─第33話─


よお、元気か、ゼットン?

アタシは元気だ

元気があればフライドチキン

だがフライドチキンにも良いところは ある

なぜなら、アタシたちは春から絶対に大学生ってワケさ


な~んて、こんな事 言ってると

決まって「お前は古いタイプの人間だ」なんて言われるのが相場ってモンだけどな



紬「ねぇ」

 「りっちゃんの考え方は、人類には早すぎると思うわ。絶対に」


律「なんのことだ?」

 「りっちゃんとは……そして『じんるい』とはなんだ?」


唯「え~っとね、え~っとね」


澪「そもそもこれは梓への手紙だろう」

 「なんでゼットンに呼びかけてるんだよ」

 「お前、誰なんだよ」


律「分からん」


アタシは都合が悪いことが起こると、この魔法の呪文で

全ての問題をクズ箱にブチこんできた


コイツを使えば たちまち相手は戦意喪失

意識は月まで吹っ飛び、骨まで砕ける昔なつかしのメガトンパンチってヤツだ


世の中には分からないことが多いが、そんな事をいちいち気にしていたら

外を一歩進むたびに、疑問で頭の中のピンク色のヤツが破裂しそうになる


だから、私は もう迷わないし、何も考えないことに決めた


それがアタシの歩く道だ


今日は入学式だ

入学式ってなんだ?


カレンダーに汚い文字で書き殴ってあるからには

きっと今日は必ず入学式ってヤツなんだろう


だが、とりあえずの問題は その「入学式」ってのが

今のアタシには なんなのかサッパリ「分からん」ってことだ

昨日、九九の5の段を覚えた影響だろう


アタシは、アタシが覚えている数少ない幼馴染にして親友に尋ねてみる


コイツのことだけはモノ覚えの悪いアタシでも昔から何故か忘れられないんだ


律「なぁ澪~、入学式ってなんだ?」

澪「お、お前、入学式を知らないのか?」


そういうと「澪」は悲しそうな顔をする


コイツはアタシのアホさ加減にホトホト愛想が尽きると

決まって こんな顔をする


アタシはなんだか 澪の この表情が好きじゃない


アタシは気分を落ち着かせるために、ひそかに自分の尻の穴に指を入れた

律「入学式が何かは分かるに決まってるだろ、あ、あ」クチュ

 「アタシが聞きたいのは、入学式とは澪にとってなんなのか、って事さ」

澪「あぁ……そういう哲学チックな意味合いか……」

 「そうだなぁ。確かに ただ漫然と式に出るのもよくないかも知れない」

 「今日から自分たちが大学生になるって事の意味を

  入学式を通して、よく噛みしめた方がいいのかもな」


いいぞ、少し思い出してきた


─入学式─


入学式に入学すると、みんなスーツ姿で

偉そうなオッサンの眠くなる呪文にただひたすら耐えている


ここでアタシもみんなと同じように眠りの呪文に耐えるべきなのか

はたまた偉そうなオッサン(学長)に会心の一撃をくらわせるべきか迷っていると

前の方でアタシが覚えている数少ないヘアピン、唯が眠りこけて

隣の女の肩によだれをまき散らしていた


ゆうに8リットルは垂れ流し続けている

よだれをだぞ?

さすがのアタシでもアレが超常的で絶望的な何かであることは想像にたやすい

律「おい、澪、澪」

 「ありゃあ一体なんなんだ」

澪「さぁな。夢でも見てるんだろ」

律「唯がか?」

澪「私達がだよ」

律「私達がか」

澪「考えても見ろ。入学式に眠りこける人間は存在するだろうけど

  それで隣の人の肩に よだれを2ガロンも炸裂させる爆裂バカが この世にいるワケないさ」

律「なるほど」

 「それもそうだ」


どうやらここは あの世らしい


式が終わると唯によだれをかけられた女が激怒していた

女「おいっ!!スーツどうしてくれるんだよ!?」

 「ここの肩のトコ、よだれだらけになっちまったじゃねーかッ!?」

唯「そりゃあそうだよ」

 「よだれをかけてアイスだらけになったら

  私は正気じゃいられなくなっちゃうよ~」

女「何を言ってるんだ、コイツは」


澪「す、すいませんでひたっ!!」

 「ほら、唯!!お前もこのレイプに謝るんだよっ」

 「腹の中でベロ出してていいからっ」

唯「分かった!!」

 「どうもごめんなさいっ」バーカ

女「全部、聞こえているんだよっ!!」

 「そして『このレイプ』とはなんだ?」

澪「ひぃいい犯される」

律「まぁまぁ、そうカッカしなさんな」

 「アタシに免じて許してやってくれよレイプ」

女「ん……誰だアンタ」

律「ア、アタシは誰だ?」

紬「フライドチキン」

律「アタシがフライドチキンだレイプ」

女「ど、どういうことだレイプ」

律「分からんレイプ」

アタシはまた魔法の呪文を炸裂させた

アタシにはサポセンなんて必要ねぇ


目の前の女は「エンッ!!!」って叫んで鼻血を勢いよく噴出しながら倒れ、友人に保健室に運ばれた

入学式が終わり、アタシたちは大学構内をねり歩く


すると色々なサークルの連中が、新入生歓迎チラシを配りまくってくるので

ヒャッハーこんなものケツ拭く紙にもなるぜ!!と思って いっぱい もらったぞ!!


紬「でも私達はもう入るサークル決めてるものね」

律「けいおん部、だよな?」

さすがのアタシでもコレだけは覚えている

大切な大切な仲間たちと ひき合わせてくれた、大切な、大切な……なんだ?


ムギはニコッと笑った

アタシはとりあえずムギの尻の穴に指を入れた

紬「えっ///」

唯「チラシいっぱいもらっちゃった!!」

律「おぉ、唯もか!!」

 「これでいっぱいケツが拭けるな!!」

サークル員たち「えっ」


澪「ばか!!こんな所でそんな事言うなよー!!」

 「チラシ配ってくれた人たちが気を悪くする……」


紬「じゃあ私は気分をよくするために1000円札をバラまいて中和するわ~」

バッ

そういうとムギは千円札を50000枚くらいカバンから掴みだし

キャンパスに夏目漱石の桜吹雪を舞わせた


そこにいたサークル員たちは血眼になって、1枚でも多く金を奪おうと

隣人の左の頬を殴りまくりながら右の頬も殴りまくっていた


人がいっぱい倒れ、血を流している


大変なことになった

澪「ど、どうするんだ?」

紬「分からないわ」


ムギも魔法の呪文を唱えた


その顔は威厳に満ち満ちていて

アタシにはとても眩しく見えた

ドンッ

唯「うぎゃっ」

女子学生たちが殴り合いをする中、無人の荒野を颯爽と歩くように

つまり何も考えずに歩き、チラシを抱え過ぎて

前を全く見てなかった唯が誰かに思い切り ぶつかった

女「よぉ、また逢ったな……」

唯「えぁ?」

唯に激突された女はプルプル震えている


昔の唯なら外を歩くたびにトラックにハネ飛ばされていたモンだが

人にぶつかる程度で済んだのだから

大学生になって唯の「うん」の値がレベルアップしたようだ

うん

こううん

だいがくせえ

いや、なんでもない


澪「あ、さっきのレイプだ」

紬「さっきのヨダレよ」

律「ソイツはレイプなのかヨダレなのかどっちなんだ」

女「アタシはレイプでもヨダレでも無いんだよ!!」


そりゃそうだろうな


アタシはその女の尻穴にそっと指を入れてやった

女「んっ……」

紬「だめっ!!」

バチンッ

律「ぶげらっ」


何故かムギに殴られて

アタシは唇を切って少し血を流した

紬「あっ、ごめんね……」

唯「りっちゃんの唇、血で口紅をつけたみたいに赤いよ」

 「なんだか色っぽ~い」チュ

何故か唯にキスされた


紬「クソがァっ!!」

バチンッ

唯「あぎゃぁあ」

何故か唯はムギに殴られて

唇を切って少し血が出た

紬「あっ、ごめんね……」バーカ

唯「うぃ~」

澪「唯の唇、紅く染まって色っぽいぽいぽぽいぽ」チュ

何故か澪は唯にキスをした


紬「大変よい光景だわ」


ムギは満足そうに微笑んでいた


まるで ひまわりみたいな女だ


いつも眩しい太陽をまっすぐ正面から見つめ続け

自分自身もまばゆい光を放つ


そういう人にアタシはなりたい



─第33話─

 分からん



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