一時間後


梓「そっか……最近妙にむったんが弾きづらいのは……太ったからだ」

梓「……」ミョンミョン

むったん「……」ギトォ…


梓「歌がへたになったのも太ったからだ……」

梓「体育しんどいのも太ったからだ」

梓「授業眠くなるのも太ったからだ」

梓「はっ!」

梓「友達が純と憂しかいないのも……まさか」

梓「うわああああああああああ!!! デブは死ね!!デブは死ねええええ!!!」


梓母「帰ったわよ。梓、いいもの買ってきたから使いなさい」

梓「えっ」

梓母「ここ置いとくわね」


梓「これは……」

梓母「お肌にいい化粧水と乳液。毎日使うのよ」

梓「お母さん……」

梓母「応援してるから。お母さんはいつでも梓の味方よ」

梓「……うぅ」ウルウル

梓「うわーんおかあさーん」ギュウウ

梓母「ちょ、やめ……! くさ……」


梓「おかあさんお母さんおかあさーん!!!」スリスリゴシゴシ




そしてその日から私の努力の日々がはじまった。

すべてを取り戻すために。

あの人に再び振り向いてもらうために……



――――

唯の寮室


唯「……あずにゃんにひどい態度をとっちゃったよぉ」シクシク

律「泣くなって、唯は悪くないから」

唯「しばらく会わないでおきましょうって言われちゃった……」

澪「唯……」

唯「えーん……どうしてこんなことに」

律「そりゃあいつが太ったかr」

澪「こら!」ベコン

律「あひっ!?」

紬「困ったわね……これじゃあ次のスタジオの練習が気まずくなるかも」

唯「ねぇムギちゃん簡単に痩せられるお薬とかないの?」

澪「あ、私もほしい」

紬「そんなのあったら肥満で苦しむ人なんていないよ……」

唯「だよねー……あずにゃん……おデブさんになっちゃうなんて、私、もうどうしたらいいのか……」

律「やっぱデブは嫌か?」

唯「べ、べつにそういうわけじゃ……ないけど」ゴニョゴニョ

律「はっきり言えばいいのに」

澪「唯は優しいな」

紬「でもその優しさはときに人を傷つける剣となるのよ」

唯「……」

律「ずばり! 私はデブは苦手だ! みてて暑苦しい! てか暑い!」

澪「私も……かな……なんか甘え体質っていうか……自分をちゃんと管理できてない人は苦手」

紬「私も! だって美しくないもん!」

唯「……だよねぇ」

唯「抱き心地も悪そうだし、ぬるぬるするし、ちょっと臭いし……」

唯「私のあずにゃんはあんなじゃないよ……」

唯「神様……あずにゃんを返してください」

律「こればっかりはなー」

澪「梓がダイエットに励んでくれることを祈るしか……その点では律の指摘は効いたんじゃないか?」

律「だろ!?」

唯「りっちゃんの馬鹿……もっと優しくいってあげればいいのに」

律「デブを甘やかしてどうすんだよー」

律「そりゃ笑っちゃったのは悪かったけどさ……」

澪「今度謝っとけよ」

律「うーっす」

紬「とりあえずダイエットをみんなで手伝ってあげましょ?」

唯「だねー。私あずにゃんとランニングしようかな」

澪「でも会わないって言われたんだろ?」

唯「……」

唯「おデブさんになっても、あずにゃんのことは……すきだよ」

律「ひゅー」

唯「とってもいい子だし……優しいし。あずにゃんは見た目だけじゃない……」

唯「でも私は、スリムで可愛くていい匂いのあずにゃんが一番好き」

唯「これって……わがままだよね、勝手だよね、ひどいよね私……」


……


梓「さてと……痩せるためには何をしたらいいのかな」

梓「脂肪の燃焼だよね……やっぱ走るとか?」

梓「めんどくさいなーなんか楽して痩せれる方法ないかな」

梓「……んー」モグモグ

梓「……んん~」モグモグ

梓「はっ! 頭つかいすぎるとつい何か食べちゃう! いかん、いかんぞ」

梓「糖分は当分NG!なんつって。ニキビがでるからスナックなどの油物もおあずけ!」

梓「……ぐぐぐぐ」

梓「ごめん……新発売のハニーキャラメルコーン……!!」

梓「で、でも……ちょっとだけ……うふ」

梓「もう一口だけなら……許されるはず」

梓「あとでちゃんと運動するから……それでちゃらに……」

梓「ええい! あむあむ!!! おいしいいいい!!」バクバクバクバク


梓「……結局平らげてしまった」

梓「まぁ明日からでいいや。今日はもう夜遅いしね」

梓「ダイエット予定表をつくろう」


朝  早くおきてランニング
   ごはんはちょっとだけ

昼  休み時間にダイエット
   お弁当は抜き

夕  帰ってきてからランニング+筋トレ
   間食はなし

夜  リビングでダイエット
   晩ご飯は野菜中心
   お風呂で半身浴

深夜 速やかに寝る
    上へ戻る


梓「か、完璧すぎる……!!」

梓「これでスリムでボンキュッボンなレディになれるかも!!! いや、なれる!!!」    

梓「えへへ、そうしたもう一度唯先輩をデートに誘うんだ~♪」



翌朝


梓母「梓!いつまで寝てるの!」

梓「はっ!」

梓母「あんた朝から走るって言ってたじゃない」

梓「……えー」

梓母「……もう諦めたの?」

梓「なんか……朝は、だるいし」


梓「体重いし……無理」

梓母(そりゃそうでしょうよ)

梓「学校いってからがんばるし」

梓母「そう……お弁当少なめでいいわよね?」

梓「あっ……それは……ほ、ほら! 勉強するとお腹すくし、運動もするからなおさらね」

梓「だからお米の量増やしといて。なぁに、心配いらないよ……あ! 朝御飯は!!?」

梓母「無理しない程度にね……」

梓母「おかあさんあんたが健康でいてくれたらそれだけでいいから」

梓「わかったからご飯。双子目玉焼きがいいなー。ウインナーもつけて! アルトバイエルン!」

梓母「……」

梓「ふふ、お腹すいたー」



……

学校
昼休み


梓「でね、がつがつ、ダイエットはじめたんふぁ」モグモグ

純「……」

憂「……が、がんばれー」

梓「んん! ごくん、見てて、すぐに痩せてやるから。もう純なんて驚いて目玉飛び出て帰って来ないよ」

純「そうなりたいところだね」

梓「あ、それ食べないの? もらっていい?」

純「なんでダイエットしてる人がそんなに食べてんの?」

梓「え? そんなにって? いつもより少ないじゃん」

憂「……」

梓「それにダイエットにも体力つかうんだから」

梓「いま食べてるのは、授業で消費した分」

梓「これから食べるのはストレスぶとりにならないための分」

梓「んぐんぐ、ぷはー、さてとデザートデザート~♪ 今日はじゃーん! ミックスゼリー!」

憂「や、やめろー!!!」

梓「えっ」

憂「走れー!!」

梓「なに憂、おっきな声だして。さすがに引くよ……」


「クスクス」  「また三馬鹿トリオだよ」 「中野ファミリーは平和そー」 「けいおんぶた」


憂「……むぐぐぐ!!」

純「こら、これ以上目立つことしない」


憂「とにかくこのゼリーはおあずけ!」

梓「え」

憂「め!!」

梓「……返してよ」

憂「……ダメ、梓ちゃん、聞いて? あのね」

梓「返せええええ!!」ガシッ

憂「ぎゃああダメだってばー! これじゃ痩せるどころかますますぶくぶくのデブになるよー!」

梓「ぶくぶくデブっていうなー!!! ちょっと人よりふくよかなだけだよ!!!!」

憂「純ちゃん! パスっ!」チョイッ

純「へっ?」パシッ

憂「それもって逃げて!!」

純「……う、うん……そっか!!! わかった!」

ピュウ

梓「あ、純め!! 憂!!!」

梓「くそー! 返せえええ!!!」 ドタドタドタ 



廊下


純「やーい梓ー! こっちだぞー!」

梓「まってええええ」ドタドタドタ

純「へいへーい! どうしたー」

梓「く……体が重い……足が痛いよぉ」ハァハァ


純「所詮梓のゼリーに対する執着はその程度だったんだ」

梓「ちくしょう……純のくせに……」ハァハァ

純「くやしかったら捕まえてごらん!」


菫「あ、あの……なにしてるんですか?」

純「お、スミーレじゃん」

菫「その呼び方はちょっと……」

梓「菫! 純を捕まえて!! はぁはぁ……ふぅふぅ」

菫「え?」

純「いやいや、ほら、状況みてわかるでしょ」

菫「あー……はぁ……」

梓「部長命令! 捕まえて!」

菫「ひっ」

梓「はやく!」

純「全く……とんでもない食い意地」

菫「あの……先輩、ダイエットしてるなら食べないほうがいいですよ?」

梓「今流行のゼリーダイエットだよ!! これだからぼんぼんの仲間は!!」

純「嘘つけ」

菫「……で、どうしたらいいんですか」

純「いや、走らせるだけ。運動させないとアレますます膨らんでいくから」

菫「そうですか」

梓「くそー……はぁ、はぁ……人を馬鹿にしてぇ……」

菫「が、がんばれー」

純「じゃ、また放課後にねスミーレ!」


……


梓「はぁ……ハァ」

純「おつかれ」

梓「……?」

純「いいファイトだったよ」

梓「純……あんた……はぁ、はぁ、げふっ」

純「2キロくらいは走ったんじゃない?」

梓「……痩せた? ねぇ痩せた!?」

純「……う、うん! めちゃくちゃ痩せた! だからこの調子で頑張ろう!」

梓「はぁ、ハァ……よ、よし……」

梓「ふふふ……どうだみたか、私だってやれば……できる……知ってたけど」

憂「顔あらっておいで、こめかみの汗すごいよ」

梓「ぶふぅ……そうさせて……もらうよ、はぁはぁ」

純(これが続けばいいけどさ……)


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