呆然としている間に鉈のお化けが鉈を床から抜こうとしていた
私がお化けの頭がある辺りを見ていると、お化けはまた鉈を振り上げた
私は慌てて立ち上がり、後退する
下がりながらも鉄砲を撃った
だが、金属の塊に当たって弾が弾かれている

撃つ、弾かれる

撃つ、弾かれる

撃つ、弾かれる

撃つ、弾かれる

撃つ、弾かれる

カチリ

絶望的な音がした

鉈を引き摺ってお化けが近付いてくる
いつの間にか階段に繋がる扉を追い越して、壁を背負っていた

唯「あ…」

私は殺されるんだ
そう思い、私は座り込んだ
直後、頭痛と幻聴が頭を揺らした

世界が変わってしまった時の逆再生するように世界が戻っていく

お化けはそれを眺めるように上を向き、周りを見回すと、階段に続く扉を開け、走るように去っていった

私は何も考えられずに座り込んだままだった
頭の中では、あずにゃんとの思い出が再生されていた




…どのくらい経っただろうか
意識をはっきり取り戻したときには、さっきの事は夢だったんじゃないだろうか、と思ってしまうくらい時間が経っているような気がした
腕時計を見た時、一瞬時計が狂っているのではないかと疑ってしまった
どうせ病院も探索が終わってしまっているので外に出て確かめることにした

外には、月が浮かんでいた








集合時間は夕方の6時だったのに、今は9時だった
みんな心配してまた解散して探してくれているかもしれないけど一応集合場所に戻ってみる事にした

集合場所は…遊園地の入り口



どれくらい歩いただろうか
遊園地の門が見えるまで30分は歩いた
そこに私はおかしなものを見つけてしまった

階段だった
入り口の前に、四角い穴があり、そこにずっと階段が続いている

唯「なんだろ、これ…」

とりあえず降りてみることにした

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…


唯「…長い…疲れた…ハァ…」


タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…


中略


タン、タン…

タン、タン…

タン、タン…

タン…


唯「つ…着いた…長すぎる…」

ようやく階段の一番下にたどり着き、荒れた息を整えている私の前には、木で出来た簡素な扉があった

唯「この扉…どこに繋がってるんだろ…デ○ズニーランドの地下みたいなものなのかな?」

そう言いながら扉を開こうとするが、扉はまるで張り付けてあるように動かない
『開かない』ではなく、『動かない』のだ
鍵が掛かっているだけならガタガタと揺らす事も出来るのに、それさえ出来ない

唯「あれ…?」

念のために鍵を試したいが、鍵はほとんど拾った場所ですぐに使って…

唯「…あ」

ふと、パンツのポケットに手を入れてみる
金属の固い感触を握りしめ、取り出す

唯「憂のポーチの鍵…」

普通なら開かないだろう
サイレントヒルの探索を始めてすぐに拾った憂のポーチ、それに入っていた鍵がこんな地下の深くにある扉を開くなんて思えない
でも、確かな予感がした
震える手で鍵穴に差し入れる









        カチリ












憂の鍵で、扉が開かれていく
その瞬間、私は何か大切な事を忘れている事を思い出した
何を忘れているのかはわからない
だが、私は確かに何かを忘れているんだ


唯「ここは…」

学校のような雰囲気はあった
いや、学校なのだろう
ここは、私が…私達が過ごした学校だった

唯「桜が丘…」

だが、私が知っている桜が丘ではなかった
窓には鉄格子が掛けられ、扉は物々しい金属製になっている
地面には埃が溜まり、周囲は錆で赤い雰囲気を纏っている

唯「なんだか…嫌な感じ…」

だが、私の足は躊躇うことなくある場所に向かっていた


軽音部の部室だ


不思議だった
軽音部室の扉だけは、この不気味に変わってしまった学校で、全然変わっていなかったのだ
懐かしさに目と頭が熱くなってきた
だが、私はまだこの気持ちに流されるわけにはいかない
憂を探さなくてはいけないのだ
そう決心し、一気に扉を開け放った

だが、目に入ってきた光景は、全くの不意打ちで、信じられない、状態で、眺めているのが夢のように感じてしまった


目を引いたのは、壁に咲いた花だった
真っ赤なお花
そして、それを咲かせているのは、おっきなナイフのような、あのお化けが持っていた鉈
そして、それが壁に張り付けている


唯「…澪…ちゃん…?」


私は、よろけるように一歩、部室に足を踏み入れた
その足音が響いたと同時に、扉のガラスが割れたような音をたてた
いや、実際割れたのだ
ある、一つの金属の塊が、凄いスピードでぶつかって

「なんで…だよ…」

気付いた
もう自力では座ることも出来なくなってしまった澪ちゃんの足元に、座り込んでいた彼女に

「なんで…いきなり………たんだよ…」

いつも元気で、優しかった彼女が、見たこともない怖い顔で、私を睨んでいる
律ちゃんの手で、鉄砲が向けられていた

律「なんでだよ…唯…お前…友達じゃ…なかったのかよ…!」

律ちゃんは私に鉄砲を向けながら立ち上がった
手をついた壁に、赤い手形がべったりと付いている

唯「え…律…ちゃ」

律「呼ぶなッ!」

言葉が遮られた
何がなんだかわからない…なんで澪ちゃんがこんな事に?いや、どうして澪ちゃんがここに?なぜ律ちゃんは怒ってるの?
私が何かしたんだろうか?鉄砲で撃たれてしまうようなことを?何をしたの?

考えている間に律ちゃんは落ち着いて来たようだった

律「あぁ…そうか…お前…澪に何か恨みでもってあったんだな?でも…どんな恨みでも…ここまでしなくてもよかっただろ!」

え…

唯「澪ちゃんを、こうしたのが…私?」



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