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  チュンチュン

唯「はっ」

唯(えっと……夢、だったの……?)

唯(すごく怖い夢だったけど……)

唯(ムギちゃんのすごさが分かったよ……)

唯(私、ムギちゃんに何てひどいことを……)




 ………


唯「ムギちゃん!」

紬「あら、唯ちゃんおはよう」

唯「ごめんなさいっ!」

紬「えっ」

唯「ムギちゃんに私とんでもなくひどいことを……」

紬「えっ……? えっ……?」オロオロ

律「どうしたんだ、唯がムギに平謝りしてるぞ」

澪「なんかムギの方が困ってるって感じだな」


 ………

紬「なんだぁ、そんなことだったの」

唯「本当にごめんね……」

紬「そんなの全然気にすることじゃないわよ~」

律「でも、たしかに
  『ムギちゃんのお茶はおいしーし』は私もちょっと変だと思ったな」

澪「そうか? 私は唯らしいなと思ったけど」

唯「うん、これからみんなの紹介をするときは」

唯「澪ちゃんは優しいし、りっちゃんは面白いし、あずにゃんは可愛いし」

唯「ムギちゃんはお茶の腕もさることながら、
  穏やかで気品あふれる物腰で部内の空気を和ませる
  軽音部のムードメーカー的存在である。

  音楽的才能という面でも彼女は恵まれており、
  特に作曲においてその非凡なセンスは顕著に伺える。
  彼女が手がけた作品は……

  (中略)

  ……素晴らしい才能をもった人物であり、
  今後の活躍も期待される」


唯「これで行こうと思うよ」

律「おい、ちょっと待て」

澪「なんでムギだけウィキペディアみたいになってるんだよ!」

律「そうだそうだ! まるで私たちがオマケみたいじゃないか!」

唯「えっ、実際そうでしょ?」

律「へ?」

唯「だって、ムギちゃんは作曲から
  お茶とお菓子の提供までしてくれてるんだよ。
  いうなれば軽音部のライフライン、

  ムギちゃんがいなくちゃ部として成り立ってないし、
  そもそも放課後ティータイムなんてバンド名にはならなかったと思うし、

  私たちのバンドとしての方向性を決めたのは
  紛れもなくムギちゃんなんだよ。
  貢献度からしてこの紹介は妥当だよ。
  というより、私たちみたいな搾りカスが
  ムギちゃんと一緒に紹介されること自体おこがましいよ」フンス

澪「……」

律「おいムギ……唯に何か怪しい薬でも打ったのか?」

紬「そんなことしてないよぉ!」




 …………

梓「えっ? 唯先輩が病的なまでのムギ先輩ファンになった!?」

律「ああ、見ての通りだよ」

唯「ムギちゃん!
   私も家からお茶菓子持ってきたんだよっ、食べて!」

紬「クッピーラムネ……? 始めて見るお菓子ねぇ」

唯「とっても甘いんだよっ!
  そう、私のムギちゃんに対する思いのように……」

梓「たしかに不気味なくらいべったりですね……」

澪「だけど、良かったかもな。
  ムギはもっと皆とスキンシップ取りたいって言ってたし」

唯「ムギちゃんがいないと何も出来ないよ、
  ムギちゃんのお茶が飲みたいよ」

梓「でも、ここまで来るとちょっと気持ち悪いですよね」

澪「うん」




 …………

唯「さぁ! みんな練習するよ!」

梓「えっ?」

澪「練習……するよ…?」

唯「ムギちゃんが作ってくれた曲だからねっ、
  完璧に演奏できるようにならないと」

梓「唯先輩……」ジーン

澪(唯の口から練習するなんて言葉が飛び出すとは……)

澪「よ、よし、じゃあ、
  今度の文化祭でやる新曲、一回あわせてみるか」

唯「うん!」

律「ん、じゃあやってみるかー。1,2,3」

澪(ムギに異常なくらいべったりし始めた時はどうなるかと思ったけど)

澪(なんかいい方向に変わってくれたようだな)


 しかし、澪はこれから起こる
 唯の常軌を逸した行動に自らの考えを改めることになる




 …………

  ジャンジャン~♪

澪「ふぅ……なかなかいい感じだったな」

梓「はい、この調子なら学園祭は無事成功で――」

唯「いや、ちょっと待って」

澪「唯?」

唯「りっちゃん、さっきの演奏だけど」

律「ん? ああ、さっきのは自分でも上手く叩けたと思うよ
  今日は調子いいかもしれないなぁ~」フフッ

唯「へぇ、リズム乱しまくりで
  勢い任せなだけの走りすぎドラムが
  『上手く叩けたと思う』……?」

   バンッ


唯「ふざけるのも大概にしてよッッ!!」

律「ひぃっっ!」


唯「大体、りっちゃんは前から
  ドラムが走りすぎって指摘されてたのに
  全く直る気配が伺えないんだけど、
  その辺どう考えてるの?」

律「えっ……いやぁ直そうとは考えてるんだが
  癖になっちゃってるからなかなか直らなくてさ」アハハ

唯「いや、直そうと考えるだけじゃなくて
  実際に直してもらわないと困るんだけど

  軽音楽は軽い音楽って書くけど、
  そんな軽い気持ちでやられたらこっちが迷惑するんだよ

  というか、いい加減な演奏して
  ムギちゃんが作ってくれた曲に申し訳ないと思わないの?」

律「え、えっと……」

澪「お、おい、唯。たしかに律のドラムは走りすぎだとは思うけど
  そこまで言わなくてもいいだろ」

唯「ああ、そうだ、澪ちゃん」

澪「?」

唯「今回のこの歌詞なんだけど」

澪「えっ、ああ、唯もいいと思うだろ? 自信作なんだ」

唯「自信作……? この『ときめきシュガー』のこと?
  『大切なあなたに絡めるソース』、ふふっ、絡めるソースだって」

     バンッ


唯「寝言は寝て言ってよッッ!!」

澪「ひぃぃぃっ!」


唯「澪ちゃんはムギちゃんの曲に歌詞をつけることが、
  どれだけ大それたことか分かってるの?」

澪「えっと……えっと……」

唯「今回の曲はかっこいい感じのロックな曲調なのに、

  『大切なあなたに絡めるカラメルソース』?
  『'm 恋のパティシエ』?

   なんでわざわざミスマッチな歌詞つけようと思ったの?」

澪「いや、ギャップがあって面白いかなと思って……」

唯「ギャップって、これじゃとんかつに蜂蜜をかけて食べるようなものじゃん、
  ギャップを通り越してただぶち壊しになってるだけだよ」

澪「ぶ、ぶち壊し……」

唯「ともかく、ムギちゃんの崇高な曲に全くそぐわない歌詞だよ。

  お茶、お菓子、作曲、全部やってくれてるムギちゃんの曲が
  こんな素晴らしいクオリティなのに
  作詞専業の澪ちゃんがこんなんで一体どうするつもりなの?死ぬの!?」

澪「ひどいよ……唯……」グスッ

律「おい、唯、お前言い過――」

    バンッ


紬「唯ちゃん、いい加減にしてよっ!!」

唯「ム、ムギちゃん!?」ビクッ


紬「どうして澪ちゃんにそんなひどい事いうの!?」

唯「えっ、どうしてって……
  ムギちゃんは軽音部で凄い頑張ってくれてるし……
  おんぶにだっこの私たちは
  ムギちゃんに努力で報わないといけないでしょ……?」

紬「報うだなんて、私はみんなが好きだから
  お茶やお菓子を用意してるだけなのよ
  だから、別にそんなこと気にする必要ないのよ」

唯「で、でも、やっぱり悪いよ、
  だってムギちゃんの負担が大きいし
  私たちもがんばらないとダメだよ……」

紬「ううん、私はみんなが仲良くしてくれるのが一番嬉しいのよ」

紬「それに唯ちゃんが言ってくれた
  『ムギちゃんのお茶はおいしいし』。

  あれはみんなで過ごす放課後が、
  みんなで仲良く一緒に飲むお茶がおいしい。
  そう意味じゃなかったの?」

唯「あれっ……ムギちゃん、
  もしかして私の言いたかった事、分かってくれてたの……?」

紬「もちろんよ、私の大好きな唯ちゃんのことだから」

唯「ムギちゃん……」ジワァ

紬「ほら、澪ちゃんに謝って」

唯「澪ちゃん……私が間違ってたよ、ひどいこと言ってごめんね……」

澪「うぅ……いいよぉ……」グスッ


 …………

紬「はい、お茶の用意が出来たわよ」

律「おっ、今日はバナナケーキか」

梓「練習もいいですけど、
  こうやってまったりとお茶するのもやっぱりいいですね」

律「おお、梓もやっと分かってきたようだな、
  やっぱり練習よりお茶の方がいいよなー」

梓「なっ、違います、今日は練習した後だからいいんですー」ムキー

澪「ふふっ」

唯「クスッ」

唯(澪ちゃんは優しいし、りっちゃんは面白いし、あずにゃんは可愛いし)

唯(ムギちゃんのお茶はおいしーし)

唯(これからもみんなとずっと一緒にいたいなぁ)


    おしまい




65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/19(土) 12:21:35.82 ID:LnQjhJW30

ごめん、今、もしやと思って紅茶とキャベツ太郎を合わせて食べてみたけど
何の問題もなくおいしくいただけたわ
憶測で適当な事書いてすみません



最終更新:2011年06月26日 21:30