─第10話─


─部室─


さわ子「ハッピー バースディ私!!」

ガチャッ


梓「めでたいのはアンタの頭です」

さわ子「あらっ、今 空耳が聞こえなかったかしら」

梓「聞こえました」

さわ子「ところで、今日は私の誕生日なんだけど、どうする? ねぇどうする!?」ワクワク!!

澪「おい、律。なぁ律よ」

律「なに?」

紬「なにか言うべき事があるんじゃないかしら」

律「おしっこ」

澪「それを言うべき時って どんな状態だよ」

律「オシッコしたい時」

紬「確かに」

梓「というか、今 したいんですか?」

律「おぉ」

澪「行ってこい行ってこい」

律「おぉ!!」タッタッタ

さわ子「ハッピー バースディ私!!」

さわ子「何か ごちそうでも食べに行かない?」

   「みんなのお金で」チラッ

紬「えっ」

唯「今日、ウチは すき焼きなんだ~」

さわ子「あらっ、いいわね」

   「私、お肉ばっかり食べたいわ!」

唯「でも、ウチの すき焼きは2人用だから……」

さわ子「私と憂ちゃん?」

唯「ちがう、ちがうよ!」

  「 私と憂のだよ~」

さわ子「じゃあ私と憂ちゃんで 合ってるじゃない」

唯「あれ~?」

澪「ダマされるな、姉妹の団欒をハチャメチャにされるぞ」

紬「お茶とケーキの準備が出来ました~」コト

さわ子「お誕生日ケーキ?」

紬「えっ、まぁ、はい」

唯「ケーキが出てくるのは いつもの事のように思えるけど、そんなことないんだよね?」

紬「ウソをつきたくはないけれど、本当のことを言うと さわ子先生が傷つくわ」

澪「じゃあ、今から みんなでウソをつこう」

 「ムギ一人だけ 苦しい想いをさせられないよ」

梓「そうですね」

唯「この日のために、みんなでケーキを準備してたんだよねー」

澪「おめでとう、さわ子先生」

梓「おめでとうございました」

紬「みんな、ありがとう……!!」

さわ子「どういうことなの」

さわ子「お誕生日なんだからプレゼントもあるわよね!」ムシャムシャ

紬「私は既にお茶とケーキを提供しました」

唯「私はポケットに入ってたアメちゃんをあげるね」ハイ

澪「ポケットに入ってたティッシュをあげます」ハイ

梓「私はポケットに入ってたゴミ屑をあげます」ハイ

さわ子「思ったんだけど、ひょっとして

     お世話になってる顧問の先生を祝う気がないのかしら」  

澪「すいません。さわ子先生は悪くないんですけど

  さっき さわこ先生の誕生日のせいで寒くて熱が出て

  風邪をひく寸前で」

さわ子「そんな状況があるの?」

梓「律先輩の しわざです」

さわ子「ありそうね」

澪「通じた」

さわ子「きっと、私の誕生日が迷惑をかけたんでしょうね……ごめんね」グスッ

紬「なんだか かわいそうになってきたわ」

澪「どうだろう。律は あぁ言ってたが、さわ子先生は こう言っているので

  みんなで さわ子先生を祝ってあげようじゃないか」

唯「そうだね!」

梓「今日は、先生の言う事をなんでも聞いちゃいます!」

さわ子「えっ、本当?」

梓「まぁ叶えられる範囲でなら」

  「予算は20円以内で」

さわ子「じゃっ、胴上げして!!」

澪「どんだけ胴上げしてほしいんだ、この人」

梓「すごく気持ち悪い」

唯「あずにゃんあずにゃん、今日は誕生日だから……」

梓「あっ、そうでした。 さわ子先生、気持ちいいです!」

さわ子「よかった~」ホッ

澪「じゃあ、行きますよ」

さわ子「ちゃんと『さわ子コール』もするのよ?」

梓「はいはい」

紬「じゃあ、とっとと済ませましょう」

さわ子「とっとと?」

唯「せーのっ!」


【胴上げ中】

ワッショイワッショイワッショイ
澪「さわこ!さわこ!」
ワッショイワッショイワッショイ
梓「さわこ!さわこ!」
ワッショイワッショイワッショイ
紬「さわこ!さわこ!」
ワッショイワッショイワッショイ
唯「さわこ!さわこ!」
ワッショイワッショイワッショイ

さわ子「みんな~!! ありがとう~!!」

─第10話─

 おわり











─続・第10話─


さわ子「あっ……」ゾクゾク

ジョロロロッ ぴちゃぴちゃっ

梓「えっ!?」

澪「うわぁっオシッコ!?」

ドサッ


さわ子「がッ…!?」

    「……」

唯「あ……」

梓「……」

澪「……」

紬「……」


─続・第10話─

  おわり



━第11話━


─2年生の教室─


梓「ねぇねぇ、純」

純「イヤな予感しか しない」

梓「まだ何も言ってないじゃん」

純「だってさぁ……」

梓「純、好きだよ」

純「えっ」ドキッ

憂「あっ、また梓ちゃんが 純ちゃんの心をもてあそんでる!」

梓「ふっふっふ」

純「あ、梓のヤツめ……」ドキドキ

純「でもね……わ、私も 梓のこと、結構 好きだよ?」

梓「ぇええっ!?」ドキッ

憂「あっ、純ちゃんがカウンターで もてあそび返した!!」


梓「くそ~」ドキドキ

純「はっはっは」ドキドキ


純「で、なんなの」

梓「今度の3連休、私は家族旅行を楽しんでくるけど

  一方、純には何も予定がなかった」

純「うん、まぁ無いけど そんな言われ方すると……」

梓「トンちゃん預かって」

純「んっ?!」

梓「さすがに学校に3日間も放置しておけないしね」

純「し、しかし……」

梓「エサやりと水槽の水を交換するだけの簡単なお仕事です」

純「いやいやいや、そんな、いきなり生き物を預かれなんて非常識だってば!!」

梓「私も以前、どこかのバカヤロウに いきなりネコちゃんを預けられたよね?」

純「うん、預けられたね」

梓「どうする?」

純「預かります……」


─3連休─


─純の家─


こぽこぽ

㌧「~♪」スイスイ

純「預かってみれば、どうという事はない」

㌧「プクプク」

純「まあ、けいおん部が学校で飼えてるくらいなんだし、

  そんなに手間は かかんないよね」

 「吠えたり暴れたりする事もないし、愛嬌あって かわいいし!」

㌧「ェァアァァァアアアアアアアアアアッ」

純「えええええええっ!?」

㌧「♪」スイスイ

純「♪じゃないよ!! おい、今の鳴き声は なんなのさ!?」

憂「純ちゃんが一人で喚きちらしている。怖いなぁ」

純「わぁっ!?」

  「う、憂 いつの間に……」


純「あれっ、玄関の鍵 閉めてなかったっけ?」

憂「うん」

 「でも、外しやすそうな窓枠があったから……」

純「我が家が誇る防犯セキュリティも

  プロの前には無力だった」

唯「わ~、トンちゃん! 元気だった~?」トタトタ

㌧「プクプク」パチャパチャ

純「あ、唯先輩 どうもです」

唯「うん。純ちゃん、こんにちわ~」

 「勝手に窓枠はずして家に入っちゃって ごめんなさい!」ペコリ

純「あ、いえいえ。意外にも姉は常識人だったよ」

憂「ふふっ、お姉ちゃんは すごいんだから!」

唯「純ちゃんはモフモフしてかわいいね~」モフモフ

純「わっ、だ、抱きつかないくださいよ……」

唯「純ちゃん純ちゃん純ちゃ~ん♪」ペロペロ

純「わっ、な、舐めないでくださいっ」

唯「せ、せいてきに興奮してきちゃったよぉお」ハァハァ

純「まったく常識人じゃなかった!!」ベロベロベロベロベロ

憂「ふふっ、お姉ちゃんは すごいんだから!」


唯「冗談だよ」

純「はぁ」

憂「ふふっ、純ちゃん ビックリしちゃったね」

純「ところで今さら聞くのもアレだけど、何しに来たの?」

 「やはりトンちゃんの様子を見に?」

憂「うん、ストレスで純ちゃんに殺されてないかなって……」

純「預かった生き物を私は殺さないよ!!」

唯「じゃあ預からなかった生き物は殺すの?」

純「こ、殺しません」

唯「じゃあ、何を殺すの?」

純「うっ……自分の感情を殺そうかと」

唯「カッコいいよ!!」

純「ところでさっき、トンちゃんが変な声で鳴いたんですけど

  スッポンモドキって ああいう鳴き声だったんですね」

唯「男鳴きだね」

純「男の人は、あんな声で鳴くんですか」

唯「知らないよ。私は何を聞かれても適当に答えると決意したし

  大人になっても、ずっと適当に生きていきたいんだ~」

純「なんのカミングアウントなんだろう」

唯「あっ、えへへ。私、なんでこんな事しゃっべてるんだろ」

 「純ちゃんって不思議な子だね」

純「不思議な人に不思議な子って言われた!!」

唯「やったね!!」

純「別にやってないですよ!!」

唯「やったよ!!」

純「やってないですって!!」

唯「やったないよって!?」

純「やってった!?」

唯純「ヤッホホーイwwwwww」

憂「なんだコイツら」

唯「憂が口のきき方を間違えた」

憂「お姉ちゃん ごめんね?」

 「でも、私にも堪忍袋の緒があるから……」

純「まぁ、気持ちは分かるよ」

純「ところでトンちゃんの様子を見に来てくれたのはいいけれど

  そんなに気になるなら唯先輩が預かるっていう選択肢はなかったんですか?」

唯「無かったね、何故か、全く」

純「そ、そうですか」

 「まぁ、手間も かかんないから 2~3日預かるくらい構わないですけど……」

純「でも、先輩たちが卒業して、梓も卒業したら

  トンちゃんは どうなるんですか?」

唯「知らないよ。私は先のことなんか何一つ考える気はないし

  これからも そのスタンスを変える気はないよ~」

純「なんのカミングアウントなんだろう」

唯「あっ、えへへ。私、なんでこんな事しゃっべてるんだろ」

 「純ちゃんって不思議な子だね」

純「不思議な人に不思議な子って言われた!!」

唯「不思議じゃないよ!!」

純「不思議ですよ!!」

唯「不思議じゃないもん!!」

純「不思議ですって!!」

唯「不思議じゃんじゃないける!?」

純「不思議だんじゃんちょうるける!?

唯純「不死騎団団長ヒュンケルwwwwww」

憂「無理がありすぎるよ」

唯「憂が見逃してくれなかった」

憂「私は お姉ちゃんの言うことなら なんでも聞くつもりだけど

  物事には節度ってものがあるよ」

純「大事なことだよね」


㌧「ォェァァァァアアアアアアアァァアアァアァッ」 


─第11話─

 おわり



6
最終更新:2011年07月13日 00:15