……


「だいじょうぶですか! だいじょうぶですか!」


唯「う。うーん……いたた」

純「先輩! 生きてますか!」

唯「はっ! 純ちゃん!」

純「よかった! 無事なんですね」

唯「ここは……」



辺りを見渡し、私は目を疑った……まるで爆心地の中央に立っているようだった。

私のまわりには半径1km程度の巨大なクレーターが広がり、
強烈なイカ臭さと建物の残骸が散らばっているだけだった。


唯「……あずにゃんは……?」

純「……うっ、梓……梓ぁ……」ポロッ

唯「うそ……だよね……」

純「梓は……唯先輩を守ったんです……覚えてないんですか?」

唯「えっ」

純「私、間欠泉で打ち上げられたあと、上空から見てました」

純「梓が、あなたを精子のベールでつつみこむところを……」

唯「あっ……」


  『もう限界です……ごめんなさい』

  「えっ、やだよあずにゃん……やだぁ……」

  『ほら唯先輩。まっすぐたって』ヌチャヌチャ

  「これは……? なんで臭いの塗るの?」

  『この精子が、あなたを守ってくれます。精子の繭です』

  「あずにゃん! 嫌だよ! 私だけ助かるなんて……っ! だしてよぉ!」ドンドン

  『さようなら……さようなら……』

  「あずにゃーーーん!!!!」


純「ずっと渦巻く驚異から耐えていたんでしょう。その後、梓は大きく膨張し、轟音とともに炸裂しました」

唯「……グスッ」

純「しっかりしてください!」

唯「えっ」

純「あなたが泣いてると! 梓も悲しみます!!」

唯「……そう、だね」

純「それに梓は死にましたが、梓の意思は残っています」

唯「意思……?」

純「聞こえませんか? 梓の声が……梓の残した命の産声が……」

唯「え」


  『唯先輩ー』 『唯せんぱ~い』 『おーい、おーい』


唯「なっ、何……? なんなの? どこ!?」

純「梓は桜が丘を滅ぼしたわけではありません」

純「街一つ。孕ませたんですよ……アズサクラガオカの誕生です……」


唯「アズサクラガオカ!」

純「見てください……この不毛の大地にも命の記憶はしっかりと刻まれているんです……」

唯「うわー! うわあ!」


 ニョキニョキ ニャンニャン ニョキニョキ ニャンニャン


唯「草木が……山が……帰って……いや、生まれて……あずにゃん!!」


木「唯先輩!!」

山「唯先輩!!!」

川「唯先輩だー! あと純」


純「建物は綺麗になくなりましたが……」

唯「あずにゃーん! うふふふ、あずにゃんだぁ! みんなあずにゃんだぁ!!!」


純「これが梓の、いえ、地球の意思だったのでしょう」

唯「どういうこと?」

澪「なるほどな」

唯「澪ちゃん! りっちゃん! ムギちゃん!」

律「無事だったか。涙をかえせよ」

紬「よかったわね唯ちゃん!」

唯「みんな……またあえて嬉しいよ」

純「この星は、梓を通して行き過ぎた文明をリセットしようとしたんではないでしょうか」

唯「そっか……」

澪「これは人間への警告なんだよ」

律「私たちが繰り返す大量消費で地球はとっくに疲弊していた」

紬「そうね。致し方なかったのよ」

唯「私……この地で生きて行くよ」

澪「コンビニもないぞ、ガスも電気も、テレビも」

唯「うん……でもここには……あずにゃんがいる」


木「えへへ」

山「もうっ、照れちゃいます」

川「共に生きていきましょう」


唯「木が、山が、川が歌っている……大自然の中に、あずにゃんの意思が……根づいている」

唯「あずにゃんは、自然とひとつになったんだよ!」

澪「それが地球に選ばれし者の末路なら、なんだか少し悲しいかもな」

律「あぁ、もうギターをひくこともできやしねぇ」

紬「それでも、命の営みを奏でることはできるわ」

唯「うん……あずにゃんはここにいる……ずっと、ずっと側に……」

  『私が……ずっと側にいますから……ね?』ニコリ

唯「約束したもん!」




アズサクラガオカの奇跡。

数年前日本の都心でおきた忌まわしい中野梓暴走事故
(通称サクラガオカクライシス)を発端として始まった

大自然革命により、人類の生活は一変した。

武器を捨て、機械を壊し、人は自然のまま、あずにゃんの導きのままに暮らすようになった。




唯「今日もいい天気だねぇあずにゃん」

唯「風がきもちいよ」

唯「洗濯物もすぐに乾きそうだね」

唯「いい子いい子♪」



地球の子でありながらも、母のような慈しみの目をもって

唯は梓の風を優しくなで続けた。



おわり。