─第26話─


─秋山邸─

律「春休みでヒマだから澪の家に来たけど、やっぱりヒマだった」

澪「あぁ、そうかい」

唯「澪ちゃんの家ってゲーム機とか無いんだっけ」

澪「たまごっちしか無いよ」

唯「それって澪ちゃんの中ではゲーム機の分類なんだぁ」

紬「ベッドの下に いけない本とかは無いのかしら」

澪「電影少女ならあるけど……」

紬「それがなんなのか、私にはまったく分からないわ」

澪「今で言うTo LOVEる -とらぶる-だよ」

梓「せっかく みんな集まったんだから ここで練習しましょうよ!」

 「先輩たちとはもう、滅多に演奏できないんですから……」

唯「あずにゃん……」

紬「梓ちゃん……」

律「よーし、いっちょやるか!!ここで!!」

澪「梓の心意気は褒めてやりたいが、近所迷惑だ」

梓「私の家は近所じゃないので私は一向に構いません!」

澪「澄んだ瞳でナニ言ってんだコイツ」

唯「私の家も近所じゃないから どんなにここで騒いでも迷惑じゃないよ!」

紬「ここがパラダイスだったのね!」

澪「楽園から追放したい」

唯「これが失楽園なんだね!」

律「もういっそ、野球しようぜ」

 「この家の中で」

澪「バカかお前、ガラス割れちゃうよ!バカッ」

唯「でも、家の中で野球って おもしろそうだね!」

律「だろ!?」

澪「じゃあ今から唯の家に行こう」

 「律の家でもいいぞ、近いし」

律「えぇ~? とにかく私はここで暴れてーんだよ必ず」

澪「お前は なんなんだよ!?地上げ屋かよ!?」

 「大体、私だけ困るならまだしも、家がハチャメチャになったら

  ママにも迷惑がかかっちゃうよ!!」

梓「澪先輩、いまだに母親のことをママって呼んでるですね!かわいいです!!」

澪「誰がママなんて言った、私はマンコと言ったんだ」

紬「じゃあ ここで野球したらマンコに迷惑がかかるの?なに言ってるの?バカなの?」

唯「澪ちゃんは遂に気が狂ってるの?」

律「ついに気がくるってるくるってるてる坊主!」

梓「てるてる坊主が急に遠い存在に感じちゃいました!すごいです!!」

澪「そうだな」

律「私が思うに客が来たんだからジュースでも出せよ」ホップ

唯「あとアイスも」ステップ

紬「私は伊勢海老が食べたいわ」ジャ~ンプ!!

澪「ホップ・ステップまでは許容範囲だったけど

  ジャンプで大気圏まで飛び上がっちゃったよ!!」ヌォオオオッ

梓「み、澪先輩、落ち着いてくださいっ!!」

澪「す、すまん」ハァハァ

梓「私、たい焼きが食べたいです」ヒソヒソ

澪「お前が何を食べたいと思おうと梓の勝手だよ」

 「だって、お前の妄想だもん」

梓「ハイ……」シュン

律「澪がグズグズしてるから冷蔵庫から勝手にジュースもってきたぞ~」ドタドタ

澪「おいおい、人んちの冷蔵庫を」

唯「私も冷凍庫からアイス持ってきたよ~」トタトタ

澪「あぁ~ぁ、10個も持って来ちゃったよ!一人2個の計算?」

唯「私が全部食べるんだよ~」

紬「伊勢海老が無かったから、豚の生首持ってきたの~」ボタボタボタッぼたっ

澪「そんなの私の家において無いハズだよ!?」

 「あとボタボタ血が落ちてる!!カーペッツ!!カーペッツ!!」

唯「タン吐いてるの?」カーッ ペッ

澪「カーペットがっ!血まみれっ!!」

 「あと、タンを!!吐くなっ!」

律「澪、あんまり叫ぶと近所迷惑が……」

澪「お前らのせいだよっ!?」ワァアアアッ

唯「澪ちゃん、さっきから叫びっぱなし」

紬「まるで悪霊にとりつかれたみたい」

澪「お前だよ!!悪霊はっ!!ブタの生首!!ちゃんと持って帰ってよっ!?絶対に!!」

紬「今日はいっぱい迷惑をかけたみたいだから、生首をお詫びに置いていくわね」ゴトッ

澪「そのっ、お詫びが、迷惑ッ!!!!」

梓「み、澪先輩、落ち着いてください。はい、お水です!」

澪「あ、ありがとう」ゴクゴクゴクゴク

梓「私はバナナたい焼きが食べたいです」ヒソヒソ

澪「ふーん」

梓「シュン……」

唯「澪ちゃんの家って何もないけど

  澪ちゃん、一人で家にいるとき、なにしてるの?」

澪「ゲーム機とエロ本が無いってだけで、家に何も無いという認識か」

律「お前が人生で楽しめるモンなんて、そんなもんだろうが」

澪「今日はアレだな、徹底的に失礼だな、このクソ野郎」

紬「じゃあ澪ちゃんは何をやって遊んでいるの?」

澪「遊ぶっていうか……勉強してテレビでも見てれば

  一日なんて あっという間に終わっちゃうよ」

梓「何かステキな趣味とか無いんですか?」

澪「あっ、音楽を聞きながら詩を書いたりしてるよ!」

 「自信作があるから聞いていく?」

梓「先輩たちが卒業して寂しいですが

  澪先輩の詩の存在が私を勇気づけてくれます!」

唯「いいな~、あずにゃん」

律「本当にうらやましいよ」

紬「もう二度と聞かなくて、おっと、これ以上はマズイわ」

澪「あはは、照れるなよ」

梓「照り焼きバーガー食べたいです!」

澪「喰えよ」

唯「りっちゃんは家に一人でいるとき、何してるの?」

律「天井から ぶら下がったバナナを棒と椅子を使って取ろうとしているんだ」

唯「ずっと?」

律「大体、一時間くらいで取れる」

梓「すごいです律先輩っ!!私、見直しちゃいましたっ!!」

律「ふひっwwバ、バナナをとるコツを聞きたいか?」

梓「はいっ!!ぜひ教えてください!!」

律「いいか、まずは棒を観察するんだ。そして」

梓「そんなことよりムギ先輩は一人のとき、どうやって過ごされているんですか?」

紬「私?」

 「そうね、私、伊勢海老で海老フライ作るのが夢だったの~♪」

唯「すごいやムギちゃん!!スケールが違うね!」パチパチパチ

梓「すごいです!!私、その伊勢海老フライの衣の部分をとって

  たい焼きの部分だけ食べたいです!!」パチパチパチ

澪「梓、もう120円あげるから たい焼き買ってくるといいよ」

梓「澪先輩にあんなにファンクラブがいる理由、なんとなく分かった気がします」

澪「唯は一人でいるとき、なにやってるんだ?」

唯「ゴルフボールを入れたりしてるよ」

紬「な、何に?」

唯「穴に」

紬「ほっ」

律「そんなもん入れてどうするんだ?」

唯「ゴルフだよ」

律「あぁ、確かに」

ピンポーン

澪「おや、梓が帰ってきたかな」ガチャ

さわ子「来ちゃった!」ルン!

梓「たい焼きの途中で見つかってしまいました」

律「たい焼きの途中で見つかっちゃったか」

さわ子「見つけちゃった!」フフ~ン

梓「でも さわ子先生は たい焼きを3個も買ってくれました!」

 「だから よい人です!!」ピョンピョン

唯「よかったねぇ、あずにゃん」ペロペロ

梓「もうっ、耳の穴に舌をネジ込んで下さい!!」

唯「う、うん」ペロペロ

 「あれっ、アイスみたいに甘いのがとろけ出してきた」

梓「あっ、それ、私の脳です!!」トロ~

唯「ストロベリー」ペロペロ

澪「それで先生、一体 何しに来たんですか?」

紬「卒業したから、さわ子先生との子弟関係は消滅したはずなのに」

さわ子「なに言ってるの。私はずっと あなた達の先生なのよ?」

   「困ったことがあればいつでも相談しに来ていいし、

    紅茶やスイーツをいつでもちょうだい」

唯「休みの日に一緒に過ごす人はいないの~?」

さわ子「さっきまでネコたちと遊んでいたんだけど

    外は寒くなってきたから……」

梓「人と交わらないんですか?」

さわ子「えっ、セックス?えっち!梓ちゃんのえっち!!」

澪「わーっ、わーっ!?なに言ってるんですか!!」

唯「私、びっくりしちゃった!」

紬「ゴルフ」

律「さ、さわちゃんってセックスした事あるの?」

さわ子「お、教えないっ」

澪「き、きっと した事あるんだ!」

紬「分からないわ。今までやった事ないから、恥じているのかも!」

梓「みなさんスゴイです!!さすが春から大学生ですね!おとな!!」ハ~

紬「さわ子先生は休みの日は何をしているんですか?」

さわ子「凧あげ」

澪「そういえば、そんなこと言ってましたね」

律「凧あげ以外に何か趣味はないの?」

さわ子「ブランコに乗って、どこまで遠く靴を飛ばせるかを研究したり

    ブーメランをうまく操作する特訓をしているわ」

梓「かっこいいなぁ~」    

さわ子「ふふっ」

唯「でも、そんなことがなんの役に立つの?」

さわ子「えっ……」

   「あっ!!すごく靴を遠くに飛ばして

    公園にいた男の子にホメてもらったわ!」

澪「ふーん」

さわ子「うん……」

律「ヒマつぶしに さわちゃんの心をもてあそぼうぜ~!!」

唯「私、さわちゃんのこと、大好きだよ~!!」

さわ子「ホント?」

唯「ウソだよ~!!ば~か!!」

さわ子「そっか。なんだかんだいって私は唯ちゃんのこと、大好きだったんだけどね……」

唯「あっ、ごめんなさい!!私、さわちゃんがけいおん部の顧問で

  本当はすっごく楽しかったよ~!!」

さわ子「ほんとう?」

唯「ひどい事いってごめんね~!!」ダキッ

 「さわちゃん、大好き」

さわ子「唯ちゃん……」ギュゥ

澪「私も、本当は先生が先生で本当に良かったです」

さわ子「私も澪ちゃんといるとき、すっごく楽しかったわよ」

   「コスプレさせたり、たまには一緒に演奏したりもしたわよね」

澪「先生~!!」ギュッ

律「アタシもみんな、大好きだー!!」

紬「私もみんなと出会えて高校生活が本当にすっごくすっごく楽しかった!みんな、大好き!」

さわ子「私も!!みんな、ずっと大好き!!」

梓「大好き・を・ありがとうですね!」



和「一方、私は平沢家から出た家庭ごみの袋から唯が舐めたアイスの棒を採取していた」

 「そして、それを丹念に舐めあげたあと、

  そのアイスの棒を私と唯の子供だと思って育てることにした」

─第26話─

 おわり



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