・・・

唯「ムギちゃんと姫ちゃんがやられたみたいだね」

和「ムギはともかく、立花さんは相当な実力者なはず」

和「とんだダークホースが潜んでいるみたいね」

唯「ワクワクするよぉ~!」

和「そう言ってられるのも今のうちね」

和「唯、あんたには能力が一つもない。この闘いを乗り切るにはハードだと思うわ」

唯「能力?」


唯「そんなの聞いたことないよ? それに和ちゃんは今まで教えてくれなかった!」

和「なんでも私が教えてくれるだなんて思わないで。唯」

唯「ケチぃ……でも」

唯「私はそんな能力なんてものがなくても勝つよ!」

和「必殺技で押し切る気? 甘いわね……」

唯「言ってくれるね! いいよ、そこまで言うのなら……」

シャキーン

唯「そろそろ始めようよ、カンチョー合戦を!」

和「ふふっ、話にも飽きてきたことだし……いいわ。かかってきなさい」

和「さぁ、あんたの本気! 見せてみなさい!」


――ズブリ。

唯「あぁうっ!」

和「これで一撃入ったけど? ふふっ」

和「一応言っておくけど、まだ……」

唯「能力ってやつは使ってないんでしょ! ……わかってるよ!」

圧倒的ッ! 師の力を越えることはやはりできないのか。
和と唯のカンチョー合戦が始まってから5秒経過。
一瞬で決着がついた。

和「……唯、あきらめなさい」

和「あんたは私に――」

唯(――勝てない?)

和「ふっ……3日、3日間生き残ることができたらもう一度戦ってあげる」

唯「畜生ッ……!」




・・・

純「おーい、あずさー」

梓「ん?」

梓(なんだ純か。純も参加者の一人みたいだけど)

純「部活ないなら一緒に帰ろうよ」

梓(はんっ、おそるるに足らずッ!)

梓(まるで鴨がネギ背負ってやってきたみたいだね。さっさと潰してあげる)

純「梓?」

梓「うん、いいよ。一緒に帰ろう」

純「おー、じゃあ……あ、やっぱ待って」

純「帰る前に、一戦交えようよ」ニヤリ

梓(そら来た! この呑気な顔見てよ。弱者の顔だ!)

梓「しかたがないなぁ……」ニヤリ




・・・

紬「ん、んー……あれ?」

姫子「あ、気がついた?」

紬「私いったい……」

姫子「私たち二人、早くもゲーム脱落だよ」

紬「そ、そうなんだ。がっかり……」

姫子(唯の妹さんに負けたことは覚えてないのかな)

姫子「でもまぁ、今回は強敵揃いだったし……下手に勝ち進むより安全だったかもね」

紬「え?」

姫子「最悪の場合、このゲームは死人がでるよ」

紬「し、死人!?」

姫子(私に最初の一撃を与えたあのモップ頭……あいつは特にまずい)

姫子(ううん、あのイカれた性格と能力がかなりまずいんだよ……)




・・・

梓「あ……がっ……!」

傷だらけの中野。
力を振り絞り、フラフラと立ちあがるもそれがやっとといったところだ。

梓「ば、化物めっ……!」

純「へへーん! 言ってくれるね。あーずーさ」

梓(こいつ、私を痛めつけて楽しんでる!)

純「私はね、梓。ただカンチョーするだけってのには飽き飽きしてるの」

純「こうやって命一杯痛めつけて、ボロボロになったところでズブリ! か・い・か・ん!」

純「おっと、あの快感を思い出しちゃって涎が……でへへ」ジュルリ

梓「歪んでる……」

純「梓もさぁ、はやく能力を使えば? 出し惜しみなんてしたところで意味ないもん」

純「ま、もっとも私に敵う能力なんてそうそうないとは思うけど」ニタァ…

梓「そこまで言うなら……期待に応えて見せてあげるよ」

床に手をつき、片足を曲げて、腰を浮かす。
まるでクラッチングスタートの構えだ。
視界に純の姿をしっかり入れ、睨みを利かせる。

梓「その目に焼き付けろッ! 私の゛速さ゛をッ!」

つま先をトントンと鳴らすと同時、

純「あーん?」

――ビュンッッッ。

高速。いや、超音速。

中野がその場から走り出すと同時に廊下の窓ガラスが全て音を立てて割れた。
ソニックブーム、超音速が生み出した衝撃波だッ!
さすがの純も危険を察知したのか体の前で腕を交差させて防御体制を取る。
が、そこに音速で接近した中野が突っ込んでくるゥゥゥッ!

梓(と、止まらないぃぃぃ~)

中野は別に能力の出し惜しみをしていたわけではない。

この能力の使い勝手が悪すぎる為、多様は避けていたのだ。
超音速で衝突なんかした日には中野は色々もうグチャリとぶっ飛ぶ。


梓「――ん~……あれ? 止まった?」

純「違うね。私があんたを止めたんだ」

中野の体にはあちらこちらに細い線が絡みついていた。

いや、これは線ではない……髪の毛だッ。

気がつけば純のモップヘアーが解け、大量の髪の毛があり得ないほど伸びきっている。
伸びきった髪は廊下中に張り巡らされ、まるで蜘蛛の巣の様。

純「私の能力は髪の毛を自在に操ること。長さも、大きさも、固さも、ね」

純「その気になればワイヤーぐらいの強度にもできちゃう」

はたしてこれがカンチョーに関係があるのかないのか……。
そんなことは置いておいて、中野は今、純の髪の毛に絡み取られて捕獲されている。
中野を包むように形成された髪のネットはギュウギュウと肉を締め付けてくる。

梓「あいだだだだ!?」

純「梓のも大した能力だよ。でもあんな使い方じゃなってない。それにノロすぎる」

梓(私が遅い!? 私がスロウリィ!? はぁ!?)


純「どうする? まだ奥の手でもあるの? 梓」

梓(ない……ッ!)

梓(でも!)

梓「あ、あるにはあるよ……」

純「へぇ、見せてもらおうじゃん!」

梓「いや、でも今は見せられないというかね……」

純「なんじゃいそりゃ」

梓「で、でも! 本当にあるの! 信じて? ね!?」

純(なんだこいつ)

梓「その力を見せるにはもう3日経たなきゃ見せられないっていうか……!」

純「ほぅほぅ、だったら3日後にもう一度やり合おうか」

シュルシュルシュル…

梓(拘束が解けた!)

純「だから今日は見逃してあげる。せいぜい生き延びてよ、梓」スタスタスタ…

梓「た、助かった……」ホッ




・・・

澪「ん?」

律「げっ」

澪「律じゃないか。それに憂ちゃんまで……まさか」

律「そ、そうだ。手を組んだ! カンチョーを認めない同士でな!」

憂「……」

澪「ふっ、バカなことを。さすがは律だな」

律「なにッ……」

憂「律さん、抑えて」

澪(見たところ、律も憂ちゃんも大した実力はなさそうだ。ここで今、私とやり合っても勝負は見えてるな)

澪「どう料理してやろうかな……ははは」

律「み、澪……」

澪「まぁ、今日のところは親友の好で見逃してあげる」

律(なめやがって……)

憂「澪さんも私たちと一緒に……」

澪「お断りだよ。私はお前たちみたいにぬるくない!」

律「そんなこと言っておいて、もし私らに負けたらなんて言い訳するつもりだよ」

澪「なに……?」ピクッ

憂「……」

澪「言うじゃないか、律。その減らず口、今ここで叩いてやってもいいんだぞ?」

律「や、やれるもんならやってみろよ……!」

律(怖がるな! 所詮は澪だ。なんとかなる……倒してから改心させたって……)

澪「……ふん、生憎だけど今日は私は戦えない」

律「え?」

澪「能力を鍛えているからな」

憂「え?」

律「は? 能力?」

澪「ああ!」

律(こいつ……ついにメルヘン思考を拗らせたか……)

澪「な、なんだよその目は……」

律「いやぁ、別に」

憂(能力ってなんだろう?)

律「で? ぼーっと何もしないでいるのが鍛えてるっていえんのか」

澪「この゛何もしない゛がすごくいいんだよ」

澪(唯を倒すためにも能力は必要不可欠だ。私のあの力が覚醒すれば唯なんて……)

澪「ふふ、ふふふふふ……」

憂「ど、どうしたんですか?」

律「あー、気にしなくていいよ。さ、今日は私たちも帰ろうぜー」

憂「え、えぇ?」

澪「私は勝つぞー! おー!」




こうして各地で始まりと終わりの鐘が鳴り響いた。

脱落者2名! 琴吹紬、立花姫子。

ここでリーチがかかった唯は一体どうなる!?
絶対にして頂点と呼ばれる和の真の実力とは!?
注目のダークホース憂、純の活躍は!?
そしてまだ明かされぬ能力を持つ戦士たちッ!!

そう、戦いはまだ始まったばかりだ……

強さの果てに待つものは!? 最強か! 支配か!


1日目終了。




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