイジワルされたから和ちゃんのところに行こうっと」

ピンポンピンポンピンポン

和「はぁい」

ガチャッ

和「あら唯。どうしたの、連絡もしないで突然、来たりして」

唯「太陽が憎くて……」

和「そういうときは虫メガネで太陽を見るといいわよ」ハイ

唯「ぐぁあああああ!!」チリチリ

和「ぐあああとかいいながら黒目から煙をあげる人類は初めて見たわ」

唯「でも心頭滅却したから平気だもんねー」フフーン

和「平気なことが逆に大丈夫じゃないような気もするけれど

  唯がいいならそれでいいわ」

唯「ねぇねぇ、和ちゃんは今、何をしてたの?」

和「腰がちょっと痛いんだけど、自分ではうまく

  マッサージできないし湿布も貼れないから

  柱に腰を打ちつけていたの」ゴーン ゴーン

唯「なんか気が狂った人みたいなんだよ」

和「乱れた世の中でまっすぐでいられる人の方が狂っていると思わない?」ゴーン ゴーン

唯「難しい話だね」

唯「そうだ、あずにゃんのところに行こう!」

 「そして先輩の権力で全力で揉ませるんだよ!!腰を!!」

和「でも梓ちゃんは私の直接の後輩ではないし

  なんだったら唯が揉んでくれれば、それで私は幸せになれるんだけど」

唯「あずにゃんは私の腰を揉むんだよ~」

和「私は?」

唯「和ちゃんだよ」

和「そうね。私は和ちゃんね」

唯「よかったぁ」

和「そうね。よかったわ」


─中野邸─

カチャカチャ

唯「あれっ、あずにゃんの家のチャイムならないよ?」

和「壊れているのかしら」

唯「じゃあ口で言おうっと!!」

 「ピンポンピンポンピンポーン!!」カチャカチャ

和「あー、腰いたい。家の壁に腰を激突させようかしら」ゴーンゴーン


梓「なんだか表が騒がしいなあ」

ガチャッ

唯「ピンポンピンポンピンポーン!!」カチャカチャ

和「はああ」ゴーンゴーン

梓「どうしたんですか、頭が壊れてるんですか」

唯「壊れているのはあずにゃんのピンポンピンピョンピンポォオオオン!!」

梓「正気なのかなぁ」

和「唯の話ではね、私の腰が痛いから

  あなたに唯の腰を揉んでほしいらしいのよ」

梓「私が唯先輩の腰を揉むと

  和三盆の腰が治るですか?」

唯「桶屋が吹っ飛べば風邪が舞い散るんだよ~」

梓「終始なに言ってんですかこいつ」

和「分かるようになったらオシマイよ」

梓「確かに」

唯「あっ。私、シューマイ好き!!」ワクワク

梓「みんなでシューマイを食べに行きましょう!!」

唯「あずにゃん、えらぁい」ダキツキ

梓「しゃっかああ」

和「じゃあマックに行きましょうか」

梓「マクドナルドにシューマイはありませんよ」

和「そんなの関係ないわ。私はマックが食べたくなったのよ」

 「違う?」

梓「違う?って言われても……」

唯「和ちゃんも心が滅んでいるかのように人の心を踏みにじるよね」

和「心頭滅却すれば火もまたマック」

梓「この人どんだけマックが好きなんだ」

唯「でも私もマツタケも好きだものね!」

梓「……?」

和「……?」

唯「私はまた変な事を言っちゃったんだね?」

梓「まぁ変なことしか言ってないですけど」

 「私達が出会ったあの日から」

和「でもそんなこと言いながら、さっき唯に抱きつかれたときに

  梓ちゃんが発した『しゃっかああ』ってなんなのよ一体」

梓「釈迦に対する感謝の咆哮です」

和「そんな……」

唯「あっ、そう言えば暑くなってきたなぁ」

 「心頭滅却の効果が薄れてきたようだよ?」

梓「おしゃかさまのおかげです」

唯「ありがとう!!おまかしゃま!!」

和「じゃあシャカシャカチキンでも食べに行きましょうか」」

梓「なんてありがたい食べ物なんだろう」

唯「ありがたやありがたや」


─第39話─

 おわり



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