階段を上り、また、私は戻ってきた
目の前には、軽音部室の扉がある
さっき、律ちゃんが割ったはずのガラスが、今は綺麗になっていた


私の頭には、さっきから幻聴が響いている
最初は、サイレンのように聞こえていた

でも、今は違った
これは…私達の、音楽
私達の会話


私達の日常だった


扉を開く
中は、真っ白な部屋に、真っ白な椅子が置いてあるだけだった
部屋とは思ったが、これは、本当は部屋ではないのかもしれない
だって…壁が、どこまでいっても見あたらないから



私は、椅子に座った





――――――――――

映画のようだった
いや…映画なんだ

これは、私の人生の映画


いつもと同じ風景
いつもと同じ会話
いつもと同じ笑顔

だが、その日が来て、一変した


唯「みんな…!」

私は軽音部室に駆け込んだ
この日は、私は憂と約束があったから先に家に帰っていたから、学校なのに私服だったんだ

律「あれ?どうしたんだ唯?」

澪「憂と買い物に行くんじゃなかったのか?」

紬「なんだか急いでいるみたいだけど…」

梓「唯先輩、なんか顔色が変ですよ?大丈夫ですか?」

そして、私は思い出した




唯「憂が…誘拐されちゃった…」




そこから先は早送りされているようにすぐに過ぎていった

みんなは警察に通報するように言ったが、私は通報したら殺す、という決まり文句にすっかり怯えてしまっていた
そして、ムギちゃんから一生を賭けて返すと約束して、お金を借りて、誘拐犯にお金を引き渡した

だが、ムギちゃんにも、そんな急に大金が用意できるはずもなく、中身はほとんどが新聞紙を切っただけの紙切れだった

でも、それを入れた鞄に、発信機を入れてくれていたから、追い掛けて憂を助けようとしたんだ…




――――――――――


白かった部屋は、いつの間にか、真っ黒になっていた

そして、座っている私の正面には、あの鉈のお化けが立っていた

「―――」

唯「それで…そうだ、憂が人質にとられたんだ」

「―――」

唯「でも、まだ私だけは…犯人の後ろにいた私だけは助けられたんだ…」

「―――」

唯「でも、助けようと思ったときに、思い出しちゃったんだ…」

憂ばかりが誉められた

憂ばかりが可愛がられた

いつも比較されていた








私は






憂を






見殺しにした








病院についた時、私は後悔や、自己嫌悪でいっぱいだった

みんなは私を慰めてくれたけど、私には気休めにすらならなかった

しばらく経って、警察の人が私に手紙を持ってきた

憂は、誘拐犯に捕まっていた時も、手紙を書くくらいの身動きは出来たみたいで、書き残してくれていたらしい



手紙を見ている人へ

私が無事に解放されていたらこの手紙は捨ててください



お姉ちゃんへ

この手紙を見ているとき私は死んでいるのかもしれません
でも私はお姉ちゃんのことを恨んでなんかいません
私はたとえ何があってもお姉ちゃんのことが大好きです
それだけはどうしても伝えたかったんです
だからどうか助けられなかったことを後悔しないでください
私はお姉ちゃんに後悔なんてしてほしくありません
だから代わりに誇りに思ってください
私は妹のために必死になれる優しいお姉ちゃんなんだって
でももしかしたら伝える機会がもうないかもしれないので念のために手紙にしておきます
でも手紙じゃなくて自分で伝えられたらいいな
お姉ちゃん
私はずっとお姉ちゃんの妹だったことをうれしく思っています
もし生まれ変われるとしても私はお姉ちゃんの妹がいいな





「―――」

唯「………」

立ち上がる
私は、このお化けを殺さなければいけない
これは、私の劣等感と、罪悪感、嫉妬の形だから
私は、このれんごくの処刑人を殺さなければいけない

「―――ッ!」

唯「―――ッ!」

私達は叫んだ


鉄砲を取り出しながら走って距離をとった

さっきまではなかった壁が出来ていた
駆け寄った壁の反対には壇があった
多分、あれが処刑台なんだろう

そう思いながら、私はお化けに鉄砲を撃った
鈍い金属音がする

やっぱり、これじゃ勝てないや

そう考え、でもこの場所のことを考えていた私には、ある戦い方が浮かんでいた

そして、私はお化けに回り込むように走り出す

そして、私はお化けが近付くのを待った


まだだね

まだだよ

もう少し…

今だ!


鉄砲から飛び出した弾はお化けに向かう
でも、狙っているのは頭や体じゃない
足だ
でも、私は知っている
お化けは、マネキンもそうだったし、きっととっても我慢強い
足が撃たれても、歩いてくる


でも

お化けは倒れた

処刑台に足を引っかけたんだ



普通なら乗り越えて来たんだろうけど、怪我をした足じゃ躓いちゃうみたいだね

でも、これだけじゃ殺せない

だから…

唯「えい!」

鉈を持った手を撃った
お化けの手から鉈が離れた
私はそれに飛び付いた
重かった
こんなのを持って歩けるなんて、お化けはすごいって、素直に思った
でも、お化けに持てたんなら私にだって持てるはず
そう思い、必死に持ち上げた



お化けの方を見てみると、頭の金属の塊が重いのか、立ち上がるのに苦労していた
私はゆっくりと処刑台に上り、鉈を…


振り下ろした



錆びた金属同士がぶつかり合って鳥肌が立つような音が処刑場に響いた
そして…



金属の塊が、割れた






お化けの顔は見なくても分かっていた
だって、私の劣等感や罪悪感、嫉妬なんだもん

私自身じゃないと、おかしいよね?

動かなくなった『お化け』(私)の胸に、鉈を突き刺した

これは、この鉈は、誘拐犯が持っていたナイフだから、憂みたいに、刺されないと駄目なんだよね

そう思っていると、『お化け』(私)が板を差し出してきた
血に濡れて、真っ赤になっちゃった板
私はそれを受け取ると、処刑台に座り込んだ


あぁ…疲れた…






気が付くと、私はサイレントヒルの街中…車から降りて、最初に探索を始めた場所に立っていた
最初と違うのは、空には太陽の光の代わりに月の光があることだけだった

腕の中には三枚の板

目の前には…憂

憂「お姉ちゃん」

唯「うん…」

憂「帰ろっか」

唯「うん…」

憂「帰り方、分かる?」

唯「うん…」

頷き、憂に背を向ける


板を地面に重ねて置く
握った鉄砲には、銀色に光る弾が一発だけ

唯「憂」

憂「…うん」

唯「大好き」

引き金を引く

板の真ん中に穴が開き、そこから少しずつ、燃えてもいないのに炭になって、灰になっていく

強い風が吹いた

思わず目を瞑る

目を開いた時には、もう何も遺っていなかった

後ろ、道の先からサイレンが聞こえてきた

今度は、幻聴じゃない

迎えの、音だ



END







335 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/23(土) 04:34:54.40 ID:+gAFgrosO
ふむ…終わったな…


いろいろ説明してない部分あるからわからないところは訊いてくれれば応えるよ
まぁ、説明聞かずに推測して楽しむってやり方もあるけどな


336 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2010/10/23(土) 04:39:09.41 ID:JrMWE3kSO

唯が罪悪感から裏世界に呼ばれたのは分かるが
なんで唯は澪と紬を殺した?必要がなかったように思うんだが


337 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2010/10/23(土) 04:41:17.61 ID:JrMWE3kSO
あと板は何なんや


338 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/23(土) 04:42:09.53 ID:+gAFgrosO
けいおん部皆殺しは部員に対する劣等感からの嫉妬により殺された

まぁ、実際には誰一人死人は出てないけどな


339 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/23(土) 04:44:34.97 ID:+gAFgrosO
頭を抱える男→罪悪感

跪き、男を見上げる男→嫉妬

真っ赤に濡れた板(何が彫られていたかは不明)→劣等感


340 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2010/10/23(土) 05:08:07.80 ID:JrMWE3kSO
>>339 
なるほど
そう考えるときれいな終わり方だね
てか誰も死んでないのかw
全員幻覚かい