予想通りといっていいのかわからないがネット上で批判的な投稿が増えてきた。

発信者1「平沢唯のソロって、放課後ティータイムと変わり映えしないよなぁ~」
発信者2「ほとんどの曲はムギ作曲らしいぜ」
発信者3「そもそも唯ってソロになったところで音楽的な才能はゼロ!!」
発信者4「はげど~」

紬(まったく、ネット住民は何様のつもりなの?)
紬(自分の思い通りにならないことは批判しかできないの?)
紬(国民総背番号になったら、ID必須にすることで政府に圧力をかけるわ!!)

この批判に過敏に反応したのは、唯ちゃんではなく澪ちゃんだった。

澪「なんで?なんでこんなに批判されるんだ?」
澪「自分の表現したいことを表現しただけでなんでこんなに批判されるんだ?」
澪「放課後ティータイムなら批判されないようなことが、なんで唯なら批判されるんだ?」
澪「そもそもこのアルバムの歌詞は私もかなり協力したんだよ。これを批判されたら私は自信が持てなくなるよ...」

律「そんな深刻になるなよ。澪のことなんかどこにも書いてないジャン」
梓「そうですよ、私なんか演奏ミスをいくつかしているのに誰も指摘しないんですよ。」梓「私は逆に傷つきましたよ。だれも演奏をきいてくれてないなんて...」
澪「そっ、そっかな?いや...悪かった...唯がコメントをだしていないのに私があれこれ言ってもしかたないよな?」

律「ところで、唯とムギを見ないんだがどうしたんだ?」
梓「唯先輩の2nd アルバムの打ち合わせじゃないですか?」
律「なんだとぉ~!! 次のソロは私じゃないのかよぉ~!!」
梓「律先輩のソロがでるころには、地球は統合情報思念体に征服されてますよ!!」
澪「なんだそりゃあ?」
梓「それほど律先輩のソロは理解できないということです。」
律「中野ぉ~!!特別メニューによる特訓だぁ~!!(怒)」
梓「はぁ~...やっぱり律先輩は脳味噌筋肉なんですねぇ~...」
律「なんだとぉ~(憤怒)」
梓「いえ、他意はありません。ただ頭痛でもアンメルツ塗ってればなおるんだなぁ~っと」
梓「馬鹿にしているんではないですよ。治療が楽なのはエコそのものですから」
律「馬鹿にされているとしか思えないんだが、ここはエコということでいいか...」

澪「それにしてもムギと唯の話が気になる。あの二人は放課後ティータイムでも双璧をなす天然派だろ?」
澪「その二人が真剣に話をするってことは妙な胸騒ぎがするんだ...」

律「あらっ、澪ちゅあーんはそんなに胸が気になるんですかぁ?」
梓「胸が気になるのは澪先輩だけじゃありませんよ!!」
澪「いやっ、私の身体的な胸の話では無く、漠然と感じる不安のことなんだよ。」

律・梓「不安?」

澪「うん」

律「例えば?」

澪「例えば...唯が余計な責任を感じて脱退を考えてるとか...」

律・梓「ぇえ~!?」

澪「無いとは言えないだろ?デビュー時のことを思い出してみろよ」

澪「唯に課せされた条件はとてつもなく残酷なものだっただろ?」
澪「唯はそれを乗り越えて、今回のソロデビューを飾ったんだ」
澪「それがトップ10にも入らず、なんとかゴールドディスクに届くかどうかだ」

律「おい澪!!それだけなら十分じゃないか!!そもそも放課後ティータイムでも
  ゴールドディスクは簡単には取れなかったし。」
梓「そうですよ澪先輩。唯先輩のソロで放課後ティータイムの半分に迫ってるんですよ!!」

澪「いや。そんな意味じゃないんだ...ただ...」

澪「唯はこれから私たちが背負う試練を最初に背負うことを覚悟したような気がしてさぁ~」

澪「売れても売れなくても放課後ティータイムのメンバーがソロになった時にどう扱われるか?」
澪「それを示してくれてるんじゃないか?」
梓「でもソロはソロじゃないですか!!バンド以上の結果がなくてもこれだけ売れたら十分じゃないですか!!」
律「いや梓、そんなに簡単なことじゃないぞ?」
律「たしかに唯はソロのチャンスをもらって、成功といって良い結果を出した。」
律「それだけで十分といえば十分なんだけど、唯って音楽以外の部分で評価されてたところが多いだろ?」
律「性格だったり、話だったり...でも音楽的才能ではあまり評価されたなかったのも事実じゃん」
律「ボーカルは面白いけど大人の歌を歌うには幼すぎるし、ギターも『うまいけど個性はない』感じだし」

律「そもそも放課後ティータイムの音楽性は澪とムギで決まってるんだよ。」
律「多分唯はそのなかで苦しんでいたんだ」
律「だから、ソロをだして自分の居場所はどこにでもあると思ってたんじゃないかな?」
律「でも世間は唯を『放課後ティータイムの唯』として見ている事に気がついて...」
律「ムギに相談しているんじゃないかな?」

梓「やっぱりそうなんですが、さすが部長ですね。見ているところは見ていますね!!」律「まぁな...これが私の唯一の取り柄だし...」

澪「ところで唯とムギはなんの話をしてるんだろう?気にはなるんだが恐くて聞けないよ。」


ーーー
ーー

紬「ゴルァー唯!!ワレ会心の一曲をようも駄作にしてくれたのぉ~あぁ~?」
唯「ご、ごめんなさい!!ごめんなさい」)))ブルブルガクガク(((
紬「ごめんですんだら警察は要らんのじゃあ~」
紬「おっと、これからのことは警察は邪魔やから要らんほうがええのぉ~」
唯「...」)))ブルブルガクガク(((
紬「心配せんでえぇ!!」
紬「唯ちゃんは生まれてなかったことにするから...うふふ」


  ー
 ーー
ーーー

澪「なんてことになってるんじゃ...」)))ブルブルガクガク(((
律「考えすぎだろ?それをいったら澪の歌詞が台無しにしたムギの曲は数えきれんだろ」
梓「そうですよ。ムギ先輩は曲がだめになった位でそんなことをするはずがないです!!」
澪「...二人共なにげにひどいな...」



―――――

紬「唯ちゃんが相談したいって事ってなんだろう?」
紬「私のアレンジがダメだったのかなぁ~」
紬「曲が放課後ティータイムに似過ぎだったのかなぁ~」

ようやく唯ちゃんのマンションに到着して、ドアフォンを鳴らす。

唯「ほいほーい」

ガチャッ

唯「あっ、ムギちゃん!!待ってたよ!!あがってあがって!!」
紬「お邪魔しまぁ~す。」

紬「唯ちゃんの部屋にくるのは引越し後初めてよね?」
唯「そ~だね。私も呼んだのは憂以外ではムギちゃんが初めてだよ。」
紬「あらあら、それはとても光栄なことだわ。」

引越し後というが、私たちメンバーには引っ越したことも知らされていない。
今日、ここにこれたのも前日に

唯「実はひっこししたんだぁ~、新しい住所はここだよ!!」

といったメールをくれたからだった。

この時、私は微妙な不安を感じてはいた。

紬(唯ちゃん、引っ越したことをなんで隠してたの?昔ならすぐにみんなを呼んでパーティでもしてたのに...)

紬(杞憂であって欲しいなぁ~)



今、部屋にいる唯ちゃんをみていると元気そのもので、一抹の不安は杞憂であったようだ...

紬(余計な心配だったみたい...うふふ、でも良かった唯ちゃんが元気で...)



唯「ムギちゃん。今日はお酒を呑みたい気分なんだけど、付き合ってくれるかなぁ~」
紬「あらっ、下戸の唯ちゃんが珍しいわね。うふふ。良いわよ。とことん付き合ってあげる。」

唯「やったぁ~、今日はとことん飲んでやるんだぁ~」
唯「ムギちゃん、今夜は寝かさないよ。そして夜明けを一緒に迎えるんだよ!!」

紬「いいわねぇ~。でも夜が明けたら世界が澪ちゃんワールドになってるかも知れないわねぇ~」

唯ちゃんが口を空けていない数本のボトルを両手にぶら下げて持ってきた。
ブランデー、コニャック、ウイスキー、焼酎などなど
どれもこれも度数は高いものばかり

紬(唯ちゃん、こんなお酒飲んで大丈夫かなぁ~)

そんな心配をよそに、唯ちゃんは

唯「ムギちゃん、今夜は無礼講だよ。さっさと酔ってワダカマリ無く言いたいことを言って、一晩寝たらすっかり忘れるんだよ。」

唯「そして、これから私のいうことはムギちゃんには辛いことかも知れないけど、ムギちゃんはそれもわかっているんだよね?」

唯「だから、ムギちゃんも遠慮せずにいろんなことを言って、一晩寝たら全部忘れようね!!」

唯ちゃん...

そこまで悩んでいたなんて、でも

紬「ええ、そのつもりよ!!今日は殴りあいの喧嘩も O.K.よ!!うふふっ」
唯「え~、ムギちゃんと喧嘩しても勝てるわけないじゃ~ん。暴力はんたーい!!」
紬「冗談よ。でも喧嘩する位に思いをぶつけあう覚悟はあるんでしょ?」
紬「私もその覚悟でやってきたんだから手加減無しよ!!」

唯「じゃああ~、これから始まる大喧嘩にかんぱーい!!」
紬「かんぱーい」

チーン

ゴクゴク・グビグビ

紬・唯「ぷはぁ~」

紬「あらあら、ブランデーで乾杯もすごいけど、一杯目を飲み干したのも凄いわ」
唯「ほえぇ~そうなの?私は飲みなれてないから普通に飲んじゃった」
紬「うふふ。それなら酔いの回る前に早く言いたいことを言いましょ?」

唯「ムギちゃん...あのね...私のソロアルバムなんだけど...」
紬(来たっ!!さすが唯ちゃんストレートね)

唯「あのソロアルバムね。」
紬「う、うん」
唯「とーっても、気に入ってるんだぁ~」

紬「へっ?そうだったの?」
紬(私はてっきり愚痴の相手をするつもりだったので、ちょっと拍子抜け)

唯「うん!!」
唯「セールスとかチャートとかいろいろ批評されてるけどさぁ」
唯「ムギちゃんを始め、りっちゃん、澪ちゃん、あずにゃんみーんながサポートしてくれて」
唯「放課後ティータイムと変わりがないって言われても」
唯「私はとーってもうれしかった」

唯「なんかさぁ、放課後ティータイムと変わらないって言われるとさぁ、
  最初の契約の時のメインボーカルを外されたときを思い出して。」
唯「放課後ティータイムと変わらないってことは、私が放課後ティータイムのメンバーとして認められたことでしょ?」
唯「だからとってもうれしいんだよ。」
唯「ムギちゃんは最初からずーっと私のことを考えて、コーラスの入れ方やボーカルエフェクトを考えてくれたり。」
唯「今回のソロでスライドギターってのを教えてくれたのもムギちゃんだし」
唯「そんなことを考えていると、ムギちゃんが一生懸命私を支えてくれてたことに気がついて」
唯「うれしくって、うれしくって...でもそのうれしさを表現する方法がわからなくって」
唯「もしかしたら酔っ払って無意識になった方が的確な言葉がでそうだとおもったんだけど...」
唯「そんなことしなくても、『ありがとう』だけで良かったんだよね?」
唯「難しいことを言うんではなく、心がこもっていたら簡単な言葉でも伝わるんだよね?」

紬「唯ちゃん...」
紬「うん、伝わるよ。」
紬「でもね唯ちゃん。」
紬「少なくともみんなは契約時のことに関しては全く負い目は感じてないわよ。」
紬「そんなことより、唯ちゃんの晴れの舞台を成功させるってことが大事だったの」
紬「もちろん事務所は話題性をだすために、みんなの名前を使ったり」
紬「私も『琴吹紬初プロデュース』と喧宣されたけど、とっても楽しかったし」
紬「セールス的には良くなかったかもしれないけど、唯ちゃんがやりたかったことや、私達が唯ちゃんに托した想いも、ぜーんぶがつまった1枚になったと思うの」
紬「『音で楽になってほしい』は唯ちゃんの声がないとできないの」
紬「だから唯ちゃんをサポートすることはとっても楽しいの」

酔っていたのかどうかは別として、いつもより饒舌だった。

紬(唯ちゃんは気が付いていないようだけど、唯ちゃんには幸せを届ける才能があるのよ)

唯「じゃあ、私は今のままでいいの?」
紬「当たり前じゃない!!変わってしまった唯ちゃんは唯ちゃんでないもの」
紬「プロだから契約とか制約とかいろいろあるけど、唯ちゃんは唯ちゃんのままでいいのよ?」
紬「ややこしいことは斎藤に任せたらいいの、なんせマネージャ兼エージェントだし」

唯「ムギちゃん...」
唯「ありがと...」
紬「私だけでは無く他の3人も代表して『どういたしまして』」


その後、放課後ティータイムは一世を風靡し、メジャーデビュー7年目を迎える前に

律「なんか充電期間が欲しいよなぁ~!!よし活動休止」

「無期限活動休止」

はあっけなく決まりました。
好きな事をするだけの資産もあることだし、音楽以外の事を経験するのも大切だし...


澪ちゃんは文筆生活に入りました。
在籍時から音楽雑誌などでエッセーを書いていたのですが、
最近は本格的な小説を書いており評判も上々です。
来年あたりには本屋大賞を取ることでしょう。


りっちゃんはあっさりと家庭に入りました。
結婚式は友人・親戚だけの簡素なものですが、一味違うのは
「放課後ティータイムのメンバー」が演奏したことでしょう。
あらゆる動画サイトに演奏シーンが投稿されましたが、
せっかくの結婚式なんで削除依頼なんて野暮なことはしません。
実は家庭的なりっちゃん、子育てが一段落したら活動宣言する気満々です。


梓ちゃんはライバルと見られていたバンド「ラブ・クライシス」に電撃加入し、
今でも第一線で活躍しています。
当初はバッシングもあったけど、今はすっかり馴染んでます。
そもそもラブ・クライシスは、りっちゃんと澪ちゃんの知合いなんで、
お互い切磋琢磨してきた良きライバルでありながら友達です。
梓ちゃんは
梓「ビートルズとローリング・ストーンズみたいですね」
といってたけど、
紬「ジョージ・ハリソンはストーンズに加入しなかったわよ、梓ちゃんはジョージ・ハリソンを越えたのよ!!」
というと、顔を真っ赤にして、
梓「ムギ先輩は真剣に冗談をいうから反応に困りますっ!!」
だって!!うふふっ


私は琴吹ファミリーとして経営に参画しています。
嫡男家でありながら一人娘ということなので、父も当主を譲る気は毛頭ないようです。
傘下の企業は親族一同で運営していることから、権力移行も順調なんでしょう。
私は音楽関係とリゾート関係の会社の取締役に名を連ねてます。
この若さで取締役というのは放課後ティータイムで得た知名度と人気があったからこそです。
うふふっ、お父様はこうなることを予見して私の音楽活動を見守っていたのですね。
お父様が引退したら叔父と従兄弟(叔父の長男)が当主になるのでしょう。
それを機に私は私の居場所に戻るつもりです。
一番最初に戻って、みんなが来るまではお茶でも準備してましょうか。

そして最後に唯ちゃん...

唯ちゃんは音楽を辞めてしまいました。
というと語弊がありますね。

音楽ができる程の時間がないといったところでしょう。

唯ちゃんは活動休止後、タレント業に進みました。
知名度のあるバンドのフロントマンながら天然ではおさまらない個性があいまって、
毎日、どこかの番組でかならす顔をみます。

でも、そんな唯ちゃんが一番輝くのは、放課後ティータイムの歌を歌うときです。
たとえバラエティでおちゃらけていても、歌う時だけは「放課後ティータイムの唯」に戻ってます。

いつもニコニコなんでわからないかもしれないけど、その目は来るべき再活動の時を見据えています。

唯ちゃんからのメッセージは、澪ちゃん、りっちゃん、梓ちゃん、そして私に向けて発せられてます。

そして、4人だけがそのメッセージを受け取っています。

「放課後ティータイムついに活動再開!!」


今日の情報ニュースのインタビューに一生懸命対応している唯ちゃん。
忙しそうながら、目がキラキラ輝いてる。
うふふっ...

私も澪ちゃんもりっちゃんも梓ちゃんもあと5秒したら飛び出してあげるから、
ちょっとしたサプライズは唯ちゃんも大好きだよね?






せーの

一同「わぁ~!!」


終わり