合宿から帰って来ても夏休みはまだまだあった。
   …でも、私としては2年にもなったんだし、来年の事を考えて夏期講習くらい受けておかないとちょっとだけ不安だった。
   …だから私は、この暑い中、夏期講習を受けに学校へと来ていた。

   でも、出ようと思った理由は実は他にもあって…
   夏期講習は他のクラスも一緒に行うから、もしかしたら律も一緒に受けれるかも、と思っていた。

   だけど昨日…律に夏期講習の話をすると、律は参加しない。ときっぱり言い切った。
   そ…そりゃ、よくよく考えてみたら…あの律が夏期講習なんか受けにくるわけがないよなぁ…。

   でも…やっぱり私は残念で寂しい。
   講習だろうがなんだろうが、二人で隣合える事に意味があるから。

   講習中、先生の話を聞きながらもつい律の事を考えてしまう。

   律は今、何してるかな?律は今、私の事考えてくれてるかな?

   …なんて思いながら時間はすぎる。

   そう言えば、律に好きだとはっきり言って貰ったことはあまりない。
   最初の1回か2回くらいなのかな。

   …私も、あんまり言ったことない…から仕方ないけど。

   ましてや付き合うなんてはっきりした約束は交わしていなかったし。
   …律と私は、一緒に居るのが当たり前だったから。
   だから、進歩はあれど…はっきりした関係の変化はない。



   澪「…ふぅ」

   昼休みになり、弁当を取り出していると和がゆっくりと近付いて来た。

   和「澪、ご飯一緒にたべよ?」

   澪「あ、うん」

   和「さっきの問題、解けた?」

   澪「あー、あれ。途中までは合ってたんだけどさぁ…」

   いつも学校でするのと同じ他愛ない話。
   …でも、今の私は物足りなさを感じてしまう。


   和「……ちょっと澪?聞いてた?」

   澪「…えっ?!な、なんだっけ?」

   和「やっぱり聞いてなかったのね。まぁいいけどさ。…律の事でも考えてた?」

   和の一言に、私はつい固まってしまう。
   でもその言葉をやっと飲み込むと、ぼんっ!と音がなるくらいに顔が熱くなっていくのを感じた。

   澪「うええぇっ?!な、何言って!!」

   和「当たりなんだ?律の事、好きなのね。澪って結構わかりやすいよね」

   クスクスと小さく笑ってみせる和を見て、私は恥ずかしくて居たたまれなくなる。
   …うう、恥ずかしいっ。

   …普通に考えたら女の子が女の子を好きだなんて…きっと一般的に考えておかしいんだろうとは思う。
   でも和はそれをおかしいだなんて言う事もなく、ただ優しく笑っていた。

   …これは私の勝手な考えなんだけど…私が律を好きな様に、もしかしたら和も唯を…

   澪「もしかして…和…」

   和「…ん。言わなくてもいいよ。私は…今の関係でも十分だから」

   澪「和…」

   …やっぱり、当たってるんだろうな。



   講習も終わり、帰り支度が終わると和へと近づく。

   澪「和、一緒に帰らないか?」

   和「んー、そうしたいんだけど…これからちょっと用事があって。ごめんね」

   澪「そっか。和も大変だなー。それじゃあまたな」

   和「うん。じゃあね」

   用事があるなら仕方ないよな…。残念だけど。
   仕方なしに和と別れ、一人で校舎を出た。


   3時か…律は、何してるかな。

   直ぐに律の事ばかりを考える自分に苦笑いを浮かべてしまう。

   「澪っ」

   門を出ると不意に呼び止められて、慌てて声の方を向く。
   …慌てた理由なんて、一つしかない。

   その声が…律の声だったから。

   澪「律!講習に出た訳じゃないのに何やってんだよー」

   嬉しくて少しだけ声が高くなりながら律へと駆け寄る。

   ああ、律だ。

   …今日はずっと会いたいと思って勉強してた私に、神様からのごほうびなのかな。とか勝手に思ってしまうよ。
   それでも私ばっかり会いたいなんて思ってたのがバレたら嫌だから、軽くからかう。

   律「なんだよー。迎えに来てやったのにさっ」

   澪「迎え?」

   律「そうだよ。一緒に出掛けようと思ってさ!」

   ぎゅっと手を取られた瞬間、講習中に感じていた寂しさは一気に消えてしまった。

   律が、こうして私を待っていてくれた。
   どうして心の中ではこんなに嬉しいのに、言葉には中々出せないんだろう。
   ちゃんと、言わなきゃ。
   嬉しいって。
   ありがとうって。
   …でも、言葉が、喉に引っかかって出て来ない。
   素直になりきれない自分に、少しだけ嫌気がさす。


   律「澪?」

   澪「えっ?」

   律「ちゃんと聞いてろよなー。ほら、一回澪の家で着替えてから急いで出発だぞっ」

   どこに?なんて聞く暇もなく律に力強く手を引かれて、足は勝手に動き出した。

   昔から律は、強引な所があるなぁ…。
   でも、そんな行動が…いつも一歩引いてしまう私をそうやって勇気付けてくれているのはよくわかってる。

   律の言う通りに、一度家で着替えるとバスに乗った。


   律「澪、ほら!」

   澪「あ。これっ…」

   並んで座るバスの中、律が鞄の中から二枚のチケットを取り出して見せた。

   それは…遊園地の招待券。

   律「知り合いに譲って貰ったんだ。澪さ、ナイトパレード見たかったんだろ?」

   合宿から帰ってきた後、律が私の家にあそびに来ていた日。
   律が持って来た雑誌に載っていた夏休みのパレード特集があった。

   写真に収まったキラキラ輝くネオンが凄く綺麗で、私はずっとそれを見ていた。

   口に出してパレードを見たいなんて言わなかったのに、律は分かっていたんだと思うとつい頬が赤くなる。

   澪「…うん」

   律「へへ、よかった。朝から来れなかったけど、今日までらしいから間に合ってよかったよな!」

   にかっと笑った律を見つめると胸を締め付けられる。
   ありがとうって言わなきゃ。ちゃんと分かってる…分かってるんだ。



   律「あ!ついた。降りるぞっ」

   澪「う、うん」

   …ああ…言いそびれちゃった。

   どうしてなんだろう。もっと素直になりたいのになりきれないよ。
   律は、こんな私…嫌いになったりしないよね…?

   ジェットコースターにコーヒーカップ、バイキングにカーレース、それから…観覧車。
   お化け屋敷行くのは嫌だから…逃げ出したけど。

   私たちはまるで走り回るようにはしゃいでいた。

   あっと言う間に時間は過ぎて行き、あたりも少し暗くなってくるとパレードが始まった。

   人混みの中、離れないように強く握った手。
   目の前を過ぎる煌びやかで賑やかなパレード。

   眩しい光が差し込む中、私は律の様子が気になってちらりと視線を向ける。

   …目が、あった。

   その瞬間は長くて、周りの音も消えて。

   律「澪…」

   ゆっくり、重なる唇。
   二人だけの世界。



   パレードはあっと言う間に終わり、バスから降りて二人手を繋いで帰り道を歩いていた。
   互いに少しだけ無言になりながら…でもその無言も苦じゃなくて。

   …今なら、きっと素直になれる。

   そんな気がした。

   澪「律…」

   律「ん?」

   澪「今日は…いや、いつもありがとう…っ」

   少し緊張しながら、私からキスをする。
   恥ずかしくて顔を合わせていられないから、慌てて顔を背けた。

   律「…言わなくても分かってるよ。私は澪の事がずっと好きなんだからなんでもわかるし」

   律の小さな声が、私の心に染み込むように響く。
   強く握った手の指が、自然に絡んだ。

   私が、こうやって素直になれないのも…律は知っていて。
   きっと…それでもいいんだと、言ってくれているんだ。

   だから律は…

   澪「…律、…す…好きだよ…」

   こうやって、私が必死に言った素直な言葉も、笑って…

   律「知ってる!」

   …そう、答えるんだ。


   …そんな律が、私はやっぱり…好きなんだ。

   ただ、私は律をずっと好きでいよう。律はきっと応えてくれる。

   何も不安になることはないんだから。
   …な?律。


   end+







   この話はこれでおしまいです(・ω・`)


   いま書いてる話、律澪より何やら和梓のが早く完成しそうなんだけど、そっち先でもいいですか?><


   >>304
   ぉK?よかった、ありがとー><

   ちょっとアンニュイな和にしたから、ちょっとだけ今までと雰囲気変わるかもでふ(・ω・)

   つかこんな短期間にこんなに沢山話書いたの初めてなのでネタが尽きそうです><
   全部は叶えれないけどみたいネタがあったら教えてくだしあorz




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