3日目
澪「ん? 憂ちゃんじゃないか」
憂「あ、澪さん」
澪「律はどうしたんだ? ははーん、さては嫌気がさして同盟から抜けたな」
憂「いえ、そうじゃなくて。ちょっとはぐれちゃったんです」
澪「はぐれた……? ふっ、丁度いい。憂ちゃん、私とやろう」
憂「え」
澪「私の能力は遂に覚醒しきった。試し切りのようで悪いが……いくぞ!」
憂「!」
突如として始まる戦い! そう、これがカンチョーバトルロワイヤル!
自分の周りは敵だらけ、進む先進む先、全てに自らを阻む壁が存在する!
澪「さぁ、受けてみるがいい。これが私の、完全無欠の能力だ……!」
チクタク、チクタク。
教室の時計の短針が進む音だ。
チクタク、チ――――
短針の制止。
それはすなわち……
澪「時間停止っ! 私以外の全ての時間は止まったぁっ!」
澪「どうだ? これこそ最強の名にふさわしい能力だと思わないか、憂ちゃん」
澪「と、言っても聞こえてないか。ははは……さぁ、止めていられる限界は約10秒! さっさと仕留めさせてもらうぞ」
憂「10秒なんだ……」
澪「え゛」
澪、驚愕ッ。
そこには時間停止した憂ではなく、何事もなかったかのようにその場に立つ彼女の姿があった。
憂「澪さんが能力を教えてくれたお礼に、私のも教えてあげます」
澪「や、やめろ……くるなァ!!」
憂「私のは――――」
澪「ううぅ……おしりがヒリヒリするよ……」
憂「ごめんなさい。ちょっと思いっきりやっちゃって」
澪「いや、いいよ。これで目が覚めた」
澪「何を舞い上がっていたんだ、私は……」
澪「能力が完成した程度で。そう、私が目指すのは勝利だ!」
澪「自己満足なんかで終わってたまるか! じゃあね、憂ちゃん」
憂「澪さん……」
これが澪の真の覚醒の時である。
それにしても憂は今のところ参加者の中では撃退数が一番。
これは未来のカンチョニストクイーンの誕生か!
・・・
梓「はぁ、はぁ……はっ、ははは!」
梓「ザマァないですねぇ! 唯先輩!」
唯「……」シュ~…
場面変わって校庭だが。
おっと、まさかのリベンジ戦。
なんということか、死闘の末そこに立っているのは中野。
唯といえば地面にキスしてる様な状態ッ!
梓「遂に私は手に入れたぁ! 速さと電気の力! 両方の真の力を!」
唯「っぐ……」
唯(私が……あずにゃんに倒される……!?)
梓「はっはっはー!」
完全無欠、中野ちゃん。
梓「ふふ、後は唯先輩のそそる尻の穴にカンチョーすれば勝ち……へへへ」
勝った! 私は勝利を手にした!
そんな顔をしてカンチョーの構えをしつつ、唯へ近寄る中野。
だが甘いぞッ。勝負は最後までわからないものだ。中野ォ!
唯「そこだぁっ!」
梓「!」
梓「おっと……お痛はだめです。唯先輩」
飛んできた唯の拳を寸でのところで後ろに下がり、避ける。
梓「あなたはどうして能力を使わないんですか? あ、ごめんなさい」
梓「使わないんじゃなくて使えないんですよねぇ~? 能力持ってないんですもんねぇ~?」
唯「そんなもんなくたって私は十分やってけるよ」
梓「甘い甘い! そんなんだからこんなことになってるんですよ……」
瞬間、中野のツインテールが逆立ち、放電を起こす。
そして、クラッチングスタートの構え。
梓「完膚なきまで潰してあげますよ。この最大最強の技で!」
梓「さぁ、くらいなさい! エレキとスピードのコラボレーション!」
視界に唯の姿を入れ、睨みを利かせる。
どうやら狙いはしっかり定めたらしい。
唯「お喋りは隙を生むよ、あずにゃん」
梓「ふん、減らず口を……行きますっ!!」
――ビュンッッッ。
高速。いや、超音速。いやいや超光速ッ!
もはや、その姿を確認することは不可ッ!
絶対的速さ! 彼女に速さで勝てる人間はこの世にはいないッ!
校庭に立つ木々が吹き飛ぶ、だがその中で唯はひたすら踏ん張り、耐えるゥゥッ!
唯(どこ! あずにゃんはどこにいる!?)
目視など不可! 知覚することなど不可ァ!!
梓「わたしのk――――――――」
――シュウウウゥゥゥ~。
唯「……なんだこれ、バター?」
そこにあるのは脂の塊、黄色い固体。唯の言うとおりバターである。
はたしてこれはどういうことか?
唯「そうか……!」
唯「あずにゃんは速すぎた。だから、バターになっちゃったんだ!」
なんという恐ろしい事実。
自身の能力が身を滅ぼしたのだ。
遂にこのカンチョーバトルロワイヤル内に死人が現れてしまった。
そう、彼女は誰よりも速かった。いや、速すぎたのだ。
中野よ。人には越えてはならない限界がある。
中野梓。惜しくもゲーム敗退にして死亡ッ!
強敵(とも)の死を胸に、唯はさらなるステージへ……!
一方……。
和「そろそろ姿を現したらどう?」
「お、気づいていたんだ」
和「当たり前でしょう。あなたのことだからそうだと思っていたわ」
エリ「ふふふ」
和「……私がこのゲームに参加したのはあなたが目的」
エリ「知ってるよ。私を倒したいんだよね、和」
和「ええ。エリ」
和「同じ師から学んだ弟子同士……どちらが優れているのか」
エリ「おーけー……皆まで言うな」
エリ「私もそろそろケリをつけなきゃって思ってたところなんだよねー」
バッ、シュッ
和「いくわよ」
エリ「こっちもね」
彼女らは果たして人なのだろうか。
いや、化物か。
言葉では言い表せられないカンチョー合戦がそこにはあった。
お互い、力の出し惜しみはなし。
真剣勝負。
しかし、このままでは校舎の方が持たないッ。
和「場所を変えましょう! ここでは地球を破壊しかねないっ」
エリ「しゃーねぇ、よしっ、上へいくよ!」
和とエリは高く跳躍すると教室の天井を突き破り、上へ上へと昇っていく!
わかったッ。もうこいつら人間じゃないッ!
まだまだ上昇するッ、空をも抜けるッ。
そして宇宙(そら)へ。
最終更新:2012年05月04日 21:53